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2013年06月13日

霊使い達の始まり 風の話・前編

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作成絵師:しろりゆ様(渋 user/58736685 スケブ https://skeb.jp/@siroriyu)

 皆さん、こんばんは。土斑猫です。
 200コメ記念企画、霊使い外伝「霊使い達の始まり」です。
 まずは、緑の髪のあの娘の話から。
 興味ある方は、下記の事を了解の上でどうぞ〜。


 この小説はフィクションであり、実在のストーリー、設定とは本当に絶対、何の関係も他意もありません。



                 霊使い達の始まり

                    ―風の話・前編―

 それは、ひどく穏やかな日だった。
 空は青く澄み、野を渡る風が涼やかに地を潤していた。
 場所は世界の東。
 名はミストバレー湿地帯。
 世界でも有数の沃地であるそこには、古くより「ガスタ」と呼ばれる原住民族が住まい、他の動植物達と共存しながら、穏やかな日々をおくっていた。
 そんな土地にある、一つの丘陵地。
 そこは、今日も天の恵みたる風を受け、その身に纏った草花をソヨソヨと心地良さ気にそよがせていた。
 ―と、
 「神化降霊(カムイ・エク)!!『ダイガスタ・ガルドス』!!」
 そよ風が囁く中に、凛とした声が響き渡る。
 ブワサァッ
 その声と共に光が閃き、翠色の羽根が宙に舞う。
 ピィオォオオオオッ
 涼風にも似た雄叫びを上げ、全身に甲冑を纏う翼が天を覆う。
 見れば、その背には一つの小柄な人影。
 件の巨鳥の羽根と同じ、翠色の髪をなびかせる少女が一人。
 その小さな手に、伸びる手綱をしっかりと握り、真剣な表情で右に、左にと巨鳥を駆る。
 「よし、いいぞ!!ウィンダ!!その調子だ!!」
 「はい、お父上!!」
 下から響いた声に、少女―ウィンダはそう言って頷く。
 声の主は、フードを被った一人の青年。
 彼は小高い丘に立ち、そこから空を翔る少女を見守っていた。
 「ふむ。大分“ダイガスタ”の扱いに慣れてきたようだな。この分なら、じきに巫女として村の護りに就けるか・・・。」
 満足そうに頷く彼の横で、「あーあ。」という声とともに、ドサリと音がする。
 「ん?」
 傍らを見てみれば、少女がもう一人、草の上に大の字になって寝っ転がっていた。
 髪色や顔つき等はウィンダによく似ているが、顔つきは幼く、身体もより小柄。
 その少女に向かって、青年は問いかける。
 「どうした?ウィン。」
 「えー?」
 ウィンと呼ばれた少女は、その幼さの残る顔を膨らませながら青年の顔を見る。
 「だってあたし、何にも出来ないんだもん。」
 「うん?」
 首を傾げる青年に向かって、ウィンは続ける。
 「お父様やお姉ちゃんは、“ダイガスタ”を使えるのに、あたしはなーんにも出来ない・・・。」
 そう言って、空を舞う姉の姿を羨望の眼差しで追う。
 「“ダイガスタ”は使えないし、“疾風”の人達みたいに、闘術が上手い訳でもないし・・・。」
 自分の心の中の鬱憤を振り払おうとするかの様に、緑の草の上でゴロゴロと転がる。
 けれど、胸に溜まったモヤモヤはそう簡単に消えてはくれない。
 「あたしって、村にいる意味、あるのかなぁ・・・?」
 ボソリと呟く。
 「ふむ・・・。」
 幼い娘の苦悩を察したのか、青年は軽く頷くと、ウィンの隣に腰を下ろす。
 「確かに、お前は“ダイガスタ”の神託は受けられなかった・・・。」
 その言葉に、ウィンは「う〜〜〜。」と唸ってゴロリとうつ伏せになる。
 「しかしな、ウィン。」
 いじけた様にブチブチと下草をむしっている彼女に向かって、青年は言う。
 「お前はウィンであって、ウィンダとは違う。」
 その言葉に「ふひぇ?」と呟くと、ウィンは顔を上げる。
 「人にはそれぞれの道というものがある。お前がウィンダに憧れている事も、村の皆の力になりたいと願っているのも知ってはいるが、それとこれとはまた別の話だ。」
 「・・・・・・?」
 「“自分”を見つけろ。ウィン。私やウィンダの道をなぞるのではなく、この村に縛られるのでもなく、お前自身が歩む道を。全ては、それから始まる。」
 「・・・“自分”?」
 「そうだ。」
 「それ、あたしにも出来る?」
 「当然だ。何と言っても、お前はこの私、賢者・ウィンダールの娘なのだから。」
 そう言って、青年―ガスタの賢者・ウィンダールは優しく微笑んだ。


