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2023年05月01日

飛躍の翼13 王室の依頼 あとがき

昼間から今日は。
愛用のSwitchにガタが来たため、楽しみにしていたソフトを遊べずにいる『暇人の独り言』管理人です。



無理して買った天下の任天堂ハードなのに5年経つか経たないかで弱ったし、御立派な値段ゆえ相変わらず甲斐性無しの管理人にはもう新調もできないしで、実に暗い気分でいます。



某オークションサイトで少しでも安く買えたらと思ったけれど、同じ事を考えるユーザーが幾らもいて、到底無理な相談でした。
無念。



…しかしまあ、待ちに待っていたソフトが出る手前でダメになってくれやがるとは、何だか悪意すら感じる。










…と、最初はゲーム機の話をしましたが、今回の本題は拙作『光の翼』のあとがきです。
御興味のない方は、どうぞお見捨て下さいませ。





この度掲載した「王室の依頼」は本ブログでこそ初投稿ですが、「小説家になろう」ではずっと前に「王城の選定試験」としてぶち込んでいた内容となっています。
例によって無駄が多かったのを書き直し、ようやくこちらに持って来た訳です。



改稿で大きく変えたのは、誘拐犯ユナ=ゾールの手紙。
最初は記号や顔文字も取り入れたバカの香り全開な内容だったのですが、余りに緊張感がなさ過ぎるので、真意の見えない物騒な文面にしてみました。



また、元は危ない気配満点の噂話が伝えられるシーンを入れていたものの、後の展開の盛大なネタバレでしかなかったので、こちらは丸ごと消し去っております。


ユナの手紙で細かい事を書かなかった分、この先どんな流れを作っても上手い事まとめられる…はず。










さて。
肝心の本編が短かった回なので、あとがきもこの位でさっさと終了です。



それではまた、次の更新にて。
posted by 暇人 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 光の翼

光の翼 飛躍の翼13 王室の依頼

「…まさかシヴァ様が、お前にまで…。」
「しかも、あんなにあっさりと…。」
ファラーム城の門番にして双子の兄弟であるレオンとフランが、憎たらしそうにメイルを見やる。
聞けば3人は、幼少期からの腐れ縁だという。いずれも物心付いた頃から兵士を夢見ており、長年頻繁に手合わせをしていたそうだ。
しかし、身体能力と魄力共に最も伸びが良かったのがメイルであったため、レオンとフランは常にやられっ放しだったらしい。
「ま、あたしもダテに傭兵稼業で生き延びちゃいないってことさ。」
難なく試験を突破したメイルが、涼しい顔で旧友達の視線を受け流す。
ルールの存在する小手調べであったとは言え、所要時間僅か20秒でシヴァへ一撃を叩き込んだ様は、並大抵でない実力の持ち主だと知るのに十分過ぎた。
「まったく…城仕えと傭兵なら二度と会うこともないと思っていたら、またその顔を見せられるなんてな。」
「同感だね。本当、人生ってのは何があるか分からないもんだよ。」
腹立たしそうなフランに対し、メイルはわざとらしく、だが幾分か本気で感慨深そうに言う。
「レオンならまだしも、ちょっと負ける度にピーピー泣きじゃくってた根性なしまで、念願叶ってファラーム城の兵士になったんだから。」
「何だとこの野郎!!」
「止めろ、フラン!私闘は御法度だろうが!」
今にも殴り掛かろうとするフランを、レオンが背後から取り押さえた。
「…どこかのお家の誰かさんたちとカブるね、この光景。」
「あア、そこは同感だ。」
「…どこぞの学校の同級生共ともそっくりだけどな。」
「…なんですって?」
「そいつは誰の―」





