新規記事の投稿を行うことで、非表示にすることが可能です。
2019年07月12日
尿酸値と認知症リスク〜44年の追跡調査
(高尿酸血症、痛風は先天的な病気!9以上で初めて治療対象になる。
何も勉強していないドクターにだまされて、尿酸値を下げると、認知症の憂き目に
最近、フェブリクというさんざん宣伝していた新薬の心毒性が報告されました。
売りは、尿酸値を下げることによって、狭心症、心筋梗塞を予防できるだったのに)
尿酸値と認知症リスク〜44年の追跡調査
提供元:ケアネット 公開日:2019/05/17
血清尿酸が減少すると抗酸化力が損なわれる可能性があるため、
血清尿酸値が低いと認知症リスクが増大することが示唆されている。
一方、血清尿酸値が高いと心血管リスクが増加し、
認知症とくに血管性認知症のリスクが増大する恐れがある。
今回、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLieke E.J.M. Scheepers氏らによる集団ベースの研究で、
認知症のサブタイプにかかわらず、
『血清尿酸値が高いと認知症リスクが低い』ことが示された。
Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2019年5月2日号に掲載。
1968〜69年に38〜60歳の女性1,462人を44年(平均33.1年)にわたって追跡調査し、
血清尿酸(1968〜69年および1992〜94年に調査)と晩年の認知症リスクとの関連を調べた。
その結果、44年の追跡調査期間中、
高い血清尿酸値(標準偏差76.5μmol/L当たり)は、
認知症(n=320、ハザード比[HR]:0.81、信頼区間[CI]:0.72〜0.91)、
アルツハイマー病(n=152、HR:0.78、CI:0.66〜0.91)、
および血管性認知症(n=52、HR:0.66、CI:0.47〜0.94)における低いリスクと関連していた。
今回の結果は、認知症のサブタイプにかかわらず、
認知症発症において血清尿酸が保護的役割を果たすという仮説を支持する。
著者らは、
「これは、痛風患者の認知症治療および高尿酸血症の治療目標に重要な意味を持つかもしれない」
としている。
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Scheepers LEJM, et al. Alzheimers Dement. 2019 May 2. [Epub ahead of print]
何も勉強していないドクターにだまされて、尿酸値を下げると、認知症の憂き目に
最近、フェブリクというさんざん宣伝していた新薬の心毒性が報告されました。
売りは、尿酸値を下げることによって、狭心症、心筋梗塞を予防できるだったのに)
尿酸値と認知症リスク〜44年の追跡調査
提供元:ケアネット 公開日:2019/05/17
血清尿酸が減少すると抗酸化力が損なわれる可能性があるため、
血清尿酸値が低いと認知症リスクが増大することが示唆されている。
一方、血清尿酸値が高いと心血管リスクが増加し、
認知症とくに血管性認知症のリスクが増大する恐れがある。
今回、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLieke E.J.M. Scheepers氏らによる集団ベースの研究で、
認知症のサブタイプにかかわらず、
『血清尿酸値が高いと認知症リスクが低い』ことが示された。
Alzheimer's & Dementia誌オンライン版2019年5月2日号に掲載。
1968〜69年に38〜60歳の女性1,462人を44年(平均33.1年)にわたって追跡調査し、
血清尿酸(1968〜69年および1992〜94年に調査)と晩年の認知症リスクとの関連を調べた。
その結果、44年の追跡調査期間中、
高い血清尿酸値(標準偏差76.5μmol/L当たり)は、
認知症(n=320、ハザード比[HR]:0.81、信頼区間[CI]:0.72〜0.91)、
アルツハイマー病(n=152、HR:0.78、CI:0.66〜0.91)、
および血管性認知症(n=52、HR:0.66、CI:0.47〜0.94)における低いリスクと関連していた。
今回の結果は、認知症のサブタイプにかかわらず、
認知症発症において血清尿酸が保護的役割を果たすという仮説を支持する。
著者らは、
「これは、痛風患者の認知症治療および高尿酸血症の治療目標に重要な意味を持つかもしれない」
としている。
(ケアネット 金沢 浩子)
原著論文はこちら
Scheepers LEJM, et al. Alzheimers Dement. 2019 May 2. [Epub ahead of print]
2019年07月11日
地中海食は好きなだけ食べても太らない?
地中海食は好きなだけ食べても太らない?
初の霊長類による対照試験
2019年05月15日 06:05
西洋食よりも地中海食の方が、
満足するまで食べても体重は増加しない
ことを示した初の霊長類の対照試験の結果を、
米・Wake Forest School of MedicineのCarol A. Shively氏らが
Obesity(2019; 27: 777-784)に発表した。
ここでの地中海食は”植物由来の食品から”
(通常の地中海食はー
@果物や野菜を豊富に使用する
A乳製品や肉よりも魚を多く使う
Bオリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う
飽和脂肪酸を減らし、豚牛よりも圧倒的に鶏肉や魚介類が多い特徴があります)
<要約>
対象はメスの中年期のカニクイザル38頭。
蛋白質や脂質を主に『動物由来の食品から摂取する西洋食群』と、
主に『植物由来の食品から摂取する地中海食群』
のいずれかにランダムに割り付けた。
食餌に含まれる脂質、蛋白質、炭水化物の構成比は
西洋食と地中海食で同程度とし、
西洋食は40歳代の平均的な米国人女性が摂取している食事に類似した内容とした。
なお、試験期間の38カ月間はヒトでは約9年間に相当するという。
多めに食べてもBMIを維持
西洋食群では、介入期間の後半(27〜30カ月)で
前半と比べて有意にカロリー摂取量が少なかったが、
増加したBMIは維持されていた。
一方、地中海食群では後半でカロリー摂取量が多かったが、
BMIはベースライン時とほぼ同等の水準を維持していた。
さらに、研究開始から2.5年後の時点では、
地中海食群と比べて西洋食群で
体脂肪率の上昇、活動量やエネルギー消費量の増加が認められ、
インスリン抵抗性や脂肪肝(CTで評価した脂肪沈着量)の増加も認められた。
一方、地中海食群では西洋食群と比べて中性脂肪の低下が認められた。
カニクイザルを用いたこの研究では、
地中海食を与えられた群と比べて西洋食を与えられた群において
カロリー摂取量や体重の増加、
体脂肪率の上昇などが認められたという。
脂肪肝も予防
Shively氏は「地中海食群では提供された食餌を全て食べることはなく、
適正体重が維持されたのに対し、
西洋食群では必要量をはるかに超える量を食べ、
体重が増加していた」と説明。
また、「西洋食と比べて地中海食は脂肪肝の予防に優れている
ことを示した実験に基づく初のエビデンスが得られた」としている。
(岬りり子)
初の霊長類による対照試験
2019年05月15日 06:05
西洋食よりも地中海食の方が、
満足するまで食べても体重は増加しない
ことを示した初の霊長類の対照試験の結果を、
米・Wake Forest School of MedicineのCarol A. Shively氏らが
Obesity(2019; 27: 777-784)に発表した。
ここでの地中海食は”植物由来の食品から”
(通常の地中海食はー
@果物や野菜を豊富に使用する
A乳製品や肉よりも魚を多く使う
Bオリーブオイル、ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく使う
飽和脂肪酸を減らし、豚牛よりも圧倒的に鶏肉や魚介類が多い特徴があります)
<要約>
対象はメスの中年期のカニクイザル38頭。
蛋白質や脂質を主に『動物由来の食品から摂取する西洋食群』と、
主に『植物由来の食品から摂取する地中海食群』
のいずれかにランダムに割り付けた。
食餌に含まれる脂質、蛋白質、炭水化物の構成比は
西洋食と地中海食で同程度とし、
西洋食は40歳代の平均的な米国人女性が摂取している食事に類似した内容とした。
なお、試験期間の38カ月間はヒトでは約9年間に相当するという。
多めに食べてもBMIを維持
西洋食群では、介入期間の後半(27〜30カ月)で
前半と比べて有意にカロリー摂取量が少なかったが、
増加したBMIは維持されていた。
一方、地中海食群では後半でカロリー摂取量が多かったが、
BMIはベースライン時とほぼ同等の水準を維持していた。
さらに、研究開始から2.5年後の時点では、
地中海食群と比べて西洋食群で
体脂肪率の上昇、活動量やエネルギー消費量の増加が認められ、
インスリン抵抗性や脂肪肝(CTで評価した脂肪沈着量)の増加も認められた。
一方、地中海食群では西洋食群と比べて中性脂肪の低下が認められた。
カニクイザルを用いたこの研究では、
地中海食を与えられた群と比べて西洋食を与えられた群において
カロリー摂取量や体重の増加、
体脂肪率の上昇などが認められたという。
脂肪肝も予防
Shively氏は「地中海食群では提供された食餌を全て食べることはなく、
適正体重が維持されたのに対し、
西洋食群では必要量をはるかに超える量を食べ、
体重が増加していた」と説明。
また、「西洋食と比べて地中海食は脂肪肝の予防に優れている
ことを示した実験に基づく初のエビデンスが得られた」としている。
(岬りり子)
2019年07月10日
「骨折ハイリスク患者では5年のビスホスホネート製剤使用後、さらに3〜5年使用しても良い」
「骨折ハイリスク患者では5年のビスホスホネート製剤使用後、さらに3〜5年使用しても良い」
高骨折リスク患者とは、
既に椎体骨折、大腿骨近位部骨折の既往があったり、
プレドニン(副腎皮質ホルモン)7.5mg/日以上内服していたりするような患者です。
つまりビス剤は計8〜10年使用しても良いだろうというのです。
骨粗鬆症まとめです。
DXA法で腰椎と大腿骨頚部の骨密度を測定、OH(ビタミンD)トータル血中濃度を測定、
既存の骨折歴を聞いて、診断し、治療法を選択しています。
