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2023年10月20日

光の翼 手柄の行方 あとがき

夕方に今晩は。
拙作『光の翼』を掲載したもののあとがきを書くのを忘れていた、『暇人の独り言』管理人です。


我ながらうっかり者である。










さて、早速本題。
今回掲載した「手柄の行方」では、誘拐犯ユナとの戦いを「1」、傭兵メイルとの戦いを「2」と分けたのですが。



この話を初めて作ったのは、「1つの話が長い程良い」と思い込んでいた頃の事。
なので、ユナとメイルとの戦いを1話でぶっ通したり、無駄以外の何物でもない駄文を重ねたりと見苦しい有様だったものです。


作者自身、改稿のために見返すのがひたすら恥ずかしく、苦痛でした…
毎回言ってますけどね





書き直す中で変更したのは、嵐刃とメイルの決着。
最初は嵐刃が決定打を叩きこもうとした瞬間に近くで事件が起こる形だったのを、力の差を冷静に見つめたメイルの降参で片が付く幕切れにしました。


はっきり言ってしまえば話を短くまとめるために他なりませんでしたが、嵐刃に劣勢でありながらも攻撃の激しさと耐久力の高さが多少の見せ場になり、先行きを見通す程度の知恵も描けたので、筆者にとってもメイルにとっても悪くない変更だったのではないかと思います。





またこの話は、ユナが情報収集を得意とする集団の一員である事を早々と明かす回にも変わりました。
「小説家になろう」で投稿済の部分ではもう少しだけ後に示したのですが、今回の改稿によってそちらも大きくいじる必要がありそうです。


まあ、ド派手な書き直しが必要な部分は第2章までだし、あと少しで解放されそうなのが救いか。










とは言え、直後に続く部分も酷い有様なので、またもや手を焼かせられそうですが。
要らん手間を作ってくれたもんだ、初期の俺…
posted by 暇人 at 16:15| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言

2023年10月11日

光の翼 飛躍の翼15 手柄の行方2

レジリス村を出て、早くも寒さが緩み出した頃。
「もう、放してよおばさん!」
左腕の中でもがくユナの抗議に、メイルは思わず噴き出した。
「誰がおばさんだい、この小娘!あたしはまだ21だよ!」
「えっ、ウソ!?絶対サバ読んでるでしょ!その顔なら30歳くらい行ってるはずだよ!」
「30なんかなってない!!21だって言ったら、21だよ!何なら、調べてみたらどうだい!」
「…何言ってるの?」
「その妙な身なり、ジャボンの出なんだろ!情報収集なんかお手の物だろうから、好きに調べろって言ってるのさ!」
冷や汗を浮かべながらも強いて微笑んでいたユナだったが、ついに動揺を露わに黙り込む。
「…どうして、ジャボンのこと…私達の隠れ里なのに…。」
「前に、ジャボンを出て行った奴に出くわしたことがあったんだよ。」
「え、抜け忍さんに?」
「そう。そいつが何ともお喋りな男でね。部外者相手に古巣のことをあれこれバラしてくれたのさ。」
「ん?でも、何でおばさんが―」
「はい??」
怒気に満ちた笑顔で威圧され、ユナは震えながら訂正する。
「…お姉さんが、その抜け忍さんに会ったの?」
「仕事だよ。町中で盗みやらケンカやら繰り返すそいつを力づくでもとっちめてくれって頼まれてね。ちょっとばかり黙ってもらったんだ。」
「抜け忍さんは、その後どうなったの?」
「縛り上げて依頼人に引き渡したきりだから、あたしには何とも。でも今にして思えば、もし依頼人がジャボンの関係者だったら、始末しちまってるかもね。そのヌケニン曰く、悪さしない限りは脱走者にも優しいけど、やれば最後どんなセコい罪でも容赦ないのがあんた達だそうだし?」





