2021年05月08日
【夜空に部屋を浮かべて】 07
上を見れば星が輝いているし、下を見ても町が星のように輝いている。
僕はまた星空に吸い込まれそうになって頭がクラクラしたけど、窓から入って来る風がとても気持ち良くてすぐにシャッキリとした。
部屋が夜空にふわふわと浮かんでいる。
僕はこの部屋から見える景色を忘れないでおこうと思った。
何か嫌なことや腹が立つことがあったとき、この景色を思い出せば気持ちをスーッと落ち着かせることが出来ると思ったからだ。
「マモル、町が星みたいに光ってるぞ」
「うん、綺麗だね・・・・・・綺麗だけど・・・」
僕はドキリとした。
何を言うかは分からないけれど、とにかくマモルが次に言う言葉を僕は聞きたくないと思った。
そしてマモルもそれ以上何も言うことはなかった。
それから僕たちは先生が作った不思議なカードゲームで遊んだ。
どれくらい時間が経ったんだろう?
先生が「そろそろだな」と言ってゆっくりと立ち上がった。
僕とマモルは何も言わずただじっと座っている。
先生は窓のところへ行き外を見る。
マモルも立ち上がり先生の横へ行って外を見る。
僕も2人の横へ行き外を見た。
先生が見ている方向を見ても、そこには星しかない。
僕もマモルも先生も何も言わず、ただただ外を眺めていた。
しばらくして僕は「あっ」と声を上げた。
1つ動いている星を見つけたからだ。
その星がこっちに向かってくる。
だんだん近づいてくると、それは星ではなくバスのヘッドライトだということが分かった。
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