圧迫骨折で、ご本人あるいは家族で皮下注射が可能ならば、
フォルテオ(副甲状腺ホルモン)を使用しています。
副甲状腺ホルモンは”骨を破壊しろ”と破骨細胞に命令します。
骨が壊されると、ヒトの骨を作るスイッチが入ります。
これを毎日皮下注射してやると
骨を作り続けるので、本当に骨が強くなります。
ビスホスホネート製剤は、破骨細胞を抑制するので、壊れるスピードが遅くなり、
相対的に骨が強くなります。
転倒して、尻もちをつくと圧迫骨折、
横倒しに倒れると、大腿頚部骨折、
75歳前後からは骨折が残念ながら、ついてきます。
転倒の危険性を増やしている1つとして、
日本で安易に処方されているベンゾジアゼピン(精神安定剤とか入眠剤と言って処方されるもの)や、
日本でよくある polypharmacy (多数薬剤投与)が挙げられます。
最近、高齢者の交通事故が問題になっていますが、
認知症だけが問題なのではなく、
医師が安易に処方している眠剤や polypharmacy (多数薬剤投与)が
原因の可能性があります。
眠剤でなくとも 4 種、5 種類以上の polypharmacy (多数薬剤投与)は それだけで転倒の原因になります
以前「フラフラする」という主訴のおばあさんが外来に来られました。
他院で 6 種類ほどの、あまりコア薬でない薬を処方されていたので
全て切ってみたら途端に主訴は全くなくなりケロリと改善してしまいました。
またある総合病院の各科に受診されている患者さんの薬を調べたら
なんと1日27種類の薬を処方されていました。
『多数無責任体制』になっているのです。
米国では州により外来でのベンゾジアゼピン系の処方が禁じられています。
多彩な副作用があるからです。
どうしても眠剤を出すなら嗜癖性のない
デジレル(トラゾドン、抗うつ薬)かロゼレム(ラメルテオン、メラトニン受容体作動薬)
を処方するのです。
高骨折リスク患者とは、
既に椎体骨折、大腿骨近位部骨折の既往があったり、
プレドニン(副腎皮質ホルモン)7.5mg/日以上内服していたりするような患者です。
つまりビス剤は計8〜10年使用しても良いだろうというのです。
骨粗鬆症まとめです。
DXA法で腰椎と大腿骨頚部の骨密度を測定、OH(ビタミンD)トータル血中濃度を測定、
既存の骨折歴を聞いて、診断し、治療法を選択しています。
圧迫骨折で、ご本人あるいは家族で皮下注射が可能ならば、
フォルテオ(副甲状腺ホルモン)を使用しています。
副甲状腺ホルモンは”骨を破壊しろ”と破骨細胞に命令します。
骨が壊されると、ヒトの骨を作るスイッチが入ります。
これを毎日皮下注射してやると
骨を作り続けるので、本当に骨が強くなります。
ビスホスホネート製剤は、破骨細胞を抑制するので、壊れるスピードが遅くなり、
相対的に骨が強くなります。
転倒して、尻もちをつくと圧迫骨折、
横倒しに倒れると、大腿頚部骨折、
75歳前後からは骨折が残念ながら、ついてきます。
転倒の危険性を増やしている1つとして、
日本で安易に処方されているベンゾジアゼピン(精神安定剤とか入眠剤と言って処方されるもの)や、
日本でよくある polypharmacy (多数薬剤投与)が挙げられます。
最近、高齢者の交通事故が問題になっていますが、
認知症だけが問題なのではなく、
医師が安易に処方している眠剤や polypharmacy (多数薬剤投与)が
原因の可能性があります。
眠剤でなくとも 4 種、5 種類以上の polypharmacy (多数薬剤投与)は それだけで転倒の原因になります
以前「フラフラする」という主訴のおばあさんが外来に来られました。
他院で 6 種類ほどの、あまりコア薬でない薬を処方されていたので
全て切ってみたら途端に主訴は全くなくなりケロリと改善してしまいました。
またある総合病院の各科に受診されている患者さんの薬を調べたら
なんと1日27種類の薬を処方されていました。
『多数無責任体制』になっているのです。
米国では州により外来でのベンゾジアゼピン系の処方が禁じられています。
多彩な副作用があるからです。
どうしても眠剤を出すなら嗜癖性のない
デジレル(トラゾドン、抗うつ薬)かロゼレム(ラメルテオン、メラトニン受容体作動薬)
を処方するのです。
2019年07月09日
新常識! ニューロンは運動で増える
新常識! ニューロンは運動で増える
なぜ、運動をすると頭が良くなるのか?
運動が「脳の神経細胞を育てる」からだというのは、
『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)の著者、
ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士だ。
「運動すると、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が脳の中でさかんに分泌されます。
このBDNFが、脳の神経細胞(ニューロン)や、脳に栄養を送る血管の形成を促す
ことが明らかになりました」
以前は「脳のニューロンの数は生まれたときに決まっており、
その後は加齢とともに減っていく一方で、増えることはない」と考えられていた。
だが最近では、さまざまな要因で後天的に増えることが科学的な常識となっている。
「ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのは、運動です。
さらにものを覚えたり認知能力を高めるために必要な神経結合を増やしたり、
ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった
思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促す
効果も、運動にはあります」と、レイティ氏は言う。
たとえばいくつかの研究では、有酸素運動によるトレーニングを行うことで、
記憶をつかさどる海馬が大きくなることがわかっている。
また、継続的な運動によって、脳の認知能力が強化されることも明らかになってきた。
2001年に米カリフォルニア州教育局が9年生(日本での中学3年生に相当)28万人に行った大規模調査の結果。基礎体力や心肺機能などを総合し、受検者の体力スコアを1〜6に分類。
各体力スコア層のリーディングと数学の平均点を算出したもの。
学業成績と運動との関連性については、
アメリカでは1980年代から研究が進められてきた。
有名なものの1つは、カリフォルニア州教育局が
2001年、同州の小学5年生約35万人、中学1年生約32万人、中学3年生約28万人を対象
に行った大規模な調査だ。
この調査ではまず、「フィットネスグラム」と呼ばれる総合的な体力調査で、
子供たちの心肺能力や筋力、持久力、体脂肪率などを調べる。
そして、体力と標準学力テストの数学およびリーディング(英文読解)の成績の、関連性を分析した。
すると、体力調査での成績が高い子供ほど、学業成績も優秀な傾向があることが確認された。
では、どういう運動が、脳を育てるために効果的なのか。
レイティ氏が勧めるのは、一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動だ。
研究によると、数ある体力の評価基準のうち、
とくに心肺機能が学業成績と強い相関関係を示しているという。
具体的な心肺機能の高め方は、
速足でのウオーキングやランニング、
エアロビクスやエアロバイクを使った運動など。
週に2日は最大心拍数(注)の75.90%まで上がる運動を短めに、
残り4日は65.75%までの運動をやや長めに、というのが脳のためには理想的だという。
心拍数の目安としては、ランニングでたとえると、
最大心拍数に対して80%以上というのはかなりきつい全力疾走、
70%はやや息が上がる走り込みといった具合だ。
心拍計を使って測ってみるのもよいだろう。
ジョン・J・レイティ
ハーバード大学医学部准教授。精神医学を専門として幅広く活躍。
イリノイ州ネーパーヴィルの事例を研究し、
運動が脳を活性化することを広く世に知らしめた。
「ただ、子供たちの場合は、
本人が好きで楽しいと感じることをやらせてください。
かけっこ、ボール遊び、ダンスや体操など、
なんでも構いません。
毎日、運動させるのはとても大変なことですから、
無理をしないことが大切です」(レイティ氏)
なぜ、サッカーやバスケットボールなどでは駄目なのか。
その理由をレイティ氏はこう語る。
「チームスポーツの場合、運動に苦手意識を持っている子は、体を動かしにくい。
ですから、頭を良くする運動の観点からは、競争や勝負を排除したほうが良い
というのが、私の考えなのです」
さらに、体を動かしながら頭も使うような運動はより効果的だとも、
レイティ氏はアドバイスする。
「ヨガのポーズ、空手の形といったように、
自らの動きを意識させる運動は脳に良い刺激になります。
また、複雑な動きをし、普段使わない筋肉を意識的に使うことも有効でしょう」(レイティ氏)
とはいえ、運動だけで成績が上がるわけではないとも、レイティ氏は指摘する。
「運動はあくまで、脳が学習するための準備を整える役割です。
成績を上げるためには、そのあとの学習とセットで考える必要があります。
運動を終えるとまもなく脳の血流が増しますが、
このときこそが、思考力や集中力が飛躍的に高まるチャンス。
勉強を始める前、できれば朝にやることをお勧めします」
できれば毎朝体を動かし、心拍数を上げてから勉強に向かう。
これが最新科学が解明した「運動で頭を良くする」極意。
こうしたレイティ氏の理論を基に米国でboks(ボックス)と呼ばれる運動プログラムが開発された。
(注)最大心拍数:一般的には成人男性の場合、220から自分の年齢を引いた値を理論上の最大心拍数とみなす。
レイティ氏の理論を基に米国で行われている運動プログラム(boks)
子供の脳細胞を増やす運動「3大条件」
1.準備体操(標準時間5〜10分)
運動前に体と心をほぐす輪になっての準備運動。
声を意識して出すことで、積極的に体を動かせるようにする。
2.ランニングアクティビティ(標準時間10分〜)
体を動かし体温を上げるジグザグ走やジャンプなどを
取り入れたランニングで、体を温める。
3.グループゲーム(標準時間15分〜)
体だけでなく、頭も使って楽しむ遊びをベースとした、
作戦やチームワークが必要とされるゲームに取り組む。
4.クールダウン
整理運動をし、徐々にクールダウン体操などで
参加者全員に同じ動きをさせ、気持ちを一つにするのも目的。
なぜ、運動をすると頭が良くなるのか?