「待てって言ってんだろうが、コソ泥野郎!!!」




いつしか足を止めて話し込んでいたメイルに、翼を広げた風刃が追い付いた。
「くっ、しょうもない話してたばっかりに…あんたまさか、これを狙ってたんじゃないだろうね?」
メイルから恨みがましく睨まれるが、ユナは軽く右手を振って否定する。
「私にしてみたら、どっちに捕まっても同じことですし。」
「あ、そりゃそうか。」
「呑気にペラペラ喋ってんじゃねぇ!!人の獲物横取りしやがって、痛ぇ目見る覚悟はできてんだろうな!!」
憤怒の形相で吠える風刃を前にしても、メイルは動じない。
「小娘、大人しくしてなよ。この期に及んで逃げ出したりしなきゃ、あの坊ちゃんがやったみたいな痛いことはナシにしてやるからさ。」
やや怯えた様子のユナを徐に下ろし、風刃に向き直る。
「坊ちゃん。コソ泥呼ばわりなんてあんまりじゃないかい?元々この仕事、どっちが先に小娘とアルス王子を城に連れて行くかの勝負じゃないか。たまたまあたしが横取りする側になっただけで、もしかしたらあんた達がコソ泥だったかもしれないんだよ。」
「くだらねぇ理屈抜かすな!!ぶちのめされたくなかったら、とっととその馬鹿女を返しやがれ!」
「そっちこそ、余計なケガをしたくなかったら退いちゃくれないかな。あんた達はカオス=エメラルドの欠片がお目当てらしいし、賞金は譲ってくれても構わないだろ?」
「いくら狙ってねぇ物でも、コソ泥によこすってのは聞けねぇ相談なんだよ!!」





風刃は素早くメイルの背後に回ると、烈風を纏った木刀での右薙を見舞いにかかった。





だがメイルは機敏に振り向き、大剣を盾代わりにして攻撃を防いでみせる。





「ちっ…!」





風刃は強引に押し切ろうと力むが、メイルの守りも固い。





明白に震えてはいるものの、突き崩すには至らない。





「やるね、坊ちゃん…手にビリビリ来たよ…相当、鍛えてるんじゃないのかい…?」
「みっちり修行したのは、1週間位だけどな…!」
「本当かい…?そいつはすごいね…!師匠がいるのか我流なんだかよく分からない動きだけど、どっちにしろ1週間ぽっちの鍛錬でこれだけやれるなんて、並じゃないよ…!」
「けっ…余裕のつもりか…!」
「ふふ…余裕なんか、全然ないさ…それでも、あたしは負けられないってだけだよ!」





メイルは大剣を盾代わりにした体勢のまま、体当たりを放つ。





「ぐあっ!」





胸に直撃を受けた風刃は、勢いよく弾き飛ばされた。





「衝(ショウ)!!」





左手で患部を押さえる風刃にも、メイルは追撃の手を緩めない。





大剣を横薙ぎに振るい、空を裂かんばかりの強力な衝撃波を放った。





「く…風翔斬!!」





空中で体勢を整えた風刃は木刀を振り下ろし、メイルの撃った衝撃波を風の斬撃で押し止める。





両者の勢力の差は僅かな物で、随分と激しく競り合っていたが、終いには風刃が衝撃波に飲み込まれた。





「ぐっ…うわああああああああ!」





風刃はレジリス村の西部に広がる林へと吹き飛ばされていった。





「…ふう。ひとまず何とかなったかな?」
「…すごい…あの人をこんな簡単に…。」
「簡単なもんか。あの坊ちゃん、想像以上の腕だよ。かなり弱く見積もっても、あたしと互角くらいは十分ある。ケガしたくなかったらなんて大口叩いちまったけど、今の一撃じゃ、かすり傷がいくつか付けば大勝利ってとこかもね…わっ!!」





