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2017年09月05日

数学: 圏としての半順序集合とその逆圏


数学: 圏としての群・モノイド・半順序集合の逆圏 (修正版)
数学: 圏としてのモノイドとその逆圏
の続き.

$P = (O, \le)$ を半順序集合とする. ここで $O = \lvert P \rvert$ は台集合, $\le$ は $O$ 上の半順序, すなわち反射率・反対称律・推移律を満たす $O$ 上の関係である.

$P$ は次のようにして圏と見做すことができる.
・ 対象の集合を $O$ とする.
・ $x, y \in P$ に対して, $x \le y$ が成り立つとき, $x$ から $y$ への唯一の射 $\mathrm{ar}(x, y) : x \to y$ が存在し, $x \not\le y$ のとき $x$ から $y$ への射は存在しないとする. つまり
\begin{equation*}
\newcommand{\Ar}[1]{\mathrm{Ar}{#1}}
\newcommand{\ar}{\mathrm{ar}}
\newcommand{\arop}{\Opp{\mathrm{ar}}}
\newcommand{\Hom}{\mathrm{Hom}}
\newcommand{\Id}[1]{\mathrm{id}_{#1}}
\newcommand{\Mr}[1]{\mathrm{#1}}
\newcommand{\Ms}[1]{\mathscr{#1}}
\newcommand{\Ob}[1]{\mathrm{Ob}(#1)}
\newcommand{\Opp}[1]{{#1}^{\mathrm{op}}}
\newcommand{\Pos}{\mathbf{Pos}}
\newcommand{\q}{\hspace{1em}}
\newcommand{\qq}{\hspace{0.5em}}
\newcommand{\Src}{d^{0,\mathrm{op}}}
\newcommand{\Tgt}{d^{1,\mathrm{op}}}
\Hom(x, y)
= \begin{cases}
\{ \ar(x, y) : x \to y \} & (x \le y), \\
\varnothing & (\text{otherwise})
\end{cases}
\end{equation*}
である.
射の集合 $A$ を
\begin{equation*}
A = \bigcup_{x, y \in O} \Hom(x, y)
\end{equation*}
と定義する.

・$x \le y$ のとき射 $\ar(x, y) : x \to y$ が存在する. これに対してその「ソース」と「ターゲット」を対応させる関数 $d^0, d^1 : A \to O$ を
\begin{equation*}
d^0(\ar(x, y)) = x, \quad d^1(\ar(x, y)) = y
\end{equation*}
と定義する.
・各 $x \in P$ に対して $x \le x$ が成り立つ (反射率). よって $\ar(x, x) : x \to x$ が存在する. $\ar(x, x) = \Id{x}$ と書くことにし, 関数 $u : A \to O$ を
\begin{equation*}
u(x) = (\Id{x} : x \to x) = \Id{x}
\end{equation*}
と定義する.
・$x, y, z \in P$ に対して $x \le y, y \le z$ が成り立つとき, $x \le z$ が成り立つ (推移律). これは $\ar(x, y), \ar(y, z)$ が存在するときに $\ar(x, z)$ が存在することを意味する.

集合 $A_2$ を
\begin{align*}
A_2 &= \left\{\, (\ar(y, z), \ar(x, y)) \mid x, y, z \in O. \, x \le y, y \le z \,\right\},
\end{align*}
と定め, 関数 $m : A_2 \to A$ を
\begin{equation*}
m(\ar(y, z), \ar(x, y)) = \ar(x, z)
\end{equation*}
と定義する.
$m(\ar(y, z), \ar(x, y))$ を
\begin{equation*}
\ar(y, z) \circ \ar(x, y)
\end{equation*}
とも記す.


このとき, 6 つ組 $(A, O, d^0, d^1, u, m)$ は圏になり, 半順序集合 $P$ を 6 つ組として
\begin{equation*}
P = (A, O, d^0, d^1, u, m)
\end{equation*}
と表わすことにより圏と見做すことができる.

$P$ 上の関係 $\le$ が満たす反射率・反対称律・推移律は圏としての $P$ においては射の集合 $A$ の性質として次のように記述される:

$x, y, z$ を $O = \Ob{P}$ の元とする. このとき, 次の法則が成り立つ.
・ 反射率: 各 $x$ に対して射 $\Id{x} = \ar(x, x) : x \to x$ が存在する;
・ 反対称律: $\ar(x, y)$ および $\ar(y, x)$ が両者とも存在するならば
\begin{equation*}
\ar(x, y) = \Id{x} = \ar(y, x)
\end{equation*}
である;
・ 推移律: $\ar(x, y)$ および $\ar(y, z)$ が両者とも存在するならば $\ar(x, z)$ も存在して
\begin{equation*}
\ar(x, z) = \ar(y, z) \circ \ar(x, y)
\end{equation*}
である.


圏としての半順序集合 $P$ の逆圏 $\Opp{P}$ は以下のものから構成される.

・ 対象の集合 $\Opp{O} = O$.
$x \in \Opp{O}$ の元は, それが $P$ の逆圏の対象であることを強調したいときには $\Opp{x}$ のように表わす.
・ 射の集合 $\Opp{A} = \left\{\, \arop(x, y) : x \to y \mid x, y \in \Opp{O} \,\right\}$.
$\arop(x, y) : x \to y$ は $A$ に属する射としては $\ar(y, x) : y \to x$ に対応する.

・ 射 $\arop(x, y) : x \to y$ に対してそのソースとターゲットを対応させる関数 $\Src, \Tgt : \Opp{A} \to \Opp{O}$:
\begin{equation*}
\Src(\arop(x, y)) = x, \quad \Tgt(\arop(x, y)) = y.
\end{equation*}
・ 対象 $x$ に対してその上の恒等射 $\Id{x} = \arop(x, x)$ を対応させる関数 $\Opp{u} : x \to x$:
\begin{equation*}
\Opp{u}(x) = (\Id{x} : x \to x) = \Id{x}.
\end{equation*}
・ 集合 $\Opp{A_2}$ を
\begin{equation*}
\Opp{A_2} = \left\{\, (\arop(y, z), \arop(x, y)) \mid x, y, z \in \Opp{O}. \q x \ \le y, y \le z \,\right\}
\end{equation*}
と定義したとき, $(\arop(y, z), \arop(x, y)) \in \Opp{A_2}$ に対してその合成を対応させる関数 $\Opp{m} : \Opp{A_2} \to \Opp{A}$:
\begin{equation*}
\Opp{m}(\arop(y, z), \arop(x, y)) = \arop(y, z) \circ \arop(x, y) = \arop(x, z).
\end{equation*}

圏としての半順序集合 $\Opp{P}$ は 6 つ組
\begin{equation*}
\Opp{P} = (\Opp{A}, \Opp{O}, \Src, \Tgt, \Opp{u}, \Opp{m})
\end{equation*}
として表わされる.

圏としての半順序集合 $P$ とその逆圏 $\Opp{P}$ の関係については次が成り立つ.

命題. $P$ と $\Opp{P}$ が半順序集合として同型となるための必要十分条件は, 全射 $\varphi : P \to P$ で $x \le y$ となるような任意の対象 $x, y \in P$ に対して
\begin{equation*}
\varphi(y) \le \varphi(x)
\end{equation*}
を満たすようなものが存在することである.

例えば, $S$ を任意の集合とし, $P$ を $S$ の部分集合全体の集合とそれらの間の包含関係 $\subset$ からなる半順序集合 $P$ を考える.
$\Opp{P}$ 上の半順序は包含関係 $\Opp{\subset} = \supset$ である.

$\varphi : P \to P$ を
\begin{equation*}
\varphi(A) = S - A = \left\{\, x \mid x \in S,\, x \not\in A \,\right\} \quad (A \in P)
\end{equation*}
と定義する. $A, B \in P$ で $A \subset B$ を満たす対象の対に対して常に
\begin{equation*}
\varphi(B) = S - B \subset S - A = \varphi(A)
\end{equation*}
が成立するので上記の命題により $P$ と $\Opp{P}$ は半順序集合として同型である.
$i : P \to \Opp{P}$ を
\begin{equation*}
i(A) = \Opp{A}
\end{equation*}
によって定め, $f : P \to \Opp{P}$ を
\begin{equation*}
f = i \circ \varphi
\end{equation*}
と定義する.
\begin{equation*}
f(A) = S - A
\end{equation*}
である.
$f$ は $P$ から $\Opp{P}$ への同型写像となる.
すなわち, 対象 $A, B \in P$ に対して常に
\begin{equation*}
A \subset B \quad\Longrightarrow\quad f(A) \supset f(B)
\end{equation*}
が成り立つ.