運動が「脳の神経細胞を育てる」からだというのは、
『脳を鍛えるには運動しかない!』(NHK出版)の著者、
ハーバード大学医学部のジョン・J・レイティ博士だ。
「運動すると、脳由来神経栄養因子(BDNF)という物質が脳の中でさかんに分泌されます。
このBDNFが、脳の神経細胞(ニューロン)や、脳に栄養を送る血管の形成を促す
ことが明らかになりました」
以前は「脳のニューロンの数は生まれたときに決まっており、
その後は加齢とともに減っていく一方で、増えることはない」と考えられていた。
だが最近では、さまざまな要因で後天的に増えることが科学的な常識となっている。
「ニューロンの数を増やすために最も効果が期待できるのは、運動です。
さらにものを覚えたり認知能力を高めるために必要な神経結合を増やしたり、
ドーパミンやセロトニン、ノルアドレナリンといった
思考や感情にかかわる神経伝達物資の分泌を促す
効果も、運動にはあります」と、レイティ氏は言う。
たとえばいくつかの研究では、有酸素運動によるトレーニングを行うことで、
記憶をつかさどる海馬が大きくなることがわかっている。
また、継続的な運動によって、脳の認知能力が強化されることも明らかになってきた。
2001年に米カリフォルニア州教育局が9年生(日本での中学3年生に相当)28万人に行った大規模調査の結果。基礎体力や心肺機能などを総合し、受検者の体力スコアを1〜6に分類。
各体力スコア層のリーディングと数学の平均点を算出したもの。
学業成績と運動との関連性については、
アメリカでは1980年代から研究が進められてきた。
有名なものの1つは、カリフォルニア州教育局が
2001年、同州の小学5年生約35万人、中学1年生約32万人、中学3年生約28万人を対象
に行った大規模な調査だ。
この調査ではまず、「フィットネスグラム」と呼ばれる総合的な体力調査で、
子供たちの心肺能力や筋力、持久力、体脂肪率などを調べる。
そして、体力と標準学力テストの数学およびリーディング(英文読解)の成績の、関連性を分析した。
すると、体力調査での成績が高い子供ほど、学業成績も優秀な傾向があることが確認された。
では、どういう運動が、脳を育てるために効果的なのか。
レイティ氏が勧めるのは、一定時間にわたって心拍数を上げるタイプの運動だ。
研究によると、数ある体力の評価基準のうち、
とくに心肺機能が学業成績と強い相関関係を示しているという。
具体的な心肺機能の高め方は、
速足でのウオーキングやランニング、
エアロビクスやエアロバイクを使った運動など。
週に2日は最大心拍数(注)の75.90%まで上がる運動を短めに、
残り4日は65.75%までの運動をやや長めに、というのが脳のためには理想的だという。
心拍数の目安としては、ランニングでたとえると、
最大心拍数に対して80%以上というのはかなりきつい全力疾走、
70%はやや息が上がる走り込みといった具合だ。
心拍計を使って測ってみるのもよいだろう。
ジョン・J・レイティ
ハーバード大学医学部准教授。精神医学を専門として幅広く活躍。
イリノイ州ネーパーヴィルの事例を研究し、
運動が脳を活性化することを広く世に知らしめた。
「ただ、子供たちの場合は、
本人が好きで楽しいと感じることをやらせてください。
かけっこ、ボール遊び、ダンスや体操など、
なんでも構いません。
毎日、運動させるのはとても大変なことですから、
無理をしないことが大切です」(レイティ氏)
なぜ、サッカーやバスケットボールなどでは駄目なのか。
その理由をレイティ氏はこう語る。
「チームスポーツの場合、運動に苦手意識を持っている子は、体を動かしにくい。
ですから、頭を良くする運動の観点からは、競争や勝負を排除したほうが良い
というのが、私の考えなのです」
さらに、体を動かしながら頭も使うような運動はより効果的だとも、
レイティ氏はアドバイスする。
「ヨガのポーズ、空手の形といったように、
自らの動きを意識させる運動は脳に良い刺激になります。
また、複雑な動きをし、普段使わない筋肉を意識的に使うことも有効でしょう」(レイティ氏)
とはいえ、運動だけで成績が上がるわけではないとも、レイティ氏は指摘する。
「運動はあくまで、脳が学習するための準備を整える役割です。
成績を上げるためには、そのあとの学習とセットで考える必要があります。
運動を終えるとまもなく脳の血流が増しますが、
このときこそが、思考力や集中力が飛躍的に高まるチャンス。
勉強を始める前、できれば朝にやることをお勧めします」
できれば毎朝体を動かし、心拍数を上げてから勉強に向かう。
これが最新科学が解明した「運動で頭を良くする」極意。
こうしたレイティ氏の理論を基に米国でboks(ボックス)と呼ばれる運動プログラムが開発された。
(注)最大心拍数:一般的には成人男性の場合、220から自分の年齢を引いた値を理論上の最大心拍数とみなす。
レイティ氏の理論を基に米国で行われている運動プログラム(boks)
子供の脳細胞を増やす運動「3大条件」
1.準備体操(標準時間5〜10分)
運動前に体と心をほぐす輪になっての準備運動。
声を意識して出すことで、積極的に体を動かせるようにする。
2.ランニングアクティビティ(標準時間10分〜)
体を動かし体温を上げるジグザグ走やジャンプなどを
取り入れたランニングで、体を温める。
3.グループゲーム(標準時間15分〜)
体だけでなく、頭も使って楽しむ遊びをベースとした、
作戦やチームワークが必要とされるゲームに取り組む。
4.クールダウン
整理運動をし、徐々にクールダウン体操などで
参加者全員に同じ動きをさせ、気持ちを一つにするのも目的。
2019年07月08日
よく笑うほど早期死亡リスク減?−山形大グループの前向き研究
(笑う門には福来たる!)
よく笑うほど早期死亡リスク減?−山形大グループの前向き研究
提供元:HealthDay News 公開日:2019/05/13
日本人の一般集団では、日常生活の中で笑う頻度が高いほど
全死亡率や心血管疾患の発症率が低い可能性があることが、
山形大学医学部看護学科教授の櫻田香氏らの検討で分かった。
心筋梗塞や脳卒中を減らし、早期死亡リスクを低減するためには、
日常生活でもっと笑う機会を持つことが鍵となる可能性があるという。
詳細は「Journal of Epidemiology」4月6日オンライン版に掲載された。
これまでの研究で、ポジティブな心理的要因は長寿と関連するのに対し、
抑うつや不安、心理的苦痛といったネガティブな要因は
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症につながる可能性が示唆されている。
櫻田氏らは、心理的要因のうち「笑い」に着目。
山形県の一般住民を対象に、
毎日の生活の中で笑う頻度と死亡率および心血管疾患の発症率
との関連について前向き研究を実施した。
対象は、山形県の一般住民を対象とした山形県コホート研究(Yamagata Study)に参加し、
健康診断を受けた40歳以上の男女1万7,152人(男性40.8%)。
参加者には、毎日どのくらい笑う機会があるかを尋ね、
その頻度で3つの群「週1回以上」「週1回未満〜月1回以上」「月1回未満」に分けて比較検討した。
中央値で5.4年の追跡期間中に、257人(1.5%)が死亡し、138人(0.8%)が心血管疾患を発症した。
解析の結果、日ごろほとんど笑わない人では、
全死亡率と心血管疾患の発症率が有意に高いことが分かった(log-rank P<0.01)。
また、年齢や性、高血圧、喫煙や飲酒の習慣で調整したCox比例ハザードモデル分析の結果、
週1回以上笑う人と比べて、
笑う頻度が月1回未満の人では死亡リスクが約2倍に高まることが分かった
(ハザード比1.95、95%信頼区間1.16〜3.09)。
同様に、週1回以上笑う人と比べて、
その頻度が週1回未満〜月1回以上の人では
心血管疾患の発症リスクは約1.6倍であった(同1.62、1.07〜2.40)。
櫻田氏らの検討では、
特に男性や飲酒の習慣がある人、
糖尿病患者、
運動不足の人、
配偶者がいない人で笑う頻度が低かったという。
今回の結果を踏まえ、同氏らは「日本人の一般集団では、
“笑い”は全死亡や心血管疾患発症の独立したリスク因子である可能性が示された。
心血管疾患を減らし、長寿を目指すには、日常生活でもっと笑う機会を持つ工夫が必要かもしれない」
と述べている。
[2019年4月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら
Sakurada K, et al. J Epidemiol. 2019 Apr 6. [Epub ahead of print]
よく笑うほど早期死亡リスク減?−山形大グループの前向き研究
提供元:HealthDay News 公開日:2019/05/13
日本人の一般集団では、日常生活の中で笑う頻度が高いほど
全死亡率や心血管疾患の発症率が低い可能性があることが、
山形大学医学部看護学科教授の櫻田香氏らの検討で分かった。
心筋梗塞や脳卒中を減らし、早期死亡リスクを低減するためには、
日常生活でもっと笑う機会を持つことが鍵となる可能性があるという。
詳細は「Journal of Epidemiology」4月6日オンライン版に掲載された。
これまでの研究で、ポジティブな心理的要因は長寿と関連するのに対し、
抑うつや不安、心理的苦痛といったネガティブな要因は
心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患の発症につながる可能性が示唆されている。
櫻田氏らは、心理的要因のうち「笑い」に着目。
山形県の一般住民を対象に、
毎日の生活の中で笑う頻度と死亡率および心血管疾患の発症率
との関連について前向き研究を実施した。
対象は、山形県の一般住民を対象とした山形県コホート研究(Yamagata Study)に参加し、
健康診断を受けた40歳以上の男女1万7,152人(男性40.8%)。
参加者には、毎日どのくらい笑う機会があるかを尋ね、
その頻度で3つの群「週1回以上」「週1回未満〜月1回以上」「月1回未満」に分けて比較検討した。
中央値で5.4年の追跡期間中に、257人(1.5%)が死亡し、138人(0.8%)が心血管疾患を発症した。
解析の結果、日ごろほとんど笑わない人では、
全死亡率と心血管疾患の発症率が有意に高いことが分かった(log-rank P<0.01)。
また、年齢や性、高血圧、喫煙や飲酒の習慣で調整したCox比例ハザードモデル分析の結果、
週1回以上笑う人と比べて、
笑う頻度が月1回未満の人では死亡リスクが約2倍に高まることが分かった
(ハザード比1.95、95%信頼区間1.16〜3.09)。
同様に、週1回以上笑う人と比べて、
その頻度が週1回未満〜月1回以上の人では
心血管疾患の発症リスクは約1.6倍であった(同1.62、1.07〜2.40)。
櫻田氏らの検討では、
特に男性や飲酒の習慣がある人、
糖尿病患者、
運動不足の人、
配偶者がいない人で笑う頻度が低かったという。
今回の結果を踏まえ、同氏らは「日本人の一般集団では、
“笑い”は全死亡や心血管疾患発症の独立したリスク因子である可能性が示された。
心血管疾患を減らし、長寿を目指すには、日常生活でもっと笑う機会を持つ工夫が必要かもしれない」
と述べている。
[2019年4月22日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.