僕は模造刀を引き抜きざまに右薙ぎを叩き込んだが、脊髄反射のような速さでかわされた。





「ちっ。つくづくガタイと格好の割にはすばしっこいな。」
空いた左手で頭をかきながらぼやく。
厳密には完全な空振りでもなく、メイルの前髪を数本散らせてはいたが、それ以外にダメージは見受けられない。
「くっ…団体さんの揃い踏みかい。こいつは参ったね…。」
「おっと、誤解してくれんなよ〜?安いチンピラじゃあるまいし、6対1なんてダサい真似しやしねえぜ〜。」
開き直ったようなメイルの微笑みが、紅炎の一言で驚き一色に染まる。
「愚弟が世話になったみたいだし、僕が相手しよう。お前が勝ったら、誘拐犯もアルス王子も好きにして良いぞ。」
「へえ。あたしにはありがたい話だけど、お仲間さん達は構わないのかい?」
「…まア、仕方がねエさ。」
「悔しいけど風くんを押しのけるような人、今のボクらじゃどうこうできないしね。嵐兄さんでも勝てなかったりしたら、なおさらだよ。」
「…あの…私…。」
小さく挙手する舞を、確かに舞さんに戦って頂くのが一番ですが、と麗奈が止める。
「ここは嵐刃さんに譲って差し上げて下さい。こうした状況を他人に任せる方ではありませんから。」
「…ほほう…なかなか…ぶらこんな…お兄ちゃんの…ようですな…。」
「お前、先に斬られたい?」
「おやおや。内輪揉めしてる場合かい!?」





