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2017年08月02日

数学: 圏の連結な部分圏への分解

ノートに書いた練習問題の証明を LaTeX で書く.
最初から LaTeX で書いていくやり方もあるが, 数学を考えながら LaTeX で文書を作成していくのが今の自分にとっては少し難しい.

また, 数学を考えながら LaTeX で文書を作っていく作業は今のところ外では行えない.
そのために使えるノート PC が 2 台とも故障しているのだ.
つまり先日のようにクリニックの待ち合い室で証明を書いていくようなことができない.

そういうわけで, 今のところノートに書いてから LaTeX で文書にするのが一番やりやすい.

練習問題は次のようなものである.


圏は, その圏の任意の対象から任意の対象まで, "結合可能 (composable)" な射の経路を前後に辿って到達できるとき 連結 (connected) であると言う. この定義を正確に行って, 任意の圏は互いに交わらない連結な部分圏の和として一意的に表わされることを証明せよ.



証明の出だしのところだけできた.

$\mathscr{C}$ を任意の圏とし, $\mathrm{source}, \mathrm{target} : \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \to \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ を $\mathscr{C}$ の射に対してそのソースとターゲットを与える関数とする.
すなわち, $f : X \to Y$ を $\mathscr{C}$ の射とするとき, $f$ に対して
\begin{equation*}
\mathrm{source}(f) = X, \quad \mathrm{target}(f) = Y.
\end{equation*}

$\mathscr{C}$ の射 $f$ と $g$ に対して, 式:
\begin{align*}
\mathrm{source}( f ) &= \mathrm{source}(g), \\
\mathrm{source}( f ) &= \mathrm{target}(g), \\
\mathrm{target}( f ) &= \mathrm{source}(g), \\
\mathrm{target}( f ) &= \mathrm{target}(g)
\end{align*}
の少なくとも一つが成り立つとき,
\begin{equation*}
f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g
\end{equation*}
と書く. ${\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,}$ は $\mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ 上の関係で,
(i) 反射率: 任意の射 $f$ に対して $f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f$;
(ii) 対称律: 射 $f$, $g$ に対して $f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g$ ならば $g {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f$
を満たす.

任意の非負整数 $n$ に対して
\begin{equation*}
\mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})
= \left\{\, (f_{1},..., f_{n}) \mid
f_{i} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f_{i+1} \, (i = 0, 1,..., n - 1)
\,\right\}
\end{equation*}
と定義する. 特に
\begin{align*}
\mathrm{Path}_{0}(\mathscr{C}) &= \left\{\, () \,\right\}, \\
\mathrm{Path}_{1}(\mathscr{C}) &= \left\{\, (f) \mid f \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C}) \,\right\}, \\
\mathrm{Path}_{2}(\mathscr{C}) &= \left\{\, (f, g) \mid f, g \in \mathrm{Ar}(\mathscr{C}), f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g \,\right\}, \\
\end{align*}
$\mathrm{Path}_{0}(\mathscr{C})$ は 0 個の射の列からなる集合.
$\mathrm{Path}_{1}(\mathscr{C})$ は 1 個の射の列 $(f)$ からなる集合.
$\mathrm{Path}_{2}(\mathscr{C})$ は 2 個の射の列 $(f, g)$ で $f {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} g$ を満たすものの集合.

$\mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})\, (n = 0, 1,...)$ の非交和を
\begin{equation*}
\mathrm{Path}(\mathscr{C}) = \coprod_{n=0}^{\infty} \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})
\end{equation*}
とおく.

定義 1 (圏の連結性). 圏 $\mathscr{C}$ の 2 つの対象 $X$, $Y$ に対して, ある $(f_{1},..., f_{n}) \in \mathrm{Path}(\mathscr{C})$ が存在して
\begin{equation*}
\mathrm{id}_{X} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} f_{1}, f_{n} {\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,} \mathrm{id}_{Y}
\end{equation*}
が成り立つとき,
\begin{equation*}
X \sim Y
\end{equation*}
と表わす. 任意の $X, Y \in \mathrm{Ob}(\mathscr{C})$ に対して $X \sim Y$ が成り立つとき, $\mathscr{C}$ は 連結 (connected) であるという.

命題 1. 任意の $(f_{1},..., f_{n}) \in \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})$ に対して $(f_{n},..., f_{1}) \in \mathrm{Path}_{n}(\mathscr{C})$ が成り立つ.

ここまで.

関係 ${\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,}$ が反射率と対称律を満たすことや途中の命題などの証明は ${\,\langle{\mathrm{\small comp}}\rangle\,}$ の定義から導かれる.
posted by 底彦 at 23:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学
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