原著論文はこちら
Sakurada K, et al. J Epidemiol. 2019 Apr 6. [Epub ahead of print]
2019年07月07日
女性へのゾルピデム(マイスリー)使用リスク
女性へのゾルピデム(マイスリー)使用リスク
提供元:ケアネット 公開日:2019/05/08
2013年、女性に対するゾルピデム就寝前投与は、
昼間の鎮静リスクを上昇させ、
運転技能の低下を来すことを示す新たなデータの存在をFDAが報告した。
これには、女性では男性と比較し、
ゾルピデムの代謝クリアランスの減少および朝の血中濃度の上昇が影響していると推定される。
このことから、FDAは、
女性へのゾルピデム推奨投与量を、
『男性の50%まで減量』するよう指示した。
しかし、世界的にどの規制当局においても同様な指示は出ていない。
米国・睡眠障害研究センターのDavid J. Greenblatt氏らは、
女性へのゾルピデム使用リスクについて、レビューおよび評価を行った。
Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。
ゾルピデムの薬物動態、薬力学、有害事象、臨床的有効性、
運転能力に対する性別の影響を評価するため、
文献レビューとともにこれまでの研究データをさらに分析した。
主な結果は以下のとおり。
・女性では、男性と比較し、
ゾルピデムの見かけのクリアランスが平均35%低いことが示唆された
(236 vs.364mL/分、p<0.001)。
・この違いは、体重による影響を受けていなかった。
・いくつかの臨床試験において、同用量を服用している場合、
男性よりも女性において機能障害が大きかったが、
すべての研究において、経口投与8時間後における活性薬物は、プラセボ群と区分できなかった。
・路上走行試験でも同様に、経口即時放出型ゾルピデム10mg投与8時間後において、
男性および女性に運転障害があることは示されなかった。
・臨床的有効性および有害事象における性差は、臨床試験では実証されておらず、
女性において特別なリスクがあることは示されなかった。
著者らは「女性に対するゾルピデム投与量減量は、
入手可能な科学的根拠では裏付けられていない。
過少投与が不適切な不眠症治療につながり、
その結果として起こるリスクを上昇させる可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Greenblatt DJ, et al. J Clin Psychopharmacol. 2019;39:189-199.
提供元:ケアネット 公開日:2019/05/08
2013年、女性に対するゾルピデム就寝前投与は、
昼間の鎮静リスクを上昇させ、
運転技能の低下を来すことを示す新たなデータの存在をFDAが報告した。
これには、女性では男性と比較し、
ゾルピデムの代謝クリアランスの減少および朝の血中濃度の上昇が影響していると推定される。
このことから、FDAは、
女性へのゾルピデム推奨投与量を、
『男性の50%まで減量』するよう指示した。
しかし、世界的にどの規制当局においても同様な指示は出ていない。
米国・睡眠障害研究センターのDavid J. Greenblatt氏らは、
女性へのゾルピデム使用リスクについて、レビューおよび評価を行った。
Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。
ゾルピデムの薬物動態、薬力学、有害事象、臨床的有効性、
運転能力に対する性別の影響を評価するため、
文献レビューとともにこれまでの研究データをさらに分析した。
主な結果は以下のとおり。
・女性では、男性と比較し、
ゾルピデムの見かけのクリアランスが平均35%低いことが示唆された
(236 vs.364mL/分、p<0.001)。
・この違いは、体重による影響を受けていなかった。
・いくつかの臨床試験において、同用量を服用している場合、
男性よりも女性において機能障害が大きかったが、
すべての研究において、経口投与8時間後における活性薬物は、プラセボ群と区分できなかった。
・路上走行試験でも同様に、経口即時放出型ゾルピデム10mg投与8時間後において、
男性および女性に運転障害があることは示されなかった。
・臨床的有効性および有害事象における性差は、臨床試験では実証されておらず、
女性において特別なリスクがあることは示されなかった。
著者らは「女性に対するゾルピデム投与量減量は、
入手可能な科学的根拠では裏付けられていない。
過少投与が不適切な不眠症治療につながり、
その結果として起こるリスクを上昇させる可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Greenblatt DJ, et al. J Clin Psychopharmacol. 2019;39:189-199.
2019年07月06日
コレステロール低値が出血性脳卒中リスク上昇と関連
(LDL−C(悪玉コレステロール)値を下げないといけないのは
心筋梗塞、狭心症の2次予防(2回目の発症を予防)や脳卒中の2次予防のみ!
閉経後の女性が160まで上がるのは当たり前、
1次予防と称して服薬されていると、
血管壁が脆弱になり脳出血の危険性が出ることを証明した?)
コレステロール低値が出血性脳卒中リスク上昇と関連
公開日:2019/05/10
Low Cholesterol Linked to Higher Hemorrhagic Stroke Risk
Batya Swift Yasgur, MA, LSW / Medscape 2019/4/15
新たな試験によって、LDL-C値およびトリグリセライド値が非常に低い女性は、
それらの値がより高い女性よりも出血性脳卒中を発症するリスクが
2倍以上高い可能性があると示唆されている。
ハーバード大学の研究者らは、
Women's Health研究に組み入れられた『女性約2万8,000人のコホート』において、
『約20年以上にわたる前向き研究』を実施した。
研究者らは、脳卒中リスクに影響しうる他の因子について調整後、
LDL-C値が100〜130mg/dLの群と比較し、
『70mg/dL未満』の群では『出血性脳卒中を発症するリスクが2倍以上』
高かったことを見いだした。
同様に、多変量調整後、トリグリセライド値が最低四分位群の出血性脳卒中リスクは、
最高四分位群と比較して有意に上昇していた。
「医師がこの研究から得ることができる重要なメッセージは、
通常、LDL-C値が低い女性は心臓発作や脳卒中のリスクが低いと考えられているが、
出血性脳卒中のリスクは高い可能性がある、ということだと考えている」と、
筆頭著者であるハーバード大学医学大学院(マサチューセッツ州、ボストン)の
Pamela Rist氏はMedscape Medical Newsに対し述べた。
「出血性脳卒中に関連する疾患罹患率や死亡率を考慮すると、
出血性脳卒中のリスクを低下させるために、
そのような女性において高血圧や喫煙のような他のリスク因子をモニタリングすることが重要である」
と同氏は述べた。
本研究はNeurology誌4月10日号オンライン版で発表された。
女性に注目
LDL-Cが高値かつHDL-Cが低値であることは、虚血性脳卒中や心筋梗塞のリスク上昇と関連するが、
「過去のいくつかの研究によって、LDL-C値が非常に低値であることと
出血性脳卒中のリスク上昇が関連する可能性が示唆されている」とRist氏は述べた。
「女性の大規模集団であるわれわれのコホートにおいて試験を実施することに、とくに興味があった。
なぜなら、他の試験の大多数は(男性と女性の)両方を組み入れていたが、
女性におけるイベントはわれわれの試験におけるイベントよりも限定されていたからである」
と同氏は説明した。
「われわれの試験には2万8,000人近い女性が組み入れられていたことから、
本コホートにおいても出血性脳卒中に関する示唆が同様に認められるかどうかを確認したいと考えた」
と続けている。
本コホートは、Women's Health研究に参加する女性で構成された。
Women's Health研究は2004年に終了しているが、観察的追跡調査は現在も進行中である。
参加者2万8,345人から得た空腹時血液サンプルのうち、
2万7,937人について、
LDL-C、HDL-C、総コレステロール、トリグリセライドの値を解析した。
研究者らは、年齢、喫煙、閉経、閉経後ホルモン補充療法(PMH)の状態、
BMI、飲酒、糖尿病および高血圧の病歴、身体活動量、コレステロール低下薬による
治療を含む共変数で調整した。
『U字型曲線』
LDL-C値が最低であった(70mg/dL未満)群は、
100〜129.9mg/dLの群より、若年で、高血圧の病歴がある可能性や
コレステロール低下薬の使用率が低かった。
LDL-C最低値群はまた、
飲酒率が高く、正常体重で、活動的であり、閉経前である可能性が高かった。
対照的に、LDL-C最高値群(160mg/dL以上)はより高齢で、
喫煙率、コレステロール低下薬の使用率およびPMHの実施率が高く、
高血圧や糖尿病の病歴を有する可能性、肥満である可能性が高かった。
最高値群はまた、100〜129.9mg/dLの群よりも飲酒率が低く、活動的である可能性も低かった。
平均19.3年間の追跡期間中、137件の出血性脳卒中イベントが確認された。
そのうち最も多かったのは脳内出血(ICH、85例)であり、次いでくも膜下出血(SA、43例)であった。
LDL-C値70mg/dL未満の群1,069人のうち出血性脳卒中を発症したのは0.8%であったのに対し、
70mg/dL以上の群では0.4%であった。
LDL-C値と出血性脳卒中リスクとの間にはU字型の相関が認められた。
多変量調整後、LDL-C値100〜129.9mg/dLの群と比較し、
70mg/dL未満の群が出血性脳卒中を経験するリスクは2.17倍であった
(95%信頼区間[CI]:1.05〜4.48)。
また、LDL-C値160mg/dL以上の群においてもリスク上昇の傾向がみられたが、
その上昇は統計学的に有意なものではなかった。
LDL-C値70〜99.9mg/dLの群や130〜159.9mg/dLの群では、
出血性脳卒中リスクの有意な上昇は認められなかった
(それぞれ、相対リスク[RR]:1.25、95%CI:0.76〜2.04、およびRR:1.14、95%CI:0.72〜1.80)。
ICH(脳内出血)についての解析では、
出血性脳卒中全体と同様の結果が得られた
(すなわち、イベントリスクが最も高かったのはLDL-C値70mg/dL未満の群であり、
次いで160mg/dL以上の群であった)。
治療なしで“もともと”低値
多変量調整後、トリグリセライド値が最低四分位群(空腹時74mg/dL以下および非空腹時85mg/dL以下)
の出血性脳卒中リスクは、最高四分位群と比較し有意に上昇していた(RR:2.00、95%CI:1.18〜3.39)。
それ以外の四分位群は、有意なリスク上昇と関連しなかった。
トリグリセライド低値はSAH(くも膜下出血)の有意なリスク上昇と関連したが、
ICHのリスク上昇とは関連しなかった。
LDL-C値のカテゴリーとトリグリセライド値の四分位群とを含むモデルでは、
LDL-C値で調整後、トリグリセライド値が最低四分位群の出血性脳卒中リスクは、
