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2019年07月06日

コレステロール低値が出血性脳卒中リスク上昇と関連

(LDL−C(悪玉コレステロール)値を下げないといけないのは
心筋梗塞、狭心症の2次予防(2回目の発症を予防)や脳卒中の2次予防のみ!
閉経後の女性が160まで上がるのは当たり前、
1次予防と称して服薬されていると、
血管壁が脆弱になり脳出血の危険性が出ることを証明した?)


コレステロール低値が出血性脳卒中リスク上昇と関連
公開日:2019/05/10

Low Cholesterol Linked to Higher Hemorrhagic Stroke Risk
Batya Swift Yasgur, MA, LSW / Medscape 2019/4/15

新たな試験によって、LDL-C値およびトリグリセライド値が非常に低い女性は、
それらの値がより高い女性よりも出血性脳卒中を発症するリスクが
2倍以上高い可能性があると示唆されている。脳卒中.jpg


ハーバード大学の研究者らは、
Women's Health研究に組み入れられた『女性約2万8,000人のコホート』において、
『約20年以上にわたる前向き研究』を実施した。

研究者らは、脳卒中リスクに影響しうる他の因子について調整後、
LDL-C値が100〜130mg/dLの群と比較し、
『70mg/dL未満』の群では『出血性脳卒中を発症するリスクが2倍以上』
高かったことを見いだした。

同様に、多変量調整後、トリグリセライド値が最低四分位群の出血性脳卒中リスクは、
最高四分位群と比較して有意に上昇していた。

「医師がこの研究から得ることができる重要なメッセージは、
通常、LDL-C値が低い女性は心臓発作や脳卒中のリスクが低いと考えられているが、
出血性脳卒中のリスクは高い可能性がある、ということだと考えている」と、
筆頭著者であるハーバード大学医学大学院(マサチューセッツ州、ボストン)の
Pamela Rist氏はMedscape Medical Newsに対し述べた。

「出血性脳卒中に関連する疾患罹患率や死亡率を考慮すると、
出血性脳卒中のリスクを低下させるために、
そのような女性において高血圧や喫煙のような他のリスク因子をモニタリングすることが重要である」
と同氏は述べた。

本研究はNeurology誌4月10日号オンライン版で発表された。

女性に注目

LDL-Cが高値かつHDL-Cが低値であることは、虚血性脳卒中や心筋梗塞のリスク上昇と関連するが、
「過去のいくつかの研究によって、LDL-C値が非常に低値であることと
出血性脳卒中のリスク上昇が関連する可能性が示唆されている」とRist氏は述べた。

「女性の大規模集団であるわれわれのコホートにおいて試験を実施することに、とくに興味があった。
なぜなら、他の試験の大多数は(男性と女性の)両方を組み入れていたが、
女性におけるイベントはわれわれの試験におけるイベントよりも限定されていたからである」
と同氏は説明した。

「われわれの試験には2万8,000人近い女性が組み入れられていたことから、
本コホートにおいても出血性脳卒中に関する示唆が同様に認められるかどうかを確認したいと考えた」
と続けている。

本コホートは、Women's Health研究に参加する女性で構成された。
Women's Health研究は2004年に終了しているが、観察的追跡調査は現在も進行中である。

参加者2万8,345人から得た空腹時血液サンプルのうち、
2万7,937人について、
LDL-C、HDL-C、総コレステロール、トリグリセライドの値を解析した。

研究者らは、年齢、喫煙、閉経、閉経後ホルモン補充療法(PMH)の状態、
BMI、飲酒、糖尿病および高血圧の病歴、身体活動量、コレステロール低下薬による
治療を含む共変数で調整した。

『U字型曲線』

LDL-C値が最低であった(70mg/dL未満)群は、
100〜129.9mg/dLの群より、若年で、高血圧の病歴がある可能性や
コレステロール低下薬の使用率が低かった。

LDL-C最低値群はまた、
飲酒率が高く、正常体重で、活動的であり、閉経前である可能性が高かった。

対照的に、LDL-C最高値群(160mg/dL以上)はより高齢で、
喫煙率、コレステロール低下薬の使用率およびPMHの実施率が高く、
高血圧や糖尿病の病歴を有する可能性、肥満である可能性が高かった。

最高値群はまた、100〜129.9mg/dLの群よりも飲酒率が低く、活動的である可能性も低かった。

平均19.3年間の追跡期間中、137件の出血性脳卒中イベントが確認された。

そのうち最も多かったのは脳内出血(ICH、85例)であり、次いでくも膜下出血(SA、43例)であった。

LDL-C値70mg/dL未満の群1,069人のうち出血性脳卒中を発症したのは0.8%であったのに対し、
70mg/dL以上の群では0.4%であった。

LDL-C値と出血性脳卒中リスクとの間にはU字型の相関が認められた。
多変量調整後、LDL-C値100〜129.9mg/dLの群と比較し、
70mg/dL未満の群が出血性脳卒中を経験するリスクは2.17倍であった
(95%信頼区間[CI]:1.05〜4.48)。

また、LDL-C値160mg/dL以上の群においてもリスク上昇の傾向がみられたが、
その上昇は統計学的に有意なものではなかった。

LDL-C値70〜99.9mg/dLの群や130〜159.9mg/dLの群では、
出血性脳卒中リスクの有意な上昇は認められなかった
(それぞれ、相対リスク[RR]:1.25、95%CI:0.76〜2.04、およびRR:1.14、95%CI:0.72〜1.80)。

