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2018年07月05日
高齢者だけではなく,成人が留意しなければならない食事 食事療法は、75歳以上の後期高齢者ではタンパク質摂取量が少ないほど死亡率が上昇する タンパク質を含む食品、肉や魚、さらに大豆、ミルク・乳製品、豆類などの摂取が推奨 大豆製品や野菜、海藻などの摂取は、認知機能維持に有用
高齢者だけではなく,成人が留意しなければならない食事
「高齢者糖尿病の治療で避けたい治療薬」から
提供元:ケアネット
2018年5月24日より3日間開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会(学会長:宇都宮 一典)にて「高齢者糖尿病の病態と診療のポイント」をテーマに、井藤 英喜氏(東京都健康長寿医療センター 理事長)が教育講演を行った。
全糖尿病患者の約80%が60歳以上という現実
わが国の高齢者人口は、全人口の27%を超え、これに伴い60歳以上の糖尿病患者が全糖尿病患者の約80%を占める状況となった。
食事療法は、75歳以上の後期高齢者ではタンパク質摂取量が少ないほど死亡率が上昇する。
そして、高齢者ではタンパク質摂取量が低下すると筋肉量や筋力が減少し、フレイルやサルコペニアなどの老年症候群が惹起されやすくなるといったことから、
タンパク質を含む食品、肉や魚、さらに大豆、ミルク・乳製品、豆類などの摂取が推奨される。
また、大豆製品や野菜、海藻などの摂取は、認知機能維持に有用という報告もあるので、高齢者ではとくにこれらの食品の摂取が勧められる。
運動療法は、定期的な身体活動が代謝異常の是正だけでなく、
生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制に有用であるとされる。
歩行、水泳などに代表される有酸素運動、スクワット、ダンベルに代表されるレジスタンス運動のほかに、
高齢者糖尿病では、片脚立ちなどのバランス運動が転倒予防に有効であり、これらを絡めて行う必要がある。
薬物療法では、ガイドライン記載のとおり、「低血糖の防止」「多剤併用への注意」が重要となる。
とくに「低血糖を起こしやすいSU薬、グリニド薬、インスリンの使用はなるべく避け、
使用する場合は、低血糖対策を立て、患者や介護者にその対処法を十分説明しておく必要がある。
また、高齢者はシックデイになりやすいので、低血糖同様にそれへの対応・予防策の教育も大事だ」と同氏は指摘する。
最後に「高齢者糖尿病患者の診療は、患者のQOLの維持・向上、現在の生活の継続を支援するという視点から考えた治療を行い、患者の生活背景を考慮に入れ、起こりうる有害事象を避けながら治療を継続していくことが重要だ」と同氏は語り、講演を終えた。
(ケアネット 稲川 進)
「高齢者糖尿病の治療で避けたい治療薬」から
提供元:ケアネット
2018年5月24日より3日間開催された第61回日本糖尿病学会年次学術集会(学会長:宇都宮 一典)にて「高齢者糖尿病の病態と診療のポイント」をテーマに、井藤 英喜氏(東京都健康長寿医療センター 理事長)が教育講演を行った。
全糖尿病患者の約80%が60歳以上という現実
わが国の高齢者人口は、全人口の27%を超え、これに伴い60歳以上の糖尿病患者が全糖尿病患者の約80%を占める状況となった。
食事療法は、75歳以上の後期高齢者ではタンパク質摂取量が少ないほど死亡率が上昇する。
そして、高齢者ではタンパク質摂取量が低下すると筋肉量や筋力が減少し、フレイルやサルコペニアなどの老年症候群が惹起されやすくなるといったことから、
タンパク質を含む食品、肉や魚、さらに大豆、ミルク・乳製品、豆類などの摂取が推奨される。
また、大豆製品や野菜、海藻などの摂取は、認知機能維持に有用という報告もあるので、高齢者ではとくにこれらの食品の摂取が勧められる。
運動療法は、定期的な身体活動が代謝異常の是正だけでなく、
生命予後、ADLの維持、認知機能低下の抑制に有用であるとされる。
歩行、水泳などに代表される有酸素運動、スクワット、ダンベルに代表されるレジスタンス運動のほかに、
高齢者糖尿病では、片脚立ちなどのバランス運動が転倒予防に有効であり、これらを絡めて行う必要がある。
薬物療法では、ガイドライン記載のとおり、「低血糖の防止」「多剤併用への注意」が重要となる。
とくに「低血糖を起こしやすいSU薬、グリニド薬、インスリンの使用はなるべく避け、
使用する場合は、低血糖対策を立て、患者や介護者にその対処法を十分説明しておく必要がある。
また、高齢者はシックデイになりやすいので、低血糖同様にそれへの対応・予防策の教育も大事だ」と同氏は指摘する。
最後に「高齢者糖尿病患者の診療は、患者のQOLの維持・向上、現在の生活の継続を支援するという視点から考えた治療を行い、患者の生活背景を考慮に入れ、起こりうる有害事象を避けながら治療を継続していくことが重要だ」と同氏は語り、講演を終えた。
(ケアネット 稲川 進)
「トラブルは 人を集めて 鎮静化」 スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(225)
「トラブルは 人を集めて 鎮静化」
スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(225)
公開日:2018/06/14 企画・制作 ケアネット
二百二十五の段 コードホワイト
今週の月曜日の朝、看護師さんたちとの間で出た話題は、あの悲惨な新幹線殺傷事件のニュースです。この事件が他人事と思えないのは、我々の働く病院の中でも起こり得ることであり、実際、酔っ払った患者さんに胸ぐらをつかまれるくらいのことは時々あるからです。
我々の病院では、ERで何かあったらボタンを押せと言われています。そうすると警備員さんが駆けつけてくることになっていますが、その効果の程度は不明です。
ある病院ではコードブルーならぬコードホワイトというのがあると聞きました。つまり、職員が危害を加えられそうになった場合に、応援を求めてコールするというものです。
院内放送で「コードホワイト、コードホワイト、ER」というアナウンスがあると、その時点で手を空けることのできる者は一斉にERに集合します。あっという間に15人程度は集まるので、その人数に圧倒されて暴言暴力の主は戦意喪失してしまうのだそうです。
時には逆効果になってしまい、「なんでこんなに大勢集まってくるんや! 俺が何したっちゅうねん!」と余計に激高する人もいるのだとか。
ですから、このシステムにはまだまだ改良の余地がありますが、コードホワイトという手段があると分かっていれば、暴力的なトラブルに巻き込まれても職員が落ち着いて対応することができます。
もちろんコードホワイトに関わるのは怖いし勘弁して欲しい、という人も少なくありません。そんなこともあってか、現場に1番乗りした人は周囲から称賛の目で見られるのだそうです。
かつては、この病院、乱暴者が数多くやってきたので、コードホワイトも月に数件あったそうです。
でも現在は落ち着いてきて、月に1件あるか無いかに減りました。
トラブル発生時にいきなり110番するのも心理的ハードルが高いので、まずはコードホワイトで対応するというのも悪くはありません。
もし事態がエスカレートするようなら、その時こそ警察に連絡すべきですね。
職員の安心感につながるコードホワイトのようなシステムは、それぞれの病院でも持っておいても悪くないと思います。
最後に1句
トラブルは 人を集めて 鎮静化
中島 伸 ( なかじま しん ) 氏
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 脳神経外科、総合診療科
[略歴]
昭和34年神戸市生まれ。昭和59年大阪大学医学部卒業。麻酔科、脳神経外科、放射線科、救急などで研修する。平成6年〜9年の間、米国ボストンのハーバード大学およびブリガム・アンド・ウイミンズ病院に留学した。
スキンヘッド脳外科医 Dr. 中島の 新・徒然草(225)