「皆さま、お待たせ致しました。」





風刃達に余計な火花が散りそうになったところで、両親を呼ぶべく席を外したシヴァが戻って来た。
父親は黒の、母親は紺色のスーツを身にまとっており、企業の重役のような風格がある。
いずれも顔に数箇所の小じわがある点ではそれなりの年齢を感じさせるが、頭部を彩る金髪には1本の白髪も紛れていなかった。
「こちらが私の父母…ファラーム王と、王妃にございます。」
「舞さま、お久しぶりですね。御友人の皆様と一緒にアルスを捜して下さるそうで…誠にありがとうございます。」
「…いえ…お気になさらず…友達として…当たり前のことを…したいだけですから…。」
深々と頭を下げるファラーム王妃に、舞が恐縮する。
「して、そちらの女性が傭兵のメイル様ですな?何でも、このシヴァに一瞬で勝ったのだとか。相当の腕をお持ちなのですね。」
「ま、仕事柄そこそこにね。」
「…こほん。お父様?」
「おお、そうだった。改めまして、御挨拶を。私、僭越ながらこのファラームの統治を預かっております、ガルシー=ウィネスと申します。」
「ガルシーの妻の、ミル=ウィネスです。」
ファラーム王女と王妃が揃って恭しく礼をすると、僕達も誰からともなく軽い会釈をした。
「では早速ですが、今回の件について説明をさせて下さい。…ミル、写真を。」
「はい。」
ミルさんは氷華君とメイルに、2種類の写真を渡した。
片方には王室の面々と同じく金髪碧眼の容姿端麗な少年が、もう片方には茶髪をポニーテールに結った赤い忍び装束の少女が写っている。
「ふむ…この金髪の坊ちゃんが、アルス王子だね。」
「はい。そしてこちらが、アルスをさらったと宣言している少女です。」
ミルさんは忍び装束の少女の写真を指しながら答えた。
「ユナ=ゾールと名乗るその少女は、アルスの命が惜しければ凄腕の戦士を派遣してみろと、我々に文書を送って来ました。」
ガルシーさんが、左手に握り締めていた紙を広げる。
そこにはなかなか流麗な筆文字で、穏やかでない内容が刻まれていた。





ファラーム王室、並びにファラーム住民の皆様へ。

この度、訳あってアルス王子の身柄を預かりました。
王子の命が惜しければ、選りすぐりの使い手をレジリス村までお送り下さい。
なお、私の要求は金品ではございません。身代金の類による交渉には応じかねますが、御了承願います。

誘拐犯ユナ=ゾール





「…良い度胸してやがるぜ、この馬鹿女。」
「しかし、誘拐にしちゃ随分と変だな。身代金をよこせじゃなくて、強い奴を送って来いなんて…。」
風刃や僕をはじめ、皆が手紙の文章と睨み合うが、誘拐犯の目的は見えて来ない。
戦闘好きな性分で、凄腕を相手に腕試しをしたいとでも言うのだろうか。
「明らかに結構なウラがありそうだけど…とりあえず、依頼は王子の奪還と誘拐犯の捕縛って事で間違いないかな?」
「はい、お願い致します。弟を救出してくだされば300万、誘拐犯を捕えてくだされば200万を支払います。」
「シヴァ、その事なんだけど。僕達が成功したら、金じゃなくてカオス=エメラルドの欠片をくれないか。」
「…あの噂の、カオス=エメラルドですか?しかし、弟がそれを持っていたか…。」
「…間違いなく…持ってるはずだよ…ティグラーブさんの…調べだもん…。」
「…そうですか…そんな危険な物に手を出していたとは…。」
「こうなると、あの子の宝石好きも考え物ね…。」
シヴァに続き、ミルさんも表情を暗くする。
「…ああ、失礼。そういうことでしたら、喜んで。」
「ありがとうございます、シヴァさん。それで、このレジリス村というのはどちらにあるのでしょう?」
「え、どこにって…霊峰レジリスの麓に決まってるじゃないか。」
目を丸くするメイルにも、舞を除いた6人の反応は鈍い。
「…そうか。あんた達、人間界の出だね?」
「えっ、何で分かったの?」
「そりゃ分かるさ。あのバカでかい霊峰レジリスを知らないなんて、魔界暮らしじゃそうそういやしないからね。」
「…成程。そのレジリスって山、日本で言えば富士山みたいなもんか?」
振り向いて問い掛けると、舞が頷いた。
「…高さも…だいたい…同じくらい…いや…レジリスが…ほんのちょっと…低い…かな…。」
「だッたら、少し近付けばすぐ分かるな。」
「…だな。急ごうぜ。誘拐犯が碌でもない真似する前に、叩き潰さねぇと。」
「では皆様、何卒宜しくお願い申し上げます。」
ガルシーさんとミルさん、そしてシヴァが揃って深々と頭を下げる。
「まだまだ至らぬ点だらけの若造ですが、あれでもシヴァと同じく、王室の未来を担う貴重な人材ですので。」
「了解、王様。それじゃ、ちょっと待ってておくれよ。」
城を後にしようと歩き出したメイルが途中で止まり、僕達を見る。
「あんた達もワケありのようだけど、こっちも物入りの身なんでね。手柄はあたしが頂くよ。」
「芸がないが…その台詞そっくりそのままお返しする、と言っとくかな。」
メイルは不敵に微笑むと、小走りで去って行った。
「…複雑な気分だな。本来なら我々がアルス様を捜しに行くべきであろうに、城の関係者どころかファラームの住人でさえない者達に任せなければならないとは…。」
「だが万一の事態を考えれば、シヴァ様や我々が不用意にここを離れられないのも確かだ。…お前達、アルス様を頼んだぞ。」
「ああ、もちろんだ。」
即答すると、心なしかレオンとフランの唇が僅かに持ち上がった。
posted by 暇人 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 光の翼