最高四分位群と比較し高かった(RR:2.14、95%CI:1.24〜3.70)。
一方で、トリグリセライド値で調整後、
LDL-C値70mg/dL未満の群(RR:2.04、95%CI:0.98〜4.23)および
160mg/dL以上の群(RR:1.75、95%CI:1.05〜2.92)の
出血性脳卒中リスクは、100〜129.9mg/dLの群と比較し高かった。
ベースライン時にコレステロール低下薬を服用していなかった群(2万7,044人)に限定した解析では、
主解析と同様の結果が得られたが、
LDL-C値70mg/dL未満の群におけるリスク上昇は統計学的に有意な値ではなくなった。
『HDL-C値や総コレステロール値と出血性脳卒中リスクとの間には、
有意な関連は認められなかった』。
Rist氏は、「コレステロール値が非常に低値の女性における、
出血性脳卒中リスク上昇の潜在的メカニズムは明らかになっていない」と述べた。
「血管壁の完全性の問題がメカニズムに関連している可能性が考えられている」と同氏は述べた。
同氏らのコホートは、「『スタチンのような脂質低下薬』が現在のように広く使用される
『以前』の1990年代初頭に血液検査を実施したという点で、独特である」と同氏は述べている。
「われわれは(コレステロール)低値の長期的な影響を調査しており、
『もともと低値であった女性は、
高値であったが薬剤の使用によって値が低下した女性とは異なる可能性が高い』
ため、この点は非常に重要である」と続けた。
長期の安全性に関する危険信号か
本研究に関与していない、
Johns Hopkins Ciccarone Center for the Prevention of Heart Disease
(メリーランド州、ボルティモア)のErin D. Michos氏は、
「コレステロール低値によって出血性脳卒中リスクが上昇するかどうかということは、
長い間議論されてきている」と、本研究についてMedscape Medical Newsにコメントした。
その議論は、「血中コレステロール低値と出血性脳卒中リスク上昇の関連が
見いだされた多くの疫学研究に端を発している」と同氏は述べた。
「“重要な点”について著者ら自身が説明している」と同氏は指摘した。
すなわち、「LDL-C値が非常に低い人は、より高い人よりも健康ではない可能性があり、
そのことによって脳出血を発症しやすくなっている」という点である。
そのため本結果は、「私の診療を変えることはまったくない。
なぜなら、『私は疫学研究における単回の脂質測定における残余交絡を依然として疑っている』
からである」と同氏は述べた。
しかしながら、「生涯にわたってLDL-C値が非常に低値な人における、
メンデルランダム化を用いた遺伝学的試験によって今後この関連が確認されるか、
あるいはLDL-C低下療法のRCTでこの関連が見いだされれば、
私は納得するだろう」と同氏は述べた。
同氏は診療において、「『ハイリスク患者のような、ASCVD(アテローム性心血管疾患)
減少のネットベネフィットを得られると期待される患者のみ』を、
スタチンおよび脂質低下薬によって治療している。
(なぜなら)『スタチンはすべての患者に適している治療薬ではない』からである」と述べた。
本研究に関与していない、
Azienda Ospedaliero-Universitaria Pisana(イタリア)のRaffaele De Caterina氏は、
別の見方をしている。
「他の試験よりもずっと長期の追跡期間であることから、
本研究の結果はエビデンスの重要な一部であると考えている」と
同氏はMedscape Medical Newsに述べた。
「本結果によって、PCSK9(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)阻害薬
によるもののような、大幅な脂質低下がもたらす長期的な結果に関する懸念が生じる」
と同氏は述べた。
「われわれはすでに、LDL-C値が70mg/dL未満の患者における高強度のLDL-C低下療法の費用対効果に関する懸念を持っており、『長期の安全性に関する危険信号が灯った今』、その懸念はより強固なものとなるだろう」。
Rist氏は、「治療の結果としてのコレステロール低値が出血性脳卒中リスクに与える影響は、
また別の研究課題である。
最初からすでに非常にコレステロール値が低かったこれらの女性での結果から、
コレステロール高値であったが治療を受けて現在は低値となった人での結果を推定するのは難しい」
と付け加えた。
さらなる研究が必要である、と同氏は強調した。
The study was supported by the National Institutes of Health.
The authors, Michos, and De Caterina report no relevant financial relationships.
Neurology. Published online April 10, 2019. Abstract
Medscape Medical News 2019
Medscapeオリジナル記事はこちら
心筋梗塞、狭心症の2次予防(2回目の発症を予防)や脳卒中の2次予防のみ!
閉経後の女性が160まで上がるのは当たり前、
1次予防と称して服薬されていると、
血管壁が脆弱になり脳出血の危険性が出ることを証明した?)
コレステロール低値が出血性脳卒中リスク上昇と関連
公開日:2019/05/10
Low Cholesterol Linked to Higher Hemorrhagic Stroke Risk
Batya Swift Yasgur, MA, LSW / Medscape 2019/4/15
新たな試験によって、LDL-C値およびトリグリセライド値が非常に低い女性は、
それらの値がより高い女性よりも出血性脳卒中を発症するリスクが
2倍以上高い可能性があると示唆されている。
ハーバード大学の研究者らは、
Women's Health研究に組み入れられた『女性約2万8,000人のコホート』において、
『約20年以上にわたる前向き研究』を実施した。
研究者らは、脳卒中リスクに影響しうる他の因子について調整後、
LDL-C値が100〜130mg/dLの群と比較し、
『70mg/dL未満』の群では『出血性脳卒中を発症するリスクが2倍以上』
高かったことを見いだした。
同様に、多変量調整後、トリグリセライド値が最低四分位群の出血性脳卒中リスクは、
最高四分位群と比較して有意に上昇していた。
「医師がこの研究から得ることができる重要なメッセージは、
通常、LDL-C値が低い女性は心臓発作や脳卒中のリスクが低いと考えられているが、
出血性脳卒中のリスクは高い可能性がある、ということだと考えている」と、
筆頭著者であるハーバード大学医学大学院(マサチューセッツ州、ボストン)の
Pamela Rist氏はMedscape Medical Newsに対し述べた。
「出血性脳卒中に関連する疾患罹患率や死亡率を考慮すると、
出血性脳卒中のリスクを低下させるために、
そのような女性において高血圧や喫煙のような他のリスク因子をモニタリングすることが重要である」
と同氏は述べた。
本研究はNeurology誌4月10日号オンライン版で発表された。
女性に注目
LDL-Cが高値かつHDL-Cが低値であることは、虚血性脳卒中や心筋梗塞のリスク上昇と関連するが、
「過去のいくつかの研究によって、LDL-C値が非常に低値であることと
出血性脳卒中のリスク上昇が関連する可能性が示唆されている」とRist氏は述べた。
「女性の大規模集団であるわれわれのコホートにおいて試験を実施することに、とくに興味があった。
なぜなら、他の試験の大多数は(男性と女性の)両方を組み入れていたが、
女性におけるイベントはわれわれの試験におけるイベントよりも限定されていたからである」
と同氏は説明した。
「われわれの試験には2万8,000人近い女性が組み入れられていたことから、
本コホートにおいても出血性脳卒中に関する示唆が同様に認められるかどうかを確認したいと考えた」
と続けている。
本コホートは、Women's Health研究に参加する女性で構成された。
Women's Health研究は2004年に終了しているが、観察的追跡調査は現在も進行中である。
参加者2万8,345人から得た空腹時血液サンプルのうち、
2万7,937人について、
LDL-C、HDL-C、総コレステロール、トリグリセライドの値を解析した。
研究者らは、年齢、喫煙、閉経、閉経後ホルモン補充療法(PMH)の状態、
BMI、飲酒、糖尿病および高血圧の病歴、身体活動量、コレステロール低下薬による
治療を含む共変数で調整した。
『U字型曲線』
LDL-C値が最低であった(70mg/dL未満)群は、
100〜129.9mg/dLの群より、若年で、高血圧の病歴がある可能性や
コレステロール低下薬の使用率が低かった。
LDL-C最低値群はまた、
飲酒率が高く、正常体重で、活動的であり、閉経前である可能性が高かった。
対照的に、LDL-C最高値群(160mg/dL以上)はより高齢で、
喫煙率、コレステロール低下薬の使用率およびPMHの実施率が高く、
高血圧や糖尿病の病歴を有する可能性、肥満である可能性が高かった。
最高値群はまた、100〜129.9mg/dLの群よりも飲酒率が低く、活動的である可能性も低かった。
平均19.3年間の追跡期間中、137件の出血性脳卒中イベントが確認された。
そのうち最も多かったのは脳内出血(ICH、85例)であり、次いでくも膜下出血(SA、43例)であった。
LDL-C値70mg/dL未満の群1,069人のうち出血性脳卒中を発症したのは0.8%であったのに対し、
70mg/dL以上の群では0.4%であった。
LDL-C値と出血性脳卒中リスクとの間にはU字型の相関が認められた。
多変量調整後、LDL-C値100〜129.9mg/dLの群と比較し、
70mg/dL未満の群が出血性脳卒中を経験するリスクは2.17倍であった
(95%信頼区間[CI]:1.05〜4.48)。
また、LDL-C値160mg/dL以上の群においてもリスク上昇の傾向がみられたが、
その上昇は統計学的に有意なものではなかった。
LDL-C値70〜99.9mg/dLの群や130〜159.9mg/dLの群では、
出血性脳卒中リスクの有意な上昇は認められなかった
(それぞれ、相対リスク[RR]:1.25、95%CI:0.76〜2.04、およびRR:1.14、95%CI:0.72〜1.80)。
ICH(脳内出血)についての解析では、
出血性脳卒中全体と同様の結果が得られた
(すなわち、イベントリスクが最も高かったのはLDL-C値70mg/dL未満の群であり、
次いで160mg/dL以上の群であった)。
治療なしで“もともと”低値
多変量調整後、トリグリセライド値が最低四分位群(空腹時74mg/dL以下および非空腹時85mg/dL以下)
の出血性脳卒中リスクは、最高四分位群と比較し有意に上昇していた(RR:2.00、95%CI:1.18〜3.39)。
それ以外の四分位群は、有意なリスク上昇と関連しなかった。
トリグリセライド低値はSAH(くも膜下出血)の有意なリスク上昇と関連したが、
ICHのリスク上昇とは関連しなかった。