公開日:2018/06/14 企画・制作 ケアネット
二百二十五の段 コードホワイト
今週の月曜日の朝、看護師さんたちとの間で出た話題は、あの悲惨な新幹線殺傷事件のニュースです。この事件が他人事と思えないのは、我々の働く病院の中でも起こり得ることであり、実際、酔っ払った患者さんに胸ぐらをつかまれるくらいのことは時々あるからです。
我々の病院では、ERで何かあったらボタンを押せと言われています。そうすると警備員さんが駆けつけてくることになっていますが、その効果の程度は不明です。
ある病院ではコードブルーならぬコードホワイトというのがあると聞きました。つまり、職員が危害を加えられそうになった場合に、応援を求めてコールするというものです。
院内放送で「コードホワイト、コードホワイト、ER」というアナウンスがあると、その時点で手を空けることのできる者は一斉にERに集合します。あっという間に15人程度は集まるので、その人数に圧倒されて暴言暴力の主は戦意喪失してしまうのだそうです。
時には逆効果になってしまい、「なんでこんなに大勢集まってくるんや! 俺が何したっちゅうねん!」と余計に激高する人もいるのだとか。
ですから、このシステムにはまだまだ改良の余地がありますが、コードホワイトという手段があると分かっていれば、暴力的なトラブルに巻き込まれても職員が落ち着いて対応することができます。
もちろんコードホワイトに関わるのは怖いし勘弁して欲しい、という人も少なくありません。そんなこともあってか、現場に1番乗りした人は周囲から称賛の目で見られるのだそうです。
かつては、この病院、乱暴者が数多くやってきたので、コードホワイトも月に数件あったそうです。
でも現在は落ち着いてきて、月に1件あるか無いかに減りました。
トラブル発生時にいきなり110番するのも心理的ハードルが高いので、まずはコードホワイトで対応するというのも悪くはありません。
もし事態がエスカレートするようなら、その時こそ警察に連絡すべきですね。
職員の安心感につながるコードホワイトのようなシステムは、それぞれの病院でも持っておいても悪くないと思います。
最後に1句
トラブルは 人を集めて 鎮静化
中島 伸 ( なかじま しん ) 氏
独立行政法人国立病院機構大阪医療センター 脳神経外科、総合診療科
[略歴]
昭和34年神戸市生まれ。昭和59年大阪大学医学部卒業。麻酔科、脳神経外科、放射線科、救急などで研修する。平成6年〜9年の間、米国ボストンのハーバード大学およびブリガム・アンド・ウイミンズ病院に留学した。
2018年07月04日
糖尿病が発病した際,がんをまず除外;膵がん,腎がん、肝がん、胆のうがん、肺がん、血液がん、乳がん、胃がん、甲状腺がんの順 外科医としては常識 内科の先生の常識?
糖尿病はがん発症のリスク因子であるが、がんが糖尿病発症のリスク因子となるかどうかはまだ結論が出ていない。
韓国・National Cancer CenterのYul Hwangbo氏らは、韓国人52万人超を対象に、がんが糖尿病の発症リスク因子となるかどうかを検討した。
その結果、がんは糖尿病発症の独立したリスク因子であるとJAMA Oncol(2018年6月7日オンライン版)で報告した。
9種類のがんが関連
韓国には単一支払者制度による医療制度が存在し、全ての入院、外来患者記録はNational Health Insurance Service(NHIS)が管理している。
Hwangbo氏らは今回、NHISの記録を用いて韓国国民の2.2%を代表するサンプルのデータから2003年1月1日〜13年12月31日に最低1回検診を受けた患者のうち、ベースライン時に糖尿病がなく、がんの既往がない52万4,089人(年齢20〜70歳)を抽出し、がん発症と将来の糖尿病発症リスクの上昇との関連を検討した。
349万2,935.6人・年(追跡期間中央値7.0年、四分位範囲4.0〜10.0年)の追跡期間中に1万5,130例ががんを発症した。がん発症者は非発症者よりも高齢で、女性、毎日飲酒、BMI高値、併存症の割合が高かった。
追跡期間中に2万6,610例が糖尿病を発症した。このうち、がん発症後に糖尿病を発症した者は834例(発症率17.4/1,000人・年)で、2万5,776例はがん発症前に糖尿病を発症またはがん非発症者であった(同7.5/1,000人・年)。
年齢、性、がん/糖尿病リスク因子、内分泌因子、併存症を調整後、がんに関連した糖尿病のハザード比(HR)は1.35(95%CI 1.26〜1.45、P<0.001)だった。
がん発症後の糖尿病発症のHRは、1〜2年後が1.47 (95%CI 1.35〜1.60)、3〜5年後が1.14(同 0.97〜1.33)、6〜10年後が1.19 (同1.00〜1.43)と、2年後までの上昇幅の度合いが最も高く、その後も高値を維持していた。
糖尿病発症リスクの上昇と有意に関連したがんは9種類で、
膵がん(HR 5.15、95%CI 3.32〜7.99)が最も高く、
次いで腎がん(同2.06、1.34〜3.16)、
肝がん(同1.95、1.50〜2.54)、
胆のうがん(同1.79、1.08〜2.98)、
肺がん(同, 1.74、 1.34〜2.24)、
血液がん(同1.61、1.07〜2.43)、
乳がん(同1.60、1.27〜2.01)、
胃がん(同1.35、1.16〜1.58)、
甲状腺がん(同1.33、1.12〜1.59)の順だった。
精巣がんと脳腫瘍の発症は糖尿病発症リスクの上昇と関連していたが、症例数が少なく、統計学的に有意ではなかった。
子宮、卵巣、大腸、頭頸部、食道、前立腺がんの発症は糖尿病発症リスクの上昇とは関連していなかった。
Hwangbo氏らは「今回の研究から、一部のがんは既存のリスク因子とは独立して、将来の糖尿病発症リスクの上昇に関連していることが分かった。がん患者はそうでない人よりも糖尿病を発症するリスクが高いことを認識し、ルーチンに糖尿病のスクリーニングを行うことを考慮すべきである」と結論している。
(大江 円)
韓国・National Cancer CenterのYul Hwangbo氏らは、韓国人52万人超を対象に、がんが糖尿病の発症リスク因子となるかどうかを検討した。
その結果、がんは糖尿病発症の独立したリスク因子であるとJAMA Oncol(2018年6月7日オンライン版)で報告した。
9種類のがんが関連
韓国には単一支払者制度による医療制度が存在し、全ての入院、外来患者記録はNational Health Insurance Service(NHIS)が管理している。
Hwangbo氏らは今回、NHISの記録を用いて韓国国民の2.2%を代表するサンプルのデータから2003年1月1日〜13年12月31日に最低1回検診を受けた患者のうち、ベースライン時に糖尿病がなく、がんの既往がない52万4,089人(年齢20〜70歳)を抽出し、がん発症と将来の糖尿病発症リスクの上昇との関連を検討した。
349万2,935.6人・年(追跡期間中央値7.0年、四分位範囲4.0〜10.0年)の追跡期間中に1万5,130例ががんを発症した。がん発症者は非発症者よりも高齢で、女性、毎日飲酒、BMI高値、併存症の割合が高かった。
追跡期間中に2万6,610例が糖尿病を発症した。このうち、がん発症後に糖尿病を発症した者は834例(発症率17.4/1,000人・年)で、2万5,776例はがん発症前に糖尿病を発症またはがん非発症者であった(同7.5/1,000人・年)。
年齢、性、がん/糖尿病リスク因子、内分泌因子、併存症を調整後、がんに関連した糖尿病のハザード比(HR)は1.35(95%CI 1.26〜1.45、P<0.001)だった。
がん発症後の糖尿病発症のHRは、1〜2年後が1.47 (95%CI 1.35〜1.60)、3〜5年後が1.14(同 0.97〜1.33)、6〜10年後が1.19 (同1.00〜1.43)と、2年後までの上昇幅の度合いが最も高く、その後も高値を維持していた。
糖尿病発症リスクの上昇と有意に関連したがんは9種類で、