メイルが正面から振り下ろして来た大剣を、模造刀で受け止める。





鍔迫り合いが長引きそうになったところで後退して体勢を崩させると、右切り上げを浴びせた。





「うっ!」





「天嵐断(てんらんだん)!」





続けて強烈な風を付与した唐竹割りを見舞うが、こちらは横に跳んで回避される。





「烈(レツ)!!」





メイルは大剣を地面に叩き付け、地を這う衝撃波を繰り出した。





「これ、さっきも使った技だろ。芸がないな―」





軽く跳んでかわしたが、地を強く蹴ったメイルは瞬時に僕の頭上を取った。





「砕(サイ)!!」





渾身の力を込めた縦斬りに右肩をかすめられた途端、凄まじい勢いで叩き落とされる。





「ぐっ…。」





だが体勢を整えるのは難しくなく、墜落は免れた。





「撃(ゲキ)!!」





僕の後ろに着地したメイルは、息もつかせないと言わんばかりに連続突きを仕掛けて来る。





身の丈程の剣を扱っているにもかかわらず、その攻撃は疾風を思わせる速さだった。





しかし、かわせない程ではない。





突きの連打を潜り抜けてメイルの背中を取り、袈裟斬りを叩き込んだ。





「く…。」
メイルは微かによろめいたが、倒れる気配は露となかった。
純白の鎧にそれなりの傷が入っただけで当人はほとんど痛手を負っていないのだから、道理だろう。
目も闘志に満ちたままで、衰えは見えない。
間違ってもこのまま終わる流れではないなと、気を引き締めたが。
「…残念だけど、あたしの負けだね。小娘とアルス王子は、あんた達に任せるよ。」
メイルは溜息と苦笑いをこぼし、早々と降参した。
「…意外だな。続ける気だと思ってたけど。」
「これでも傭兵だからね。相手との差…持久戦に持ち込んで結果が変わるかどうかくらい、嫌でも分かっちまうさ。」
「…そうか。諦めの悪いゲームオタクより、頭が切れるみたいだな。」
憑き物が落ちたような顔で大剣を背中に戻したメイルに続き、僕も模造刀を鞘に納めた。
「しかしせっかくの大きな仕事で、こうも出し抜きようのないライバルにぶつかるなんてね。これ、日頃の行いを考え直せってことかな。」
「まあ、人の手柄を横取りしようとする非ドウトク的なお姉さんじゃねえ…。」
「あんたにだけは道徳をどうこう言われる筋合いないよ!」
口を挟んだユナに、メイルの拳骨が振り下ろされる。
「いた〜い!もう、ちゃんとお姉さんって言ったのに!」
「問答無用だ!ほら、団体さんにとっととアルス王子のことを話したらどうだい!」
「…そう言えば…あなた…アルスくんを…さらったのは…わけがあるって…言ってたよね…何が…あったの…?」
中腰になって目線を合わせた舞に、涙目で頭を擦っていたユナが重い口を開く。
「…アルスくんね。ローガルスでカオス=エメラルドの欠片を買ったの…。」
「…え…ローガルスで…!?」
「ローガルス…?どんなとこなんですか?」
「…えっと…その…。」
「貧乏人やならず者だらけで盗みも騙しも暴力も当たり前、って有名な町さ。」
言い淀む舞に代わり、メイルが端的に説明する。
「商売やってる奴も多いけど、そのほとんどが闇商人なのもよく知られてるんだ。それでも時々本当に貴重な品物があるからって、カタギでも足を運ぶクチもいるようだけどね…。」
「…まさか、アルス王子が立ち寄られたお店も…?」
ユナは無言で頷いた。
「…つーことは、王子さんは欠片の元持ち主…それも結構やべー奴に睨まれたんだな…。」
「はい…だから、アルスくんをかくまいながら、元持ち主をやっつけてくれる腕利きの人を探せればと思って…。」
「だったら最初からそう言えよ!こんなめんどい真似する必要なかっただろ!」
「簡単に言えませんってば!ローガルスはファラームじゃ立ち入り厳禁区域なのに、王子さまが条例違反したなんて大問題だし!それに、その欠片の元持ち主はラダンっていう強盗で…!」
「ラダン!?それって、噂のラダン=ベイルってヤツかい!?」
「そう!そいつ!」
メイルの面持ちに、明らかな焦りの色が宿った。
「…よっぽど危ない奴なのか、その強盗?」
「…前科…三桁超え…盗めるものなら…お金も…物も…命でも…何でも盗むって…最低な男…。」
今度は舞が、絶句したメイルに代わって答えた。
「…おまけに…噂じゃ…盗みも…人殺しも…半分は…名前を…上げたいためで…時々…興味もないもの…盗んだり…恨みもなければ…邪魔になった…わけでもない人…殺したりも…してるとか…。」
「…とンだクズ野郎だな。」
「じゃ、すぐに王子さまと合流しないと!どこにいるのさ!」
「レジリス村に…霊峰レジリスに一番近い、黒い屋根のロッジに隠れてもらってるの!案内するから、ついて来て!」
ユナは急ぎ立ち上がると、僕達が後に続くかを確かめもしないまま走り出した。
「…ちっ…狂言誘拐犯に仕切られるのも癪だけど、しょうがないか…。」
「だな。急ごうぜ、皆の衆!」
「ああ!―それと、誰か風刃を拾って今の話を伝えといてくれ!」
「…それじゃ…私…行ってくる…!」
即答した舞が、レジリス村の西の林へと向かった。





一方、ユナを追う僕達には、メイルも付いて来た。
「あたしも付き合わせてもらうよ。強盗ラダンの懸賞金はかなりの額だからね。」
「…別に良いけど、今度はこっちの邪魔はしてくれるなよ。」
「ああ、もちろんさ。」
posted by 暇人 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 光の翼

光の翼 飛躍の翼14 手柄の行方1

「あら?あなたたち、旅の人かしら?」
レジリス村に到着するや、入り口近くにいた老婆が話し掛けて来た。
一面真っ白の短い髪とくすんだ紅色の防寒着は高齢者に似つかわしい風情だが、声は不釣り合いに瑞々しく、背筋も真っ直ぐ伸びている。
「ここに来るってことは、やっぱり霊峰レジリスにご用事?だったら、もっと温かい格好をしなくちゃ危ないわよ。あの山の寒さは、この辺とは比べ物になりませんからね。」
「い、いえ…ボクたち、この村に人さがしに来たんです…お、おばあさん、この2人を見かけてませんか…?」
震える手で2枚の写真を渡すと、氷華君は必死で自分の身体を擦る。
「あら、これは…。」
「ファラーム城の王子と、王子を誘拐したッて女なンだが…。」
駆君の説明に、老婆の朗らかだった笑顔は挑戦的なものへと変化した。
「―そっか。あなたたちなんだね。」
あどけない口調になったと思うと、小さな黒い球体を足元に投げつける。
球の中からは目に沁みる煙が噴き出し、僕達を咳き込ませた。