同型にならない例: $N$ を非負整数全体の集合とする:
\begin{equation*}
N = \{ 0, 1, 2,\ldots \}
\end{equation*}
$N$ 上には全順序 $\le$ が存在する.

\begin{equation*}
N_1 = \left\{\, (m, 0) \mid m \in N \,\right\}, \quad N_2 = \left\{\, (0, n) \mid n \in N \,\right\}
\end{equation*}
とおいて $N_1$ の元 $(m, 0)$ を $m^{(1)}$, $N_2$ の元 $(0, n)$ を $n^{(2)}$ のように書くことにする.
ただし共通元 $(0, 0) \in N_1 \cap N_2$ は単に $0$, もしくは $N_1, N_2$ の元であることを強調する場合にはそれぞれ $0^{(1)}, 0^{(2)}$ と書く.

$N_1$, $N_2$ はそれぞれ $N$ と同一視できるため, $N$ 上の全順序 $\le$ と同じ順序を考えることができる.

集合 $O$ を
\begin{equation*}
O = N_1 \cup N_2
\end{equation*}
によって定める.

$O$ 上の半順序 $\le_O$ を次のように定義する.
(1) $m^{(1)}, n^{(1)} \in O$ に対して $N$ 上の全順序 $\le$ を $\le_O$ とする. $m^{(1)} \le n^{(1)}$ または $n^{(1)} \le m^{(1)}$ のどちらか一方が成り立つ;
(2) $m^{(2)}, n^{(2)} \in O$ に対して $N$ 上の全順序 $\le$ を $\le_O$ とする. $m^{(2)} \le n^{(2)}$ または $n^{(2)} \le m^{(2)}$ のどちらか一方が成り立つ;
(3) $m^{(1)}, n^{(2)} \in O$ に対しては $m^{(1)} = 0$ もしくは $n^{(2)} = 0$ の場合を除き順序関係を定めない ($m^{(1)}$, $n^{(2)}$ のいずれかが $0 \in N_1 \cap N_2$ のときには順序を定めることができる).

このとき $P = (O, \le_O)$ は半順序集合になる.

圏としての半順序集合 $P$ は始対象 $0$ を持つ.
\begin{equation*}
0 \le_O 1^{(1)} \le_O 2^{(1)} \le_O \ldots, \quad 0 \le_O 1^{(2)} \le_O 2^{(2)} \le_O \ldots
\end{equation*}

終対象は存在しない.

$P$ の逆圏 $\Opp{P} = (\Opp{O}, \le_{\Opp{O}})$ を考える. $\Opp{P}$ 上の半順序 $\le_{\Opp{O}} = \Opp{\le_O}$ は次を満たす.
\begin{equation*}
\ldots 2^{(1)} \,\le_{\Opp{O}}\, 1^{(1)} \,\le_{\Opp{O}}\, 0, \quad \ldots 2^{(2)} \,\le_{\Opp{O}}\, 1^{(2)} \,\le_{\Opp{O}}\, 0,
\end{equation*}
つまり圏としての $\Opp{P}$ は終対象 $0$ を持つが始対象は持たない. したがって $P$ と $\Opp{P}$ は同型ではない.

しかし準同型写像は考えることができる.

たとえば $f : P \to \Opp{P}$ を
\begin{equation*}
f = \begin{cases}
3^{(i)} - n^{(i)} & (n^{(i)} = 0^{(i)},..., 3^{(i)}; i = 1, 2) \\
0
\end{cases}
\end{equation*}
により定義すると, $f$ は準同型写像になる.
\begin{gather*}
f(0) = 3^{(1)} \q\le_{\Opp{O}}\q f(1^{(1)}) = 2^{(1)} \q\le_{\Opp{O}}\q f(2^{(1)}) = 1^{(1)} \q\le_{\Opp{O}}\q f(3^{(1)}) = 0 \q\le_{\Opp{O}}\q f(4^{(1)}) = 0 \q\le_{\Opp{O}}\q f(5^{(1)}) = 0 \q\le_{\Opp{O}}\q \ldots \\
f(0) = 3^{(2)} \q\le_{\Opp{O}}\q f(1^{(2)}) = 2^{(2)} \q\le_{\Opp{O}}\q f(2^{(2)}) = 1^{(2)} \q\le_{\Opp{O}}\q f(3^{(2)}) = 0 \q\le_{\Opp{O}}\q f(4^{(2)}) = 0 \q\le_{\Opp{O}}\q f(5^{(2)}) = 0 \q\le_{\Opp{O}}\q \ldots
\end{gather*}

このことからわかるように $f$ による $P$ の像は有限集合
\begin{equation*}
\left\{\, 3^{(1)}, 2^{(1)}, 1^{(1)}, 3^{(2)}, 2^{(2)}, 1^{(2)}, 0 \,\right\}
\end{equation*}
になる.

実際には, $P$ と $\Opp{P}$ 間の任意の準同型写像の像は常に有限集合となることがわかる.
posted by 底彦 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年08月29日

数学: 圏としてのモノイドとその逆圏

数学: 圏としての群・モノイド・半順序集合の逆圏 (修正版) の続き.

次の練習問題を解き終えた (全体の見直しはまだ).

($a$) 任意の単一の群はそれ自体圏と見做せる. 圏としての群の逆圏は何かを説明せよ. この圏が元の圏としての群と同型になること, および同型ではあるが, 同一となるとは限らないことを示せ.
($b$) 上の ($a$) と同様のことをモノイド (結合律を満たす 2 項演算と単位元を持つ集合 = 単位元を持つ半群) に対して行え. その際, 逆圏としてのモノイドが元のモノイドと必ずしも同型にならないことを示せ.
($c$) 上の ($b$) と同様のことを半順序集合に対して行え.


($b$) 群と同様, 任意のモノイドは圏と考えることができる.

$M$ を任意のモノイドとする. $M$ は単位元 '$e$' を持ち, $M$ 上の積 '$・$' は結合律を満たす.

モノイド $M$ を圏として構成する.

対象の集合 $O$ を 1 個だけの元 ('$\bullet$' により表わす) からなる集合として,
\begin{equation*}
O = \left\{\, \bullet \,\right\}
\end{equation*} と定義する.

射の集合 $A$ をモノイド $M$ 自身により
\begin{equation*}
A = M
\end{equation*} と定義する.
$A = M$ の各元 $x$ を, 対象 $\bullet \in O$ からそれ自身への射と考えて
\begin{equation*}
x : \bullet \longrightarrow \bullet
\end{equation*} と記す.

関数 $d^0, d^1 : A \to O$, $u : O \to A$, $m : P = A \times A = M \times M \to A$ を次のように定義する.

・ $d^0, d^1 : A \to O$ は各 $(x : \bullet \to \bullet) \in A$ に対してソース $\bullet$ とターゲット $\bullet$ を対応させる関数.
\begin{equation*}
d^0(x) = \bullet, \quad d^1(x) = \bullet \quad (x \in A).
\end{equation*}
・ $u : O \to A$ は唯一の対象 $\bullet$ に対してモノイド $M$ の単位元 $e$ を対応させる関数.
\begin{equation*}
u(\bullet) = (e : \bullet \to \bullet) = e.
\end{equation*}
・ $m : P \to A$ は各 $(x, y) \in P$ に対して
\begin{equation*}
m(x, y) = xy = x \cdot y
\end{equation*} により定義される関数.

モノイド $M$ を 6 つ組
\begin{equation*}
M = (A, O, d^0, d^1, u, m)
\end{equation*} と表わす.
このとき $M$ がモノイドであることから以下のような図式の可換性が成立する.

(i) $M$ が単位元を持つこと (これにより空集合 $\varnothing$ はモノイドになり得ない. 群の場合と同じ) を示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[dr]_{d^0} & O \ar[l]_{u} \ar[d]^{\mathrm{id}_{O}} \ar[r]^{u} & A \ar[dl]^{d^1} \\
~ & O & ~
}
\end{equation*}

(ii) $M$ 上の積が $M$ に関して閉じていることを示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{m} \ar[r]^{p_2} & A \ar[d]^{d^0} & P \ar[d]_{m} \ar[r]^{p_1} & A \ar[d]^{d^1} \\
A \ar[r]_{d^0} & O & A \ar[r]_{d^1} & O
}
\end{equation*} ここで $p_1, p_2 : P \to A$ は座標射影で $p_1(x, y) = x,\, p_2(x, y) = y$ により定義される.

