2017年02月08日
【少女終末旅行】マンガ 感想&あらすじ 終末世界をのんびり気ままに旅する2人の少女の物語
くらげバンチ。2014年2月から連載中。既刊4巻
作者:つくみず
文明が崩壊した終末世界。
朽ち果てた無数の廃墟、打ち捨てられたかのように点在する過去の遺物、かつて命が溢れていた都市からは音が消え、それらは抜け殻となって取り残されていた。
そんな世界に少女ふたりぼっちで生きるチトとユーリ。愛車のケッテンクラート(履帯式オートバイ)に乗り、廃墟ばかりの崩壊した世界を目的も無く走り続ける。
行きたい場所があるわけでも、会いたい人がいるわけでもない。日々の糧を得ることすらままならないあてのない旅。それでも、2人は仲良く見えない先へとのんびり進んでいく。
・チト
長い黒髪をツインテールにしている少女。愛称「ちーちゃん」。何事にも慎重に行動するしっかり者で少し神経質な性格。主にケッテンクラートの操縦手を務め、簡単な修理もこなせます。読み書きが出来ることから、読書家で本を収集し、日々の出来事を日記に書くのが習慣。ユーリに対して結構すぐに手が出ます。
・ユーリ
金髪碧眼の欧米人風の少女。マイペースでお気楽な性格。好奇心も旺盛で、何にでも適当に手を出してはチトに怒られてます。小銃を携帯しており、チトとは違って射撃が結構得意。食べることが大好きなので、何か分からない物はとりあえず食べられるかで迷ってます。読み書きは苦手。
・カナザワ
眼鏡をかけた男性。地図を作りながら旅をしています。チトたちに食料のお礼としてカメラをくれました。
・イシイ
眼鏡をかけた長い黒髪の女性。古い空軍基地で図面を元に飛行機を作っています。
・ヌコ
のっぺりした謎生物。ラジオを通して会話ができます。食料は弾薬やオイル。
【eBookJapan】 少女終末旅行 無料で試し読みできます
文明が崩壊した終末世界を2人だけで生きる少女たちが、訪れる先々で出会った人や発見した物事に思いを馳せながら、愛車に乗ってあてもない旅を続ける物語。
2人の少女が崩壊した世界を旅する終末日常系漫画です。「ほのぼのディストピア・ストーリー」と銘打ってるだけあって、終末世界でありながら少女たちは結構楽しげな雰囲気。
著者はこの作品がデビュー作となるつくみずさん。デビュー前は同人サークルで活動していたようで、最初に制作した作品をネットにアップしたところ、それが新潮社の目に止まってデビューしたのが経緯とのこと。
ディストピア作品と言えば『EDEN』、『7SEEDS』、『BLAME!』など、多かれ少なかれ悲壮感や絶望感といったものがつきものだと思いますが、本作はそれらとは異なり雰囲気はかなりゆるめです。
今上げた作品よりも『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』や『がっこうぐらし!』、あとゆったり滅びに向かっている作品と言えば『ヨコハマ買い出し紀行』なんかとも少し近いかもしれませんね。
終末世界が舞台、なのにほのぼの日常系。
この作品の世界は物語開始時点で既に文明はほぼ完全に崩壊し、人類も僅かしか存在せず、地球は生命の永い営みをついに終えようとしている状態。
人に使われなくなった建造物は朽ち果て、誰もいなくなった多層構造都市は抜け殻となり、そこかしこに戦争で使われたと思われる兵器という遺物が打ち捨てられています。なぜ世界がこうなってしまったかについて確かなことが書かれているわけではありませんが、恐らく大きな戦争が起きたのではないかと推測。
人間がいなくなっても未だに自動制御で動き続ける施設や、様々なロボットが稼動しているおかげでインフラの一部は生きており、かなり高度な文明へと発展していたことが伺えます。
そんな終わりかけている世界の巨大な多層構造都市を旅しているのが、チトとユーリのふたりぼっちの少女。彼女たちの生い立ちはおじいさんと暮らしていたこと以外よく分かりませんが、特に目的もなく愛車のケッテンクラート(履帯式オートバイ)に乗ってとりあえず上へ上へと進んでいます。
ちなみに、ケッテンクラートというのはオートバイと戦車を合体させたような形をした、第二次世界大戦の折にドイツ軍が開発した奇妙な乗り物です。『プライベート・ライアン』にも登場してますね。
慎重に行動するしっかり者のチト(ちーちゃん)、考えるよりまず体が動いてしまうお気楽なユーリ、性格は正反対な2人だけど仲良く楽しげに旅をしてます。むしろ、2人共慎重で神経質、あるいは楽観主義者だった場合の方が生存率下がってたかもしれませんね。ご飯をとりあったり、寄り添いあいながら睡眠をとったり、一緒にお風呂に入ったり、ときには喧嘩もすることはありますが、助け合ってのんびり生きてます。