視界が晴れた時には、老婆はいなかった。
代わりに茶髪をポニーテールにまとめ、赤い忍び装束を着たうら若い少女が立っていた。
「テメエ…!」
「はーい、初めましてー。ファラームのアルス王子さまを連れ出した、ユナ=ゾールでーす☆よろしくねー♡」
ユナは敬礼とウインクを添え、ふざけているとしか思えないほど陽気に挨拶した。
「ふふ…私の変装、どうだった?こうやって自分からバラさなかったら、本当にただのおばあちゃんにしか見えなかったでしょ?」
「…いや、そいつはどうだろう。」
自慢気に豊かな胸を張るユナを前にして、半分ほど真面目に悩んだ。
確かに外見だけなら中々の偽装だったが、声を変えていなかったので結局は話している内にボロを出したのではないか。
「変装はともかく、さっさと王子様を返す気はねえかい?そしたら、せめて手荒な真似ナシでしょっ引いてやるぜ?基本、バカ妹以外の女子には優しくしときてえし。」
「うーん…最後のお情けありがとうって言わなきゃかもだけど、ごめんなさい。ちょっとワケありでね。すっごく強い人にしか、アルスく…王子さまは返せないの。」
「その理由とは何でしょうか…と伺っても、答えては下さらないのでしょうね。」
「…はい。残念ながら。」
「ちっ…要らん手間掛けさせやがって。」
風刃が苛立ちを露わに舌打ちし、木刀を握る。
「そんなに痛い目に遭いてぇなら、望み通りにしてやる!さっさと王子を解放すれば良かったって、後悔しやがれ!」
まばたき一つせずに立ち尽くしているユナに突進し、風を纏った斬撃を叩き込んだ。
だが、巻き上がる砂埃が去った後にユナの姿はなく、薄汚れた丸太が残っているだけだった。
「あっ、変わり身!?」
「忍者かぶれも、いよいよ度が過ぎて来やがッたな…。」
「…あの子…どこに…?」
予想外の技に誰もが視線を彷徨わせたが、ユナは見つからない。
気配で勘付かれないよう魄力も抑えているので、目と耳で直接探るしかなかった。
「…ん?」
ふと、風刃が足元を見やる。
少しずつ、だが確実に、影が大きくなっていた。





「幻鏡斬(げんきょうざん)!」





空中から現れたユナが、脇差で斬りかかる。





風刃は悠然と後ろに下がって事無きを得たが、取り立てて特徴の無い得物での一撃は、土砂を軽々と捲り上げてみせた。





「あらま。結構やるんでねえの?」
「…うん…直撃…くらったら…危ないね…。」
「…ふん。見た目よりは力があるらしいな。」
「そんな筋肉バカみたいな言い方、心外だなー。魄力を使ったおかげでやっとこんな威力ってだけだよ?私、本当は見た目通りのひ弱な女なんだから。」
「そうかよ。だったら、無駄な怪我しねぇ内に王子を返したらどうだ。」
「あれ?誘拐犯に、情けをかけてくれてるの?」
「馬鹿言え。勝つのが分かり切った戦いをダラダラやるのは苦痛ってだけだ。雑魚をいびって喜ぶ趣味はねぇんでな。」
「そうはいかないよ。前言撤回なんてナシ。王子さまを返すのは、あなたがすっごく強い人だって証明してもらってからじゃないとね。」
「はあ…つくづく鬱陶しい野郎だ!」
短い溜息を吐いて一層忌々し気に顔を顰めると、風刃は木刀を肩の高さに構え、力を込めた突きを繰り出した。
「竜風槍(りゅうふうそう)!」
切っ先から、威力と速度を兼ね備えた風の弾丸が飛び出した。
無防備のまま突っ立っていたユナは腹部を撃たれ、仰向けに倒れる。
「…ちっ、またか!」
だがユナに見えたそれは、地面に沈むと丸太に姿を変えた。
「ちまちまと目障りな真似しやがって…!」
「落ち着け。冷静にやらないと、勝てる勝負も取りこぼすぞ。」
叱るでもからかうでもなく淡々と諭すと、風刃は素直に深呼吸を始めた。