膵がん(HR 5.15、95%CI 3.32〜7.99)が最も高く、
次いで腎がん(同2.06、1.34〜3.16)、
肝がん(同1.95、1.50〜2.54)、
胆のうがん(同1.79、1.08〜2.98)、
肺がん(同, 1.74、 1.34〜2.24)、
血液がん(同1.61、1.07〜2.43)、
乳がん(同1.60、1.27〜2.01)、
胃がん(同1.35、1.16〜1.58)、
甲状腺がん(同1.33、1.12〜1.59)の順だった。
精巣がんと脳腫瘍の発症は糖尿病発症リスクの上昇と関連していたが、症例数が少なく、統計学的に有意ではなかった。
子宮、卵巣、大腸、頭頸部、食道、前立腺がんの発症は糖尿病発症リスクの上昇とは関連していなかった。
Hwangbo氏らは「今回の研究から、一部のがんは既存のリスク因子とは独立して、将来の糖尿病発症リスクの上昇に関連していることが分かった。がん患者はそうでない人よりも糖尿病を発症するリスクが高いことを認識し、ルーチンに糖尿病のスクリーニングを行うことを考慮すべきである」と結論している。
(大江 円)
2018年07月02日
脳卒中の警告サイン「F.A.S.T.」脳卒中の警告サイン「F.A.S.T.」(顔,腕,言葉の麻痺,発症時刻)で確認、直ちに受診を−米国脳卒中協会
脳卒中の警告サイン「F.A.S.T.」脳卒中の警告サイン「F.A.S.T.」(顔,腕,言葉の麻痺,発症時刻)で確認、直ちに受診を−米国脳卒中協会
提供元:HealthDay News 公開日:2018/06/11
米国人の5大死因の一つに挙げられる脳卒中は、その約8割が高血圧や喫煙などのリスク因子の是正や生活習慣の改善などで予防できるにもかかわらず、
そうした知識は一般には広く浸透していない。
米国脳卒中協会(ASA)は毎年5月を「脳卒中月間(American Stroke Month)」と定めており、脳卒中予防のための合い言葉「F.A.S.T」を掲げ、一般の人々を対象に脳卒中の理解を深めるための啓発活動を行っている。
脳卒中は脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血に大きく分けられる。
脳卒中の4分の3以上を脳梗塞が占めており、この中には、脳梗塞の前触れとされる一過性脳虚血発作(TIA)も含まれる。
TIAは脳梗塞の症状が突然、一過性に現れて24時間以内に改善するもので、「ミニ脳卒中」とも呼ばれる。
また、脳梗塞で脳の血管が詰まると、脳の神経細胞に十分な血液が流れなくなることで多くの障害が引き起こされる。
脳梗塞を発症し適切な治療を施さないと1時間に1億2000万個の神経細胞が失われるほか、
正常な脳と比べて脳の老化速度が速まるとする研究報告もあるが、
治療をより早期に受けることで回復するチャンスは高まるとされている。
さらに、脳卒中の6割以上は発症時に居合わせた人(バイスタンダー)が発見したとされるが、
脳卒中が疑われる危険な症状について十分に知っている米国人は半数に満たないのが実情だ。
ASAは脳卒中の警告サインを簡単に覚える合い言葉に「F.A.S.T」を掲げ、脳卒中が疑われたら、
「Face:顔の麻痺(顔がゆがんだりする)」
「Arm:腕の麻痺(腕に力が入らず、だらりと下がったままになる)」
「Speech:言葉が出ない、ろれつが回らない」
の3つの症状の有無と
「Time:発症時刻」を確認するよう呼び掛けている。
ASAはプレスリリースで、「誰もが脳卒中になる可能性があり、その準備をしておく必要がある。
F.A.S.Tを知っていれば、脳卒中になっても命を守れるかもしれない」と記している。
なお、顔や手足のしびれ、片方の目が見えなくなる、経験したことのない激しい頭痛、ふらふらして歩けなくなるといった症状もみられるという。
では、脳卒中が疑われたら、どう対処すべきか?
ASAは「脳卒中が疑われたら、直ちに救急車を呼んで専門病院を受診する」ことが先決で、
たとえ症状が軽くても、患者本人や家族が車を運転して病院に行くことは危険な上、時間のロスにつながるので止めるように強く勧めている。
また、脳卒中の生存者は4人に1人で再発がみられるが、
その際に患者が受ける身体的ダメージは初発時をはるかに上回るため、
治療に成功しても油断せず、
再発予防に努める必要がある。
脳卒中の最も重要なリスク因子は高血圧であり(米国成人の半数近くが高血圧患者と推定されている)、
その他にも肥満や糖尿病、脂質異常症、喫煙、脳卒中の家族歴などが挙げられる。
米国では毎年13万3,000人が脳卒中で亡くなっている。
近年は30歳代から40歳代の若年者で脳卒中の発症率には上昇傾向がみられている。
[2018年5月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.
提供元:HealthDay News 公開日:2018/06/11
米国人の5大死因の一つに挙げられる脳卒中は、その約8割が高血圧や喫煙などのリスク因子の是正や生活習慣の改善などで予防できるにもかかわらず、
そうした知識は一般には広く浸透していない。
米国脳卒中協会(ASA)は毎年5月を「脳卒中月間(American Stroke Month)」と定めており、脳卒中予防のための合い言葉「F.A.S.T」を掲げ、一般の人々を対象に脳卒中の理解を深めるための啓発活動を行っている。
脳卒中は脳の血管が詰まる脳梗塞と血管が破れる脳出血に大きく分けられる。
脳卒中の4分の3以上を脳梗塞が占めており、この中には、脳梗塞の前触れとされる一過性脳虚血発作(TIA)も含まれる。
TIAは脳梗塞の症状が突然、一過性に現れて24時間以内に改善するもので、「ミニ脳卒中」とも呼ばれる。
また、脳梗塞で脳の血管が詰まると、脳の神経細胞に十分な血液が流れなくなることで多くの障害が引き起こされる。
脳梗塞を発症し適切な治療を施さないと1時間に1億2000万個の神経細胞が失われるほか、
正常な脳と比べて脳の老化速度が速まるとする研究報告もあるが、
治療をより早期に受けることで回復するチャンスは高まるとされている。
さらに、脳卒中の6割以上は発症時に居合わせた人(バイスタンダー)が発見したとされるが、
脳卒中が疑われる危険な症状について十分に知っている米国人は半数に満たないのが実情だ。
ASAは脳卒中の警告サインを簡単に覚える合い言葉に「F.A.S.T」を掲げ、脳卒中が疑われたら、
「Face:顔の麻痺(顔がゆがんだりする)」
「Arm:腕の麻痺(腕に力が入らず、だらりと下がったままになる)」
「Speech:言葉が出ない、ろれつが回らない」
の3つの症状の有無と
「Time:発症時刻」を確認するよう呼び掛けている。
ASAはプレスリリースで、「誰もが脳卒中になる可能性があり、その準備をしておく必要がある。
F.A.S.Tを知っていれば、脳卒中になっても命を守れるかもしれない」と記している。
なお、顔や手足のしびれ、片方の目が見えなくなる、経験したことのない激しい頭痛、ふらふらして歩けなくなるといった症状もみられるという。
では、脳卒中が疑われたら、どう対処すべきか?
ASAは「脳卒中が疑われたら、直ちに救急車を呼んで専門病院を受診する」ことが先決で、
たとえ症状が軽くても、患者本人や家族が車を運転して病院に行くことは危険な上、時間のロスにつながるので止めるように強く勧めている。
また、脳卒中の生存者は4人に1人で再発がみられるが、
その際に患者が受ける身体的ダメージは初発時をはるかに上回るため、
治療に成功しても油断せず、
再発予防に努める必要がある。
脳卒中の最も重要なリスク因子は高血圧であり(米国成人の半数近くが高血圧患者と推定されている)、
その他にも肥満や糖尿病、脂質異常症、喫煙、脳卒中の家族歴などが挙げられる。
米国では毎年13万3,000人が脳卒中で亡くなっている。
近年は30歳代から40歳代の若年者で脳卒中の発症率には上昇傾向がみられている。
[2018年5月12日/HealthDayNews]Copyright (c) 2018 HealthDay. All rights reserved.
