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2021年03月16日
「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,82
「痴人の愛」本文 角川文庫刊vol,82
で、ホテルや花月園は外国人が主であって、服装や礼儀がやかましいそうだから、先ず手初めにはエルドラドオがよかろう、と、そういうことになったのでした。
もっともそれはナオミがどこからか噂を聞いて来て「ぜひ行って見よう」と発議したので、まだ私にはおおびらな場所で踊るだけの度胸は無かったのですが、
「駄目よ、譲治さんは!」
と、ナオミは私を睨みつけて、
「そんな気の弱いことを言っているから駄目なのよ。ダンスなんていうものは、稽古ばかりじゃいくらやったって上手になりッこありゃしないわよ。人中へ出て図々しく踊っているうちにうまくなるものよ」
「そりゃあ確かにそうだろうけれども、僕にはその、図々しさが無いもんだから・・・・・・」
「じゃいいわよ、あたし一人でも出かけるから。・・・・・・浜さんでもまあちゃんでも誘って行って、踊ってやるから」
「まあちゃんというのはこの間のマンドリン倶楽部の男だろう?」
「ええ、そうよ、あの人なんか一度も稽古しないくせにどこへでも出かけて行って相手かまわず躍るもんだから、もうこの頃じゃすっかり巧くなっちゃったわ。
譲治さんよりずっと上手だわ。だから図々しくしなけりゃ損よ。・・・・・・ね、いらっしゃいよ、あたし譲治さんと踊って上げるわ。
・・・・・・ね、後生だから一緒に来て!・・・・・・好(い)い児(こ)、好(い)い児(こ)、譲治さんはほんとに好(い)い児(こ)!」
それで結局で書けることに話が決まると、今度は
「何を着て行こう」
でまた長い事相談が始まりました。
引用書籍
谷崎潤一郎「痴人の愛」
角川文庫刊
次回に続く。
三国志演義朗読第60回vol,5(全10回)
(^_-)-☆アスカミチル
【文学通】なりたい人寄っといで!!
押忍
![紫ハート](https://fanblogs.jp/_images_e/e/EC7D.gif)
元、県立高校国語教諭30年勤務
文学士アスカミチルが
エスコート!!
三国志演義朗読第60回vol,5(全10回)
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