「えーい!」





その時を狙っていたかのように、ユナが背後から脇差を振るう。





しかし風刃は難なく避け、ユナの背中に木刀の一撃を浴びせた。





「あうっ!」





うつ伏せになったユナは更に、風刃の右足で後頭部を踏み付けられた。





「いやーっ、痛い痛い!人の頭、踏みつけないでよー!!」
「そんな科白抜かす位なら、さっさと王子の居場所を吐け。言わなきゃ、幾らでも踏み続けるぞ。」
眼下の悲鳴に眉一つ動かさず、風刃はユナの頭を踏みにじる。
「だから、言ってるでしょ…それは、あなたがすっごく強いって証明してくれないと、ダメなの…!」
ユナは腰に付けた袋から小さな黒い球体を取り出すと、勢いよく地面にぶつけた。
たちまち大量の煙が吹き上がり、再び僕達を咳き込ませる。
「くっ…また煙玉か…。」
風刃が木刀を振るって煙を払うと、ユナはその眼前にいた。
「あっ、また変わり身になってる!」
だが、不気味な程に動きを見せない点から、皆が一目で偽物だと察する。
「本物は…ああ、あそこだな〜。」
村の奥のロッジを見やると、屋根の上には印を結んで精神集中をしているユナがいた。





「…悔しいけど、幻鏡斬じゃ通じないみたいだね…でも今度は、さっきみたいにはいかないよ!秘術・鏡身法(きょうしんほう)!」
ユナの身体が仄かに白く光ったと思った矢先、その姿が5つに増えた。
「…わっ…分身の術…!?」
「しかも、全員から魄力を感じます…!」
どうやら新たに現れた4人は幻覚や目くらましなどではなく、元祖ユナを忠実に複製した代物のようだ。
「はは。お前、迷惑な奴だけど色々面白い技持ってるな。見世物小屋なら売れっ子になれそうだぞ。」
「ちょっと、お兄さん。見世物呼ばわりなんて遠慮してほしいな。苦労してできるようになった、自慢の技なんだから。」
「…下らねぇ。馬鹿げた大道芸に付き合ってやる程、暇じゃねぇんだ。ぶちのめしてやるから、とっとと掛かって来い!」
「そう?それじゃ、遠慮なく♪」
5人のユナが無邪気な笑顔のまま、脇差や拳や蹴りを見舞おうと風刃に迫る。





対する風刃はまるで動じず、真っ先に肉薄して来た分身の2人を右薙ぎで払いのけ。





次いで、後ろから襲い掛かろうとした2人は左手の裏拳で沈め。





最後に、死角から脇差で斬りかかって来た元祖ユナの額を右肘で打った。





「いたっ!」





元祖ユナが仰向けに倒れると、4つの分身も跡形無く消え去った。





「いたたた…どうして、こんな…。」
「どうしても何もあるか。0に何回0を足したって、1にはならねぇってだけの話だ。」
涙目で患部を押さえて悔しがるユナに、腕組みをした風刃が冷然と言い放つ。
「霞の修行受けてなかったら、間違っても言えない台詞だったな。」
「放っとけ!」
「それで、誘拐犯さん。まだ王子様の居場所を教える気はないのかな?返事次第じゃ、もっときつーい取り調べしちゃうよ?」
「…私の負けだね。全部お話ししますよ。」
満面の笑みで拳を握ってみせる氷華君にユナは力なく溜息をこぼしたが、すぐに真剣な面持ちになり、僕達を見据えた。
「その代わり…私が言うのも変だけど、王子さまをしっかり守ってよね。」
「…本当に誘拐犯の抜かすセリフじゃねエな。テメエ、自分の立場分かってやがるのか?」
「言ったでしょ。これにも色々とワケが―」





―そのワケとやらは、あたしがじっくり聞いてやるよ!