(iii) 任意の $x \in M$ に対して単位元 $e$ が $x \cdot e = x = e \cdot x$ を満たすことを示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[dr]_{\mathrm{id}_{A}} & P \ar[l]_{(\mathrm{id}_{A}, u \circ d^0)} \ar[d]^m \ar[r]^{(d^1 \circ u, \mathrm{id}_{A})} & A \ar[dl]^{\mathrm{id}_{A}} \\
~ & A &
}
\end{equation*}

(iv) $M$ 上の積が結合律を満たすことを示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
Q \ar[d]_{m \times \mathrm{id}_{A}} \ar[r]^{\mathrm{id}_{A} \times m} & P \ar[d]^m \\
P \ar[r]_m & A
}
\end{equation*} ここで $Q = A \times A \times A = M \times M \times M$ である.

これによりモノイド $M$ を圏と見做すことができる.

モノイド $M$ を圏と見做したとき, その逆圏 $M^{\mathrm{op}}$ もモノイドになることがわかる.

モノイド $M^{\mathrm{op}}$ の各元を, $x \in M$ に対して $x^{\mathrm{op}}$ と記すことにする.

$M^{\mathrm{op}}$ は 6 つ組
\begin{equation*}
M^{\mathrm{op}} = (A^{\mathrm{op}}, O^{\mathrm{op}}, d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}}, u^{\mathrm{op}}, m^{\mathrm{op}})
\end{equation*}
として定義する. 個々の構成要素は次のように定められる.

・ 対象の集合 $O^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ob}(M^{\mathrm{op}}) = O = \left\{\, \bullet \,\right\}$: 単一の元のみからなる集合.

・ 射の集合 $A^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ar}(M^{\mathrm{op}}) = M^{\mathrm{op}}$: モノイド $M$ の台集合の上に積 "$\cdot^{\mathrm{op}}$" を入れて定まるモノイド (後述: $x \cdot^{\mathrm{op}} y = y \cdot x$ により定義される).

・ $d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}} : A^{\mathrm{op}} \to O^{\mathrm{op}}$ は各 $(x : \bullet \to \bullet) = x \in \mathrm{Ar}(M^{\mathrm{op}}) = M^{\mathrm{op}}$ に対して唯一の対象 $\bullet$ を対応させる関数.

・ $u^{\mathrm{op}} : O^{\mathrm{op}} \to A^{\mathrm{op}}$ は $\bullet \in O^{\mathrm{op}}$ に対して $M^{\mathrm{op}}$ の単位元
\begin{equation*}
u^{\mathrm{op}}(\bullet) = (e^{\mathrm{op}} : \bullet \to \bullet) = e^{\mathrm{op}}
\end{equation*} を対応させる関数.

・ $m^{\mathrm{op}} : P^{\mathrm{op}} = M^{\mathrm{op}} \times M^{\mathrm{op}} \to M^{\mathrm{op}}$ は各 $(x^{\mathrm{op}}, y^{\mathrm{op}}) \in P^{\mathrm{op}}$ に対して
\begin{equation*}
m^{\mathrm{op}}(x^{\mathrm{op}}, y^{\mathrm{op}}) = x^{\mathrm{op}}y^{\mathrm{op}} = x^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} y^{\mathrm{op}} = y \cdot x
\end{equation*} により定義される関数.

モノイド $M$ と逆圏としてのモノイド $M^{\mathrm{op}}$ の違いは群の場合と同様に積の構造にある.

関数 $i : M \to M^{\mathrm{op}}$ を
\begin{equation*}
i(x) = x^{\mathrm{op}} \quad (x \in M)
\end{equation*} と定義すると, これはモノイドの準同型写像となる (群の場合は同型写像となるが, モノイドの場合は同型になるとは限らない).
$m^{\mathrm{op}}$ の定義により, 任意の $x, y \in M$ に対して
\begin{equation*}
x^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} y^{\mathrm{op}} = y \cdot x
\end{equation*} が成り立つ.

$i$ は $M$ の 2 つの元の積 $x \cdot y \,(x, y \in M)$ を $M^{\mathrm{op}}$ における積に
\begin{equation*}
i(x \cdot y) = x^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} y^{\mathrm{op}} = y \cdot x
\end{equation*} と移す.
したがって群の場合と同じく, $M$ と $M^{\,\mathrm{op}}$ は台集合は同じだが積 " $\cdot$ " と " $\cdot^{\mathrm{op}}$ " が異なるために一般に同じモノイドにはならない.

■ モノイド $M$ と逆圏としてのモノイド $M^{\mathrm{op}}$ が準同型ではあるが同型にはならない例:

実数体 $\mathbb{R}$ 上の $2 \times 2$ 行列全体のなす環 $M_2(\mathbb{R})$ を考える.

単位行列と零行列を
\begin{equation*}
1 = \begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 1
\end{bmatrix}, \quad
0 = \begin{bmatrix}
0 & 0 \\
0 & 0
\end{bmatrix}.
\end{equation*}
と表わす.
$c$ を 0 でない実数とし, 元 $a, b \in M_2(\mathbb{R})$ を
\begin{equation*}
a = \begin{bmatrix}
1 & 0 \\
0 & 0
\end{bmatrix}, \quad
b = \begin{bmatrix}
0 & c \\
0 & 0
\end{bmatrix}.
\end{equation*} と定義する. $a, b$ に関して
\begin{align*}
a^2 &= a, \\
b^2 &= 0, \\
a \cdot b &= b, \\
b \cdot a &= 0
\end{align*} が成り立つ.

$M$ を $0, 1, a, b$ が生成するモノイドとする. 上記の $a, b$ の関係により,
\begin{equation*}
M = \left\{\, 0,\, 1,\, a,\, b \,\right\}
\end{equation*} となる.

$h : M \to M^{\mathrm{op}}$ をモノイド $M$ から逆圏としてのモノイド $M^{\mathrm{op}}$ への任意のモノイドの準同型写像とする.
このとき, $h$ は同型写像にはなり得ない.

証明は $h$ が $M$ の各元を $M^{\mathrm{op}}$ のどの元に移すのかを調べていくことにより行える.
$h$ はモノイドの準同型だから
\begin{equation*}
h(1) = 1
\end{equation*} を満たす. これ以外の $M$ の元 $0, a, b$ と $M^{\mathrm{op}}$ の元との対応が上記の $a, b$ の関係により全射にならないことがわかる.

よって同型写像ではない.
同時に $h$ の値を定めていく過程で $h$ が $M$ から $M^{\mathrm{op}}$ への同型でない準同型になることもわかる.
posted by 底彦 at 21:18 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年08月14日

数学: 圏としての群・モノイド・半順序集合の逆圏 (修正版)

数学: 圏としての群・モノイド・半順序集合の逆圏 で書いた文章の間違いを修正した.

次の練習問題を考えているのだが, その途中で自分の 圏としての群 への理解が間違っていることに気がついた.


($a$) 任意の単一の群はそれ自体圏と見做せる. 圏としての群の逆圏は何かを説明せよ. この圏が元の圏としての群と同型になること, および同型ではあるが, 同一となるとは限らないことを示せ.
($b$) 上の ($a$) と同様のことをモノイド (結合律を満たす 2 項演算と単位元を持つ集合 = 単位元を持つ半群) に対して行え.
($c$) 上の ($b$) と同様のことを半順序集合に対して行え.

とりあえず間違いに気がついて良かった.

間違いの箇所は圏としての群 $G$ の対象を $G$ を唯一の対象とする集合にし, その上で射の集合を $G$ とおく際に, それを対象 $G$ に対する左からの作用と定義したこと, である.
これは考えればわかるが無理がある.
この間違った定義を行ったことにより, 射の集合の定義における
(1) 射の合成を積とする;
(2) その積によって射の集合が群になる;
(3) その群は元の群 $G$ と同一と見做せる.
という議論が破綻する.



任意の群は圏と考えることができる.
以下のように考える.

対象の集合 $O$ を 1 個だけの元からなる集合として定義する.
その唯一の元は記号として使えればよい.
集合 $O$ を
\begin{equation*}
O = \left\{\, \dagger \,\right\}
\end{equation*} と定義する.

射の集合 $A$ を
\begin{equation*}
A = G
\end{equation*} と定義する.
$A = G$ の各元 $g$ を対象 $\dagger \in O$ からそれ自身への射と考えて
\begin{equation*}
g : \dagger \to \dagger
\end{equation*} と記す.