LDL-C値のカテゴリーとトリグリセライド値の四分位群とを含むモデルでは、
LDL-C値で調整後、トリグリセライド値が最低四分位群の出血性脳卒中リスクは、
最高四分位群と比較し高かった(RR:2.14、95%CI:1.24〜3.70)。
一方で、トリグリセライド値で調整後、
LDL-C値70mg/dL未満の群(RR:2.04、95%CI:0.98〜4.23)および
160mg/dL以上の群(RR:1.75、95%CI:1.05〜2.92)の
出血性脳卒中リスクは、100〜129.9mg/dLの群と比較し高かった。
ベースライン時にコレステロール低下薬を服用していなかった群(2万7,044人)に限定した解析では、
主解析と同様の結果が得られたが、
LDL-C値70mg/dL未満の群におけるリスク上昇は統計学的に有意な値ではなくなった。
『HDL-C値や総コレステロール値と出血性脳卒中リスクとの間には、
有意な関連は認められなかった』。
Rist氏は、「コレステロール値が非常に低値の女性における、
出血性脳卒中リスク上昇の潜在的メカニズムは明らかになっていない」と述べた。
「血管壁の完全性の問題がメカニズムに関連している可能性が考えられている」と同氏は述べた。
同氏らのコホートは、「『スタチンのような脂質低下薬』が現在のように広く使用される
『以前』の1990年代初頭に血液検査を実施したという点で、独特である」と同氏は述べている。
「われわれは(コレステロール)低値の長期的な影響を調査しており、
『もともと低値であった女性は、
高値であったが薬剤の使用によって値が低下した女性とは異なる可能性が高い』
ため、この点は非常に重要である」と続けた。
長期の安全性に関する危険信号か
本研究に関与していない、
Johns Hopkins Ciccarone Center for the Prevention of Heart Disease
(メリーランド州、ボルティモア)のErin D. Michos氏は、
「コレステロール低値によって出血性脳卒中リスクが上昇するかどうかということは、
長い間議論されてきている」と、本研究についてMedscape Medical Newsにコメントした。
その議論は、「血中コレステロール低値と出血性脳卒中リスク上昇の関連が
見いだされた多くの疫学研究に端を発している」と同氏は述べた。
「“重要な点”について著者ら自身が説明している」と同氏は指摘した。
すなわち、「LDL-C値が非常に低い人は、より高い人よりも健康ではない可能性があり、
そのことによって脳出血を発症しやすくなっている」という点である。
そのため本結果は、「私の診療を変えることはまったくない。
なぜなら、『私は疫学研究における単回の脂質測定における残余交絡を依然として疑っている』
からである」と同氏は述べた。
しかしながら、「生涯にわたってLDL-C値が非常に低値な人における、
メンデルランダム化を用いた遺伝学的試験によって今後この関連が確認されるか、
あるいはLDL-C低下療法のRCTでこの関連が見いだされれば、
私は納得するだろう」と同氏は述べた。
同氏は診療において、「『ハイリスク患者のような、ASCVD(アテローム性心血管疾患)
減少のネットベネフィットを得られると期待される患者のみ』を、
スタチンおよび脂質低下薬によって治療している。
(なぜなら)『スタチンはすべての患者に適している治療薬ではない』からである」と述べた。
本研究に関与していない、
Azienda Ospedaliero-Universitaria Pisana(イタリア)のRaffaele De Caterina氏は、
別の見方をしている。
「他の試験よりもずっと長期の追跡期間であることから、
本研究の結果はエビデンスの重要な一部であると考えている」と
同氏はMedscape Medical Newsに述べた。
「本結果によって、PCSK9(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)阻害薬
によるもののような、大幅な脂質低下がもたらす長期的な結果に関する懸念が生じる」
と同氏は述べた。
「われわれはすでに、LDL-C値が70mg/dL未満の患者における高強度のLDL-C低下療法の費用対効果に関する懸念を持っており、『長期の安全性に関する危険信号が灯った今』、その懸念はより強固なものとなるだろう」。
Rist氏は、「治療の結果としてのコレステロール低値が出血性脳卒中リスクに与える影響は、
また別の研究課題である。
最初からすでに非常にコレステロール値が低かったこれらの女性での結果から、
コレステロール高値であったが治療を受けて現在は低値となった人での結果を推定するのは難しい」
と付け加えた。
さらなる研究が必要である、と同氏は強調した。
The study was supported by the National Institutes of Health.
The authors, Michos, and De Caterina report no relevant financial relationships.
Neurology. Published online April 10, 2019. Abstract
Medscape Medical News 2019
Medscapeオリジナル記事はこちら
2019年07月05日
【寄稿】平成の3大トピックス & 令和の医療を展望する
昭和62年に大学を卒業して、昭和64年に平成元年に変わり、
以降33年、3大トピックスを実感してきました。
CTは画像が荒く、頭しか撮れない、から始まり、
今は全身CTが撮れ、ヘリカルCTが出て飛躍的に画像解析が向上しました。
3D表示が当たり前にできるようになりました。
超音波検査、MRI、PETの出現、進歩も目の当たりにしました。
【寄稿】平成の3大トピックス & 令和の医療を展望する
札幌がんセミナー理事長 小林 博
平成を彩った3大ニュース
平成時代の代表的なニュースとして、
@画像診断など医療機器の開発
A鎮痛薬の開発による痛みの解消など緩和医療の登場
Bゲノム医療―の3つに絞ってみた。
1.医療機器の開発
機器の開発と進歩は産業界のみならず医療界でも顕著であった。
最たる事例は画像診断のための機器(CT、MRI、PETなど)の開発である。
がんは以前は、血液検査による腫瘍マーカーで見つけられることが多かったが、
その多くはある程度進行したがんであった。
これに比べ、画像診断はその局在を含めごく小さながんでも見つけることができるため、
早期発見、早期治療に大いに役立ち、結果的にがんの治療成績の向上に大きく貢献した。
治療面では内視鏡手術、ロボット手術の登場も大きい。
手際よく正確に、しかも患者にとっての負担が少ない手術を、
外科医だけでなく内科医でも行えるようになった。
患者の心身の負担とか苦痛を減らしQOLの向上に役立っただけでなく、
5年生存率の上昇にも寄与することとなった。
がん治療の機器として陽子線、重粒子線による放射線治療が身近なものになってきた。
その中でも、肺その他微少な動きのある臓器がんに対する動体追跡陽子線治療の実用化も特筆に値する。
その他、私たちが普段あまり気にしていないちょっとした医療器具の改良、改善
の恩恵を受けていることが各分野に意外と多いことに気付く。
2.緩和医療の登場
がんを攻撃したたくことに専念した時代がずいぶん長く続いた。
この間に学んだことは、がんをたたこうとするばかりに
生体の受けるダメージに気付かずにいてはいけないこと、
むしろがん患者のQOLを十分考慮した上での治療でなければいけないということであった。
こうした苦い経験を踏まえて、平成に入って「緩和医療」という新しい概念が浸透してきたのである。
その中でも、がんによる「痛みからの解放」が最大の成果であろう。
少なくともWHO推奨の鎮痛法で行う限り、
副作用もほとんどなく痛みが解消されるようになった。
患者にとっては画期的な進歩であり、誠に大きな福音である。
痛みの解消は身体的な面だけではない。
その後、心の痛み、あるいは精神的な痛み(スピリチュアルな痛み)に対するケアについても、
緩和医療の延長として広く理解され対処されるようになってきた。
仕事についてのがん患者の悩みは深い。
しかし最近では、患者が離職しなくとも済むようになってきた。
つまり社会のサポート態勢が整ってきた。
平成の30年間で、がんへの対応が大きく変わってきた、
というより医療が社会とともに「成熟した」といってよいのでないだろうか。
3.ゲノム医療の始まり
ゲノム医療が始まったのは比較的最近、平成の後半になってからのこと。
患者の遺伝子をはじめとした全ての遺伝情報(ゲノム)を解析して、
最も適切な治療法を決めようとするもの。
それがゲノム医療である。
「分子標的療法」といわれるものはその成果の1つ。
がんの分類も少し変わってきた。
従来の分類は臓器別、組織型別になされてきたが、それだけでは間に合わなくなってきた。
臓器の違ったがんであっても変異した遺伝子が共通であれば、
臓器の枠を越えてその変異に拮抗する同じ薬を使って治療することになる。
つまり変異遺伝子別に見る新たながんの考え方が生まれてきた。
ゲノム医療のための検査キットの製造販売も認められた。
今後、解析装置の性能向上やコストダウンが進めば、ゲノム医療はさらに広く普及し、
これが「令和」の新時代にやがて大きく開花することになるのであろう。
ただ、残念ながら少なくとも現状では、
ゲノム医療の恩恵にあずかれる患者はまだほんの一部にすぎない。
このことには十分留意しておきたい。
令和の医療を展望する:DALYの高い疾患ががんにとって代わるか
1.がん年齢の高齢化
人口の高齢化はますます進む。これに伴ってがん年齢の高齢化も一段と加速していく。
がん年齢の高齢化は単に死亡年齢が延びたからではない。
むしろ、がんにかかる罹患年齢が高齢化してきたことが原因なのである。このことは十分銘記しておきたい。
いまのがん年齢は70歳代後半、間もなく80歳代となり、
やがて「がん死亡年齢=寿命」の年齢に近くなっていく。
そうなれば「老いを憎めない」ように、
高齢者のがんに関する限り「がんもまた憎めない」存在になってくる。
このような状態になったとき「がんはもう解決に近づいた」と受けとめていいのではないか。
ただ、例外がある。小児がんとAYA世代、あるいは希少がん。
これらはなんとしても解決しなければならない、深刻な焦眉の問題である。
2.AI(人工知能)の医療への参入
AIは膨大なデータを瞬時に解析して一定の答えを導き出す人工知能である。
AIは膨大な情報を学習することによって病理組織診断だけでなく、画像診断、さらに治療面など広く医療面での貢献が期待される。AIは「ゲノム医療」の領域にも入ってくるであろう。
いずれにしても、AIは医療者の負担軽減に大いに役立つ。
ただし、AIの判断を的確に活用できる人材の育成が必要となる。
AIは老化の速度をコントロールすることも可能になる。
これで高齢化はさらに進むことになるであろう。
AIによってQOLの向上も可能になる。
例えばAIを駆使することで生活習慣の見直しや改善が進めば、
名実ともに「QOLの高い人生100年」の時代が目の前のものになってくる。
3.がんに代わり脅威となる疾病
死因1位のがんといえども、いずれ解決に向かう。
だが、世の中から病気がなくなることはない。
がんに代わり脅威となる疾患は何か?
