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2018年06月24日

ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療) 6つの食事を比較、結論は「個人の好み」

ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療)
6つの食事を比較、結論は「個人の好み」

 著者;ハーバード大学の栄養学科、ジョスリン糖尿病センターのドクターたち

 現在、日本では糖尿病食に「低炭水化物食(ローカーボ)」を提唱する人たちが現れ、片や「栄養素をバランスよく取ってトータルのカロリーを下げる主義」の日本糖尿病学会との間で激しい論争が続いています。

 この総説では下記の6つのダイエット法を比較しています。
地中海食:地中海周辺の食事中等度低炭水化物食(いわゆるローカーボ食)
DASH diet(dietary approaches to stop hypertension, 地中海食に似る)
AHEI Dietary guideline (Alternate Healthy Eating Index、地中海食に似る)
Prudent dietary pattern (地中海食に似る)
Vegetarian、Vegan diet(菜食主義:これは推奨しない)

糖尿病の食事療法、結局何がいい?

西伊豆健育会病院病院長 仲田 和正
ドクターズアイ 仲田和正先生(総合診療) | 2017.02.09

 少し前になりますが、Lancet(2014; 383: 1999‒2007)に「2型糖尿病の食事療法」の総説がありました。

 この総説の最重要点は以下の4点です。

 糖尿病ではトータルのカロリーを抑えた上で、

控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料

摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油

適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり

食塩制限6g/日以下

 この総説の結論は「色々なダイエット法があるけど、どれもそれなりに有効なので個人の好みで選べばよい」というものです。しかし最後のVegan diet(菜食主義)だけは推奨しません。

 注意すべきは低炭水化物ダイエット(ローカーボ)を選択する場合、動物由来の脂肪、蛋白質を取ると全死亡率、心血管疾患死亡率ともに上昇し高リスクになります。

ローカーボをやる場合は、必ず脂肪、蛋白質は動物由来でなく魚や植物由来中心にすることが重要で、患者さんに説明する必要があります。
また炭水化物制限は夕食のみとするべきで、朝、昼も制限すると大変危険です。

 しかしさまざまなダイエット法のうち、血糖コントロール、インスリン感受性の改善に最も有効だったのは地中海食だったとのことです。

 これらさまざまなダイエット法の共通項は次の4つです。

是非暗記して下さい。

太った人はトータルのカロリーを制限した上で、下記4つを守ればよいとのことです。

 なかなかおおらかで、実行可能なダイエットです。

控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料

摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり

食塩制限6g/日以下

 日本食も糖尿病食として優れているとは思うのですが、日本からの食事療法のランダム化比較試験の成果は発信されていませんので、一切触れられていませんでした。

1. 脂肪摂取は、動物脂肪でなく植物脂肪(オリーブ油)、魚介類に変えよ

 驚くべきことに「脂肪摂取量は糖尿病リスクと関係がない」うえに「高脂肪食自体はインスリン感受性を悪化させない」ということが明らかになりました。「血糖を上昇させるのは炭水化物であり脂肪ではない!」のです。

 また「脂肪の種類が重要であり糖尿病予防には動物脂肪でなく植物脂肪 (特にオリーブ油)や魚介類に変えよ」というのです。

 わが家でも朝食のパンに付けるバターはオリーブ油に変えました。

 この総説では特に赤い肉、加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン)が敵視されています。加工肉より非加工肉の方がまだましなのです。

 2型糖尿病での食物、飲料の相対リスク(Relative risk:治療群の発症率を対象群の発症率で割ったもの。1より大きければ有害、1より小さければ有効)は次の通りです。

【2型糖尿病での食物、飲料の相対リスク】
1.4〜1.6 加工肉(ハム、ソーセージ、ベーコン):最悪であることに注意!

1.0〜1.2 砂糖入り飲料、非加工肉、魚介類、白米

0.8〜1.0 乳製品、緑黄野菜、コーヒー、全粒穀物、アルコール

2. 白米でなく玄米に、白いパンでなく茶色のパンを食べよ!

 全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦粉)を精製して白米、白い小麦粉にすると、その過程で食物繊維、栄養、微量元素などが失われてしまいます。

食物繊維があることにより糖の吸収が穏かになります。つまりパンは白いパンでなく全粒粉の入った茶色のパンに変えよというのです。

 わが家も現在は、玄米と茶色のパンで、宮沢賢治のような生活です。

 フルーツ、野菜の摂取は低糖尿病リスクです。 特にブルーベリー、ブドウ、リンゴは3つのcohort(前向き比較研究)で低糖尿病リスクでした。

 しかしジュースにすることはあまり推奨できないそうです。果物をジュースにすると食物繊維が少なくなり果糖の吸収が速くなるということでしょうか。

 また砂糖入り飲料は重税を課すべきだと言ってます。皆様も自動販売機の前に立ったら一瞬考えて下さい。

 砂糖入り飲料はできるだけ、水、茶、コーヒー(コーヒー摂取と糖尿病リスクは逆相関)に代えよというのです。

 それでは最重要点の怒涛の反復です。

 糖尿病ではトータルのカロリーを抑えた上で、
控えるべきは、加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)、赤い肉、砂糖入り飲料

摂取すべきは、全粒穀物(玄米、全粒粉の小麦)、魚類、果物、野菜、ナッツ、豆、オリーブ油

適量のアルコール(男性で22g/日以下、女性で24g/日以下、ビール換算で400〜500mL)は糖尿病の予防効果あり

食塩制限6g/日以下

 なお、この総説の詳細は、関連リンクにまとめてありますのでご覧ください。

 また2017年1月に、トップジャーナルの総説152論文をまとめてCBR社から 『トップジャーナルから学ぶ総合診療アップデート 第2版』として出版いたしました。こちらも関連リンクにあります。

ご購入の場合、第1版と間違えないようご注意下さい。 特に僻地や離島に赴任される先生方はこの一冊を持っていけば日常診療にさほど困らないと確信しております。

仲田 和正(なかた かずまさ)
 西伊豆健育会病院病院長。
1978年に自治医科大学卒業、静岡県立中央病院(現静岡県立総合病院)全科ローテート研修、1980年に浜松医科大学麻酔科研修(4〜9月)、静岡県国民健康保険佐久間病院外科・
整形外科。1984年に自治医科大学整形外科、大学院、1988年に静岡県島田市民病院整形外科、1991年に静岡県西伊豆病院整形外科。
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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