2012年05月25日
爆走! トナカイ・ビート
フィンランドは、はるか昔、スウェーデンに支配されていました。
そのためか、フィンランド語とともにスウェーデン語も公用語らしいです。
どうも北欧なんて一括りにしてしまいがちですが、フィンランドはスウェーデンと比べると馴染みが薄い印象があります。
スウェーデンの音楽でいうと、やはりABBAでしょうか。
オールディーズ好きには、ボッパーズなんてバンドが浮かびます。(もはや、おっさんだけが知っている存在かも)
小説だと、マルティン・ベック・シリーズが懐かしいです。(大好きでした。)
その点、フィンランドはどうなんでしょう?
五木寛之には、ロシアやスペインなどと並んで、北欧の国を舞台にした優れた小説がありました。
フィンランドで連想するのは「青年は荒野をめざす」とか、もっと直接的には「霧のカレリア」とかかな…。
でも、音楽だと何ですかね。
スウェーデンと似た下地があるのなら、アメリカの古い音楽が好まれる風潮があっても可笑しくないです。
スウェーデンは、80年代、まだ米Rhinoも英Aceも手を付けていなかった時期から、ルート66とか、ミスターR&Bといったブート・レーベルが、盛んにジャンプ・ブルースのリイシューを手掛けていました。
私は、ワイノニー・ハリスも、ロイ・ブラウンも、スウェーデン盤で初めて音を聴きました。
今回は、フィンランドのグッド・ロッキンなビート・バンド、Doctor's Orderの08年リリースのアルバムをご紹介します。
1. How Do You Sleep At Night (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
2. Los Mas Rapidos Muchachos (Hamalainen, Nattila)
3. She's Hot, I'm Not (Nattila)
4. When The Shit Hits The Fan (Nattila)
5. Big Fat Mam' (Hamalainen, Nattila)
6. Boogie Kind Of Thing (Hamalainen, Nattila)
7. Shut Up! (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
8. Wham Bam With The Medicine Man (Hamalainen, Nattila)
9. Holy Moly (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
10. Hittin' The Big Mungo Note (Hamalainen, Nattila)
11. Keep It Under Hundred (Hamalainen, Nattila)
12. Big Bad Doc (Hamalainen, Nattila)
13. So It Is (Hamalainen)
14. You Live, You Learn (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
15. Doctor In Disguise (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Part 1) (Nattila)
17. Einstein (The Drummer Song Part 2) (Nattila)
Doctor's Orderは、98年ころから活動を開始したのではないかと思われます。
それは、本盤のタイトルからもうかがえます。
本盤の表題は、Grande選出の10周年記念盤という意味だと思います。
"Grande"というのは、ギターのArto Hamalainenのニックネームです。
このバンドは、ギター、ベース、ドラムスという最少編成のビート・バンドで、三人にはそれぞれニックネームがあります。
ベーシスト、リード・ボーカルのTeppo Nattilaのニックネームは"Teddy Bear"、ドラムスのKimmo Oikarinenは"Mighty Man"です。
そして、先代のドラマー、Tuominenのニックネームは"Dirty Harry"でした。
全17曲、理屈抜きで楽しめるアルバムになっています。
基本は、シンプルでパンキッシュなロックンロール、ビート・ロックです。
スピード感満点のビートの中で繰り出される小粋なギターのフレーズは、ロックンロール・ギターのリフの、ありったけを陳列したショーケースのようです。
また、曲によっては、ボトルネックを使ったギター・ブギがアグレッシブに突っ走ります。
この手の曲が思いのほかあって、ハウンド・ドッグ・テイラーみたいに聴こえる曲もあります。
さらに、ボーカルとハープ、またギターとハープとが掛け合う曲が熱いです。、
とにかく、攻撃的なビートが、コンパクトかつタイトにまとまって押し寄せてきます。
Dr Feelgood、The Pirates直系のタフなサウンドが快感そのものです。
とりわけ、ブルース・ハープが活躍する曲では、最初期のDr Feelgoodを連想せずにはいられません。
また、スライドを交えたハードなブギでは、初期のZ. Z. Topを思わせる曲もあります。
どの曲もみんな同じようなテイストなんじゃないかって?