私は認知症をはじめとする精神・神経系疾患ではないかと思う。
例えばうつ病、統合失調症、パーキンソン病、不眠症など。
他に筋委縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋委縮症など。
これらの疾患はWHOが発表した「死亡率とDALYの関係」が示すように、
疾患に伴う苦しみががんによる苦しみよりさらに大きく、
また苦しむ期間がずっと長い。
にもかかわらず、死に直結するものではないから世の関心を受けにくい。
だが、患者は「いっそ死ぬことができたら、どれほど楽か」
と思えるほどの苦しみに長く耐えていかねばならない。
DALYの高い疾患こそ、死に直結するがんにとって代わる
令和時代の病気として表立ってくると思う。
以降33年、3大トピックスを実感してきました。
CTは画像が荒く、頭しか撮れない、から始まり、
今は全身CTが撮れ、ヘリカルCTが出て飛躍的に画像解析が向上しました。
3D表示が当たり前にできるようになりました。
超音波検査、MRI、PETの出現、進歩も目の当たりにしました。
【寄稿】平成の3大トピックス & 令和の医療を展望する
札幌がんセミナー理事長 小林 博
平成を彩った3大ニュース
平成時代の代表的なニュースとして、
@画像診断など医療機器の開発
A鎮痛薬の開発による痛みの解消など緩和医療の登場
Bゲノム医療―の3つに絞ってみた。
1.医療機器の開発
機器の開発と進歩は産業界のみならず医療界でも顕著であった。
最たる事例は画像診断のための機器(CT、MRI、PETなど)の開発である。
がんは以前は、血液検査による腫瘍マーカーで見つけられることが多かったが、
その多くはある程度進行したがんであった。
これに比べ、画像診断はその局在を含めごく小さながんでも見つけることができるため、
早期発見、早期治療に大いに役立ち、結果的にがんの治療成績の向上に大きく貢献した。
治療面では内視鏡手術、ロボット手術の登場も大きい。
手際よく正確に、しかも患者にとっての負担が少ない手術を、
外科医だけでなく内科医でも行えるようになった。
患者の心身の負担とか苦痛を減らしQOLの向上に役立っただけでなく、
5年生存率の上昇にも寄与することとなった。
がん治療の機器として陽子線、重粒子線による放射線治療が身近なものになってきた。
その中でも、肺その他微少な動きのある臓器がんに対する動体追跡陽子線治療の実用化も特筆に値する。
その他、私たちが普段あまり気にしていないちょっとした医療器具の改良、改善
の恩恵を受けていることが各分野に意外と多いことに気付く。
2.緩和医療の登場
がんを攻撃したたくことに専念した時代がずいぶん長く続いた。
この間に学んだことは、がんをたたこうとするばかりに
生体の受けるダメージに気付かずにいてはいけないこと、
むしろがん患者のQOLを十分考慮した上での治療でなければいけないということであった。
こうした苦い経験を踏まえて、平成に入って「緩和医療」という新しい概念が浸透してきたのである。
その中でも、がんによる「痛みからの解放」が最大の成果であろう。
少なくともWHO推奨の鎮痛法で行う限り、
副作用もほとんどなく痛みが解消されるようになった。
患者にとっては画期的な進歩であり、誠に大きな福音である。
痛みの解消は身体的な面だけではない。
その後、心の痛み、あるいは精神的な痛み(スピリチュアルな痛み)に対するケアについても、
緩和医療の延長として広く理解され対処されるようになってきた。
仕事についてのがん患者の悩みは深い。
しかし最近では、患者が離職しなくとも済むようになってきた。
つまり社会のサポート態勢が整ってきた。
平成の30年間で、がんへの対応が大きく変わってきた、
というより医療が社会とともに「成熟した」といってよいのでないだろうか。
3.ゲノム医療の始まり
ゲノム医療が始まったのは比較的最近、平成の後半になってからのこと。
患者の遺伝子をはじめとした全ての遺伝情報(ゲノム)を解析して、
最も適切な治療法を決めようとするもの。
それがゲノム医療である。
「分子標的療法」といわれるものはその成果の1つ。
がんの分類も少し変わってきた。
従来の分類は臓器別、組織型別になされてきたが、それだけでは間に合わなくなってきた。
臓器の違ったがんであっても変異した遺伝子が共通であれば、
臓器の枠を越えてその変異に拮抗する同じ薬を使って治療することになる。
つまり変異遺伝子別に見る新たながんの考え方が生まれてきた。
ゲノム医療のための検査キットの製造販売も認められた。
今後、解析装置の性能向上やコストダウンが進めば、ゲノム医療はさらに広く普及し、
これが「令和」の新時代にやがて大きく開花することになるのであろう。
ただ、残念ながら少なくとも現状では、
ゲノム医療の恩恵にあずかれる患者はまだほんの一部にすぎない。
このことには十分留意しておきたい。
令和の医療を展望する:DALYの高い疾患ががんにとって代わるか
1.がん年齢の高齢化
人口の高齢化はますます進む。これに伴ってがん年齢の高齢化も一段と加速していく。
がん年齢の高齢化は単に死亡年齢が延びたからではない。
むしろ、がんにかかる罹患年齢が高齢化してきたことが原因なのである。このことは十分銘記しておきたい。
いまのがん年齢は70歳代後半、間もなく80歳代となり、
やがて「がん死亡年齢=寿命」の年齢に近くなっていく。
そうなれば「老いを憎めない」ように、
高齢者のがんに関する限り「がんもまた憎めない」存在になってくる。
このような状態になったとき「がんはもう解決に近づいた」と受けとめていいのではないか。
ただ、例外がある。小児がんとAYA世代、あるいは希少がん。
これらはなんとしても解決しなければならない、深刻な焦眉の問題である。
2.AI(人工知能)の医療への参入
AIは膨大なデータを瞬時に解析して一定の答えを導き出す人工知能である。
AIは膨大な情報を学習することによって病理組織診断だけでなく、画像診断、さらに治療面など広く医療面での貢献が期待される。AIは「ゲノム医療」の領域にも入ってくるであろう。
いずれにしても、AIは医療者の負担軽減に大いに役立つ。
ただし、AIの判断を的確に活用できる人材の育成が必要となる。
AIは老化の速度をコントロールすることも可能になる。
これで高齢化はさらに進むことになるであろう。
AIによってQOLの向上も可能になる。
例えばAIを駆使することで生活習慣の見直しや改善が進めば、
名実ともに「QOLの高い人生100年」の時代が目の前のものになってくる。
3.がんに代わり脅威となる疾病
死因1位のがんといえども、いずれ解決に向かう。
だが、世の中から病気がなくなることはない。
がんに代わり脅威となる疾患は何か?
私は認知症をはじめとする精神・神経系疾患ではないかと思う。
例えばうつ病、統合失調症、パーキンソン病、不眠症など。
他に筋委縮性側索硬化症(ALS)、脊髄性筋委縮症など。
これらの疾患はWHOが発表した「死亡率とDALYの関係」が示すように、
疾患に伴う苦しみががんによる苦しみよりさらに大きく、
また苦しむ期間がずっと長い。
にもかかわらず、死に直結するものではないから世の関心を受けにくい。
だが、患者は「いっそ死ぬことができたら、どれほど楽か」
と思えるほどの苦しみに長く耐えていかねばならない。
DALYの高い疾患こそ、死に直結するがんにとって代わる
令和時代の病気として表立ってくると思う。
2019年07月04日
胸骨圧迫のみでも生存率向上 院外心停止患者に対するCPR
救急隊が到着するまでは、
服の上から両乳首と胸部正中との交差点に掌底を載せ、
反対の手のひらを載せて真上から5cm沈みむまで押しましょう。
1分間に100回のリズムです。
たくさんの人を集めて、救急車を呼びましょう。
余裕があればAEDを探しましょう!