2018年07月01日
もう「お漏らし」は怖くない “排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上) 2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス
もう「お漏らし」は怖くない
“排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上)
2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス
ベンチャー企業から大企業、研究機関まで、さまざまなプレーヤーがしのぎを削る排泄周りのヘルスケアサービスは、デジタルヘルスの新鉱脈となるのか。
その最前線を紹介していこう。
「4億人市場」を半導体技術で狙う
全世界に4億人、日本だけでも800万人以上――。
尿漏れ(尿失禁)に悩んでいるとされる人口だ。
特に女性に多く、出産直後の女性の3人に1人が悩まされているとの推計もある。
運動やくしゃみによって膀胱に高い圧力が加わった際などに起こりやすく、加齢や骨盤底筋の緩みも要因になる。
そんな尿漏れに悩む女性に救いの手を差し伸べるウエアラブルデバイスが、2017年春に日本で発売された。
ライフセンスグループジャパン(東京都立川市)の「Carin(カリン)」である。手掛けるのは、かつて日立製作所に在籍していた半導体のエキスパート達だ。
米山氏らは半導体技術をヘルスケア分野に応用することを志し、LifeSense Group社を創業。日立時代の同僚など数人に声を掛け、日本やアジア地域でのビジネス開拓に向けて2016年1月に立ち上げたのがライフセンスグループジャパンである。
ヘルスケアの中でも“尿漏れ”に着目したのは、その潜在ニーズの大きさゆえ。
「特に若い女性は尿漏れの相談をしに医療機関を訪れるのを嫌がり、放置しがち。
専用のパッドやパンツなどの対策グッズは既にあるが、症状の改善にはつながりにくい。
我々が提供するツールは自宅で使うことができ、明確に症状改善を目的としている」
“セクシーさ”も犠牲にしない
Carinは大きく4つの要素から成るソリューション型製品だ。すなわち、
(1)尿漏れを検知するウエアラブルセンサー、
(2)ウエアラブルセンサーとBluetooth連携し、尿漏れのデータを記録・閲覧できるスマートフォンアプリ、
(3)専用の下着(尿漏れ防止ショーツ)、
(4)尿漏れの改善に効果があるとされる骨盤底筋トレーニングの動画アプリ、である。
ウエアラブルセンサーと専用下着、動画コンテンツを含むスマホアプリから成る
(3)の尿漏れ防止ショーツは、恥骨に触れる部分にポケットを設けており、ここに(1)のウエアラブルセンサーを装着する。
尿漏れが起きるとショーツに取り付けた銀(Ag)配線の抵抗値が変化し、Ag配線と電気的に接続されたウエアラブルセンサーで尿漏れの回数や量、発生時刻を検知する仕組みだ。
この際、センサーに搭載した加速度センサーで、どのような体の動きをしていたかを併せて検知。これらのデータを、センサーとBluetooth連携した(2)のスマートフォンアプリに記録する。
ショーツには、表面積の5倍の量の尿を吸収できる速乾性素材を使用。
1回当たり10mL程度までの尿漏れならすぐに吸収し、体温で乾いて不快感を感じずに済む。
尿漏れの検知にAg配線を使うのは、Agの消臭効果を利用するため。ショーツは洗濯でき、繰り返し使用が可能だ。
特にこだわったのはショーツのデザイン。
「一般的な尿漏れ対策パンツは、おしゃれとは言えない。我々はオランダ人デザイナーを起用し、
女性がデートなどにも履いていこうと思えるような、セクシーさも備えたデザインを採用している」(金澤氏)。
ウエアラブルセンサーには、無線通信機能などを含む電子回路のほか、加速度センサーや業界最小クラスというLiイオン電池を搭載。半導体技術に関する知見を生かし、小型・低電力を実現した。
血糖値や尿酸値も視野
(4)の骨盤底筋トレーニングの動画アプリでは、複数のコンテンツを用意。
センサーによる測定結果に応じて、推奨される動画をユーザーに提示する。動画に習って行うトレーニングを2〜3カ月続けることで、尿漏れ症状の改善が見込めるという。
「それでも効果が得られなければ、病院を受診してもらうことを想定している。その際、尿漏れを記録したアプリを問診票代わりに使ってもらいたい」。
そこでアプリには問診項目を意識し、摂取した飲み物を記録しておく機能なども実装した。
現在、同製品が「着け心地などの点で日本人にフィットするかどうかのフィールドテストを、20〜60歳代の女性を対象に進めている」(金澤氏)。
日本での販売価格は、2017年の発売当初はセット(センサー、充電器、ショーツ)で3万円(税抜き)とする予定で、交換用ショーツは1枚3000円(同)。
Webなどを使った一般消費者向け販売のほか、医療機関やスポーツジム経由での販売を計画する。アプリを問診票代わりに使う用途に向けて、大学病院の泌尿器科との連携も進めていく。
既に、ショーツについては国内大手下着メーカーへの製造委託を決めた。
設計・製造を日本で行うことで、価格低減にもつなげられる見込みという。
並行して、男性をターゲットにした製品開発も進めていく。
2020年ごろまでの第2フェーズでは、尿漏れだけでなく「血糖値や尿酸値、脈拍、体温などもウエアラブルセンサーで取得できるようにし、AI(人工知能)も活用してクラウドで解析するサービスの事業化を目指す」(金澤氏)。
既に、AI技術を持つ企業との連携に着手。測定項目の拡充についても、例えば血糖値については良い感触が得られ始めているという。
“排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上)
2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス
ベンチャー企業から大企業、研究機関まで、さまざまなプレーヤーがしのぎを削る排泄周りのヘルスケアサービスは、デジタルヘルスの新鉱脈となるのか。
その最前線を紹介していこう。
「4億人市場」を半導体技術で狙う
全世界に4億人、日本だけでも800万人以上――。
尿漏れ(尿失禁)に悩んでいるとされる人口だ。
特に女性に多く、出産直後の女性の3人に1人が悩まされているとの推計もある。
運動やくしゃみによって膀胱に高い圧力が加わった際などに起こりやすく、加齢や骨盤底筋の緩みも要因になる。
そんな尿漏れに悩む女性に救いの手を差し伸べるウエアラブルデバイスが、2017年春に日本で発売された。
ライフセンスグループジャパン(東京都立川市)の「Carin(カリン)」である。手掛けるのは、かつて日立製作所に在籍していた半導体のエキスパート達だ。
米山氏らは半導体技術をヘルスケア分野に応用することを志し、LifeSense Group社を創業。日立時代の同僚など数人に声を掛け、日本やアジア地域でのビジネス開拓に向けて2016年1月に立ち上げたのがライフセンスグループジャパンである。
ヘルスケアの中でも“尿漏れ”に着目したのは、その潜在ニーズの大きさゆえ。
「特に若い女性は尿漏れの相談をしに医療機関を訪れるのを嫌がり、放置しがち。
専用のパッドやパンツなどの対策グッズは既にあるが、症状の改善にはつながりにくい。
我々が提供するツールは自宅で使うことができ、明確に症状改善を目的としている」
“セクシーさ”も犠牲にしない
Carinは大きく4つの要素から成るソリューション型製品だ。すなわち、
(1)尿漏れを検知するウエアラブルセンサー、
(2)ウエアラブルセンサーとBluetooth連携し、尿漏れのデータを記録・閲覧できるスマートフォンアプリ、
(3)専用の下着(尿漏れ防止ショーツ)、
(4)尿漏れの改善に効果があるとされる骨盤底筋トレーニングの動画アプリ、である。
ウエアラブルセンサーと専用下着、動画コンテンツを含むスマホアプリから成る
(3)の尿漏れ防止ショーツは、恥骨に触れる部分にポケットを設けており、ここに(1)のウエアラブルセンサーを装着する。
尿漏れが起きるとショーツに取り付けた銀(Ag)配線の抵抗値が変化し、Ag配線と電気的に接続されたウエアラブルセンサーで尿漏れの回数や量、発生時刻を検知する仕組みだ。
この際、センサーに搭載した加速度センサーで、どのような体の動きをしていたかを併せて検知。これらのデータを、センサーとBluetooth連携した(2)のスマートフォンアプリに記録する。
