2018年07月01日
もう「お漏らし」は怖くない “排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上) 2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス
もう「お漏らし」は怖くない
“排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上)
2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス
ベンチャー企業から大企業、研究機関まで、さまざまなプレーヤーがしのぎを削る排泄周りのヘルスケアサービスは、デジタルヘルスの新鉱脈となるのか。
その最前線を紹介していこう。
「4億人市場」を半導体技術で狙う
全世界に4億人、日本だけでも800万人以上――。
尿漏れ(尿失禁)に悩んでいるとされる人口だ。
特に女性に多く、出産直後の女性の3人に1人が悩まされているとの推計もある。
運動やくしゃみによって膀胱に高い圧力が加わった際などに起こりやすく、加齢や骨盤底筋の緩みも要因になる。
そんな尿漏れに悩む女性に救いの手を差し伸べるウエアラブルデバイスが、2017年春に日本で発売された。
ライフセンスグループジャパン(東京都立川市)の「Carin(カリン)」である。手掛けるのは、かつて日立製作所に在籍していた半導体のエキスパート達だ。
米山氏らは半導体技術をヘルスケア分野に応用することを志し、LifeSense Group社を創業。日立時代の同僚など数人に声を掛け、日本やアジア地域でのビジネス開拓に向けて2016年1月に立ち上げたのがライフセンスグループジャパンである。
ヘルスケアの中でも“尿漏れ”に着目したのは、その潜在ニーズの大きさゆえ。
「特に若い女性は尿漏れの相談をしに医療機関を訪れるのを嫌がり、放置しがち。
専用のパッドやパンツなどの対策グッズは既にあるが、症状の改善にはつながりにくい。
我々が提供するツールは自宅で使うことができ、明確に症状改善を目的としている」
“セクシーさ”も犠牲にしない
Carinは大きく4つの要素から成るソリューション型製品だ。すなわち、
(1)尿漏れを検知するウエアラブルセンサー、
(2)ウエアラブルセンサーとBluetooth連携し、尿漏れのデータを記録・閲覧できるスマートフォンアプリ、
(3)専用の下着(尿漏れ防止ショーツ)、
(4)尿漏れの改善に効果があるとされる骨盤底筋トレーニングの動画アプリ、である。
ウエアラブルセンサーと専用下着、動画コンテンツを含むスマホアプリから成る
(3)の尿漏れ防止ショーツは、恥骨に触れる部分にポケットを設けており、ここに(1)のウエアラブルセンサーを装着する。
尿漏れが起きるとショーツに取り付けた銀(Ag)配線の抵抗値が変化し、Ag配線と電気的に接続されたウエアラブルセンサーで尿漏れの回数や量、発生時刻を検知する仕組みだ。
この際、センサーに搭載した加速度センサーで、どのような体の動きをしていたかを併せて検知。これらのデータを、センサーとBluetooth連携した(2)のスマートフォンアプリに記録する。
ショーツには、表面積の5倍の量の尿を吸収できる速乾性素材を使用。
1回当たり10mL程度までの尿漏れならすぐに吸収し、体温で乾いて不快感を感じずに済む。
尿漏れの検知にAg配線を使うのは、Agの消臭効果を利用するため。ショーツは洗濯でき、繰り返し使用が可能だ。
特にこだわったのはショーツのデザイン。
「一般的な尿漏れ対策パンツは、おしゃれとは言えない。我々はオランダ人デザイナーを起用し、
女性がデートなどにも履いていこうと思えるような、セクシーさも備えたデザインを採用している」(金澤氏)。
ウエアラブルセンサーには、無線通信機能などを含む電子回路のほか、加速度センサーや業界最小クラスというLiイオン電池を搭載。半導体技術に関する知見を生かし、小型・低電力を実現した。
血糖値や尿酸値も視野
(4)の骨盤底筋トレーニングの動画アプリでは、複数のコンテンツを用意。
センサーによる測定結果に応じて、推奨される動画をユーザーに提示する。動画に習って行うトレーニングを2〜3カ月続けることで、尿漏れ症状の改善が見込めるという。
「それでも効果が得られなければ、病院を受診してもらうことを想定している。その際、尿漏れを記録したアプリを問診票代わりに使ってもらいたい」。
そこでアプリには問診項目を意識し、摂取した飲み物を記録しておく機能なども実装した。
現在、同製品が「着け心地などの点で日本人にフィットするかどうかのフィールドテストを、20〜60歳代の女性を対象に進めている」(金澤氏)。
日本での販売価格は、2017年の発売当初はセット(センサー、充電器、ショーツ)で3万円(税抜き)とする予定で、交換用ショーツは1枚3000円(同)。
Webなどを使った一般消費者向け販売のほか、医療機関やスポーツジム経由での販売を計画する。アプリを問診票代わりに使う用途に向けて、大学病院の泌尿器科との連携も進めていく。
既に、ショーツについては国内大手下着メーカーへの製造委託を決めた。
設計・製造を日本で行うことで、価格低減にもつなげられる見込みという。
並行して、男性をターゲットにした製品開発も進めていく。
2020年ごろまでの第2フェーズでは、尿漏れだけでなく「血糖値や尿酸値、脈拍、体温などもウエアラブルセンサーで取得できるようにし、AI(人工知能)も活用してクラウドで解析するサービスの事業化を目指す」(金澤氏)。