世界だけを見ると絶望しかないわけですが、チトとユーリの2人には悲壮感や絶望感は全くなく、暗い影を落とすこともありません。背景の絵が荒廃している世界というだけで、2人の雰囲気だけを見るといたって普通の日常系作品の風景。時折ピンチに陥ることもありますが、基本はのほほんほのぼのといった感じです。
それは、彼女たちが何も知らない子供たちだからでしょうね。恐らく文明が滅びた後に生まれた世代なんでしょうが、なぜ滅びたのかも分かってない。チョコが何かも、音楽が何なのかも、カメラで写真をとってもなぜ人が記録を残すのかは分からない2人です。旅をしながらそれらのことを知る・・・というより気づいていく、と言った方が正しいでしょうね。
チトとユーリの他にも生き残っている人はいます。4巻時点ではまだ2人だけですけど、1人は地図を書きながら旅を続け、1人は残された図面をもとに飛行機作りをして生きている人たち。そんな人たちと出会い、会話し、共に行動し、別々の道へ別れていきます。
面白いのはお互い正反対なところですね。チトとユーリも性格の部分では対照的な2人ですが、サブとして出てきた2人も生き方がまるで違います。チトとユーリには何の目的もないので極端に言えば生きるためだけに生きてる2人です。片やカナザワとイシイは、地図を作る、都市の外へ行くため飛行機を作るという目的や目標を持って生きています。
目的があることは生きる励みにもなるのではと思う一方、それは無理をして背負った重荷でしかないのかもしれないなど、絶対の答えなんて出るものじゃないと思っていながらも、彼女たちを見てるどう生きるのが幸せなのかをつい考えてしまいましたね。
あてどないふたりぼっちの旅、とても面白かったです。彼女たちの向かう先には何があるのか、本当にこの世界には終わりしかないのかなど、気になる要素は満載。ただ、終わってしまうとしても、それでもいいのかもしれないとさえ思ってしまうほど、チトとユーリの旅は穏やか。ありふれた日常、当たり前のように享受している物事、それらは決して不滅のものではなく、いつかは呆気なく消えてしまうかもれしれないもの。この作品からは日常の中にある大切なものや感動に改めて気づかせてもらえましたね。
ただのんびり旅を続ける少女たちを見てほのぼのするも良し。終末世界で生きる彼女たちの姿から哲学的なことを考えるも良し。普通のディストピア作品や日常系作品に食傷気味の方、風変わりな作品が読みたい人におすすめできる作品かと思います。よければ読んでみてください。
作者:つくみず
あらすじ
文明が崩壊した終末世界。
朽ち果てた無数の廃墟、打ち捨てられたかのように点在する過去の遺物、かつて命が溢れていた都市からは音が消え、それらは抜け殻となって取り残されていた。
そんな世界に少女ふたりぼっちで生きるチトとユーリ。愛車のケッテンクラート(履帯式オートバイ)に乗り、廃墟ばかりの崩壊した世界を目的も無く走り続ける。
行きたい場所があるわけでも、会いたい人がいるわけでもない。日々の糧を得ることすらままならないあてのない旅。それでも、2人は仲良く見えない先へとのんびり進んでいく。
登場人物
・チト
長い黒髪をツインテールにしている少女。愛称「ちーちゃん」。何事にも慎重に行動するしっかり者で少し神経質な性格。主にケッテンクラートの操縦手を務め、簡単な修理もこなせます。読み書きが出来ることから、読書家で本を収集し、日々の出来事を日記に書くのが習慣。ユーリに対して結構すぐに手が出ます。
・ユーリ
金髪碧眼の欧米人風の少女。マイペースでお気楽な性格。好奇心も旺盛で、何にでも適当に手を出してはチトに怒られてます。小銃を携帯しており、チトとは違って射撃が結構得意。食べることが大好きなので、何か分からない物はとりあえず食べられるかで迷ってます。読み書きは苦手。
・カナザワ
眼鏡をかけた男性。地図を作りながら旅をしています。チトたちに食料のお礼としてカメラをくれました。
・イシイ
眼鏡をかけた長い黒髪の女性。古い空軍基地で図面を元に飛行機を作っています。
・ヌコ
のっぺりした謎生物。ラジオを通して会話ができます。食料は弾薬やオイル。
【eBookJapan】 少女終末旅行 無料で試し読みできます
感想・見所
文明が崩壊した終末世界を2人だけで生きる少女たちが、訪れる先々で出会った人や発見した物事に思いを馳せながら、愛車に乗ってあてもない旅を続ける物語。
2人の少女が崩壊した世界を旅する終末日常系漫画です。「ほのぼのディストピア・ストーリー」と銘打ってるだけあって、終末世界でありながら少女たちは結構楽しげな雰囲気。
著者はこの作品がデビュー作となるつくみずさん。デビュー前は同人サークルで活動していたようで、最初に制作した作品をネットにアップしたところ、それが新潮社の目に止まってデビューしたのが経緯とのこと。