関数 $d^0, d^1 : A \to O$, $u : O \to A$, $m : P = A \times A = G \times G \to A$ を次のように定義する.

・ $d^0, d^1 : A \to O$ は各 $(g : \dagger \to \dagger) \in A$ に対してソース $\dagger$ とターゲット $\dagger$ を対応させる関数.
\begin{equation*}
d^0(g) = \dagger, \quad d^1(g) = \dagger \quad (g \in A)
\end{equation*}
・ $u : O \to A$ は対象 $\dagger$ に対して群 $G$ の単位元 $e$ を対応させる関数.
\begin{equation*}
u(\dagger) = (e : \dagger \to \dagger) = e.
\end{equation*}
・ $m : P \to A$ は各 $(g, h) \in P$ に対して
\begin{equation*}
m(g, h) = gh = g \cdot h
\end{equation*} により定義される関数. ここで " $\cdot$ " は群 $G$ 上の積である.

群 $G$ を 6 つ組
\begin{equation*}
G = (A, O, d^0, d^1, u, m)
\end{equation*} と表わす.
このとき $G$ が群であることから以下のような図式の可換性が成立する.

(i) $G$ が単位元を持つこと (これにより空集合 $\varnothing$ は群になり得ない) を示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[dr]_{d^0} & O \ar[l]_{u} \ar[d]^{\mathrm{id}_{O}} \ar[r]^{u} & A \ar[dl]^{d^1} \\
~ & O & ~
}
\end{equation*}

(ii) $G$ 上の積が $G$ に関して閉じていることを示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{m} \ar[r]^{p_2} & A \ar[d]^{d^0} & P \ar[d]_{m} \ar[r]^{p_1} & A \ar[d]^{d^1} \\
A \ar[r]_{d^0} & O & A \ar[r]_{d^1} & O
}
\end{equation*} ここで $p_1, p_2 : P \to A$ は座標射影で $p_1(g, h) = g,\, p_2(g, h) = h$ により定義される.

(iii) 任意の $g \in G$ に対して単位元 $e$ が $g \cdot e = g = e \cdot g$ を満たすことを示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[dr]_{\mathrm{id}_{A}} & P \ar[l]_{(\mathrm{id}_{A}, u \circ d^0)} \ar[d]^m \ar[r]^{(d^1 \circ u, \mathrm{id}_{A})} & A \ar[dl]^{\mathrm{id}_{A}} \\
~ & A &
}
\end{equation*}

(iv) $G$ 上の積が結合律を満たすことを示す図式:
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
Q \ar[d]_{m \times \mathrm{id}_{A}} \ar[r]^{\mathrm{id}_{A} \times m} & P \ar[d]^m \\
P \ar[r]_m & A
}
\end{equation*} ここで $Q = A \times A \times A = G \times G \times G$ である.

これにより群 $G$ が圏と見做せる.

以下では群 $G$ を圏と考えた場合に, その逆圏 $G^{\,\mathrm{op}}$ が何になるかを説明している.

$G^{\,\mathrm{op}}$ を $G$ の逆圏とする.
以下では, 群 $G^{\,\mathrm{op}}$ の各元を, 群 $G$ の元 $g$ の右上に "$\mathrm{op}$" を付けて $g^{\mathrm{op}}$ と記すことにする.

$G^{\,\mathrm{op}}$ は 6 つ組
\begin{equation*}
G^{\,\mathrm{op}} = (A^{\mathrm{op}}, O^{\mathrm{op}}, d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}}, u^{\mathrm{op}}, m^{\mathrm{op}})
\end{equation*}
として定義する. 個々の構成要素は次のように定められる.

・ 対象の集合 $O^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ob}(G^{\,\mathrm{op}}) = O = \left\{\, \dagger \,\right\}$: 単一の元のみからなる集合.

・ 射の集合 $A^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ar}(G^{\,\mathrm{op}}) = G^{\mathrm{op}}$: 群 $G$ の台集合の上に積 "$\cdot^{\mathrm{op}}$" を入れて定まる群 (後述: $g \cdot^{\mathrm{op}} h = h \cdot g$ により定義される).


・ $d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}} : A^{\mathrm{op}} \to O^{\mathrm{op}}$ は各 $(g : \dagger \to \dagger) = g \in \mathrm{Ar}(G^{\,\mathrm{op}}) = G^{\,\mathrm{op}}$ に対して単一の対象 $\dagger$ を対応させる関数.

・ $u^{\mathrm{op}} : O^{\mathrm{op}} \to A^{\mathrm{op}}$ は $\dagger \in O^{\mathrm{op}}$ に対して $G^{\,\mathrm{op}}$ の単位元
\begin{equation*}
u^{\mathrm{op}}(\dagger) = (e^{\mathrm{op}} : \dagger \to \dagger) = e^{\mathrm{op}}
\end{equation*} を対応させる関数.

・ $m^{\mathrm{op}} : P^{\mathrm{op}} = G^{\,\mathrm{op}} \times G^{\,\mathrm{op}} \to G^{\,\mathrm{op}}$ は各 $(g^{\mathrm{op}}, h^{\mathrm{op}}) \in P^{\mathrm{op}}$ に対して
\begin{equation*}
m^{\mathrm{op}}(g^{\mathrm{op}}, h^{\mathrm{op}}) = g^{\mathrm{op}}h^{\mathrm{op}} = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*} により定義される関数.

群 $G$ と群 $G^{\,\mathrm{op}}$ の違いは積の構造である.

関数 $i : G \to G^{\,\mathrm{op}}$ を
\begin{equation*}
i(g) = g^{\mathrm{op}} \quad (g \in G)
\end{equation*} と定義すると, これは群の同型写像となる.
$m^{\mathrm{op}}$ の定義により, 任意の $g, h \in G$ に対して
\begin{equation*}
g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*} が成り立つ.

群の同型写像 $i$ によって $G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ は同型になる.

一方で $i$ は $G$ の 2 つの元の積 $g \cdot h \,(g, h \in G)$ を $G^{\,\mathrm{op}}$ における積に
\begin{equation*}
i(g \cdot h) = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*} と移す.
したがって, $G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ は台集合は同じだが積 " $\cdot$ " と " $\cdot^{\mathrm{op}}$ " が異なるために一般に同じ群にはならない.

$G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ が同じ群になるための必要十分条件は任意の $g, h \in G$ に対して
\begin{equation*}
g \cdot h = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*} が成立すること, つまり $G$ が Abel 群になることである.


posted by 底彦 at 21:49 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年08月12日

数学: 圏としての群・モノイド・半順序集合の逆圏 (間違った記述)

2017 年 8 月 13 日 追記
以下の内容は誤りを含んでいるかも知れない.
単一の群を対象が 1 個の圏と見做す仕方を自分が正しく理解していない可能性がある.
現在確認中でありひとまず内容については留保する.

2017 年 8 月 14 日 追記
修正した文章 を書いた.

以下は間違った内容の文章である. 自分の忘備録として残しておく.



今やっているのは逆圏に関する次のような練習問題.

($a$) 任意の単一の群はそれ自体圏と見做せる. 圏としての群の逆圏は何かを説明せよ. この圏が元の圏としての群と同型になること, および同型ではあるが, 同一となるとは限らないことを示せ.
($b$) 上の ($a$) と同様のことをモノイド (結合律を満たす 2 項演算と単位元を持つ集合 = 単位元を持つ半群) に対して行え.
($c$) 上の ($b$) と同様のことを半順序集合 (poset: Partially Ordered Set) に対して行え.

上記の (a) について, $G$ を任意の群とし, その 6 つ組としての定義を
\begin{equation*}
G = (A, O, d^0, d^1, u, m)
\end{equation*}
とおく.
・ 射の集合 $A = \mathrm{Ar}(G) = G$: $(a : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G)$ は各 $g \in G$ に対して $a$ の $g$ への左からの作用:
\begin{equation*}
g \longmapsto a \cdot g
\end{equation*}
を対応させる群準同型. ここで " $\cdot$ " は群 $G$ の積を与える 2 項演算である.
・ 対象の集合 $O = \mathrm{Ob}(G) = \left\{\, G \,\right\}$: 群 $G$ の台集合 $G$ のみからなる集合.
$d^0, d^1 : A \to O$ は各 $(a : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G) = G$ に対してそれぞれそのソース $G$ とターゲット $G$ を対応させる関数.
・ $u : O \to A$ は $G \in O$ に対して恒等写像
\begin{equation*}
u(G) = (\mathrm{id}_{G} : G \to G)
\end{equation*}
を対応させる関数. つまり群 $G$ の単位元を $e$ とするとき, $u(G) = e$ である.
・ $m : P = G \times G \to G$ は各 $(g, h) \in P$ に対して
\begin{equation*}
m(g, h) = gh = g \cdot h
\end{equation*}
により定義される関数.