ショーツには、表面積の5倍の量の尿を吸収できる速乾性素材を使用。
1回当たり10mL程度までの尿漏れならすぐに吸収し、体温で乾いて不快感を感じずに済む。
尿漏れの検知にAg配線を使うのは、Agの消臭効果を利用するため。ショーツは洗濯でき、繰り返し使用が可能だ。
特にこだわったのはショーツのデザイン。
「一般的な尿漏れ対策パンツは、おしゃれとは言えない。我々はオランダ人デザイナーを起用し、
女性がデートなどにも履いていこうと思えるような、セクシーさも備えたデザインを採用している」(金澤氏)。
ウエアラブルセンサーには、無線通信機能などを含む電子回路のほか、加速度センサーや業界最小クラスというLiイオン電池を搭載。半導体技術に関する知見を生かし、小型・低電力を実現した。
血糖値や尿酸値も視野
(4)の骨盤底筋トレーニングの動画アプリでは、複数のコンテンツを用意。
センサーによる測定結果に応じて、推奨される動画をユーザーに提示する。動画に習って行うトレーニングを2〜3カ月続けることで、尿漏れ症状の改善が見込めるという。
「それでも効果が得られなければ、病院を受診してもらうことを想定している。その際、尿漏れを記録したアプリを問診票代わりに使ってもらいたい」。
そこでアプリには問診項目を意識し、摂取した飲み物を記録しておく機能なども実装した。
現在、同製品が「着け心地などの点で日本人にフィットするかどうかのフィールドテストを、20〜60歳代の女性を対象に進めている」(金澤氏)。
日本での販売価格は、2017年の発売当初はセット(センサー、充電器、ショーツ)で3万円(税抜き)とする予定で、交換用ショーツは1枚3000円(同)。
Webなどを使った一般消費者向け販売のほか、医療機関やスポーツジム経由での販売を計画する。アプリを問診票代わりに使う用途に向けて、大学病院の泌尿器科との連携も進めていく。
既に、ショーツについては国内大手下着メーカーへの製造委託を決めた。
設計・製造を日本で行うことで、価格低減にもつなげられる見込みという。
並行して、男性をターゲットにした製品開発も進めていく。
2020年ごろまでの第2フェーズでは、尿漏れだけでなく「血糖値や尿酸値、脈拍、体温などもウエアラブルセンサーで取得できるようにし、AI(人工知能)も活用してクラウドで解析するサービスの事業化を目指す」(金澤氏)。
既に、AI技術を持つ企業との連携に着手。測定項目の拡充についても、例えば血糖値については良い感触が得られ始めているという。
日本の学校給食が肥満を減らす 日本の思春期の肥満率が低い理由の1つに学校給食の存在
日本の学校給食が肥満を減らす
わが国では、思春期の肥満率が他国に比べ低いが、その理由の1つとして学校給食の存在が指摘されてきた。
東京大学大学院公衆衛生学の宮脇敦士氏、特任准教授の李廷秀氏、教授の小林廉毅氏らは、給食が中学生の肥満に及ぼす影響を調査。
その結果、給食には男子生徒の肥満を減少させる効果があることが分かったと発表した。詳細はJ Public Health(2018年6月5日オンライン版) に掲載された。
わが国の小・中学生は、適切な栄養基準に基づいてつくられた給食を食べている。
わが国で思春期の肥満率が低いのは、この給食が肥満の防止に役立っているのではないかと考えられてきたが、これまで明確なエビデンスは示されていなかった。
宮脇氏らは、政府統計の公開データから、
「2006 〜15年の都道府県(以下、県)レベルの給食実施率」および
「県レベルの栄養状態の指標(過体重・肥満・痩せの生徒の割合、平均身長、平均体重)」を性・年齢別に抽出。
パネルデータ分析を用いて、前年の栄養状態の指標、県・年齢・観測年などを考慮した上で、前年の県レベルの給食実施率と翌年の栄養状態の指標との関連を調べた。
解析の結果、県レベルの給食実施率が10%増加するごとに、翌年の「過体重」の男子生徒の割合は0.37%(95%Cl 0.18〜0.56)、
「肥満」の男子生徒の割合は0.23%(同0.10〜0.37)低下していた。
一方、女子生徒については、「過体重」「肥満」を減らす傾向は見られたものの、有意ではなかった。
また、「痩せ」の割合や県レベルの平均体重、平均身長については、男女とも有意な関連は見られなかった。
以上の結果から、宮脇氏らは「給食には男子中学生の肥満率を減らす効果があることが分かり、
給食の実施が思春期の肥満を減らす有効な施策となる可能性が示唆された」と結論している。
2018年06月11日(今手麻衣)
わが国では、思春期の肥満率が他国に比べ低いが、その理由の1つとして学校給食の存在が指摘されてきた。
東京大学大学院公衆衛生学の宮脇敦士氏、特任准教授の李廷秀氏、教授の小林廉毅氏らは、給食が中学生の肥満に及ぼす影響を調査。
その結果、給食には男子生徒の肥満を減少させる効果があることが分かったと発表した。詳細はJ Public Health(2018年6月5日オンライン版) に掲載された。
わが国の小・中学生は、適切な栄養基準に基づいてつくられた給食を食べている。
わが国で思春期の肥満率が低いのは、この給食が肥満の防止に役立っているのではないかと考えられてきたが、これまで明確なエビデンスは示されていなかった。
宮脇氏らは、政府統計の公開データから、
「2006 〜15年の都道府県(以下、県)レベルの給食実施率」および
「県レベルの栄養状態の指標(過体重・肥満・痩せの生徒の割合、平均身長、平均体重)」を性・年齢別に抽出。
パネルデータ分析を用いて、前年の栄養状態の指標、県・年齢・観測年などを考慮した上で、前年の県レベルの給食実施率と翌年の栄養状態の指標との関連を調べた。
解析の結果、県レベルの給食実施率が10%増加するごとに、翌年の「過体重」の男子生徒の割合は0.37%(95%Cl 0.18〜0.56)、
「肥満」の男子生徒の割合は0.23%(同0.10〜0.37)低下していた。
一方、女子生徒については、「過体重」「肥満」を減らす傾向は見られたものの、有意ではなかった。
また、「痩せ」の割合や県レベルの平均体重、平均身長については、男女とも有意な関連は見られなかった。
以上の結果から、宮脇氏らは「給食には男子中学生の肥満率を減らす効果があることが分かり、
給食の実施が思春期の肥満を減らす有効な施策となる可能性が示唆された」と結論している。
2018年06月11日(今手麻衣)
2018年06月30日
血液1滴で13種類の癌が分かる検査 実現に向けて進行中 血液中に出現した“癌の分身”を捉えるリキッドバイオプシー(liquid biopsy:液体生検)
血液1滴で13種類の癌が分かる検査 実現に向けて進行中
血液中に出現した“癌の分身”を捉えるリキッドバイオプシー(liquid biopsy:液体生検)として注目を集めているのが、
血液中の細胞小胞体(エクソソーム)を調べる手法だ。国立がん研究センター研究所プロジェクトリーダーの落谷孝広氏らが開発した。
エクソソームは、直径約100nmのごく微少なカプセル状の粒で、内部にリボ核酸(RNA)であるマイクロRNAが含まれていることが、2007年にスウェーデンの研究者により発見された。
落谷氏のチームが2010年、エクソソームが細胞同士の情報伝達の役割を担っており、癌の発症や進行と関わりがあることを解明。さらにそれを応用し、癌の判別の有無を調べる仕組みの開発に成功した。
エクソソーム中のマイクロRNAは20〜25個の塩基が連なった分子で、正常細胞もエクソソームに包含されたマイクロRNAを分泌している。
癌細胞に特有のマイクロRNAは、正常細胞に入り込み、正常細胞のメッセンジャーRNAと結合することで、正常細胞をアポトーシスにも導く。
各臓器の癌には、それぞれ特徴的なマイクロRNAが複数存在し、癌に罹患すると、血液や尿など細胞外にも分泌されてくる。その量を測定することで、各臓器の癌の罹患の有無が判別できるようになるわけだ。
現在、胃癌、食道癌、肺癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、乳癌、肉腫、神経膠腫の13種類の癌の有無が判別できるという。
さらに、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測が可能であることも確認している。
メカニズムが明確であり、癌については、感度・特異度とも90%以上と極めて高いのが特徴。
確定診断にはなり得ないものの、1次スクリーニングとしては十分な精度である。
ただ、検診の1次スクリーニングとして用いるには、癌のマイクロRNAが検出された集団での癌罹患率などの検討が必要だろう。