そのおりです。
実のところ、バリエーションは少ないです。
断言しましょう。
バラードは1曲もないです(キリッ)。
全体から受ける印象は、同じような曲がこれでもか、これでもかと続くアルバムという風に感じるかも知れません。
でも、曲ごとに様々な工夫がなされていて、一見シンプルでも、私などはアイデアの宝庫だと思います。
また、ラウドかも知れませんが、ノイジーではありません。
さて、本盤は活動10周年記念盤です。
収録曲の構成は、過去のアルバム収録曲からのセレクトが15曲、新曲が2曲です。
以下に、曲を並び替えてみました。
このうち、現在流通しているのは、07年の6曲入りミニ・アルバム、"Cutthroat and Dangerous"だけです。
00年 : Doctor's In Disguise
13. So It Is
15. Doctor In Disguise
02年 : The Real Thing
1. How Do You Sleep At Night
2. Los Mas Rapidos Muchachos
5. Big Fat Mam'
8. Wham Bam With The Medicine Man
9. Holy Moly
04年 : Shut Up Doc !
6. Boogie Kind Of Thing
7. Shut Up!
11. Keep It Under Hundred
14. You Live, You Learn
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Pat 1)
06年 : The Doc Pack
4. When The Shit Hits The Fan
17. Einstein (The Drummer Song Part 2)
07年 : Cutthroat and Dangerous
12. Big Bad Doc
New !
3. She's Hot, I'm Not
10. Hittin' The Big Mungo Note
Doctor's Orderは、本盤のあと、The PiratesのJohnny Spenceをリード・ボーカルに迎えたアルバムを2枚リリースしています。
これらは、いずれもJohnny Spence & Doctor's Order名義で出されました。
09年 Full Throttle No Brakes
11年 Hot And Rockin'
これらは、Piratesの新作と言ってもいい感じに仕上がっていて、Doctor's Orderのメンツから敬愛する先達へ向けた愛を感じます。
私は、故Mick Greenの個性がPiratesの方向性を左右していたと思っていましたが、彼抜きでも、Johnny Spenceが全く不変の音楽をやっていることに改めて驚かされました。
最近作の"Hot And Rockin'"では、"A Shot Of Rythm & Blues"、"All Night Walker"などの古いR&Bのカバーが最高です。
このあたりの感想は、懐古趣味が入っているかも知れません。
この2作は、細かいことを言いますと、ポール・バーリソン風味が薄まったThe Piratesの新作という感じに、私は捕えました。
最後に、本盤の収録曲について、気になることを書きます。
先述のように、本盤収録曲は、過去作からのセレクトになっています。
過去のアルバムのほとんどは、現在生産終了となっており入手が困難なため、その救済措置として本盤は価値があると思います。
そこで気になるのは、この収録曲が新録なのか、過去作からの再収録なのかということです。
私は、残念ながら"The Doc Pack"以前のアルバムを持っていず、聴き比べすることが出来ません。
私としては、どちらかと言えば、過去録音のチョイスであってほしいです。
しかし、クレジットには、08年録音と記されています。
また、参加メンバーのクレジットに、過去のメンツの名前がありません。
Doctor's Orderは、ギターとベースはオリメンから変わっていませんが、ドラムスは3代目なのです。
現在のドラマーは、本盤ないしは、私が未入手の前作、"Live At Puistoblues"(7曲入り限定盤EP-CD、08年、入手困難)からの参加だと思われます。
クレジットを信じるなら、過去作の新録音ということになります。
うーん、そうなんでしょうか。
そこで、唯一過去作を持っているアルバムの収録曲を比較してみました。
"Cutthroat And Dangerous"が初出の"Big Bad Doc"です。
本盤には、この曲に関して特記があり、きちんとMick Green参加とクレジットがあります。
この曲が収録されていた"Cutthroat And Dangerous"は、06年末録音の07年リリースです。
わずか2年前の録音であり、再収録の方がむしろ普通のように思いますが、私の聴く限り、新録音だと思いました。
本盤収録曲は、07年盤と比べてボーカルが始まるまでのイントロが長く、間奏のソロも若干違うように聴こえます。
これを聴く限り、Mick Greenのリフは譜面ではなく、その日のフィーリングなのかと思ったのでした。
どうも、くだくだとすみません。
ごちゃごちゃ考えずに、シンプルに音を楽しめ、そんな声が聴こえてきそうです。
Don't Think, Feel …ですね。
関連記事はこちら
タフでなければ 優しくなれない
履きなれたスニーカーたち
そのためか、フィンランド語とともにスウェーデン語も公用語らしいです。
どうも北欧なんて一括りにしてしまいがちですが、フィンランドはスウェーデンと比べると馴染みが薄い印象があります。
スウェーデンの音楽でいうと、やはりABBAでしょうか。
オールディーズ好きには、ボッパーズなんてバンドが浮かびます。(もはや、おっさんだけが知っている存在かも)
小説だと、マルティン・ベック・シリーズが懐かしいです。(大好きでした。)
その点、フィンランドはどうなんでしょう?