$G^{\,\mathrm{op}}$ をその逆圏とする.
以下では, 群 $G^{\,\mathrm{op}}$ の各元を, 群 $G$ の元 $g$ の右上に "$\mathrm{op}$" を付けて $g^{\mathrm{op}}$ と記すことにする.
$G^{\,\mathrm{op}}$ は 6 つ組
\begin{equation*}
G^{\,\mathrm{op}} = (A^{\mathrm{op}}, O^{\mathrm{op}}, d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}}, u^{\mathrm{op}}, m^{\mathrm{op}})
\end{equation*}
として定義する. 個々の構成要素は次のように定められる.
・ 射の集合 $A^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ar}(G^{\,\mathrm{op}}) = G^{\mathrm{op}}$: $(a^{\mathrm{op}} : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G^{\mathrm{op}})$ は各 $g^{\mathrm{op}} \in G^{\mathrm{op}}$ に対して
\begin{equation*}
g^{\mathrm{op}} \longmapsto a^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} g^{\mathrm{op}}
\end{equation*}
を対応させる群準同型. ここで " $\cdot^{\mathrm{op}}$ " は群 $G^{\mathrm{op}}$ の積を与える 2 項演算である (後述: $g \cdot^{\mathrm{op}} h = h \cdot g$ により定義される).
・ 対象の集合 $O^{\mathrm{op}} = \mathrm{Ob}(G^{\,\mathrm{op}}) = \left\{\, G \,\right\}$: 群 $G^{\,\mathrm{op}}$ の台集合 $G$ のみからなる集合.
・ $d^{0,\mathrm{op}}, d^{1,\mathrm{op}} : A^{\mathrm{op}} \to O^{\mathrm{op}}$ は各 $(a^{\mathrm{op}} : G \to G) \in \mathrm{Ar}(G^{\mathrm{op}}) = G^{\mathrm{op}}$ に対してそれぞれそのソース $G$ とターゲット $G$ を対応させる関数,
・ $u^{\mathrm{op}} : O^{\mathrm{op}} \to A^{\mathrm{op}}$ は $G \in O^{\mathrm{op}}$ に対して恒等写像
\begin{equation*}
u^{\mathrm{op}}(G) = (\mathrm{id}_{G}^{\mathrm{op}} : G \to G)
\end{equation*}
を対応させる関数. つまり群 $G^{\mathrm{op}}$ の単位元を $e^{\mathrm{op}}$ とするとき, $u^{\mathrm{op}}(G) = e^{\mathrm{op}}$ である.
・ $m^{\mathrm{op}} : P^{\mathrm{op}} = G \times G \to G$ は各 $(g^{\mathrm{op}}, h^{\mathrm{op}}) \in P^{\mathrm{op}}$ に対して
\begin{equation*}
m^{\mathrm{op}}(g^{\mathrm{op}}, h^{\mathrm{op}}) = g^{\mathrm{op}}h^{\mathrm{op}} = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*}
により定義される関数.

関数 $i : G \to G^{\,\mathrm{op}}$ を
\begin{equation*}
i(g) = g^{\mathrm{op}} \quad (g^{\mathrm{op}} \in G^{\,\mathrm{op}})
\end{equation*}
と定義すると, これは群の同型写像となる.
ここで任意の $g, h \in G$ に対して
\begin{equation*}
g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*}
である.

群の同型写像 $i$ によって $G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ は同型になる.

一方で $i$ は $G$ の 2 つの元の積 $g \cdot h \,(g, h \in G)$ に対して
\begin{equation*}
i(g \cdot h) = g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}} = h \cdot g
\end{equation*}
と移す. したがって, $G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ は基集合は同じだが 2 項演算 " $\cdot$ " と " $\cdot^{\mathrm{op}}$ " が異なるために一般に同じ群にはならない.

$G$ と $G^{\,\mathrm{op}}$ が同じ群になるための必要十分条件は任意の $g, h \in G$ に対して
\begin{equation*}
g \cdot h = g \cdot^{\mathrm{op}} h = h \cdot g
\end{equation*}
が成立すること, つまり $G$ が Abel 群になることである (†).
†: この式の中の $g \cdot^{\mathrm{op}} h$ は厳密には $g^{\mathrm{op}} \cdot^{\mathrm{op}} h^{\mathrm{op}}$ と記すべきだが, ここでは混乱は無いだろう.


posted by 底彦 at 11:27 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年08月09日

数学: 圏の連結な部分圏への分解 (続き)

数学: 圏の連結な部分圏への分解 の続き.

ひとまず証明は書き終えたのでメモとして概略を書いておく.

この証明を考えているときはトポロジーか何かの問題を解いているようだった.
圏というもの自体がトポロジーにおける単体的複体のような構造を持っているので, 連結性とかそういう概念を考えることができるのだろう (†1).

†1: 昔, アメリカの雑誌 Times が出していた本 (当時の数学を紹介する一般向け書籍だったと思う) で代数的トポロジーの研究者で圏論の創始者の一人でもあるサミュエル・アイレンベルグ (Samuel Eilenberg) が紹介されていた.
そこに「サミュエル・アイレンベルグ博士は数学の中でも特に難解と言われる代数的位相幾何学を研究しています」と書いてあったのを覚えている.
特に難解 というのは当時の圏論的な方法がそういった印象を与えたのかも知れない.
あまりにも抽象的で言っていることがわからず無味乾燥な "アブストラクト・ナンセンス".
けれどもアイレンベルグ博士が代数的トポロジーの研究者であることを思い合わせると圏論が, それとは別に幾何学的な印象をも与える感じがわかるような気もする.



$\mathscr{C}$ を任意の圏とし, $O = \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$, $A = \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ とおく.
圏 $\mathscr{C}$ は集合 $A$, $O$ および関数
\begin{alignat*}{2}
\mathrm{source} &: A \to O & \quad & \mathrm{source}(f : X \to Y) = X \quad ((f : X \to Y) \in A), \\
\mathrm{target} &: A \to O & \quad & \mathrm{target}(f : X \to Y) = Y \quad ((f : X \to Y) \in A), \\
u &: O \to A & \quad & u(X) = (\mathrm{id}_{X} : X \to X) \quad (X \in O), \\
m &: P \to A & \quad & m(f, g) = f \circ g \quad ((f, g) \in P = \left\{\, (f, g) \mid f, g \in A.\, \mathrm{source}(f) = \mathrm{target}(g) \,\right\})
\end{alignat*}
によって 6 つ組
\begin{equation*}
\mathscr{C} = (A, O, \mathrm{source}, \mathrm{target}, u, m)
\end{equation*}
と表わされる.

$\mathscr{C}$ の射 $f$ と $g$ に対して, 式:
\begin{align*}
\mathrm{source}( f ) &= \mathrm{source}(g), \\
\mathrm{source}( f ) &= \mathrm{target}(g), \\
\mathrm{target}( f ) &= \mathrm{source}(g), \\
\mathrm{target}( f ) &= \mathrm{target}(g)
\end{align*}
の少なくとも一つが成り立つとき,
\begin{equation*}
f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g
\end{equation*}
と書くことにすると $\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,$ は反射率と対称律を満たす $A = \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ 上の関係になる.

$\mathscr{C}$ の対象 $X$ から $Y$ に射の連鎖を辿って辿り着くという考えを集合
\begin{equation*}
\mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})
= \left\{\, (f_{1},..., f_{n}) \mid
f_{i} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f_{i+1} \, (i = 0, 1,..., n - 1)
\,\right\}
\end{equation*}
とその全体の和集合
\begin{equation*}
\mathrm{Path}(\mathscr{C}) = \coprod_{n=0}^{\infty} \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})
\end{equation*}
によって表わす. ここで特に
\begin{equation*}
\mathrm{Path}_{2}(\mathscr{C}) = \left\{\, (f, g) \mid f, g \in A.\, f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g \,\right\}
\end{equation*}
は $A$ 上の関係 $\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,$ に等しい.

