2021年09月25日
【トリビア】『佐藤様、佐藤殿』、『様』と『殿』って、どちらを使った方が良いの?『様』と『殿』の使い分けと歴史について
手紙の宛名に用いられる敬称について、使い方に迷う方も居ると思います。
特に、「佐藤殿」と「佐々木様」はどちらがより丁寧か?
「人事部長」のような役職名の後には「殿」を付けるべきか「様」を付けるべきか?
など、「殿」と「様」の違いについての疑問をもつ人が多いと思います。
今回は、「殿」と「様」について、それぞれの歴史と使い分けについてを見直して紹介します。
【目次】
1,『様』『殿』の歴史
2,『様』『殿』は、どっちを使うのが正しい?
3,まとめ
【『様』『殿』の歴史】
『日本国語大辞典 第二版』(小学館)を引くと、「殿」は元来地名などに付いて、その地にある邸宅の尊称として用いられていましたが、転じてそこに住む人のことを表すようになりました。
やがて、手紙文などで人名や官職に付ける敬称として使われるようになりましたが、当初は関白などかなり身分の高い人に対して用いられていたようです。
平安時代半ばの『源氏物語』にも「右大臣殿のきたのかたもわたり給へり」などの用例が見えます。
その後、高貴な人に対してだけではなく、次第に一般的な敬称として用いられるようになったようです。
一方、「様」はもともと体言(名詞・代名詞など)に付き、その方位の意を表していましたが、「殿」の敬意の低下にともなって、室町時代ごろから新たに高い敬意を表す敬称として使われるようになりました。
江戸時代初めの日本語学書『ロドリゲス日本大文典』は、そのころに使われていた「殿」「様」「公」「老」の4種類の敬称を比較し、その敬意の順を示しています。
それによれば、もっとも敬意の高いものは「様」で、以下「公」「殿」「老」の順であったそうです。
最後の「老」は、かつては主に僧侶に対して用いられていた敬称で、のちに一般化し、年長の人の名前に付けて敬意を表すようになりましたが、現代では敬称としてはほとんど使われることがなくなりました。
【『様』『殿』は、どっちを使うのが正しい?】
現代では、「様」がもっとも一般的な敬称として用いられています。
一方、「殿」は、先の『日本国語大辞典』にも「官庁などの公の場で用いるほか、書面などでの形式的なもの、または下位の者への軽い敬称として用いる」とあり、「様」よりも敬意の軽い語として位置づけられています。
このため、現在、私的な手紙において特に目上の人に対してはほとんど「殿」を用いることはなくなりました。
ただし、公用文においては古くから「殿」が使われてきたためか、現代でも「殿」を使う慣習が残っているようです。
【まとめ】
かつては、『殿』が、上位の者に使う言葉として適切でしたが、次第に、『殿』が一般でも使われるようになり、『様』の方がその地位を逆転し、江戸時代には、『様』が、相手の敬称として最上位となり、現在に至ります。
『殿』は、公用文で、古くから使われていたことから、今も使われる場合がありますが、現在、『様』が一般的で、相手の敬称として最上位ということになります。
日本語は、状況により似たような言葉が多いので、難しいですね。
今回のブログは、以上です。
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