2021年05月05日
【夜空に部屋を浮かべて】 03
エレベーターの住人はいったい何時からここにいるんだろう?
僕の考えでは恐らく僕らが生まれる前からここにいるんじゃないかと思う。
だってエレベーターの住人の体はほとんど壁と同化してしまっているんだから。
マモルはちょっと背伸びをして5階のボタンを押した。
扉が閉まりエレベーターが動き出す。
「今日は蒸し暑いですね」
僕はエレベーターの住人に話しかけてみた。
「ほんとにねぇ」
「窓も何にもないから暑くて大変じゃないですか?」
「いいや、私は暑くてジメジメしている所が大好きなんだよ」
「はぁ、そーですか」
階数の表示ランプは3階の所で光っている。
「ところで、その提灯ガエル、おいしそうだね」
「これ食べる用じゃないんです」
「ああ、そうなんだ。こりゃ失敬」
昔は提灯ガエルを食べていたって聞いたことがあるけど、今提灯ガエルを食べる人なんていない。
エレベーターが5階に着き扉が開いた。
「それじゃ失礼します」
僕たちはエレベーターの住人に挨拶をしてエレベーターを降りた。
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