圏 $\mathscr{C}$ の 2 つの対象 $X$, $Y$ に対して, ある $(f_{1},..., f_{n}) \in \mathrm{Path}(\mathscr{C})$ が存在して
\begin{equation*}
\mathrm{id}_{X} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f_{1}, f_{n} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} \mathrm{id}_{Y}
\end{equation*}
が成り立つとき (†2),
\begin{equation*}
X \sim Y
\end{equation*}
と表わす.
†2: この条件は
\begin{equation*}
(\mathrm{id}_{X}, f_{1}),\, (f_{n}, \mathrm{id}_{Y}) \in \mathrm{Path}_{2}(\mathscr{C})
\end{equation*}
と同値である.

任意の $X, Y \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して $X \sim Y$ が成り立つとき, $\mathscr{C}$ は 連結 (connected) であるという.

$O = \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ 上の関係 $\sim$ は同値関係である. つまり.
(i) $X \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して $X \sim X$ (反射率);
(ii) $X \sim Y$ ならば $Y \sim X$ (対称律);
(iii) $X \sim Y$ かつ $Y \sim Z$ ならば $X \sim Z$ (推移律)
を満たす.

これにより $\mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ の商空間
\begin{equation*}
\hat{O} = O\,\big/\,\sim
\end{equation*}
が一意的に定まる.

$O_0 \in \hat{O}$ を任意にとる. $O_0$ が圏だということを証明できれば, 任意の圏が連結な部分圏の非交和として一意的に表わされることが言える.

これは実際に正しく,
\begin{equation*}
A_0 = \left\{\, f \mid f \in A.\, \mathrm{source}(f), \mathrm{target}(f) \in O_0 \,\right\}
\end{equation*}
とおくと, 関数 $\mathrm{source}$, $\mathrm{target}$, $u$, $m$ が $O_0$ と $A_0$ 内で閉じていることがわかる.
すなわち
\begin{equation*}
P_0 = \left\{\, (f, g) \mid f, g \in A_0. \mathrm{source}(f) = \mathrm{target}(g) \,\right\}
\end{equation*}
とおけば圏 $\mathscr{C}$ を構成する 4 つの関数
\begin{align*}
\mathrm{source} &: A \to O, \\
\mathrm{target} &: A \to O, \\
u &: O \to A, \\
m &: P \to A
\end{align*}
を $O_0$ および $A_0$ に制限して得られる関数はすべて $O_0$ と $A_0$ を定義域または値域として持つ:
\begin{align*}
\mathrm{source}|A_0 &: A_0 \to O_0, \\
\mathrm{target}|A_0 &: A_0 \to O_0, \\
u|O_0 &: O_0 \to A_0, \\
m|P_0 &: P_0 \to A_0
\end{align*}

したがって 6 つ組
\begin{equation*}
\mathscr{C}_0 = (A_0, O_0, \mathrm{source}, \mathrm{target}, u, m)
\end{equation*}
は $\mathscr{C}$ の部分圏になる.
posted by 底彦 at 05:57 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年08月02日

数学: 圏の連結な部分圏への分解

ノートに書いた練習問題の証明を LaTeX で書く.
最初から LaTeX で書いていくやり方もあるが, 数学を考えながら LaTeX で文書を作成していくのが今の自分にとっては少し難しい.

また, 数学を考えながら LaTeX で文書を作っていく作業は今のところ外では行えない.
そのために使えるノート PC が 2 台とも故障しているのだ.
つまり先日のようにクリニックの待ち合い室で証明を書いていくようなことができない.

そういうわけで, 今のところノートに書いてから LaTeX で文書にするのが一番やりやすい.

練習問題は次のようなものである.


圏は, その圏の任意の対象から任意の対象まで, "結合可能 (composable)" な射の経路を前後に辿って到達できるとき 連結 (connected) であると言う. この定義を正確に行って, 任意の圏は互いに交わらない連結な部分圏の和として一意的に表わされることを証明せよ.



証明の出だしのところだけできた.

$\mathscr{C}$ を任意の圏とし, $\mathrm{source}, \mathrm{target} : \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \to \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ を $\mathscr{C}$ の射に対してそのソースとターゲットを与える関数とする.
すなわち, $f : X \to Y$ を $\mathscr{C}$ の射とするとき, $f$ に対して
\begin{equation*}
\mathrm{source}(f) = X, \quad \mathrm{target}(f) = Y.
\end{equation*}

$\mathscr{C}$ の射 $f$ と $g$ に対して, 式:
\begin{align*}
\mathrm{source}( f ) &= \mathrm{source}(g), \\
\mathrm{source}( f ) &= \mathrm{target}(g), \\
\mathrm{target}( f ) &= \mathrm{source}(g), \\
\mathrm{target}( f ) &= \mathrm{target}(g)
\end{align*}
の少なくとも一つが成り立つとき,
\begin{equation*}
f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g
\end{equation*}
と書く. ${\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,}$ は $\mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ 上の関係で,
(i) 反射率: 任意の射 $f$ に対して $f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f$;
(ii) 対称律: 射 $f$, $g$ に対して $f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g$ ならば $g {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f$
を満たす.

任意の非負整数 $n$ に対して
\begin{equation*}
\mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})
= \left\{\, (f_{1},..., f_{n}) \mid
f_{i} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f_{i+1} \, (i = 0, 1,..., n - 1)
\,\right\}
\end{equation*}
と定義する. 特に
\begin{align*}
\mathrm{Path}_{0}(\mathscr{C}) &= \left\{\, () \,\right\}, \\
\mathrm{Path}_{1}(\mathscr{C}) &= \left\{\, (f) \mid f \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \,\right\}, \\
\mathrm{Path}_{2}(\mathscr{C}) &= \left\{\, (f, g) \mid f, g \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C}), f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g \,\right\}, \\
\end{align*}
$\mathrm{Path}_{0}(\mathscr{C})$ は 0 個の射の列からなる集合.
$\mathrm{Path}_{1}(\mathscr{C})$ は 1 個の射の列 $(f)$ からなる集合.
$\mathrm{Path}_{2}(\mathscr{C})$ は 2 個の射の列 $(f, g)$ で $f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g$ を満たすものの集合.

$\mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})\, (n = 0, 1,...)$ の非交和を
\begin{equation*}
\mathrm{Path}(\mathscr{C}) = \coprod_{n=0}^{\infty} \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})
\end{equation*}
とおく.

定義 1 (圏の連結性). 圏 $\mathscr{C}$ の 2 つの対象 $X$, $Y$ に対して, ある $(f_{1},..., f_{n}) \in \mathrm{Path}(\mathscr{C})$ が存在して
\begin{equation*}
\mathrm{id}_{X} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f_{1}, f_{n} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} \mathrm{id}_{Y}
\end{equation*}
が成り立つとき,
\begin{equation*}
X \sim Y
\end{equation*}
と表わす. 任意の $X, Y \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して $X \sim Y$ が成り立つとき, $\mathscr{C}$ は 連結 (connected) であるという.

命題 1. 任意の $(f_{1},..., f_{n}) \in \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})$ に対して $(f_{n},..., f_{1}) \in \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})$ が成り立つ.

ここまで.

関係 ${\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,}$ が反射率と対称律を満たすことや途中の命題などの証明は ${\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,}$ の定義から導かれる.
posted by 底彦 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年07月28日

数学: 圏の骨格が圏になることの証明 ── 見直し

数学のノート,
数学: ばたばたする,
数学: 圏の骨格の構成
数学: 圏の骨格が圏になることの証明
数学: 圏の骨格が圏になることの証明 (続き)
の続き.

先日できた圏の骨格が圏になることの証明を見直す.
今のところ大きな問題は無い. 誤字やおかしな文章はところどころにある.

証明を見直しながら思ったことが二つある. 傍らで漠然と思っただけなので愚問かも知れない.

一つは証明の仕方そのものについて.

自分の証明はほとんどを圏論的な議論によって行っている.
しかし集合論的な議論を用いて証明しているところが 2 箇所ある. その 2 箇所は圏論的に証明することがおそらくできない.