ディストピア作品と言えば『EDEN』、『7SEEDS』、『BLAME!』など、多かれ少なかれ悲壮感や絶望感といったものがつきものだと思いますが、本作はそれらとは異なり雰囲気はかなりゆるめです。
今上げた作品よりも『デッドデッドデーモンズデデデデデストラクション』や『がっこうぐらし!』、あとゆったり滅びに向かっている作品と言えば『ヨコハマ買い出し紀行』なんかとも少し近いかもしれませんね。
終末世界が舞台、なのにほのぼの日常系。
この作品の世界は物語開始時点で既に文明はほぼ完全に崩壊し、人類も僅かしか存在せず、地球は生命の永い営みをついに終えようとしている状態。
人に使われなくなった建造物は朽ち果て、誰もいなくなった多層構造都市は抜け殻となり、そこかしこに戦争で使われたと思われる兵器という遺物が打ち捨てられています。なぜ世界がこうなってしまったかについて確かなことが書かれているわけではありませんが、恐らく大きな戦争が起きたのではないかと推測。
人間がいなくなっても未だに自動制御で動き続ける施設や、様々なロボットが稼動しているおかげでインフラの一部は生きており、かなり高度な文明へと発展していたことが伺えます。
そんな終わりかけている世界の巨大な多層構造都市を旅しているのが、チトとユーリのふたりぼっちの少女。彼女たちの生い立ちはおじいさんと暮らしていたこと以外よく分かりませんが、特に目的もなく愛車のケッテンクラート(履帯式オートバイ)に乗ってとりあえず上へ上へと進んでいます。
ちなみに、ケッテンクラートというのはオートバイと戦車を合体させたような形をした、第二次世界大戦の折にドイツ軍が開発した奇妙な乗り物です。『プライベート・ライアン』にも登場してますね。
慎重に行動するしっかり者のチト(ちーちゃん)、考えるよりまず体が動いてしまうお気楽なユーリ、性格は正反対な2人だけど仲良く楽しげに旅をしてます。むしろ、2人共慎重で神経質、あるいは楽観主義者だった場合の方が生存率下がってたかもしれませんね。ご飯をとりあったり、寄り添いあいながら睡眠をとったり、一緒にお風呂に入ったり、ときには喧嘩もすることはありますが、助け合ってのんびり生きてます。
世界だけを見ると絶望しかないわけですが、チトとユーリの2人には悲壮感や絶望感は全くなく、暗い影を落とすこともありません。背景の絵が荒廃している世界というだけで、2人の雰囲気だけを見るといたって普通の日常系作品の風景。時折ピンチに陥ることもありますが、基本はのほほんほのぼのといった感じです。
それは、彼女たちが何も知らない子供たちだからでしょうね。恐らく文明が滅びた後に生まれた世代なんでしょうが、なぜ滅びたのかも分かってない。チョコが何かも、音楽が何なのかも、カメラで写真をとってもなぜ人が記録を残すのかは分からない2人です。旅をしながらそれらのことを知る・・・というより気づいていく、と言った方が正しいでしょうね。
チトとユーリの他にも生き残っている人はいます。4巻時点ではまだ2人だけですけど、1人は地図を書きながら旅を続け、1人は残された図面をもとに飛行機作りをして生きている人たち。そんな人たちと出会い、会話し、共に行動し、別々の道へ別れていきます。
面白いのはお互い正反対なところですね。チトとユーリも性格の部分では対照的な2人ですが、サブとして出てきた2人も生き方がまるで違います。チトとユーリには何の目的もないので極端に言えば生きるためだけに生きてる2人です。片やカナザワとイシイは、地図を作る、都市の外へ行くため飛行機を作るという目的や目標を持って生きています。
目的があることは生きる励みにもなるのではと思う一方、それは無理をして背負った重荷でしかないのかもしれないなど、絶対の答えなんて出るものじゃないと思っていながらも、彼女たちを見てるどう生きるのが幸せなのかをつい考えてしまいましたね。
あてどないふたりぼっちの旅、とても面白かったです。彼女たちの向かう先には何があるのか、本当にこの世界には終わりしかないのかなど、気になる要素は満載。ただ、終わってしまうとしても、それでもいいのかもしれないとさえ思ってしまうほど、チトとユーリの旅は穏やか。ありふれた日常、当たり前のように享受している物事、それらは決して不滅のものではなく、いつかは呆気なく消えてしまうかもれしれないもの。この作品からは日常の中にある大切なものや感動に改めて気づかせてもらえましたね。
ただのんびり旅を続ける少女たちを見てほのぼのするも良し。終末世界で生きる彼女たちの姿から哲学的なことを考えるも良し。普通のディストピア作品や日常系作品に食傷気味の方、風変わりな作品が読みたい人におすすめできる作品かと思います。よければ読んでみてください。
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