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記事
賢者の意志 [2015/03/09 00:00]
ある名もなき寒村に、北の島国より司祭が訪れた。千里を見通す大賢者と呼ばれた彼も、この遠方の地ではただの旅人でしかなかった。 しかし彼らは、遠くからやってきた司祭を歓迎し、手厚くもてなした。村人の心遣いに心打たれた司祭は、お礼として、一振りの杖を贈った。 奇跡の力を秘めたこの杖で、今より豊かな生活を送ってほしい。司祭の贈り物を喜ぶ村人を見ながら、司祭は村に幸せが満ちることを祈った。 しかし村人達は、腰の悪い旅人にあっさりと杖を譲ってしまった。それを聞いた司祭は、村人達がす..
夢桜 [2015/03/08 00:00]
遥か東の国に精霊と契約し、悪霊と戦う術師を王とする一族がいた。王は普段から滅多に姿を見せず、霊の災いが激しくなると、長期にり国に戻らぬため、王の顔も知ら民も少なくはなかった。 そんな民の中に錫杖を持って敵を薙ぐ諸国にも名高き女兵士がいた。ある年の桜の咲く時期の祭で、その女兵士が錫杖による演武を王の前で披露することになった。王も女兵士もお互いを知ってはいたが、姿を見るのは初めてであった。 二人はお互い一目で魅かれた。王は初めて出会うその女兵士に、女兵士は初めて出会う王に。女..
ヤハの杖 [2015/03/07 00:00]
ある国の大臣が、疑い深い王に逆賊の汚名を着せられ、処刑された。一族も皆処刑されたが、大臣の幼い息子を不憫に思った処刑人が、王に虚偽の報告をして逃がした。 美少年に成長した大臣の息子は、市場の商品を盗んでは売りさばく泥棒生活を送った。時には捕まって袋叩きにされることもあったが、王への復讐を夢想すると、苦痛すら甘美だった。やがて少年は貯めた金を賄賂として王宮に仕官した。 その中性的な美しさから、少年が王の目にとまり、寵愛を受けるようになるのには時間がかからなかった。ある夜、少..
北海の歌姫 [2015/03/06 00:00]
北の港の 小さな酒場 綺麗な娘が 訪れた 透き通る肌 透き通る声 酒場の男は 皆惚れた 杖を片手に 身軽な姿 店主に一言 ここで歌うわ 娘に会おうと 男は集まり ほどなく店は 賑わった 娘は歌った 美しい海 男は聴いた 美女の声 娘に恋した 男らだったが 返して一言 あなたじゃないわ ひと月ほど経ち 娘の酒場に 旅する少年 やってきた 無垢な瞳に 端正な顔 何より笑顔が 魅力的 娘は悟った この人しかない 彼に一言 あなたに決めた 明くる日娘は 少年と消え 部屋に残った..
不死鳥の囀り [2015/03/05 00:00]
かつて魔術が栄えた時代、戦いの動向は軍の魔術師が握っていた。魔術の効果には杖の力が関わっており、杖を巡って戦いが絶えなかった。特に、更なる昔、古代の付与魔術師により造りだされた杖には、失われた大魔術が封印されているものも多かった。 ある魔術師が遺跡から一本の杖を見つけ出した。彼の魔力自体はそれ程の力はなかったが、その杖の魔力は計り知れぬもので、彼はその杖の力で軍の要職に就き、一年も経つと将軍直属の魔術師となっていた。 彼の赴く戦いは負けを知らず、彼の発言力は次第に大きなも..