落谷氏は、「人間ドックで13種類の検査を受けるのは時間を要するとともに、苦痛も伴い費用もかさむ。
この検査は100μLほどの血液があれば十分なので、簡易血糖測定器のような簡便な検査にすることができる」と語る。
現在、体外診断薬の承認申請に向けた臨床性能試験や多施設での臨床試験を計画中だという。
ヒトのマイクロRNAは2588種類あるが、これをトータルで見る高感度DNAチップは、日本には東レの3D-Geneシステムしかなかったため、それを採用しており、検査費用は2万円前後になるのではないかと見積もられている。
もっとも癌の判別に、2588種類を全て調べる必要はなく、1つの癌種当たり3〜5種類程度で済む。
現在開発中の13種類でも100種類以下に抑えられることから、コストダウンが図れるのではないかと考えられる。
東レ以外に東芝、アークレイ、プレシジョン・システム・サイエンスなどもプロジェクトに参加してバイオチップの性能を競っており、さらにコストを抑えつつ精度を高められる可能性もある。
「人間ドックで13種類の検査を受けるのは時間を要するとともに、苦痛も伴い費用もかさむ。
この検査で癌を早期発見できれば、医療経済全体にもたらすメリットも大きい」と語る国立がん研究センター研究所の落谷孝広氏。
落谷氏は、「体外診断薬として、きちんと治験をして、国民が年1回安価に受けられるような検査になってほしい。
早期で発見できれば、患者個人の負担が軽いだけでなく、医療経済全体にもたらすメリットも大きい」と期待する。
さらに侵襲性の全くない尿や唾液についても検証中だ。「腎臓、膀胱、前立腺など、泌尿器系の癌は尿で判別できるかもしれないが、
肺や肝臓など、主要臓器の癌のマイクロRNAを尿中で測定して判別することもできれば、もっと優しい検査になる」と話す。
前田氏も消化器内科医として、リキッドバイオプシーに大きく期待する1人だ。「胃癌や大腸癌では検診システムが確立しているが、膵癌には早期発見する有効な方法がないため、感度が高い検査であれば有用だろう」と語る。
リキッドバイオプシーの究極の使い道は疾患予防だと落谷氏は考えている。
「将来的には、マイクロRNAプロファイルに基づいて、病気にならないようにするために、食生活などでどのような介入ができるかを検証していくつもりだ」と話している。
血液中に出現した“癌の分身”を捉えるリキッドバイオプシー(liquid biopsy:液体生検)として注目を集めているのが、
血液中の細胞小胞体(エクソソーム)を調べる手法だ。国立がん研究センター研究所プロジェクトリーダーの落谷孝広氏らが開発した。
エクソソームは、直径約100nmのごく微少なカプセル状の粒で、内部にリボ核酸(RNA)であるマイクロRNAが含まれていることが、2007年にスウェーデンの研究者により発見された。
落谷氏のチームが2010年、エクソソームが細胞同士の情報伝達の役割を担っており、癌の発症や進行と関わりがあることを解明。さらにそれを応用し、癌の判別の有無を調べる仕組みの開発に成功した。
エクソソーム中のマイクロRNAは20〜25個の塩基が連なった分子で、正常細胞もエクソソームに包含されたマイクロRNAを分泌している。
癌細胞に特有のマイクロRNAは、正常細胞に入り込み、正常細胞のメッセンジャーRNAと結合することで、正常細胞をアポトーシスにも導く。
各臓器の癌には、それぞれ特徴的なマイクロRNAが複数存在し、癌に罹患すると、血液や尿など細胞外にも分泌されてくる。その量を測定することで、各臓器の癌の罹患の有無が判別できるようになるわけだ。
現在、胃癌、食道癌、肺癌、肝臓癌、胆道癌、膵臓癌、大腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膀胱癌、乳癌、肉腫、神経膠腫の13種類の癌の有無が判別できるという。
さらに、免疫チェックポイント阻害薬の効果予測が可能であることも確認している。
メカニズムが明確であり、癌については、感度・特異度とも90%以上と極めて高いのが特徴。
確定診断にはなり得ないものの、1次スクリーニングとしては十分な精度である。
ただ、検診の1次スクリーニングとして用いるには、癌のマイクロRNAが検出された集団での癌罹患率などの検討が必要だろう。
落谷氏は、「人間ドックで13種類の検査を受けるのは時間を要するとともに、苦痛も伴い費用もかさむ。
この検査は100μLほどの血液があれば十分なので、簡易血糖測定器のような簡便な検査にすることができる」と語る。
現在、体外診断薬の承認申請に向けた臨床性能試験や多施設での臨床試験を計画中だという。
ヒトのマイクロRNAは2588種類あるが、これをトータルで見る高感度DNAチップは、日本には東レの3D-Geneシステムしかなかったため、それを採用しており、検査費用は2万円前後になるのではないかと見積もられている。
もっとも癌の判別に、2588種類を全て調べる必要はなく、1つの癌種当たり3〜5種類程度で済む。
現在開発中の13種類でも100種類以下に抑えられることから、コストダウンが図れるのではないかと考えられる。
東レ以外に東芝、アークレイ、プレシジョン・システム・サイエンスなどもプロジェクトに参加してバイオチップの性能を競っており、さらにコストを抑えつつ精度を高められる可能性もある。
「人間ドックで13種類の検査を受けるのは時間を要するとともに、苦痛も伴い費用もかさむ。
この検査で癌を早期発見できれば、医療経済全体にもたらすメリットも大きい」と語る国立がん研究センター研究所の落谷孝広氏。
落谷氏は、「体外診断薬として、きちんと治験をして、国民が年1回安価に受けられるような検査になってほしい。
早期で発見できれば、患者個人の負担が軽いだけでなく、医療経済全体にもたらすメリットも大きい」と期待する。
さらに侵襲性の全くない尿や唾液についても検証中だ。「腎臓、膀胱、前立腺など、泌尿器系の癌は尿で判別できるかもしれないが、
肺や肝臓など、主要臓器の癌のマイクロRNAを尿中で測定して判別することもできれば、もっと優しい検査になる」と話す。
前田氏も消化器内科医として、リキッドバイオプシーに大きく期待する1人だ。「胃癌や大腸癌では検診システムが確立しているが、膵癌には早期発見する有効な方法がないため、感度が高い検査であれば有用だろう」と語る。
リキッドバイオプシーの究極の使い道は疾患予防だと落谷氏は考えている。
「将来的には、マイクロRNAプロファイルに基づいて、病気にならないようにするために、食生活などでどのような介入ができるかを検証していくつもりだ」と話している。
2018年06月29日
デンマーク,おそらく北欧人のデータ 日本人,東アジア人はアルコール代謝が欧米人の約半分,日本での解析が待たれる 週3〜4回の飲酒で糖尿病リスクが最低に
デンマーク,おそらく北欧人のデータ 日本人,東アジア人はアルコール代謝が欧米人の約半分,日本での解析が待たれる
週3〜4回の飲酒で糖尿病リスクが最低に
Danish Health Examination Survey 2007–2008
2017年08月03日 06:05
適度な飲酒は2型糖尿病リスク低下との関連が報告されているが、飲酒パターンとの関係についてはほとんど知られていない。
デンマーク・National Institute of Public Health UniversityのCharlotte Holst氏らは、
2007〜08年に健康診査を受けた18歳以上の男女7万人のデータを解析。
週3〜4回の飲酒が糖尿病の最低リスクと関連することが示唆されたと、Diabetologia(2017年7月28日オンライン版)に報告した(関連記事「飲酒量の増加が糖尿病リスクに」)。
男性は週14ドリンク、女性は週9ドリンクで40〜50%リスク減
Holst氏らは、Danish Health Examination Survey 2007-2008の健康診査データを用いて、
一般的なデンマーク人男女の飲酒パターンと糖尿病リスクとの関連を調べた。
解析対象は、糖尿病歴のない(妊婦および過去6カ月以内の経産婦は除外)7万551人(18〜98歳)で、男性2万8,704人と女性4万1,847人。
自記式調査票を用いて、飲酒パターンから週当たりの平均アルコール摂取量を算出。糖尿病の診断情報はデンマークの全国登録データから入手した。
平均4.9年の追跡期間中、男性859例と女性887例が糖尿病を発症した。
男女とも週間飲酒量と糖尿病リスクにはU字型関係が認められた。