ユナの告白は突然の声と、僕達の後ろから地を裂きつつ迫る衝撃波で遮られた。
「どわ〜!」
「きゃああああああ!?」
僕達は全員無事に回避したが、唯一直撃を受けたユナは大きく上空に投げ出される。
そこに純白の鎧で身を包んだ女戦士が飛び込み、ユナを左手一つで捕獲した。
「メイル!」
「やあ。御苦労だったね、団体さん。」
手近なロッジの屋根に立ったメイルが、不敵に笑う。
「この人数の差じゃ、小娘を見つけ出すもとっちめるもあんた達に先を越されるのが分かり切ってたんでね。今まで様子見させてもらってたよ。」
「てめぇ!後からしゃしゃり出て、良いとこだけ持って行く気か!」
「そういうこと。ファラーム城でも言ったけど、先立つ物が要る身なんだ。ズルは十分承知の上だから、いくら恨んでくれても構わないよ。」
メイルはロッジを屋根伝いに跳び、レジリス村の外へ向かう。
軽装ではないにもかかわらず、実に身軽な動きだった。
「待て、この野郎!!!」
その後を真っ先に追い掛けたのは、怒りに燃える風刃であった。
posted by 暇人 at 12:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 光の翼

2023年10月10日

2023年の10月

夕方に今晩は。
過去の記事では「『BLEACH』の茜雫を語る」が割と読まれているらしき、『暇人の独り言』管理人です。


皆、あのゲストヒロインに傷を残されたのかなあ。





管理人も久しぶりに『MEMORIES OF NOBODY』を見た後はしばらく、「あのエンディングになるしかなかったんだ…」と「でもあれこれ手を尽くして単純にハッピーエンドでも良かったよな…」の気持ちがせめぎ合ったので、同志達の心境は僅かばかり想像が付くつもりです。



まあ、月日が経てば薄れる傷と割り切って、少しの間は抱えるしかないかと思いますが。










さて、本題です。
遅筆にして筆不精の管理人、先日でまたもや広告を生やしてしまったので、取り急ぎの生存報告に現れてみました。





これぞという面白い話はないですが、肩の力を抜いて御覧下さいますと幸いです。














最近のゲーム事情




この数ヶ月『ロックマンエグゼ アドバンスドコレクション』をプレイし、先日初代から最終作『6』までの全ストーリーを走り抜けました。
ただしバージョン違いは除く





『6』での一文「ロックマンエグゼ おわり」もゲームボーイアドバンスの時代以来10何年振りに目にしましたが、当時に比べると喪失感や寂しさはほとんど無いに等しかったです。


とうに完結済だと知っているのと、この時代になって復活して「いまでもボクらはつながっている」事を実感できたのが大きかったのかもしれません。




どうせならアドコレ発売の勢いに乗って、『ロックマンエグゼ4.5 リアルオペレーション』も復活してくれないかなと期待しています。
そして『5』や『6』みたいに、ロックマン以外のナビを手動で操作できるようにしてほしい。

無理な相談かもしれませんが。










積みゲーにしていた『星のカービィ Wii デラックス』をそろそろ進めて行きたいところですが、11月に発売が迫る『スーパーマリオRPG』も、気になっております。



何でも、戦闘に参加しているキャラクター3人で放つ「3人わざ」が追加されたほか、一部のボスとは再戦が可能になったそうな。



オリジナルを経験したプレイヤーこそ、手を出す価値がありそうな予感です。
なお管理人が買ってる場合かどうかは別問題















次の更新内容(予定)




『ドラゴンボール超 スーパーヒーロー』を語る記事はまだ作成中で、それよりは拙作『光の翼』の続きを載せる方が早いかもしれません。
そちらにしても、ついつい全く違う戯れに手を出して先延ばしになってしまっているので、次に本ブログを更新するのはまた当分先になりそうな気配…


…まあ、管理人にも管理人なりに色々あるという事で、御容赦願います。










暑さが長かった2023年もこの10月に入ってすっかり涼しくなりましたが、如何お過ごしでしょうか?
そろそろ寒くなってくる季節の上、世間的には終わったかのように扱われているコロナウイルスもまだ消え去っていないので、体調には十分注意しておきましょう。
深夜まで遊び惚けてる俺の言える台詞でもねえか





それでは、また。
posted by 暇人 at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 独り言
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