五木寛之には、ロシアやスペインなどと並んで、北欧の国を舞台にした優れた小説がありました。
フィンランドで連想するのは「青年は荒野をめざす」とか、もっと直接的には「霧のカレリア」とかかな…。
でも、音楽だと何ですかね。
スウェーデンと似た下地があるのなら、アメリカの古い音楽が好まれる風潮があっても可笑しくないです。
スウェーデンは、80年代、まだ米Rhinoも英Aceも手を付けていなかった時期から、ルート66とか、ミスターR&Bといったブート・レーベルが、盛んにジャンプ・ブルースのリイシューを手掛けていました。
私は、ワイノニー・ハリスも、ロイ・ブラウンも、スウェーデン盤で初めて音を聴きました。
今回は、フィンランドのグッド・ロッキンなビート・バンド、Doctor's Orderの08年リリースのアルバムをご紹介します。
Seleccion Grade
10 Aniversario Reserva
Doctor's Order
10 Aniversario Reserva
Doctor's Order
1. How Do You Sleep At Night (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
2. Los Mas Rapidos Muchachos (Hamalainen, Nattila)
3. She's Hot, I'm Not (Nattila)
4. When The Shit Hits The Fan (Nattila)
5. Big Fat Mam' (Hamalainen, Nattila)
6. Boogie Kind Of Thing (Hamalainen, Nattila)
7. Shut Up! (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
8. Wham Bam With The Medicine Man (Hamalainen, Nattila)
9. Holy Moly (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
10. Hittin' The Big Mungo Note (Hamalainen, Nattila)
11. Keep It Under Hundred (Hamalainen, Nattila)
12. Big Bad Doc (Hamalainen, Nattila)
13. So It Is (Hamalainen)
14. You Live, You Learn (Hamalainen, Nattila, Tuominen)
15. Doctor In Disguise (Hamalainen, Nattila, Vaatainen)
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Part 1) (Nattila)
17. Einstein (The Drummer Song Part 2) (Nattila)
Doctor's Orderは、98年ころから活動を開始したのではないかと思われます。
それは、本盤のタイトルからもうかがえます。
本盤の表題は、Grande選出の10周年記念盤という意味だと思います。
"Grande"というのは、ギターのArto Hamalainenのニックネームです。
このバンドは、ギター、ベース、ドラムスという最少編成のビート・バンドで、三人にはそれぞれニックネームがあります。
ベーシスト、リード・ボーカルのTeppo Nattilaのニックネームは"Teddy Bear"、ドラムスのKimmo Oikarinenは"Mighty Man"です。
そして、先代のドラマー、Tuominenのニックネームは"Dirty Harry"でした。
全17曲、理屈抜きで楽しめるアルバムになっています。
基本は、シンプルでパンキッシュなロックンロール、ビート・ロックです。
スピード感満点のビートの中で繰り出される小粋なギターのフレーズは、ロックンロール・ギターのリフの、ありったけを陳列したショーケースのようです。
また、曲によっては、ボトルネックを使ったギター・ブギがアグレッシブに突っ走ります。
この手の曲が思いのほかあって、ハウンド・ドッグ・テイラーみたいに聴こえる曲もあります。
さらに、ボーカルとハープ、またギターとハープとが掛け合う曲が熱いです。、
とにかく、攻撃的なビートが、コンパクトかつタイトにまとまって押し寄せてきます。
Dr Feelgood、The Pirates直系のタフなサウンドが快感そのものです。
とりわけ、ブルース・ハープが活躍する曲では、最初期のDr Feelgoodを連想せずにはいられません。
また、スライドを交えたハードなブギでは、初期のZ. Z. Topを思わせる曲もあります。
どの曲もみんな同じようなテイストなんじゃないかって?