既に、AI技術を持つ企業との連携に着手。測定項目の拡充についても、例えば血糖値については良い感触が得られ始めているという。
“排泄”はデジタルヘルスの新鉱脈となるか(上)
2017/03/03 17:45 大下 淳一=日経デジタルヘルス
ベンチャー企業から大企業、研究機関まで、さまざまなプレーヤーがしのぎを削る排泄周りのヘルスケアサービスは、デジタルヘルスの新鉱脈となるのか。
その最前線を紹介していこう。
「4億人市場」を半導体技術で狙う
全世界に4億人、日本だけでも800万人以上――。
尿漏れ(尿失禁)に悩んでいるとされる人口だ。
特に女性に多く、出産直後の女性の3人に1人が悩まされているとの推計もある。
運動やくしゃみによって膀胱に高い圧力が加わった際などに起こりやすく、加齢や骨盤底筋の緩みも要因になる。
そんな尿漏れに悩む女性に救いの手を差し伸べるウエアラブルデバイスが、2017年春に日本で発売された。
ライフセンスグループジャパン(東京都立川市)の「Carin(カリン)」である。手掛けるのは、かつて日立製作所に在籍していた半導体のエキスパート達だ。
米山氏らは半導体技術をヘルスケア分野に応用することを志し、LifeSense Group社を創業。日立時代の同僚など数人に声を掛け、日本やアジア地域でのビジネス開拓に向けて2016年1月に立ち上げたのがライフセンスグループジャパンである。
ヘルスケアの中でも“尿漏れ”に着目したのは、その潜在ニーズの大きさゆえ。
「特に若い女性は尿漏れの相談をしに医療機関を訪れるのを嫌がり、放置しがち。
専用のパッドやパンツなどの対策グッズは既にあるが、症状の改善にはつながりにくい。
我々が提供するツールは自宅で使うことができ、明確に症状改善を目的としている」
“セクシーさ”も犠牲にしない
Carinは大きく4つの要素から成るソリューション型製品だ。すなわち、
(1)尿漏れを検知するウエアラブルセンサー、
(2)ウエアラブルセンサーとBluetooth連携し、尿漏れのデータを記録・閲覧できるスマートフォンアプリ、
(3)専用の下着(尿漏れ防止ショーツ)、
(4)尿漏れの改善に効果があるとされる骨盤底筋トレーニングの動画アプリ、である。
ウエアラブルセンサーと専用下着、動画コンテンツを含むスマホアプリから成る
(3)の尿漏れ防止ショーツは、恥骨に触れる部分にポケットを設けており、ここに(1)のウエアラブルセンサーを装着する。
尿漏れが起きるとショーツに取り付けた銀(Ag)配線の抵抗値が変化し、Ag配線と電気的に接続されたウエアラブルセンサーで尿漏れの回数や量、発生時刻を検知する仕組みだ。
この際、センサーに搭載した加速度センサーで、どのような体の動きをしていたかを併せて検知。これらのデータを、センサーとBluetooth連携した(2)のスマートフォンアプリに記録する。
ショーツには、表面積の5倍の量の尿を吸収できる速乾性素材を使用。
1回当たり10mL程度までの尿漏れならすぐに吸収し、体温で乾いて不快感を感じずに済む。
尿漏れの検知にAg配線を使うのは、Agの消臭効果を利用するため。ショーツは洗濯でき、繰り返し使用が可能だ。
特にこだわったのはショーツのデザイン。
「一般的な尿漏れ対策パンツは、おしゃれとは言えない。我々はオランダ人デザイナーを起用し、
女性がデートなどにも履いていこうと思えるような、セクシーさも備えたデザインを採用している」(金澤氏)。
ウエアラブルセンサーには、無線通信機能などを含む電子回路のほか、加速度センサーや業界最小クラスというLiイオン電池を搭載。半導体技術に関する知見を生かし、小型・低電力を実現した。
血糖値や尿酸値も視野
(4)の骨盤底筋トレーニングの動画アプリでは、複数のコンテンツを用意。
センサーによる測定結果に応じて、推奨される動画をユーザーに提示する。動画に習って行うトレーニングを2〜3カ月続けることで、尿漏れ症状の改善が見込めるという。
「それでも効果が得られなければ、病院を受診してもらうことを想定している。その際、尿漏れを記録したアプリを問診票代わりに使ってもらいたい」。
そこでアプリには問診項目を意識し、摂取した飲み物を記録しておく機能なども実装した。
現在、同製品が「着け心地などの点で日本人にフィットするかどうかのフィールドテストを、20〜60歳代の女性を対象に進めている」(金澤氏)。
日本での販売価格は、2017年の発売当初はセット(センサー、充電器、ショーツ)で3万円(税抜き)とする予定で、交換用ショーツは1枚3000円(同)。
Webなどを使った一般消費者向け販売のほか、医療機関やスポーツジム経由での販売を計画する。アプリを問診票代わりに使う用途に向けて、大学病院の泌尿器科との連携も進めていく。
既に、ショーツについては国内大手下着メーカーへの製造委託を決めた。
設計・製造を日本で行うことで、価格低減にもつなげられる見込みという。
並行して、男性をターゲットにした製品開発も進めていく。
2020年ごろまでの第2フェーズでは、尿漏れだけでなく「血糖値や尿酸値、脈拍、体温などもウエアラブルセンサーで取得できるようにし、AI(人工知能)も活用してクラウドで解析するサービスの事業化を目指す」(金澤氏)。
既に、AI技術を持つ企業との連携に着手。測定項目の拡充についても、例えば血糖値については良い感触が得られ始めているという。
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