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記事
千年樹の歌声 [2016/01/03 00:00]
旅のお方、この村に来たのならあの歌を聞いて行くといいよ。 気のいいオカミと気立ても見た目も良い娘が出迎えてくれるさ。 料理も酒もなかなかのもんだ。 旅のお方、あの店で一番素晴らしいのは娘の歌さ。 娘の歌声を聞けば世の中にある嫌なことは忘れられる。 娘はもう一人いるんだけどね、二人の歌を聞けたら本望さ。 おや旅のお方、随分と久しぶりじゃないか。 またあの娘達に会ってきたのかい? あんたも好きだねえ、もう何十年と前の話じゃないか。 旅のお方、あの店の娘達の姿が変わらないのが..
断罪の咆哮 [2016/01/02 00:00]
彼は罪を犯した。 続く飢饉に増加の一途を辿る徴税、行方をくらました両親。 やせ衰え行く弟妹達のために彼は罪を犯した。 彼は手に入れたパンと牛乳を5人の弟妹に分け与えた。 幼い弟妹に全てを与え、彼はパンも牛乳も一切口にしなかった。 少しでも味わいたいとずっと咀嚼し続ける弟妹を眺めていた。 彼は罪を犯した。 やがて彼が豪商からパンと牛乳を盗んだことが露見したが、 断罪されたのは盗んだものを口にした幼い弟妹達だった。 幼い弟妹達は首と胴が汚く分断され路上に転がっていた。 鞭打..
ゼロの剣 [2016/01/01 00:00]
生まれた時から何も無かった。 だからゼロの名を持たされた。 自分が生きている価値を見いだせなかった。 祈る神がいるのであれば、殺す気でいた。 命を奪う時も何も感じなかった。 罪とか罰とか考える気にすらならなかった。 私は子供のように待ち望んでいた。 この生命が奪われる、その瞬間を。
悲しみの棘 [2015/05/08 00:00]
「…クイタイ」 ホブゴブリンの彼は、いつもどおり指導者の手伝いをすることにした。大抵は雑用をすることで食欲は満たされていたが、この日は何をすることもなく食べ物をあてがわれた。明晩人間の村落を襲うということだったが、さておき食欲は満たされた。 果たして彼らは攻め込んだ。彼らが襲った村落の人間は必死で抵抗し、戦いは激化した。熾烈な殺し合いの最中、彼は井戸に落ちてしまった。何とか上れそうであったが、彼は井戸の底で禍々しい形状の鎌を見つけた。それは歪んだ付与魔術師の失敗作であった。..
不浄なる斧 [2015/05/07 00:00]
汚れた魂の魔術師により、火トカゲが封じ込められた斧。持つ者の心に他者への憎悪を囁きかけ、狂気へと駆り立てる。 この斧を手に入れたこそ泥は、その力で瞬く間に近隣の峠を制し、大きな山賊団の首領となった。 この斧を手に入れた小姓は、比類なき武勇で手柄を得て、大きな騎士団の千人隊長となった。 ただし、山賊団の首領も、騎士団の千人隊長も、最後は敵味方構わずに殺戮を行い、自らの部下に殺されたという。
処刑台の記憶 [2015/05/06 00:00]
“斧”は考えていた……。「私は…幾人の首を刎ねただろう」悪人、反逆者、革命家、政治家……中には全く罪のない人間もいた…。もう何も覚えていない。ただ一人、あの男……いや、男というには早い、あの少年を除いて…。 その少年は、断頭台に頭を置いても全く動じる気配がなかった。どんな屈強な男でも卑劣な悪人でも死を目前にすると、わずかな希望や行き場のない絶望が精神を支配する。それは刎ねる瞬間、わが刀身から直接伝わってくるのだ。 しかし!彼は他の誰とも違った!彼の精神はただ希望が溢れてい..
赤の旋風 [2015/05/05 00:00]
ふと声が聞こえたような気がし目が覚めた。耳元で悪魔のような囁き声が聞こえた。まだ足りない。まだ足りないんだ。間違いなく、その斧から囁くように声が聞こえた。 その日から魔術師は何かに憑依されたかのような顔つきに変貌していった。その面影はかつて王国を恐怖に震え上がらせたあの義賊を思わせた。 斧の中で時を、ひたすら時を待っていた義賊は、力を解放していった。さすがに魔術師も必死に抑えようとした。しかしついに義賊は魔術師の精神を乗っ取ってしまった。 外見は高名な魔術師であるが故に..
ユーリックの斧 [2015/05/04 00:00]
命を刈り取る死神への供物を捧げ、自らの延命を祈ったある王が、若き美丈夫の首を落とす神器として造らせたこの斧は、実に数百人の生贄の血を啜っている。正に死神の振るう武器といっても良いだろう。 毎月の祭事において王は、二人の生贄を選出した。一人に斧を振るわせもう一人の首を刎ねるのだ。そして翌月には、生き残った方の生贄を、新たに選んだ生贄に殺させる。この祭事は王の存命中絶えることなく続けられ、王は百五十年を生きたと伝えられている。 最後の月。生け贄に選ばれた二人の男は互いに親友同..
折れた鉄塊 [2015/05/03 00:00]
かつて世界で最も大きな剣と称され見る者をその迫力で圧倒していた雄姿は見る影もなく、剣というにはあまりにも惨めな塊に変わり果てていた。 剣が健在でいた時代。以前の持ち主は、この剣をとても人の力では扱えない代物までに鍛え上げ、それでもまだ何かに取り憑かれるように、刀身に使える素材を探し集めた。躯から鎧を剥ぎ取り、武器を奪い骨をも抜き出しては、打ち合せ剣の一部としていた。 次第に剣は斑に色を変え、剣先に行くほど赤黒く伸びていく。その相反する色は、まるで隠り世と現世の境にも見えた..
ザンポの斧 [2015/05/02 00:00]
小さな農村のはずれの小屋に、一匹のネズミと暮らす男がいた。男は醜い容姿の持ち主で、その不気味さから、村中で疎まれていたが、心根のやさしい男だった。時として村の子供から石を投げられることがあっても、常に笑顔を絶やすことはなかった。 どうにかして不気味な男を追い出そうとした村人達は、男の飼っているネズミが穀物を荒らしたと因縁をつけ、男のネズミを捕まえ、首を切り落として殺してしまった。 ただ一人の友人を亡くした男は正気を失った。人とも思えぬ雄叫びをあげながら、手にした斧で、老人..
封斧・破天の鼓動 [2015/05/01 00:00]
かの地に武具の名匠あり。 神に弄ばれる世界を憂い 神の力に打ち勝つ武具を 生み出すことを決意す。 神に抗うは、封印の力。 封印の力、即ち女神の力。 名匠は女神の力を武具に封入す。 かの女神は、 御使いにより内に卵を秘める 女の力を以て災厄を封じる術を 授かったという伝説の女神。
戒めの塔 [2015/04/10 00:00]
この槍の元の所持者は、物腰が柔らかで、礼儀正しく、清潔な性格であったが、己のある性格を恥じ、人を避け、弟たちと森で密やかに暮らしていた。 しかし、ある時、世界を恐怖に陥れた帝国軍に家を襲撃され、弟達を皆殺しにされたその者は、深い悲しみのうちに自害を果たそうとしたが、それもできず、その時近くにいた妖精と契約をしてしまう。 契約者となり、その代償に己の視覚を奪われたその者は、世界を恐怖から救う為、立ち上がり帝国軍との戦いに身を投じていった。 救世主とともに、世界を恐怖から救..

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