【2023年5月追記】飛躍の翼12 王城の選定試験 あとがき

深夜遅くに今晩は。
冷え込んで来た中でも夜更かしをしまくりの、『暇人の独り言』管理人です。





健康にはリスキーなのに、実際に体調を崩したことも何度もあるのに、相変わらず直せない悪癖。
ここまで来ると、管理人は筋金入りのアホなのかもしれません。
注目されもしない作品必死で書いてる時点でそうだけども










さて、今回の更新では、先日掲載した拙作『光の翼』のあとがきをしておきます。
…良いのです、需要がなくても。




カオス=エメラルドを持っているらしい、行方不明のアルス王子の捜索に名乗り出た風刃達。
試験としてシヴァ姫との手合わせに臨んだ氷華は危ういかと思われながらも、無事に合格を決めました。



続いては、そんな氷華の戦いを見ていた女戦士メイルが挑戦。
…さっさと言ってしまうと次の話にて戦闘描写省略であっさり合格し、王子捜しの手柄を争う相手となります。


結構強いんだよな、この傭兵。










強いていちいち言ってしまいますが、この話で楽しんで貰いたいのは氷華とシヴァの戦い。
最初に「小説家になろう」に投稿するまでに数ヶ月掛けてようやく作り上げた場面なので、良い出来になっていて欲しいものです。
1話作るのに数ヶ月以上掛かるのは吾輩には日常茶飯事だが





次の話では、ファラーム王室の依頼について詳しく説明がなされます。
アルス王子をさらった犯人の要求に読者様が驚いてくれると嬉しいのですが、どうなるやら?





ともあれ、また次の更新にてお目にかかります。















【以下 2023年5月追記】




2023年も早々と5月になって、おはようございます。
先月は拙作『光の翼』の改稿版ばかり掲載して来た、『暇人の独り言』管理人です。



最新話作りと過去の書き直しを行ったり来たりするのも大変なので、この勢いに乗って本ブログ含む計4サイトでの更新状況をピッタリ揃えたいものです。



…というか、構想段階含めたらもう14年未完のままなので、そろそろ完結させたい。





今回書き直した「王城の選定試験」ですが、最初に本ブログへ載せた時にはキャラクター達がグダグダと喋ってばかりで、肝心の試験が始まらないまま一区切りにしていた有様でした。



勿論盛大に反省して、氷華とシヴァの手合わせをさっさと開始し、さっさと終える形に直しております。
あんな無駄話の羅列をよくも人様に見せられたもんだったよなと、毎度の事ながら恥ずかしい…





ところでこの話はそうした無駄をマシにする上で、今まで以上に地の文の有難味を感じました。
あれこれリアクションを入れがちになる会話形式よりも遥かに早く状況説明等ができるのは、大袈裟に言えば魔法の域にさえ思えます。