糖尿病リスクの最も低い飲酒パターンは、男性は週14ドリンク※〔飲酒しない群との比較、ハザード比(HR)0.57、95%CI 0.47〜0.70〕、女性は週9ドリンク(同、HR 0.42、95%CI 0.35〜0.51)。
交絡因子および週間平均アルコール消費量調整後も、軽度〜中等度の飲酒は糖尿病リスク低下と有意に関連しており、
週1回の飲酒と比べて、週3〜4回の飲酒では男性で27%(HR 0.73、95%CI 0.59〜0.94)、女性で32%(同0.68、0.53〜0.88)リスクが減少した。
(坂田真子)
※ドリンク(基準飲酒量):飲酒量を純アルコールに換算する〔飲酒量(mL) × 酒のアルコール濃度 × 0.8〕表示法。
世界保健機関(WHO)では1ドリンク=10gと定義、日本も同基準を採用。デンマークは12gとしている。ビール(5%) 500mL 缶1本はアルコール20g=2ドリンク、ワイン(12%)グラス1杯(120mL)はアルコール12g=1ドリンクとなる。
週3〜4回の飲酒で糖尿病リスクが最低に
Danish Health Examination Survey 2007–2008
2017年08月03日 06:05
適度な飲酒は2型糖尿病リスク低下との関連が報告されているが、飲酒パターンとの関係についてはほとんど知られていない。
デンマーク・National Institute of Public Health UniversityのCharlotte Holst氏らは、
2007〜08年に健康診査を受けた18歳以上の男女7万人のデータを解析。
週3〜4回の飲酒が糖尿病の最低リスクと関連することが示唆されたと、Diabetologia(2017年7月28日オンライン版)に報告した(関連記事「飲酒量の増加が糖尿病リスクに」)。
男性は週14ドリンク、女性は週9ドリンクで40〜50%リスク減
Holst氏らは、Danish Health Examination Survey 2007-2008の健康診査データを用いて、
一般的なデンマーク人男女の飲酒パターンと糖尿病リスクとの関連を調べた。
解析対象は、糖尿病歴のない(妊婦および過去6カ月以内の経産婦は除外)7万551人(18〜98歳)で、男性2万8,704人と女性4万1,847人。
自記式調査票を用いて、飲酒パターンから週当たりの平均アルコール摂取量を算出。糖尿病の診断情報はデンマークの全国登録データから入手した。
平均4.9年の追跡期間中、男性859例と女性887例が糖尿病を発症した。
男女とも週間飲酒量と糖尿病リスクにはU字型関係が認められた。
糖尿病リスクの最も低い飲酒パターンは、男性は週14ドリンク※〔飲酒しない群との比較、ハザード比(HR)0.57、95%CI 0.47〜0.70〕、女性は週9ドリンク(同、HR 0.42、95%CI 0.35〜0.51)。
交絡因子および週間平均アルコール消費量調整後も、軽度〜中等度の飲酒は糖尿病リスク低下と有意に関連しており、
週1回の飲酒と比べて、週3〜4回の飲酒では男性で27%(HR 0.73、95%CI 0.59〜0.94)、女性で32%(同0.68、0.53〜0.88)リスクが減少した。
(坂田真子)
※ドリンク(基準飲酒量):飲酒量を純アルコールに換算する〔飲酒量(mL) × 酒のアルコール濃度 × 0.8〕表示法。
世界保健機関(WHO)では1ドリンク=10gと定義、日本も同基準を採用。デンマークは12gとしている。ビール(5%) 500mL 缶1本はアルコール20g=2ドリンク、ワイン(12%)グラス1杯(120mL)はアルコール12g=1ドリンクとなる。
2018年06月24日
ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療) 6つの食事を比較、結論は「個人の好み」
ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療)
6つの食事を比較、結論は「個人の好み」
著者;ハーバード大学の栄養学科、ジョスリン糖尿病センターのドクターたち
現在、日本では糖尿病食に「低炭水化物食(ローカーボ)」を提唱する人たちが現れ、片や「栄養素をバランスよく取ってトータルのカロリーを下げる主義」の日本糖尿病学会との間で激しい論争が続いています。
この総説では下記の6つのダイエット法を比較しています。
地中海食:地中海周辺の食事中等度低炭水化物食(いわゆるローカーボ食)
DASH diet(dietary approaches to stop hypertension, 地中海食に似る)
AHEI Dietary guideline (Alternate Healthy Eating Index、地中海食に似る)
Prudent dietary pattern (地中海食に似る)
Vegetarian、Vegan diet(菜食主義:これは推奨しない)
糖尿病の食事療法、結局何がいい?
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正
ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療) | 2017.02.09
少し前になりますが、Lancet(2014; 383: 1999‒2007)に「2型糖尿病の食事療法」の総説がありました。
この総説の最重要点は以下の4点です。
糖尿病ではトータルのカロリーを抑えた上で、
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料
摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油
適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり
食塩制限6g/日以下
この総説の結論は「色々なダイエット法があるけど、どれもそれなりに有効なので個人の好みで選べばよい」というものです。しかし最後のVegan diet(菜食主義)だけは推奨しません。
注意すべきは低炭水化物ダイエット(ローカーボ)を選択する場合、動物由来の脂肪、蛋白質を取ると全死亡率、心血管疾患死亡率ともに上昇し高リスクになります。
ローカーボをやる場合は、必ず脂肪、蛋白質は動物由来でなく魚や植物由来中心にすることが重要で、患者さんに説明する必要があります。
また炭水化物制限は夕食のみとするべきで、朝、昼も制限すると大変危険です。
しかしさまざまなダイエット法のうち、血糖コントロール、インスリン感受性の改善に最も有効だったのは地中海食だったとのことです。
これらさまざまなダイエット法の共通項は次の4つです。
是非暗記して下さい。
太った人はトータルのカロリーを制限した上で、下記4つを守ればよいとのことです。
なかなかおおらかで、実行可能なダイエットです。
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料
摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり
食塩制限6g/日以下
日本食も糖尿病食として優れているとは思うのですが、日本からの食事療法のランダム化比較試験の成果は発信されていませんので、一切触れられていませんでした。
1. 脂肪摂取は、動物脂肪でなく植物脂肪(オリーブ油)、魚介類に変えよ
驚くべきことに「脂肪摂取量は糖尿病リスクと関係がない」うえに「高脂肪食自体はインスリン感受性を悪化させない」ということが明らかになりました。「血糖を上昇させるのは炭水化物であり脂肪ではない!」のです。
また「脂肪の種類が重要であり糖尿病予防には動物脂肪でなく植物脂肪 (特にオリーブ油)や魚介類に変えよ」というのです。
わが家でも朝食のパンに付けるバターはオリーブ油に変えました。
この総説では特に赤い肉、加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)が敵視されています。加工肉より非加工肉の方がまだましなのです。
2型糖尿病での食物、飲料の相対リスク(Relative risk:治療群の発症率を対象群の発症率で割ったもの。1より大きければ有害、1より小さければ有効)は次の通りです。
【2型糖尿病での食物、飲料の相対リスク】
1.4〜1.6 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン):最悪であることに注意!