そのおりです。
実のところ、バリエーションは少ないです。
断言しましょう。
バラードは1曲もないです(キリッ)。
全体から受ける印象は、同じような曲がこれでもか、これでもかと続くアルバムという風に感じるかも知れません。
でも、曲ごとに様々な工夫がなされていて、一見シンプルでも、私などはアイデアの宝庫だと思います。
また、ラウドかも知れませんが、ノイジーではありません。
さて、本盤は活動10周年記念盤です。
収録曲の構成は、過去のアルバム収録曲からのセレクトが15曲、新曲が2曲です。
以下に、曲を並び替えてみました。
このうち、現在流通しているのは、07年の6曲入りミニ・アルバム、"Cutthroat and Dangerous"だけです。
00年 : Doctor's In Disguise
13. So It Is
15. Doctor In Disguise
02年 : The Real Thing
1. How Do You Sleep At Night
2. Los Mas Rapidos Muchachos
5. Big Fat Mam'
8. Wham Bam With The Medicine Man
9. Holy Moly
04年 : Shut Up Doc !
6. Boogie Kind Of Thing
7. Shut Up!
11. Keep It Under Hundred
14. You Live, You Learn
16. Money Talks, Bullshit Walks (The Drummer Song Pat 1)
06年 : The Doc Pack
4. When The Shit Hits The Fan
17. Einstein (The Drummer Song Part 2)
07年 : Cutthroat and Dangerous
12. Big Bad Doc
New !
3. She's Hot, I'm Not
10. Hittin' The Big Mungo Note
Doctor's Orderは、本盤のあと、The PiratesのJohnny Spenceをリード・ボーカルに迎えたアルバムを2枚リリースしています。
これらは、いずれもJohnny Spence & Doctor's Order名義で出されました。
09年 Full Throttle No Brakes
11年 Hot And Rockin'
これらは、Piratesの新作と言ってもいい感じに仕上がっていて、Doctor's Orderのメンツから敬愛する先達へ向けた愛を感じます。
私は、故Mick Greenの個性がPiratesの方向性を左右していたと思っていましたが、彼抜きでも、Johnny Spenceが全く不変の音楽をやっていることに改めて驚かされました。
最近作の"Hot And Rockin'"では、"A Shot Of Rythm & Blues"、"All Night Walker"などの古いR&Bのカバーが最高です。
このあたりの感想は、懐古趣味が入っているかも知れません。
この2作は、細かいことを言いますと、ポール・バーリソン風味が薄まったThe Piratesの新作という感じに、私は捕えました。
最後に、本盤の収録曲について、気になることを書きます。
先述のように、本盤収録曲は、過去作からのセレクトになっています。
過去のアルバムのほとんどは、現在生産終了となっており入手が困難なため、その救済措置として本盤は価値があると思います。
そこで気になるのは、この収録曲が新録なのか、過去作からの再収録なのかということです。
私は、残念ながら"The Doc Pack"以前のアルバムを持っていず、聴き比べすることが出来ません。
私としては、どちらかと言えば、過去録音のチョイスであってほしいです。
しかし、クレジットには、08年録音と記されています。
また、参加メンバーのクレジットに、過去のメンツの名前がありません。
Doctor's Orderは、ギターとベースはオリメンから変わっていませんが、ドラムスは3代目なのです。
現在のドラマーは、本盤ないしは、私が未入手の前作、"Live At Puistoblues"(7曲入り限定盤EP-CD、08年、入手困難)からの参加だと思われます。
クレジットを信じるなら、過去作の新録音ということになります。
うーん、そうなんでしょうか。
そこで、唯一過去作を持っているアルバムの収録曲を比較してみました。
"Cutthroat And Dangerous"が初出の"Big Bad Doc"です。
本盤には、この曲に関して特記があり、きちんとMick Green参加とクレジットがあります。
この曲が収録されていた"Cutthroat And Dangerous"は、06年末録音の07年リリースです。
わずか2年前の録音であり、再収録の方がむしろ普通のように思いますが、私の聴く限り、新録音だと思いました。
本盤収録曲は、07年盤と比べてボーカルが始まるまでのイントロが長く、間奏のソロも若干違うように聴こえます。
これを聴く限り、Mick Greenのリフは譜面ではなく、その日のフィーリングなのかと思ったのでした。
どうも、くだくだとすみません。
ごちゃごちゃ考えずに、シンプルに音を楽しめ、そんな声が聴こえてきそうです。
Don't Think, Feel …ですね。
Big Bad Doc by Doctor's Order
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投稿者:エル・テッチ|18:50
|パブ・ロック、バー・バンド