さいきん鮭に関する情報、またニュース等を幅広く取り上げていますが、ここで最近読んだ鮭・マスについての本を紹介します
その2017年11月刊行「クニマスは生きていた!」
実はこの本は子供向けの本。対象は小学校高学年から中学生くらいだと思いますが、内容は大人からみても深く考えさせられるものです。
余談ですが、新しい知識を素早く身に着けるために、中学生向けくらいの本を読むのはすごく有効です。私は気になる本があると子供向けでもよろこんで読みます
クニマスのことは「さかなクン」のニュースなどで話題になっていたので、ご存じの方も多いでしょう
クニマスは、古くから秋田県仙北市の田沢湖に生息し、絶滅したと思われていました。
本書は、田沢湖とクニマスの歴史を、保存活動に尽力した三浦久兵衛さんを中心に描き出すノンフィクションです。
さて、田沢湖から姿を消したクニマスは2010年、富士五湖のひとつ西湖で突如発見されました。
発見者は、あの“さかなクン”さんです。
イラストレーターでもあるさかなクンは、クニマスのイラストを依頼され、西湖から近い種であるヒメマスを取り寄せました。
送られてきた「ヒメマス」の個体を見て、さすがさかなクン、「おや?」と気づきます。
これはクニマスなのではないか、と。
京大で解析を行った結果、正式にクニマスであると認定されたのです。
さて、なぜ田沢湖のクニマスは死滅したのか、なぜ遠く離れた西湖で見つかったのか。本書ではそのドラマチックな顛末が描かれます
田沢湖は日本で最も深い湖で、クニマスはその最深部で産卵する魚。漁も盛んにおこなわれるとともに、地元の伝説にも登場する、湖とそこに住まう人々の歴史とともにある種でした。
しかし、昭和初期、富国強兵の時代、水力発電事業を行うための水量を確保するため「毒水」と呼ばれていた玉川の強酸性の温泉を含む水を引き入れ、魚類が激減。
クニマスは死滅し、当然、漁業は壊滅してしまいます。
しかし田沢湖で全滅してしまう前、ふ化事業の一環で全国の湖に卵が提供されており、その小さな命が、その後のドラマを生むことになるのです
そして西湖で見つかったクニマスを、再び田沢湖に戻す事業は、現在も続けられています。
本書では田沢湖の昔の水質、環境を取り戻し、再びクニマスの生きられる湖とする保護活動にも触れられており、再生の物語として静かな感動を覚えます
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