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2017年07月28日

数学: 圏の骨格が圏になることの証明 ── 見直し

数学のノート,
数学: ばたばたする,
数学: 圏の骨格の構成
数学: 圏の骨格が圏になることの証明
数学: 圏の骨格が圏になることの証明 (続き)
の続き.

先日できた圏の骨格が圏になることの証明を見直す.
今のところ大きな問題は無い. 誤字やおかしな文章はところどころにある.

証明を見直しながら思ったことが二つある. 傍らで漠然と思っただけなので愚問かも知れない.

一つは証明の仕方そのものについて.

自分の証明はほとんどを圏論的な議論によって行っている.
しかし集合論的な議論を用いて証明しているところが 2 箇所ある. その 2 箇所は圏論的に証明することがおそらくできない.

圏 $\mathscr{C}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ をそれぞれ 6 つ組として
\begin{align*}
\mathscr{C} &= (A_{0}, O_{0}, {d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1}, u_{0}, m_{0}), \\
\mathrm{sk}(\mathscr{C}) &= (A, O, d^{0}, d^{1}, u, m)
\end{align*}
と表わす.
$\mathscr{C}$ について:
・ $A_{0}$, $O_{0}$ は $\mathscr{C}$ の射と対象の集まり;
・ ${d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1} : A_{0} \to O_{0}$ は $\mathscr{C}$ の各々の射にそのソースとターゲットを対応させる関数;
・ $u_{0} : O_{0} \to A_{0}$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象にその上の恒等射を対応させる関数;
・ $m_{0} : P_{0} \to A_{0}$ は合成可能な射の対の集合
\begin{equation*}
P_{0} = \{\, (f, g) \mid f, g \in A_{0},\, {d_{0}}^{0}(f) = {d_{0}}^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
に対してその合成 $f \circ g$ を対応させる関数.
$\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ についても同様:
・ $A$, $O$ は $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の射と対象の集まり;
・ $d^{0}, d^{1} : A \to O$ は $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の各々の射にそのソースとターゲットを対応させる関数;
・ $u : O \to A$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象にその上の恒等射を対応させる関数;
・ $m : P \to A$ は合成可能な射の対の集合
\begin{equation*}
P = \{\, (f, g) \mid f, g \in A,\, d^{0}(f) = d^{1}(g) \,\}
\end{equation*}
に対してその合成 $f \circ g$ を対応させる関数.

ここで, $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の対象の集まり $O$ と射の集まり $A$ は, $\mathscr{C}$ の対象の集まり $O_{0}$ と射の集まり $A_{0}$ から恣意的に元を選んで構成したものであり, その方法は元の性質を使った集合論的なものである.
言い換えれば $\mathscr{C}$ の圏としての性質のみから導いたものではない.
また, やり方によって異なる $A$, $O$ が構成されることになる.

今回の, $\mathscr{C}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ が圏になることの証明の中で, 図式
\begin{equation*}
\xymatrix@=48pt {
A_{0} \ar[d]_{s_{1}} \ar[r]^{{d_{0}}^{0}} & O_{0} \ar[d]^{s_{0}} & A_{0} \ar[d]_{s_{1}} \ar[r]^{{d_{0}}^{1}} & O_{0} \ar[d]^{s_{0}} \\
A \ar[r]_{d^{0}} & O & A \ar[r]_{d^{1}} & O
}
\end{equation*}
の可換性を証明する箇所がある.
ただし, ここで $s_{0} : O_{0} \to O$ は $\mathscr{C}$ の各々の対象 $X_{0} \in O_{0}$ に, その対象と同値な $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の対象 $X \in O$ を対応させる関数であり, $s_{1} : A_{0} \to A$ は $\mathscr{C}$ の各々の射 $f_{0} \in A_{0}$ に, その射と同値な $\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の射 $f \in A$ を対応させる関数である.

この可換性は具体的な任意の射 $(f_{0} : X_{0} \to Y_{0}) \in A_{0}$ を一つ取って ${d_{0}}^{0}, {d_{0}}^{1}$, $s_{0}$, $s_{1}$ の定義を使って計算しないと示すことができない. これらの関数の定義が, 集合である $O$ と $A$ の構成方法に依存しているからである.

$\mathrm{sk}(\mathscr{C})$ の構成方法を集合論的な議論を用いずに行うことはできるのだろうか?
そうすれば集合の元を使わない純圏論的な証明ができる.
すぐにはわからないが興味を惹かれる.

もう一つは圏の骨格の具体例について.

(a) 任意の群 $G$ を対象を $G$ のみとする圏として捉えたとき, その骨格 $\mathrm{sk}(G)$ は何になるか.
(b) 有限集合の圏 $\mathbf{FinSet}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathbf{FinSet})$ は何になるか.
(c) すべての集合の圏 $\mathbf{Set}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathbf{Set})$ は何になるか.
(d) 群の圏 $\mathbf{Grp}$ の骨格 $\mathrm{sk}(\mathbf{Grp})$ は何になるか.
  . . . .

(a) はすぐにわかって面白い結果になった.
(b), (c), (d) はまだあまり考えていないのだが, 予想外に相当難しい問題に感じた.

一つ歩みを進めた先に暗い未知の混沌が広がっているというのは, 自分が数学に惹かれる理由の一つでもある.
posted by 底彦 at 21:04 | Comment(0) | TrackBack(0) | 数学
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