キャラクター達の台詞よりも考えるのが大変なので、困りものですが。










なおこのあとがき、最初は2019年の12月に投稿していたようです。
改稿版をぶち込んでこちらも書き直すまでに、ほぼ4年掛かったか…



ただ、怠けながらも本ブログで掲載していた部分を全て改稿するまで投げ出さなかったので、ひとまずの創作者の責任はきっちり果たしたと思います。
posted by 暇人 at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 光の翼

光の翼 飛躍の翼12 王城の選定試験

黒い屋根瓦。
雄々しく聳(そび)え立つ本丸。
その隣に鎮座する二の丸。
頑丈な城壁。
陽光を受けて煌めくお堀。
人工物でありながら周囲の桜の木々と馴染み、独特の風情を感じさせる城が、そこにあった。
「うわ〜…かっこいいなぁ…。」
「ああ。威風堂々ってやつだな〜。」
4月28日、午前8時20分。僕達はファラーム城にやって来た。
ティグラーブの情報によると、宝石好きで知られるアルス=ウィネス王子が何者かに攫われてしまったらしい。
王子の姉にして教育係でもあるシヴァ姫が自ら捜索に赴こうとしたが、封殺者門下でも指折りの使い手である彼女は城や街の守りを担う身。身内の安否が問われる状況でも、不用意な外出は許されなかった。
兵士達を派遣する案も同じく防衛に支障が出るからと却下されたシヴァ姫は、王子を捜してくれる者を城の外から募集してほしい、誰も現れなければその時は何と言われようと自分が1人で出ると言い出した。
ただし志願者は試験として、シヴァ姫と1対1で手合わせを行う必要がある。王子を攫った犯人の出方によっては荒事も十分起こり得るのだから、ファラーム最高の使い手と同格かそれ以上の実力は欲しいという訳だ。
アルス王子を無事連れ帰れば王室に縁ができ、彼が持つカオス=エメラルドの欠片を譲ってくれと頼む位は造作もなくなる。
仲間達の決断は、受験一択だった。
「…うーん…。」
氷華君や紅炎達がファラーム城に見入っている後ろで、僕は思わず首を捻った。
「どうかしたか?」
「…風刃は、見覚えないか?」
「見覚え?ここにか?」
城を指差して問い返す風刃に、短く頷く。
「何言ってんだよ。初めて来た場所なのに、見覚えなんかある訳ねぇだろ。」
弟からはすぐさま、呆れ笑いが返された。
「…そうか…じゃ、気のせいか…。」
「そうそう。どうせ、既視体験とかいう奴だよ。」
こちらの疑問を全く気に掛けず進む風刃や仲間達の後に、ひとまず自分も続く。