ICH(脳内出血)についての解析では、
出血性脳卒中全体と同様の結果が得られた
(すなわち、イベントリスクが最も高かったのはLDL-C値70mg/dL未満の群であり、
次いで160mg/dL以上の群であった)。

治療なしで“もともと”低値

多変量調整後、トリグリセライド値が最低四分位群(空腹時74mg/dL以下および非空腹時85mg/dL以下)
の出血性脳卒中リスクは、最高四分位群と比較し有意に上昇していた(RR:2.00、95%CI:1.18〜3.39)。

それ以外の四分位群は、有意なリスク上昇と関連しなかった。

トリグリセライド低値はSAH(くも膜下出血)の有意なリスク上昇と関連したが、
ICHのリスク上昇とは関連しなかった。

LDL-C値のカテゴリーとトリグリセライド値の四分位群とを含むモデルでは、
LDL-C値で調整後、トリグリセライド値が最低四分位群の出血性脳卒中リスクは、
最高四分位群と比較し高かった(RR:2.14、95%CI:1.24〜3.70)。

一方で、トリグリセライド値で調整後、
LDL-C値70mg/dL未満の群(RR:2.04、95%CI:0.98〜4.23)および
160mg/dL以上の群(RR:1.75、95%CI:1.05〜2.92)の
出血性脳卒中リスクは、100〜129.9mg/dLの群と比較し高かった。

ベースライン時にコレステロール低下薬を服用していなかった群(2万7,044人)に限定した解析では、
主解析と同様の結果が得られたが、
LDL-C値70mg/dL未満の群におけるリスク上昇は統計学的に有意な値ではなくなった。

『HDL-C値や総コレステロール値と出血性脳卒中リスクとの間には、
有意な関連は認められなかった』。

Rist氏は、「コレステロール値が非常に低値の女性における、
出血性脳卒中リスク上昇の潜在的メカニズムは明らかになっていない」と述べた。

「血管壁の完全性の問題がメカニズムに関連している可能性が考えられている」と同氏は述べた。

同氏らのコホートは、「『スタチンのような脂質低下薬』が現在のように広く使用される
『以前』の1990年代初頭に血液検査を実施したという点で、独特である」と同氏は述べている。

「われわれは(コレステロール)低値の長期的な影響を調査しており、
『もともと低値であった女性は、
高値であったが薬剤の使用によって値が低下した女性とは異なる可能性が高い』
ため、この点は非常に重要である」と続けた。

長期の安全性に関する危険信号か

本研究に関与していない、
Johns Hopkins Ciccarone Center for the Prevention of Heart Disease
(メリーランド州、ボルティモア)のErin D. Michos氏は、
「コレステロール低値によって出血性脳卒中リスクが上昇するかどうかということは、
長い間議論されてきている」と、本研究についてMedscape Medical Newsにコメントした。

その議論は、「血中コレステロール低値と出血性脳卒中リスク上昇の関連が
見いだされた多くの疫学研究に端を発している」と同氏は述べた。

「“重要な点”について著者ら自身が説明している」と同氏は指摘した。
すなわち、「LDL-C値が非常に低い人は、より高い人よりも健康ではない可能性があり、
そのことによって脳出血を発症しやすくなっている」という点である。

そのため本結果は、「私の診療を変えることはまったくない。
なぜなら、『私は疫学研究における単回の脂質測定における残余交絡を依然として疑っている』
からである」と同氏は述べた。

しかしながら、「生涯にわたってLDL-C値が非常に低値な人における、
メンデルランダム化を用いた遺伝学的試験によって今後この関連が確認されるか、
あるいはLDL-C低下療法のRCTでこの関連が見いだされれば、
私は納得するだろう」と同氏は述べた。

同氏は診療において、「『ハイリスク患者のような、ASCVD(アテローム性心血管疾患)
減少のネットベネフィットを得られると期待される患者のみ』を、
スタチンおよび脂質低下薬によって治療している。
(なぜなら)『スタチンはすべての患者に適している治療薬ではない』からである」と述べた。

本研究に関与していない、
Azienda Ospedaliero-Universitaria Pisana(イタリア)のRaffaele De Caterina氏は、
別の見方をしている。

「他の試験よりもずっと長期の追跡期間であることから、
本研究の結果はエビデンスの重要な一部であると考えている」と
同氏はMedscape Medical Newsに述べた。

「本結果によって、PCSK9(プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)阻害薬
によるもののような、大幅な脂質低下がもたらす長期的な結果に関する懸念が生じる」
と同氏は述べた。

「われわれはすでに、LDL-C値が70mg/dL未満の患者における高強度のLDL-C低下療法の費用対効果に関する懸念を持っており、『長期の安全性に関する危険信号が灯った今』、その懸念はより強固なものとなるだろう」。

Rist氏は、「治療の結果としてのコレステロール低値が出血性脳卒中リスクに与える影響は、
また別の研究課題である。
最初からすでに非常にコレステロール値が低かったこれらの女性での結果から、
コレステロール高値であったが治療を受けて現在は低値となった人での結果を推定するのは難しい」
と付け加えた。

さらなる研究が必要である、と同氏は強調した。

The study was supported by the National Institutes of Health.
The authors, Michos, and De Caterina report no relevant financial relationships.

Neurology. Published online April 10, 2019. Abstract

Medscape Medical News コピーライトマーク 2019

Medscapeオリジナル記事はこちら
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田中松平
元消化器外科医で,頭からつま先まで診れる総合診療科医です. 医学博士 元日本外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器外科学会認定指導医・専門医, 元日本消化器内視鏡学会専門医, 日本医師会認定産業医, 日本病理学会認定剖検医,
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