1.0〜1.2 砂糖入り飲料、非加工肉、魚介類、白米
0.8〜1.0 乳製品、緑黄野菜、コーヒー、全粒穀物、アルコール
2. 白米でなく玄米に、白いパンでなく茶色のパンを食べよ!
全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦粉)を精製して白米、白い小麦粉にすると、その過程で食物繊維、栄養、微量元素などが失われてしまいます。
食物繊維があることにより糖の吸収が穏かになります。つまりパンは白いパンでなく全粒粉の入った茶色のパンに変えよというのです。
わが家も現在は、玄米と茶色のパンで、宮沢賢治のような生活です。
フルーツ、野菜の摂取は低糖尿病リスクです。 特にブルーベリー、ブドウ、リンゴは3つのcohort(前向き比較研究)で低糖尿病リスクでした。
しかしジュースにすることはあまり推奨できないそうです。果物をジュースにすると食物繊維が少なくなり果糖の吸収が速くなるということでしょうか。
また砂糖入り飲料は重税を課すべきだと言ってます。皆様も自動販売機の前に立ったら一瞬考えて下さい。
砂糖入り飲料はできるだけ、水、茶、コーヒー(コーヒー摂取と糖尿病リスクは逆相関)に代えよというのです。
それでは最重要点の怒涛の反復です。
糖尿病ではトータルのカロリーを抑えた上で、
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料
摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油
適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり
食塩制限6g/日以下
なお、この総説の詳細は、関連リンクにまとめてありますのでご覧ください。
また2017年1月に、トップジャーナルの総説152論文をまとめてCBR社から 『トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第2版』として出版いたしました。こちらも関連リンクにあります。
ご購入の場合、第1版と間違えないようご注意下さい。 特に僻地や離島に赴任される先生方はこの一冊を持っていけば日常診療にさほど困らないと確信しております。
仲田 和正(なかた かずまさ)
西伊豆健育会病院病院長。
1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4〜9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・
整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。
6つの食事を比較、結論は「個人の好み」
著者;ハーバード大学の栄養学科、ジョスリン糖尿病センターのドクターたち
現在、日本では糖尿病食に「低炭水化物食(ローカーボ)」を提唱する人たちが現れ、片や「栄養素をバランスよく取ってトータルのカロリーを下げる主義」の日本糖尿病学会との間で激しい論争が続いています。
この総説では下記の6つのダイエット法を比較しています。
地中海食:地中海周辺の食事中等度低炭水化物食(いわゆるローカーボ食)
DASH diet(dietary approaches to stop hypertension, 地中海食に似る)
AHEI Dietary guideline (Alternate Healthy Eating Index、地中海食に似る)
Prudent dietary pattern (地中海食に似る)
Vegetarian、Vegan diet(菜食主義:これは推奨しない)
糖尿病の食事療法、結局何がいい?
西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正
ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療) | 2017.02.09
少し前になりますが、Lancet(2014; 383: 1999‒2007)に「2型糖尿病の食事療法」の総説がありました。
この総説の最重要点は以下の4点です。
糖尿病ではトータルのカロリーを抑えた上で、
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料
摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油
適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり
食塩制限6g/日以下
この総説の結論は「色々なダイエット法があるけど、どれもそれなりに有効なので個人の好みで選べばよい」というものです。しかし最後のVegan diet(菜食主義)だけは推奨しません。
注意すべきは低炭水化物ダイエット(ローカーボ)を選択する場合、動物由来の脂肪、蛋白質を取ると全死亡率、心血管疾患死亡率ともに上昇し高リスクになります。
ローカーボをやる場合は、必ず脂肪、蛋白質は動物由来でなく魚や植物由来中心にすることが重要で、患者さんに説明する必要があります。
また炭水化物制限は夕食のみとするべきで、朝、昼も制限すると大変危険です。
しかしさまざまなダイエット法のうち、血糖コントロール、インスリン感受性の改善に最も有効だったのは地中海食だったとのことです。
これらさまざまなダイエット法の共通項は次の4つです。
是非暗記して下さい。
太った人はトータルのカロリーを制限した上で、下記4つを守ればよいとのことです。
なかなかおおらかで、実行可能なダイエットです。
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料
摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり
食塩制限6g/日以下
日本食も糖尿病食として優れているとは思うのですが、日本からの食事療法のランダム化比較試験の成果は発信されていませんので、一切触れられていませんでした。
1. 脂肪摂取は、動物脂肪でなく植物脂肪(オリーブ油)、魚介類に変えよ
驚くべきことに「脂肪摂取量は糖尿病リスクと関係がない」うえに「高脂肪食自体はインスリン感受性を悪化させない」ということが明らかになりました。「血糖を上昇させるのは炭水化物であり脂肪ではない!」のです。
また「脂肪の種類が重要であり糖尿病予防には動物脂肪でなく植物脂肪 (特にオリーブ油)や魚介類に変えよ」というのです。
わが家でも朝食のパンに付けるバターはオリーブ油に変えました。
この総説では特に赤い肉、加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)が敵視されています。加工肉より非加工肉の方がまだましなのです。
2型糖尿病での食物、飲料の相対リスク(Relative risk:治療群の発症率を対象群の発症率で割ったもの。1より大きければ有害、1より小さければ有効)は次の通りです。
【2型糖尿病での食物、飲料の相対リスク】
1.4〜1.6 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン):最悪であることに注意!
1.0〜1.2 砂糖入り飲料、非加工肉、魚介類、白米
0.8〜1.0 乳製品、緑黄野菜、コーヒー、全粒穀物、アルコール
2. 白米でなく玄米に、白いパンでなく茶色のパンを食べよ!
全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦粉)を精製して白米、白い小麦粉にすると、その過程で食物繊維、栄養、微量元素などが失われてしまいます。
食物繊維があることにより糖の吸収が穏かになります。つまりパンは白いパンでなく全粒粉の入った茶色のパンに変えよというのです。
わが家も現在は、玄米と茶色のパンで、宮沢賢治のような生活です。
フルーツ、野菜の摂取は低糖尿病リスクです。 特にブルーベリー、ブドウ、リンゴは3つのcohort(前向き比較研究)で低糖尿病リスクでした。
しかしジュースにすることはあまり推奨できないそうです。果物をジュースにすると食物繊維が少なくなり果糖の吸収が速くなるということでしょうか。
また砂糖入り飲料は重税を課すべきだと言ってます。皆様も自動販売機の前に立ったら一瞬考えて下さい。
砂糖入り飲料はできるだけ、水、茶、コーヒー(コーヒー摂取と糖尿病リスクは逆相関)に代えよというのです。
それでは最重要点の怒涛の反復です。
糖尿病ではトータルのカロリーを抑えた上で、
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料
摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油
適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり
食塩制限6g/日以下
なお、この総説の詳細は、関連リンクにまとめてありますのでご覧ください。
また2017年1月に、トップジャーナルの総説152論文をまとめてCBR社から 『トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第2版』として出版いたしました。こちらも関連リンクにあります。
ご購入の場合、第1版と間違えないようご注意下さい。 特に僻地や離島に赴任される先生方はこの一冊を持っていけば日常診療にさほど困らないと確信しております。
仲田 和正(なかた かずまさ)
西伊豆健育会病院病院長。
1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4〜9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・
整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。