辿り着いた城門には、色とりどりの宝石が踊る豪華な桃色のドレスを着込んだ金髪碧眼の若い女性が佇んでいた。
彼女の後方には、2人の兵士もいる。赤を基調とする鎧兜と槍、そして青い瞳の乗った顔が、いずれも鏡に映した様にそっくりだった。
「…シヴァちゃん…おはよう…。」
「あら、舞さま!ご無沙汰しております!」
舞の気軽な挨拶に、シヴァの瞳が輝く。
「…うん…久しぶり…元気そうで…良かった…。」
封殺者の師範代と門下生としてだけでなく、友人としても付き合いは長いという2人。
都合が折り合わぬ日が続き、対面するのは数ヶ月ぶりらしいが、友情に悪影響は何ら見られなかった。
「…アルスくんのこと…聞いたから…試験…受けに来たよ…。」
「まあ、本当ですか!?ありがとうございます!」
シヴァは両の手を合わせて、弾けるような笑顔を見せた。
「なあ、お姫様。他に志願した奴はどこかな?もうみんな、合格しちまったの?」
「いえ、御参加下さったのは皆さまが初めてですが。」
あっけらかんと答えるシヴァに、全員が滑りかけた。
「…受付、9時までなんだろ?ぼちぼち残り時間半分で、うちらが初めてって…。」
「…シヴァちゃんが…試験官なんか…やるから…みんな…辞退…しちゃったんだよ…きっと…。」
「そうでしょうか…?」
シヴァ本人は苦笑するばかりだが、恐らく舞の見解が当たりだろう。
師との間にこそ小さくない開きがあるようだが、それでも十分に人並み外れたものを秘めている気配が感じ取れる。
「それにしても舞さまがいらっしゃったのでは、試験を行うなど無礼な上に時間の無駄ですね。」
「…でも…まだ…募集は…してるんでしょ…?…私達だけ…試験なしじゃ…後で…誰か…来た時…不公平だよ…。」
「ああ、確かにそうですね…では、お手合わせは舞さま以外のどなたかにお願い致しましょうか。」
「じゃ、ボクがやります!」
勢い良く手を挙げたのは、氷華君だった。
「ほう。乗り気じゃねぇか。」
「魔界に来てから、あんまりカラダ動かしてないもん。このままじゃ、なまっちゃいそうだからさ。」
「よし。じゃ頼むよ、氷華君。」
「落ちやがッたら、タダじゃ置かねエぞ!」
「上等じゃんか!きっちり合格してみせるよ!」
不信感を露わに煽る駆君に、氷華君は柔軟体操をしながら自信満々に応じる。
「貴女が代表をなさるのですね。お名前は…氷華さま、で間違いないでしょうか?」
「はい!よろしくお願いします、お姫さま!」
「お気軽に、シヴァとお呼び下さい。私共は別段、高貴な家柄ではございませんので。」
「え?でも、お姫様なんですよね…?」
「…シヴァ様。そのお話は別の機会に。」
「今は挑戦者へ、手合わせの説明を。」
門番の2人から促され、シヴァはそうですねと応じた。
「…では、氷華さま。これから3分間で私に一度攻撃を命中させれば、御同伴の皆さま共々、合格とさせて頂きます。特に反則等はございませんので、武器や魄能の使用も含めて、御自由に攻撃をなさって下さい。」
「準備ができたら、シヴァ様の正面に立って構えるように。」
僕等から見て左側に立つ兵士が、金色の懐中時計を手にして告げる。
氷華君は特に準備らしい準備もなく、すぐさまシヴァの前に立った。
「ほう。シヴァ様を相手に、丸腰で良いのか?」
「その気になれば魄能で武器も作れるけど、今やって役に立たなかったら魄力のムダ使いですからね。必要だと思ったら、試合中にスキを見て作りますよ。」
「…なるほど。悪くない判断だな。」
微かな不快感を滲ませて氷華君に問い掛けた右側の兵士だったが、体力の温存を考えての事だと説かれると、納得を見せた。
「双方とも、よろしいか?では…試合、開始!」