圏 $\mathscr{C}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ をそれぞれ 6 つ組として
\begin{align*}
\mathscr{C} &= (A_{0}, O_{0}, {d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1}, u_{0}, m_{0}), \\
\mathrm{sk}(\mathscr{C}) &= (A, O, d^{0}, d^{1}, u, m)
\end{align*}
と表わす.
$\mathscr{C}$ について:
・ $A_{0}$, $O_{0}$ は $\mathscr{C}$ の射と対象の集まり;
・ ${d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1} : A_{0} \to O_{0}$ は $\mathscr{C}$ の各々の射にそのソースとターゲットを対応させる関数;
・ $u_{0} : O_{0} \to A_{0}$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象にその上の恒等射を対応させる関数;
・ $m_{0} : P_{0} \to A_{0}$ は合成可能な射の対の集合
\begin{equation*}
P_{0} = \{\, (f, g) \mid f, g \in A_{0},\, {d_{0}}^{0}(f) = {d_{0}}^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
に対してその合成 $f \circ g$ を対応させる関数.
$\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ についても同様:
・ $A$, $O$ は $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の射と対象の集まり;
・ $d^{0}, d^{1} : A \to O$ は $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の各々の射にそのソースとターゲットを対応させる関数;
・ $u : O \to A$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象にその上の恒等射を対応させる関数;
・ $m : P \to A$ は合成可能な射の対の集合
\begin{equation*}
P = \{\, (f, g) \mid f, g \in A,\, d^{0}(f) = d^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
に対してその合成 $f \circ g$ を対応させる関数.

ここで, $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の対象の集まり $O$ と射の集まり $A$ は, $\mathscr{C}$ の対象の集まり $O_{0}$ と射の集まり $A_{0}$ から恣意的に元を選んで構成したものであり, その方法は元の性質を使った集合論的なものである.
言い換えれば $\mathscr{C}$ の圏としての性質のみから導いたものではない.
また, やり方によって異なる $A$, $O$ が構成されることになる.

今回の, $\mathscr{C}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ が圏になることの証明の中で, 図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A_{0} \ar[d]_{s_{1}} \ar[r]^{{d_{0}}^{0}} & O_{0} \ar[d]^{s_{0}} & A_{0} \ar[d]_{s_{1}} \ar[r]^{{d_{0}}^{1}} & O_{0} \ar[d]^{s_{0}} \\
A \ar[r]_{d^{0}} & O & A \ar[r]_{d^{1}} & O
}
\end{equation*}
の可換性を証明する箇所がある.
ただし, ここで $s_{0} : O_{0} \to O$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象 $X_{0} \in O_{0}$ に, その対象と同値な $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の対象 $X \in O$ を対応させる関数であり, $s_{1} : A_{0} \to A$ は $\mathscr{C}$ の各々の射 $f_{0} \in A_{0}$ に, その射と同値な $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の射 $f \in A$ を対応させる関数である.

この可換性は具体的な任意の射 $(f_{0} : X_{0} \to Y_{0}) \in A_{0}$ を一つ取って ${d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1}$, $s_{0}$, $s_{1}$ の定義を使って計算しないと示すことができない. これらの関数の定義が, 集合である $O$ と $A$ の構成方法に依存しているからである.

$\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の構成方法を集合論的な議論を用いずに行うことはできるのだろうか?
そうすれば集合の元を使わない純圏論的な証明ができる.
すぐにはわからないが興味を惹かれる.

もう一つは圏の骨格の具体例について.

(a) 任意の群 $G$ を対象を $G$ のみとする圏として捉えたとき, その骨格 $\mathrm{sk}(G)$ は何になるか.
(b) 有限集合の圏 $\mathbf{FinSet}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathbf{FinSet})$ は何になるか.
(c) すべての集合の圏 $\mathbf{Set}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathbf{Set})$ は何になるか.
(d) 群の圏 $\mathbf{Grp}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathbf{Grp})$ は何になるか.
  . . . .

(a) はすぐにわかって面白い結果になった.
(b), (c), (d) はまだあまり考えていないのだが, 予想外に相当難しい問題に感じた.

一つ歩みを進めた先に暗い未知の混沌が広がっているというのは, 自分が数学に惹かれる理由の一つでもある.
posted by 底彦 at 21:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年07月23日

数学: 圏の骨格が圏になることの証明 (続き)

数学のノート,
数学: ばたばたする,
数学: 圏の骨格の構成
数学: 圏の骨格が圏になることの証明
の続き.
圏 $\mathscr{C}$ に対する骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C}) = (A, O, d^0, d^1, u, m)$ がそれ自身圏になることの証明の最後の部分.
(iii) $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における任意の射 $(f : X \to Y) \in A$ に対して,
\begin{equation*}
f \circ \mathrm{id}_{X} = f = \mathrm{id}_{Y} \circ f
\end{equation*}
が成り立つ. これは図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[dr]_{\mathrm{id}_{A}} \ar[r]^{(\mathrm{id}_{A}, u \circ d^0)} & P \ar[d]_{m} & A \ar[dl]^{\mathrm{id}_{A}} \ar[l]_{(u \circ d^1, \mathrm{id}_{A})} \\
~ & A &
}
\end{equation*}
が可換になることと同値である.
(iv) 集まり $Q$ を
\begin{equation*}
Q = \{\, (f, g, h) \mid f, g, h \in A,\, d^{0}(f) = d^{1}(g),\, d^0(g) = d^1(h) \,\}
\end{equation*}
により定義する. $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における任意の合成可能な射の 3 つ組 $(f, g, h) \in Q$ に対して, 射の合成は結合律
\begin{equation*}
f \circ (g \circ h) = (f \circ g) \circ h
\end{equation*}
が成り立つ. これは図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
Q \ar[d]_{m \times \mathrm{id}_{A}} \ar[r]^{\mathrm{id}_{A} \times m} & P \ar[d]^{m} \\
P \ar[r]_{m} & A
}
\end{equation*}
が可換になることと同値である.

以上により $\mathrm{sk}(\mathscr{C}) = (A, O, d^0, d^1, u, m)$ は, これが圏になるための条件 (i), (ii), (iii), (iv) を満足することを示すことができた.
したがって 圏 $\mathscr{C}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ はそれ自体圏になることがわかる.

(iv) において, $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における射の合成 $m : P \to A$ が結合律を満たすことを示す部分, ノートの記述が長く複雑で整理に数時間かかった.
小さな計算を順番に積み重ねて結合律が成り立つことを証明しているのだが, 本当に子細なことまできちんと導いているし, 日が変わるとそれを理解できなくなっていたためなのか, 繰り返し同じ結果を導いたりしている. やり方も変えたりして.
読みづらい.
ただ, 見直した結果として, 重複する部分やくどい文章を修正し, 自分なりに見通しの良い記述にまとめることができたのは嬉しい.

とりあえず, 証明の全体を LaTeX のファイルとして書けた.
明日以降は, 証明を最初からしっかり読み直してみて, 間違いが無いかどうかを確かめる.
posted by 底彦 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年07月22日

数学: 圏の骨格が圏になることの証明

数学のノート,
数学: ばたばたする,
数学: 圏の骨格の構成
の続き.
圏 $\mathscr{C}$ に対する骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C}) = (A, O, d^0, d^1, u, m)$ がそれ自身圏になることの証明.
(i) $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における任意の対象 $X \in O$ に対して, その上の恒等射 $\mathrm{id}_{X} : X \to X$ のソースとターゲットが $X$ になる. すなわち
\begin{gather*}
d^0 \circ u(X) = d^0(\mathrm{id}_{X} : X \to X) = X = d^1(\mathrm{id}_{X} : X \to X) = d^1 \circ u(X) \\
\text{or} \\
d^0 \circ u = \mathrm{id}_{O} = d^1 \circ u
\end{gather*}
が成り立つ. これは図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A \ar[dr]_{d^0} & O \ar[l]_{u} \ar[d]^{\mathrm{id}_{O}} \ar[r]^{u} & A \ar[dl]^{d^1} \\
~ & O &
}
\end{equation*}
が可換になることと同値である.
(ii) 集まり $P$ を
\begin{equation*}
P = \{\, (f, g) \mid f, g \in A,\, d^{0}(f) = d^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
により定義する. $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における任意の合成可能な射の対 $(f, g) \in P$ (ここで $f : Y \to Z$, $g : X \to Y$ とする) に対して, 合成 $m(f, g) = f \circ g$ のソースは $g$ のソース $d^0(g)$ に等しく, ターゲットは $f$ のターゲット $d^1(f)$ に等しい, すなわち
\begin{gather*}
d^0 \circ m(f, g) = d^0(f \circ g : X \to Z) = X = d^0(g : X \to Y) = d^0 \circ p_2(f, g), \\
d^1 \circ m(f, g) = d^1(f \circ g : X \to Z) = Z = d^1(f : Y \to Z) = d^1 \circ p_1(f, g), \\
\text{or} \\
d^0 \circ m = d^0 \circ p_2, \quad d^1 \circ m = d^1 \circ p_1
\end{gather*}
が成り立つ. これは図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
P \ar[d]_{m} \ar[r]^{p_2} & A \ar[d]^{d^0} & P \ar[d]_{m} \ar[r]^{p_1} & A \ar[d]^{d^1} \\
A \ar[r]_{d^0} & O & A \ar[r]_{d^1} & O
}
\end{equation*}
が可換になることと同値である.
※: $p_1, p_2 : P \to A$ は座標の各成分への射影を表わす. つまり $p_1(f, g) = f$, $p_2(f, g) = g$ となるような関数である.