斉天の赤杖 [2015/03/04 00:00]
かつて偉い僧侶が。聖典を受け取る為に、三人のお供と共に、 遥か西の国を目指し旅立った。 旅の途中、立ち寄った村には、施しを行い、またある時には、 人々を苦しめる魔物の退治なども行った。 お供の一人であった、この杖の所持者は、魔物退治を得意とし、 その強大な力で僧侶を守護しながら西の国を目指した。 遂に辿り着いた西の国で、聖典を受け取った僧侶は、お供のものに 感謝し、それぞれに相応しい“名”を贈ったという。
封杖・破天の詠歌 [2015/03/03 00:00]
かの地に武具の名匠あり。 神に弄ばれる世界を憂い 神の力に打ち勝つ武具を 生み出すことを決意す。 神に抗うは、封印の力。 封印の力、即ち女神の力。 名匠は女神の力を武具に封入す。 かの女神は、 堕落した愛に生き因果に死した女神。 気高き女神。 宿るは「水」、青き恵みの力 命を宿す母なる力。
封印騎士団の呪杖 [2015/03/02 00:00]
かつて、封印騎士団団長オローが健在だった頃、気炎の直轄区の守りを任され、火炎の賢者と呼ばれた魔道師がいた。 オロー団長の良き理解者でもあり、親友でもあったその魔導師は、気炎の地をその偉大なる魔力によって、清浄に保っていた。 しかし、オロー団長が敵の刃に倒れた後、次期団長との対立により封印騎士団を離れたその魔術師は、気炎の地にて、圧政に苦しむ人々の為に、尽力を注いだ。 飢えに苦しむ人々に食料を買い与える為、売れるものはすべて売り、己の魔力を引き出す為の武器さえも売り払い、..
マナの杖 [2015/03/01 00:00]
今から十八年前……。少女は暗い森の中で佇んでいた…。母に捨てられた少女。母への想いは次第に歪み、狂気へと変貌する…。“神”は彼女の狂気に魅入り、媒介として世を制することを託した。そして…暗闇の中で赤く灯る瞳… 赤き瞳の少女は世界に混乱を招く。崩れゆく世界に心を癒される少女。しかし、その至福の時も、ある“男”の剣によって奪われる。世は治まり…男は少女を連れ贖罪の旅に出る。己の罪に背を背ける少女……だが男はそれを許さなかった。 ある日、男は突然に空を見上げた。男の瞳には激しい..
イウヴァルトの長剣 [2015/02/19 00:00]
とある砂漠の牢獄……独房の中。一人の男が張り付けにされていた。愛するものを守るために戦い、そして破れ、己の未熟さを知る。男は今、絶望の淵に立っていた。思い出す彼女の笑顔……だが、その目に映るのは彼女の兄……。 意識が朦朧とし、死を覚悟した時、どこから入って来たのだろうか、一人の少女が目の前に立っていた。少女の目は宝石のような深紅の色。そして、可愛らしく微笑みながら、だが、大人とも子供ともわからぬ、奇妙な声でこう語った。 『俺に…俺にもっと力があれば…』その赤き目は男の心を..
囚われの女神 [2015/02/18 00:00]
遠い昔、少女が気づいたのは、とても暗く、とても狭く、息も出来ないくらい噎せ返る血の臭いの中だった。手、足、口、全ての自由が利かずただ、眼球だけで虚空の暗闇を見つめることしか出来なかった。 少女が最後に見た光は、人を糧として燃えさかる炎と、自分を絡め取る幾本もの手。その後は、闇の中で自分の体を何度も何度も、冷たい塊が貫く感覚だけが思い出せるすべてであった。「ワタシハ、……ナニ?」 突如として少女の闇は放たれた。眼前に広がるのは満天の星空、その星の輝きさえもまぶしかった。だが..
護衛兵士の剣 [2015/02/17 00:00]
聖人の護衛隊士達が所持していた剣。飾りのない質素な造りで、幾度となく戦闘をくぐり抜けてきたにも関わらず折れることはなかった。 聖人を護衛するのは14人の少年少女達。いずれも親に捨てられた孤児ばかりである。そんな子らと家族同然として聖人は共に生きてきた。 あるとき数十人の山賊に襲われた一行は、聖人を守るために決死の戦闘を行う。傷ついても何度も立ち上がり、聖人の乗る馬車を守り続ける。 やがて山賊と共に護衛隊士は全滅。救われた聖人はその働きに涙し、この剣を持った者..

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