時計を持った兵士の合図がなされるや、氷華君はシヴァを目掛けて猛然と突進する。





腹部を狙って右手で拳を放ったが、シヴァは難なく身をかわし、氷華君の背中へ手刀を見舞おうとした。





対する氷華君も鋭く反応し、左手でシヴァの手刀を受け止めた。





「…素晴らしいお手前ですね、氷華さま。」





「ふふ、そうですか?」





「はい。御覧の通り何の変哲もない一撃ではありますが、舞さま以外の方に受け止められたのは初めてです。」





シヴァは素早く右手を引いて氷華君の体勢を崩すと、足払いで彼女を仰向けに転倒させる。





左手でのパンチが胸部に決まると見えた刹那、氷華君は急ぎ伸ばした左足で防ぎ、右手から冷気の波動を放った。





「うっ…。」





季節外れの寒気を浴びたシヴァが、眉を顰めつつ後ろに退く。





無論その隙を、立ち上がった氷華君は逃さない。





「冷氷弾(れいひょうだん)!」





握り拳にした右手から、シヴァを目掛けて氷の弾丸を乱射する。





無数の氷塊から広範囲かつ長距離にわたって襲い掛かられては避ける暇もなく、シヴァはその場に留まっての対処を余儀なくされた。





それでも大小様々の氷の弾丸を、両の手のみで弾き飛ばすだけの技量も見せる。





「ほほ〜。両者譲らず、だな〜。」
「…確か…氷華ちゃんって…1週間…修行したくらい…なんだよね…?…それで…シヴァちゃんと…互角って…才能…凄すぎない…?」
「シヴァ姫は、どのくらい封殺者の修行をなさっているのですか?」
「…10才の…頃から…だから…もう…丸8年…。」
「そいつは、また…本人には言わん方が良い話だな。」
「だが、それで雪原が勝つッてのも楽観的過ぎるゼ。」
懐疑的な見方をする駆君に、ほぼ全員の視線が集まる。
「確かに悪くねエ競り合いだが、姫サマの方が立ち回りは上ッて感じだ。そもそもあの調子じゃ、時間内にケリが付くかどうか…。」
「…さあ、どうだろうな?」
腕組みしたままの風刃が、目を細めて試合の模様を凝視していた。
「3分で『倒せ』じゃなくて、『一撃入れろ』ってルールだろ?それ位、一瞬の隙を突けばどうにでもなるさ。」
「…ヤツにはそれができるッて思ってる訳か。」
「思わなきゃ、誰も任せやしねぇだろ。あいつだって、できる保証があるから名乗り上げた筈だし。」
「ふっ。人間不信にしちゃ、随分な信頼だな。」
「…信頼って程じゃねぇよ。大見得切っといてしくじるようだったらぶった切ってやるってだけだ。」
努めて冷たく吐き捨てながらそっぽを向いた弟に、そんな必要ありませんようにって一番願ってるのは誰なんだろうなと言いそうになったが、控えておいた。





「氷柱槍・霰(ひょうちゅうそう・あられ)!」





上空へ跳んだ氷華君が冷気を宿した右手を横薙ぎに振るい、夥しい氷の槍を降らせた。





先の氷の弾丸より素早い鋭利な氷塊の群れにシヴァは背を向け、回避に専念する。





その行く手には、着地した氷華君が先回りしていた。





「は…!」





「氷衝波!」





先程より更に強烈な冷気の波動で、射程上にあった地面や針葉樹までもが凍て付いた。





ましてや至近距離にいた者などは、と誰もが思ったが。





シヴァは氷衝波が放たれた瞬間、高速で氷華君の背後を取り、手刀で彼女の右腕を打っていた。





「あうっ!」





のけぞった氷華君の左腕を押さえながらのしかかり、うつ伏せに倒れ込ませる。





「…どうやらここまでの御様子ですね、氷華さま?」





「…そうですか?まだ分からないと思いますけど?」





祭りの終わりを寂しがるような面持ちのシヴァに、敗色濃厚の氷華君が不敵な微笑みを返す。





見るとその右手は何時の間にか小太刀そっくりの形をした氷塊を握り、地面に突き刺したところだった。





「あ…!」





氷華君の最後の一手を理解したシヴァだったが、最早何もかもが間に合わない。





円柱状の冷気が空高く立ち上り、2人は揃って氷の中へと封じ込められた。










「…まさか、あんな攻撃を仕掛けるとはな。」
金色の懐中時計を持った兵士が、驚きと呆れの混ざった調子でこぼす。
その文字盤は、試合開始から1分20秒進んだところで止められていた。
「…もしかして、ズルい手だったからやっぱり無効試合とか言う気ですか?」
「いいえ。」
唇を尖らせた氷華君にシヴァは穏やかに微笑み、ゆっくりと首を横に振った。
「こちらが反則なしと取り決めた以上、何も異議はございません。氷華さま達は、合格とさせていただきます。」
「やったー!」
「おっしゃ〜!ナイス、ヒョウ嬢〜!」
「…頑張ったね…氷華ちゃん…!」
「よくやったな。」
「えへへ…。」
紅炎と舞と風刃から立て続けに褒め称えられ、氷華君は照れながらも嬉しそうに頭をかいていた。
「―へえ。やるもんだね、お嬢ちゃん。」
そこに、長身の女が現れた。
頭が舞と同じ高さにあり、背中には身の丈ほどの大剣を備えている。
赤い髪は短くまとめられ、身にまとう西洋風の鎧は一面の純白。
黒い両目は燃え上がるような熱さを帯びており、好戦的な印象を抱かせた。
「実力者って評判のシヴァ姫から、一本取っちまうなんてさ。」
「貴女も、シヴァさんとお手合わせに?」
「ああ。…姫様には連戦になるけど、お相手を頼めるかい?」
「はい、喜んで。では、まずお名前を伺ってもよろしいでしょうか。」
「メイル=バート。しがない流れの傭兵さ。」
女戦士は、余計な気負いを感じさせない自然な動きで大剣を握り締めた。
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