胸骨圧迫のみでも生存率向上
院外心停止患者に対するCPR
2019年05月07日 16:15
スウェーデンの心肺蘇生(CPR)ガイドライン(GL)では、
院外心停止例に対し、救急医療サービス(EMS)到着前に
バイスタンダーによる胸骨圧迫単独の
CPRの実施を推奨項目の1つとしている。
同GL発表以降、CPR実施率が上昇し、生存率も向上したこと
が同国のCPR登録データを用いた観察研究から明らかになった。
スウェーデン・Karolinska InstitutetのJacob Hollenberg氏らがCirculation
(2019年4月1日オンライン版)に報告した。
院外心停止例3万445例のデータを解析
胸骨圧迫単独によるCPRは、
胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた標準的なCPR
と比べて訓練や実施が容易であるため、
院外心停止例に対するCPR実施率を高め、
生存率の向上に寄与する可能性があるとされている。
スウェーデンでは国際蘇生連絡委員会(ILCOR)
のGL改訂(2005年、2010年、2015年)に準じてCPRのGLを改訂しており、
改訂を重ねるごとに胸骨圧迫単独によるCPRの位置付けが高まりつつあるという。
なお、2010年以降のGLではCPRの訓練を受けた経験の有無にかかわらず、
人工呼吸を行う意思がないバイスタンダーは
胸骨圧迫単独によるCPRを実施することが選択肢の1つとして推奨されている。
Hollenberg氏らは今回、スウェーデンの院外心停止例に対する
バイスタンダーによるCPRの実施率の推移とその方法、
30日生存率との関連について検討するため、
同国のCPR登録データを用いた観察研究を実施。
研究には2000〜17年のバイスタンダーが目撃した全ての院外心停止例(3万445例)を組み入れた。
なお、バイスタンダーがいなかった例やEMSがその場にいた例、
人工呼吸のみによるCPR実施例は除外した。
院外心停止例をEMS到着前に
@CPRを受けなかった群(非CPR群)
A標準的なCPRを受けた群(標準的CPR群)
B胸骨圧迫のみによるCPRを受けた群(胸骨圧迫CPR群)−に分類し、
2000〜05年(1期)、2006〜10年(2期)、2011〜17年(3期)の3つの期間に分けた。
胸骨圧迫のみによるCPRの実施率は6倍に
解析の結果、EMS到着前にCPRを受けた患者の割合は、
1期の40.8%から2期には58.8%、3期には68.2%に上昇していた。
また、実施率は標準的CPRがそれぞれ35.4%、44.8%、38.1%、
胸骨圧迫CPRが5.4%、14.0%、30.1%。
各期間の院外心停止例の30日生存率は、
非CPR群が3.9%(1期)、6.0%(2期)、7.1%(3期)、
標準的CPR群が同9.4%、12.5%、16.2%、
胸骨圧迫CPR群が同8.0%、11.5%、14.3%であった。
全ての期間における30日生存の非CPR群に対する調整後オッズ比(aOR)は、
標準的CPR群で2.6(95%CI 2.4〜2.9)、
胸骨圧迫CPR群で2.0(同1.8〜2.3)だった。
また、30日生存率は胸骨圧迫CPR群よりも標準的CPR群の方が高かった(aOR 1.2、95%CI 1.1〜1.4)。
これらの結果を踏まえ、Hollenberg氏らは
「スウェーデン全土の院外心停止例のデータを用いた今回の研究では、
EMS到着前のCPR実施率が約2倍に上昇し、
胸骨圧迫単独によるCPRの実施率が約6倍に上昇したことが示された。
また、標準的か胸骨圧迫単独かにかかわらず、
CPR実施例では非実施例と比べて30日生存率が2倍に上昇していた」と説明。
その上で、「院外心停止例に対するCPR実施率が上昇し、
全生存率も向上することを考慮すると、
今後のGLにおいても引き続き胸骨圧迫単独のCPRを選択肢の1つとして位置付けることが支持される」
と結論している。
(岬りり子)
服の上から両乳首と胸部正中との交差点に掌底を載せ、
反対の手のひらを載せて真上から5cm沈みむまで押しましょう。
1分間に100回のリズムです。
たくさんの人を集めて、救急車を呼びましょう。
余裕があればAEDを探しましょう!
胸骨圧迫のみでも生存率向上
院外心停止患者に対するCPR
2019年05月07日 16:15
スウェーデンの心肺蘇生(CPR)ガイドライン(GL)では、
院外心停止例に対し、救急医療サービス(EMS)到着前に
バイスタンダーによる胸骨圧迫単独の
CPRの実施を推奨項目の1つとしている。
同GL発表以降、CPR実施率が上昇し、生存率も向上したこと
が同国のCPR登録データを用いた観察研究から明らかになった。
スウェーデン・Karolinska InstitutetのJacob Hollenberg氏らがCirculation
(2019年4月1日オンライン版)に報告した。
院外心停止例3万445例のデータを解析
胸骨圧迫単独によるCPRは、
胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた標準的なCPR
と比べて訓練や実施が容易であるため、
院外心停止例に対するCPR実施率を高め、
生存率の向上に寄与する可能性があるとされている。
スウェーデンでは国際蘇生連絡委員会(ILCOR)
のGL改訂(2005年、2010年、2015年)に準じてCPRのGLを改訂しており、
改訂を重ねるごとに胸骨圧迫単独によるCPRの位置付けが高まりつつあるという。
なお、2010年以降のGLではCPRの訓練を受けた経験の有無にかかわらず、
人工呼吸を行う意思がないバイスタンダーは
胸骨圧迫単独によるCPRを実施することが選択肢の1つとして推奨されている。
Hollenberg氏らは今回、スウェーデンの院外心停止例に対する
バイスタンダーによるCPRの実施率の推移とその方法、
30日生存率との関連について検討するため、
同国のCPR登録データを用いた観察研究を実施。
研究には2000〜17年のバイスタンダーが目撃した全ての院外心停止例(3万445例)を組み入れた。
なお、バイスタンダーがいなかった例やEMSがその場にいた例、
人工呼吸のみによるCPR実施例は除外した。
院外心停止例をEMS到着前に
@CPRを受けなかった群(非CPR群)
A標準的なCPRを受けた群(標準的CPR群)
B胸骨圧迫のみによるCPRを受けた群(胸骨圧迫CPR群)−に分類し、
2000〜05年(1期)、2006〜10年(2期)、2011〜17年(3期)の3つの期間に分けた。
胸骨圧迫のみによるCPRの実施率は6倍に
解析の結果、EMS到着前にCPRを受けた患者の割合は、
1期の40.8%から2期には58.8%、3期には68.2%に上昇していた。
また、実施率は標準的CPRがそれぞれ35.4%、44.8%、38.1%、
胸骨圧迫CPRが5.4%、14.0%、30.1%。
各期間の院外心停止例の30日生存率は、
非CPR群が3.9%(1期)、6.0%(2期)、7.1%(3期)、
標準的CPR群が同9.4%、12.5%、16.2%、
胸骨圧迫CPR群が同8.0%、11.5%、14.3%であった。
全ての期間における30日生存の非CPR群に対する調整後オッズ比(aOR)は、
標準的CPR群で2.6(95%CI 2.4〜2.9)、
胸骨圧迫CPR群で2.0(同1.8〜2.3)だった。
また、30日生存率は胸骨圧迫CPR群よりも標準的CPR群の方が高かった(aOR 1.2、95%CI 1.1〜1.4)。
これらの結果を踏まえ、Hollenberg氏らは
「スウェーデン全土の院外心停止例のデータを用いた今回の研究では、
EMS到着前のCPR実施率が約2倍に上昇し、
胸骨圧迫単独によるCPRの実施率が約6倍に上昇したことが示された。
また、標準的か胸骨圧迫単独かにかかわらず、
CPR実施例では非実施例と比べて30日生存率が2倍に上昇していた」と説明。
その上で、「院外心停止例に対するCPR実施率が上昇し、
全生存率も向上することを考慮すると、
今後のGLにおいても引き続き胸骨圧迫単独のCPRを選択肢の1つとして位置付けることが支持される」
と結論している。
(岬りり子)
2019年07月03日
肉の摂取頻度が認知症リスクと関連
(肉の摂取が少ないこと(1回以下/週)だけが、
通常の摂取(4回以上/週)と比較し、
認知症およびアルツハイマー病(AD;アルツハイマー型認知症)のリスク増加と関連が認められた)
肉の摂取頻度が認知症リスクと関連
提供元:ケアネット 公開日:2019/04/22
これまで、食物摂取と認知症リスクとの関連は、
初発症状バイアス(逆因果関係)の可能性を考慮して研究されていなかった。
フランス・モンペリエ大学のLaure Ngabirano氏らは、
肉、魚、果物、野菜の摂取頻度と
認知症やアルツハイマー病(AD)の長期リスクとの関係について、
初発症状バイアスを考慮して検討を行った。
Journal of Alzheimer's Disease誌2019年号の報告。
『12年間』に2〜4年ごとのフォローアップを行ったThree-city studyより、
65歳以上のボランティア『5,934例』のデータを分析した。
食物摂取は、簡潔な食物摂取頻度アンケートを用いて評価した。
各フォローアップ時に、認知症症状の有無を調査した。
初発症状バイアスリスクを制限するため、
データの組み入れから『最初の4年間に発生したすべての認知症症例を分析から除外』した。
社会人口統計、生活様式、健康要因で調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・平均フォローアップ期間は、9.8年であった。
・フォローアップ期間中の認知症発症者数は、662例であった(AD発症者数466例を含む)。
・調整後、肉の摂取が少ないこと(1回以下/週)だけが、
通常の摂取(4回以上/週)と比較し、
認知症(HR:1.58、95%CI:1.17〜2.14)
および
AD(HR:1.67、95%CI:1.18〜2.37)
のリスク増加と関連が認められた。
・魚、果物、野菜の摂取と認知症またはADリスクとの間に関連性は認められなかった。
著者らは「肉の摂取がかなり少ないと、認知症やADの長期リスクを増大させることが示唆された。
これまでの研究からの知見は、初発症状バイアスが影響を及ぼした可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Ngabirano L, et al. J Alzheimers Dis. 2019;68:711-722.
通常の摂取(4回以上/週)と比較し、
認知症およびアルツハイマー病(AD;アルツハイマー型認知症)のリスク増加と関連が認められた)
肉の摂取頻度が認知症リスクと関連
提供元:ケアネット 公開日:2019/04/22
これまで、食物摂取と認知症リスクとの関連は、
初発症状バイアス(逆因果関係)の可能性を考慮して研究されていなかった。
フランス・モンペリエ大学のLaure Ngabirano氏らは、
肉、魚、果物、野菜の摂取頻度と
認知症やアルツハイマー病(AD)の長期リスクとの関係について、
初発症状バイアスを考慮して検討を行った。
Journal of Alzheimer's Disease誌2019年号の報告。
『12年間』に2〜4年ごとのフォローアップを行ったThree-city studyより、
65歳以上のボランティア『5,934例』のデータを分析した。
食物摂取は、簡潔な食物摂取頻度アンケートを用いて評価した。
各フォローアップ時に、認知症症状の有無を調査した。
初発症状バイアスリスクを制限するため、
データの組み入れから『最初の4年間に発生したすべての認知症症例を分析から除外』した。
社会人口統計、生活様式、健康要因で調整した後、Cox比例ハザードモデルを用いて分析を行った。
主な結果は以下のとおり。
・平均フォローアップ期間は、9.8年であった。
・フォローアップ期間中の認知症発症者数は、662例であった(AD発症者数466例を含む)。
・調整後、肉の摂取が少ないこと(1回以下/週)だけが、
通常の摂取(4回以上/週)と比較し、
認知症(HR:1.58、95%CI:1.17〜2.14)
および
AD(HR:1.67、95%CI:1.18〜2.37)
のリスク増加と関連が認められた。
・魚、果物、野菜の摂取と認知症またはADリスクとの間に関連性は認められなかった。
著者らは「肉の摂取がかなり少ないと、認知症やADの長期リスクを増大させることが示唆された。
これまでの研究からの知見は、初発症状バイアスが影響を及ぼした可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)
原著論文はこちら
Ngabirano L, et al. J Alzheimers Dis. 2019;68:711-722.