今日はここまで.
posted by 底彦 at 23:08 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学

2017年07月20日

数学: 圏の骨格の構成

圏 $\mathscr{C}$ を 6 つ組
\begin{equation*}
\mathscr{C} = (A_{0}, O_{0}, {d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1}, u_{0}, m_{0})
\end{equation*}
で表わす.
$O_{0} = \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ は $\mathscr{C}$ の対象の集まり.
$A_{0} = \mathrm{Ar}(\mathscr{C})$ は $\mathscr{C}$ の射の集まり.
関数 ${d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1} : A_{0} \to O_{0}$ は各々の射 $f : X \to Y$ に対してそのソース $X$ とターゲット $Y$ を与える. つまり
\begin{equation*}
{d_{0}}^{0}(f) = X, \quad {d_{0}}^{1}(f) = Y.
\end{equation*}
関数 $u_{0} : O_{0} \to A_{0}$ は各々の対象 $X$ に対してその上の恒等射 $\mathrm{id}_{X}$ を与える. つまり
\begin{equation*}
u_{0}(X) = (\mathrm{id}_{X} : X \to X).
\end{equation*}
合成可能な射の対の集まりを
\begin{equation*}
P_{0} = \{\, (f, g) \mid f, g \in A_{0},\, {d_{0}}^{0}(f) = {d_{0}}^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
とおいたとき, 関数 $m_{0} : P_{0} \to A_{0}$ は射の合成を与える. つまり
\begin{equation*}
m_{0}(f, g) = f \circ_{\mathscr{C}} g.
\end{equation*}
後で定義する $\mathscr{C}$ の骨格における射の合成を簡潔に "$\circ$" と書きたいために $\mathscr{C}$ における射の合成を "$\circ_{\mathscr{C}}$" と表わしている.

これを元に $\mathscr{C}$ の骨格 (skeleton) と呼ばれる概念を構成する.
前に書いた 数学: ばたばたする では $\mathscr{C}$ の骨格における対象の集まり
\begin{equation*}
O = \{\, X_o \mid o \in \hat{O}_{0} \,\}
\end{equation*}
と射の集まり
\begin{equation*}
A = \{\, f_{\alpha} \mid \alpha \in \hat{A}_{0} \,\}
\end{equation*}
を定義した.

ここで
\begin{equation*}
\hat{O}_{0} = O_0\,\big/\,\simeq_\mathscr{C}
\end{equation*}
は $\mathscr{C}$ の対象の集まり $O_{0}$ を対象の同型による同値関係 $\simeq_{\mathscr{C}}$ で割った商空間.
その商写像を $q_{0} : O_{0} \to \hat{O}_{0}$ とおく.
また
\begin{equation*}
\hat{A}_{0} = A_{0}\,\big/\,\simeq_{\mathrm{Ar}(\mathscr{C})}
\end{equation*}
は $\mathscr{C}$ の射の集まり $A_{0}$ を射の同型による同型関係 $\simeq_{\mathrm{Ar}(\mathscr{C})}$ で割った商空間.
その商写像を $q_{1} : A_{0} \to \hat{A}_{0}$ とおく.

関数 $c_{0} : \hat{O}_{0} \to O$ を
\begin{equation*}
c_{0}(o) = X_{o} \quad (o \in \hat{O}_{0})
\end{equation*}
により定義する. $c_{0}$ は $\mathscr{C}$ の対象の各同値類 $o \in \hat{O}_{0}$ に対して, それに含まれる代表元で $O$ に属する対象 $X_{o}$ を与える.
関数 $c_{1} : \hat{A} \to A$ を
\begin{equation*}
c_{1}(\alpha) = f_{\alpha} \quad (\alpha \in \hat{A}_{0})
\end{equation*}
により定義する. $c_{1}$ は $\mathscr{C}$ の射の各同値類 $\alpha \in \hat{A}_{0}$ に対して, それに含まれる代表元で $A$ に属する射 $f_{\alpha}$ を与える.

関数 $s_{0} : O_{0} \to O$ と $s_{1} : A_{0} \to A$ を
\begin{equation*}
s_{0} = c_{0} \circ q_{0} \quad\text{ and }\quad s_{1} = c_{1} \circ q_{1}
\end{equation*}
により定義する.
$s_{0}$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象に対して, それと同型な $O$ に属する対象を与える.
$s_{1}$ は $\mathscr{C}$ の各々の射に対して, それと同型な $A$ に属する射を与える.

以上の準備のもとで $\mathscr{C}$ の骨格における各種の操作を定める.
(1) $d^{0}, d^{1} : A \to O$:
関数 $d^{0}, d^{1}$ を $\mathscr{C}$ における関数 ${d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1}$ の $A$ への制限
\begin{equation*}
d^{0} = {d_{0}}^{0}|A, \quad\text{and}\quad d^{1} : {d_{0}}^{1}|A
\end{equation*}
と定義すると, $d^{0}, d^{1}$ は $A$ から $O$ への関数となる.
これがそれぞれ射に対してそのソースとターゲットを与える.

(2) $u : O \to A$:
関数 $u$ を $\mathscr{C}$ における関数 $u_{0}$ の $O$ への制限
\begin{equation*}
u = u_{0}|O
\end{equation*}
と定義すると, $u$ は $O$ から $A$ への関数となる.
これが対象に対してその上の恒等射を与える.

(3) $m : P \to A$:
\begin{equation*}
P = \{\, (f, g) \mid f, g \in A, d^{0}(f) = d^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
とおいて, 関数 $m$ を
\begin{equation*}
m = s_{1} \circ (m_{0}|P)
\end{equation*}
と定義すると, $m$ は $P$ から $A$ への関数となる.
これが合成可能な射の対 $(f, g) \in P$ ($f$ のソースと $g$ のターゲットが等しい) に対してそれらの射のの合成を与える.

圏 $\mathscr{C}$ の 骨格 (skeleton) を 6 つ組
\begin{equation*}
\mathrm{sk}(\mathscr{C}) = (A, O, d^{0}, d^{1}, u, m)
\end{equation*}
によって定義する.

今日はここまでの内容を LaTeX に書き終えた.

上の (3), つまり骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ において射の合成 $m$ が上記により矛盾無く定義されること (well-defined) がどうにも理解できずに, 何度も繰り返してそのことを保証する議論を行っている. ノートを読み返してみたら長くくどい文章のかたまりが日々書き連らねている.
ある日に納得したことを次の日には納得できなくなっている. それでまた似たような, けれど少しだけ異なる議論を進めて納得したりしなかったり.
これが体調不良で寝込んだりして途切れながらもずっと続く. 無理をしていたんだなあ.
長い. くどい. わかり辛い. 重複がたくさん.

整理してみたら結果としてどの試みも示そうとしていることは一つの式だった. そういうものなんだろう.
任意の $(f, g) \in P_{0}$ に対して,
\begin{equation*}
s_{1} \circ m_{0}(f, g) = m(s_{1}(f), s_{1}(g))
\end{equation*}
つまり
\begin{equation*}
s_{1}(f \circ_{\mathscr{C}} g) = s_{1}(f) \circ s_{1}(g)
\end{equation*}
が成り立つこと, これを示して理解するのが壁だった.
※: 上の式の右辺 $f \circ g$ の "$\circ$" は $\mathscr{C}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における射の合成を表わす.

いずれにせよ, 骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の定義まで LaTeX のファイルとしてまとめることができた.
大量の冗長な箇所を整理することができた.
これは良いこと.

後は $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ がそれ自身圏になることを示して証明は完了する.

次の壁は $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ における射の合成 $m$ が結合律を満たすことを理解する部分である.
それはノートを見返すと明らかで, そこでもまた, 長くて冗長な文章による議論の束がいくつか連なっている.

そこを書くのはまた別の日に.
posted by 底彦 at 21:59 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学
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