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記事
皇帝の槍 [2015/04/09 00:00]
皇帝たる資格を問う、神性を持つ槍。覇者たることを望む戦士達の間を渡り歩くといわれている。今は昔、天下に覇を唱えんとする一人の武者が、槍を手にした。 槍は武者に問う。「覇者たるものが有する、武の役割とは何か?」武者は答えることができなかった。武者は槍の力を持って一国を興したが、国は十年と数えぬうちに亡びた。 国が亡びた際、一人の将が槍を持って落ち延びた。将がいくら逃げようとも追手がそれを赦さなかった。やがて将が追手に囲まれ、死を覚悟した時、槍は将に同じ問いをかける。将は静か..
霞切り [2015/04/08 00:00]
ある小さな村のほとりに小さな池があった。この池は愛し合う少年と少女が離れる際に流した涙からできたという。村にはその残された少年が住んでおり、もう一度少女に会いたいと強く願いつづけていた。 ある時その池に宿る神が少年のもとに現れ、賭けを持ちかけた。遙か北西にそびえる山にしか咲かない露草を持ち帰ることができれば少女を連れ戻すと。すぐに旅立った少年は幾たびの困難の末、北西の霞がかる山の中にある村をみつける。その村には離れた少女がいた。 少年と少女は涙を流し再会を喜んだ。小さな川..
背理の鎌 [2015/04/07 00:00]
皆に慕われている若者がいた。川や谷を飛び回る若者は風を操ることができたらしい。そんな明るく元気な若者にもひとつ気になっている事があった。 数年経ち父親が他界した。若者はとても悲しんだ。だが父が亡くなる前に若者にある一言を残した。それは若者が昔から気にしていた、自分からは口にしなかった母親のことだったのだ。 「この地図の場所へ行きなさい」そう言い残した父親から託された鎌と地図を手に取り、何かに誘われるよう地図が示す場所を目指した。どれぐらい時間が経ったであろう。森を抜け、海..
血族の紋章 [2015/04/06 00:00]
ある国に大変仲の良い二人の王子がいた。兄は剛の武術を学び、弟は柔の武術を学んでいた。二人は互いの技を高め合うべく、稽古を重ねた。 二人の王子は、その師に質問した。剛の武術と柔の武術、どちらがより優れているのか?と。師は二人に一本の槍を差し出した。 良い槍は、硬く鋭い槍先と、柳のようにしなる柄を備えておる。剛と柔ふたつを競うのではなく、合わせて統べるのだ。と老いた師は語った。 その後、師は老衰により他界した。師が残した槍は、師の亡骸と共に墓へ埋葬し、王子達は生涯互いを支え..
王位簒奪者の槍 [2015/04/05 00:00]
長き戦いの末、ついに男は王の心臓に槍を突き刺した。絶命する王。歓声と共に革命軍が、一気に城へなだれ込む。これで…この国は悪政から解き放たれ平和になるだろう。男の顔に、笑みがこぼれた。だが…それもすぐに消えた…。 最後の戦い…どうも腑に落ちない。なぜ王は抵抗せずに死んだのだ。いや、それどころか自ら命を捧げた様子にも見えた…。あれが…国民に悪政を強いてきた王の姿だろうか。悩む彼の元に仲間から王の間に来るように連絡を受ける。 仲間と共に王の間に向かう男。そこには…何者かに拘束さ..
ハンチの槍 [2015/04/04 00:00]
西の城下町の彫金屋の主人は、貴族の甲冑の装飾を手がけるほどの腕の持ち主だったが、仕事場へは誰も出入りさせず、夜になると妻にも内緒で外出する変わり者だった。不審に思った妻が後をつけていったが、村はずれの墓地までくると、見失ってしまった。 ある晩、妻が墓地に先回りして隠れていると、彫金屋がやってきて、埋葬直後の墓を掘り返し始めた。あまりのことに妻は気が動転し、その場から逃げ出したが、彫金屋が帰ってくる頃を見計らって、仕事場を確かめることにした。 妻が目にしたのは、豪華な甲冑や..