 「・・・自分を見つけろ・・・かぁ・・・」
 数刻後、場所はガスタの村。
 ウィンは自宅の屋根に上がり、青い空を見上げていた。
 遥かを望むその目に、空を飛ぶ鳥の姿が遠く映る。
 「・・・・・・。」
 しばしの間、考え込む様に黙り込むウィン。
 しかし―
 「う〜ん。考えてても良く分かんないや。」
 そう言うと、ヒョイと立ち上がり屋根の上から飛び降りる。
 「こんな時は、実行あるのみ!!」
 そして、自分の部屋に向かうと、物置から小さなザックを引っ張り出す。
 「え〜と、後は・・・」
 家中をまさぐり、かき集めた着替えや携帯食をその中に適当につぎ込む。
 「よっと。」
 それを背負い、トテテテと家の出口に向かう。
 その足音を聞きつけたのか、昼食の用意をしていたウィンダがヒョイと顔を出す。
 「あれ?どうしたの?そんな格好して。」
 「うん。ちょっとね。」
 そう答えて、ウィンはニパッと笑う。
 「もうすぐ、お昼だよ?」
 「あー、ごめん。ちょっと、急ぐんだ。」
 言いながら、ウィンダの持っているトレイから焼きたてのパンを一つとるとそのまま頬張る。
 「こら、行儀悪い。」
 「えへへ。」
 口をモゴモゴさせながら悪びれもなく笑うウィンに、ウィンダはハァ、と溜息をつく。
 「何?また冒険ごっこ?」
 わんぱく娘であったウィンは、「冒険ごっこ」と称して村を飛び出しては二、三日を外で過ごしてくる事がよくあった。
 今回もそれかと、ウィンダは思ったのだ。
 けれど、ウィンはヘヘンと胸を張る。
 「ごっこじゃないよ。もっと高尚な目的。」
 「?」
 口の中のパンをゴクリと飲み込むと、首を傾げるウィンダに向かって「ごちそうさま」と言って再び走り出す。
 「ちょっとウィン!!何処にいくの!?場所くらい教えてってよ。」
 その呼びかけにウィンは立ち止まると、クルリと振り返る。
 「う〜ん。分かんない。」
 「分からない?」
 「うん!!ちょっと“あたし”を探しに行ってくる!!」
 「“あたし”を探しに・・・?」
 ますます首を傾げながら、?マークを無数に浮かべるウィンダに向かってニパリと笑うと、ウィンは扉へと向かう。
 「よく分かんないけど、なるべく早く帰ってくるのよ。」
 「うん、分かった。」
 背にかけられる声にそう答えると、ウィンは扉を開け放つ。
 途端、爽やかな風とキラキラ光る日の光が、彼女を向かえる様に流れ込む。
 それに眩しげに目を細め、息を大きく一吸い。
 そして―
 「行ってきまーす!!」
 元気良くそう言って、ウィンは外へと飛び出す。
 「行ってらっしゃい。気をつけてね。」
 そんな彼女に、ウィンダはいつもの様に声をかける。
 その声が聞こえているのかいないのか、見る見る小さくなっていくその背中。
 「やれやれ。」
 ウィンダはそう言って苦笑いを浮かべると、忙しげに昼食の準備へと戻る。
 クゥ・・・
 窓辺にとまって事のしだいを見ていたガスタ・ガルドが、ウィンの姿が消えた先を見つめて、寂しげに一声鳴いた。


 キャンキャン
 歩くウィンの足元に、犬の様な姿をしたモンスターが尻尾を振りながら絡まってくる。
 「だーめ。サンボルト。今回は連れて行けないの。」
 いつも冒険ごっこに護衛をかねてついてきた相方にそう言うと、ウィンはテコテコと歩を進める。
 「ウィンー。どうしたの?そんな格好してー。」
 「また冒険ごっこ?」
 「それよりもさ、一緒に遊ぼうよー。」
 いつもの友人達が、そんな事を言いながら集まってくる。
 「うーん。ごめーん。また今度ねー。」
 「えー、つまんなーい。」
 そんな声を背負いながら、ウィンはやっぱりテコテコ歩く。
 「おや、ウィンではないか?何処へ行く?」
 「あ、ムスト様。こんにちは。」
 行き逢った初老の男に声をかけられ、ウィンはペコリとお辞儀をする。
 「そんな格好をして・・・。また冒険者の真似事か?」
 「エヘへー。」
 ニパパと笑う彼女を見て、ムストはハァと溜息をつく。
 「いつも言っておるだろう?その様な遊びは控えろと。村の外には、危険なモンスターもいるのだぞ?」
 「はい。分かってまーす。気をつけてまーす。」
 そう言って、ビシッと敬礼をするウィン。
 「・・・本当に分かっておるのか?」
 「エヘヘ。大丈夫ですよ。いざという時の護身術ならお父様に習ってますから。」
 米神を押さえるムストに、満面の笑みで答える。
 「とは言ってもな・・・」
 「大丈夫、大丈夫。」
 言いながら、テコテコとムストの横を通り過ぎるウィン。
 「あ、これ!!」
 呼び止めるムストに向かって、彼女は返す。
 「言ってるんです。風が。早く行こうって。」
 「風が・・・?」
 「はい。だから、急がないと。それじゃあ行ってきます。ムスト様。」
 ブンブンと手を振りながら、遠ざかっていく小さな姿。
 「やれやれ・・・。あの猪突猛進な性格、いつか凶と出なければよいが・・・。」
 それを見送りながら、ムストはまた溜息をつく。
 「・・・しかし、あの歳で風の声を聞くか・・・。血は争えんな・・・。」
 感慨深く呟くその前で、件の少女の姿は彼の視界の外へと消えていった。


 「さーて。どっこに行こっかな?」
 村の出口まで来たウィンは、一旦立ち止まると、眼前に広がる草原を見渡しながらそう呟く。
 手を顎に当て、「う〜ん」と考える事しばし。
 けれど、
 「ま、いっか。」
 すぐにそう言って顔を上げると、再びテコテコと歩き出す。
 「そう言う事は全部、風が教えてくれるよね。」
 小さなザックを背負った小さな身体が、テコテコテコテコと歩いていく。
 涼やかな風が、まるでその背を押す様にふわりと吹いた。

 そしてその日、ガスタの村から一人の少女の姿が消えた。


                                               続く
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