鷹羽根の槍 [2015/04/03 00:00]
雨の日に目が覚めた。見上げると、自分がさっきまでいた巣と兄弟達が見える。どうも落っこちたらしい。狭い巣だったのでこうなるのは目に見えていたが…。体が濡れて冷えてきた。生まれて二ヶ月短い人生。「こんなもんか…」諦めかけたその時、親鷹が帰ってきた。彼らはちらりとこっちを見たがすぐに兄弟達の方に向き、兄弟達に餌を与えだす。 かわいく鳴いたが見向きもしない。「いよいよだ」と思ったその時目の前に閃光その後に轟音、木が燃える。木に落雷したらしい。もちろんその上には兄弟達がいる巣がある。..
封槍・破天の円舞 [2015/04/02 00:00]
かの地に武具の名匠あり。 神に弄ばれる世界を憂い 神の力に打ち勝つ武具を 生み出すことを決意す。 神に抗うは、封印の力。 封印の力、即ち女神の力。 名匠は女神の力を武具に封入す。 かの女神は、 高潔なる騎士、決意を秘めし女神。 優しき女神。 宿るは「光」、金色の力 闇を照らす聖なる力。
エリスの槍 [2015/04/01 00:00]
高潔な人格と勇壮な武勇でその名を轟かせ、双刀の金獅子と呼ばれた男がいた。その無双の武人が若き頃、技を磨き合った女騎士の愛槍が、この槍である。女騎士が戦に出る時、必ずこの槍を手にしたという。それは、双刀の金獅子が彼女に贈った物だったからであろうか。 ある戦で女騎士は決断を迫られる。眼前に迫りくる敵軍。背後には寒村。撤退命令を無視して彼女は最後まで留まり、数多の敵兵を迎え撃った。しかし…女騎士は討ち死に、亡骸はきざみ晒され、寒村は焼かれ、軍紀違反者の汚名を着せられた。 双刀の..
知識の杖 [2015/03/12 00:00]
その魔術師には語り合える友が一人もいなかった。別に魔術師が、人間嫌いだったわけではない。少し知識をひけらかす癖があったが根は悪い人間ではなかった。だが、彼と交流を持った人達は、次第に彼の元から去っていった…。 ある日、魔術師に原因不明の病が発症する。熱は上がり続け、動悸も激しく、手足は痛み、眩暈も起こりまともに歩けない。自らに魔法を施したが、全く効果も見られず…。傍らにあった愛用の杖を手に、魔術師は村の薬屋に向かった。 ようやくのことで薬屋に辿り着く。そして、自分の症状を..
痩躯の魔術師 [2015/03/11 00:00]
痩躯の魔術師の骨と皮で作られている杖。魔術師は多くの弟子を抱える高名な人物であった。魔術師は老い、自らの後継者を弟子の中に求めた。 弟子の中に、鷹のように鋭い目を持ち、類希なる魔の才を持つ青年がいた。魔術師は青年を後継者と定め、持てるすべての術を伝授した。青年は半年と経たぬ内にすべての術を極めた。魔術師は大いに喜び、隠居の時まで青年に弟子の指導を手伝わせた。 青年は指導のかたわらに次々と新しい術を生み出していった。やがて、弟子達は魔術師よりも青年から術を学ぶようになった。..
聖石の杖 [2015/03/10 00:00]
この杖に嵌められている石は稀代の魔術の才能を持っていた少年の魂を宿している。彼は平穏に人間として生きていくことに満足せず、より高みを目指し全魔力をもって自ら石化し、その存在を永遠のものとした。 ある時彼は自分を手にした元老が美しい女性であることを知った。彼は彼女をたいそう気に入った。だが、月日は流れ彼女は老い、死んでいった。彼の気に入っていた街並みも家も好んだ木々の色彩も年が重ねられる毎にその姿を変えていき、やがて不毛の時代が訪れ、彼は悲しみに包まれた。 彼は人々の幸せを..

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