2017年06月21日
【ひらけ駒!】マンガ 感想&あらすじ 将棋が繋げる母と息子の日常を描いたハートフルストーリー
モーニング。2011年6号から連載(現在休載中)→2017年秋から再開予定。既刊8巻
作者:南Q太
他作品:グランメゾンむらさきばし
将棋に夢中な小学4年生の少年・菊池宝(きくち たから)。他の事には目もくれず、暇さえあれば将棋の関連本を読み耽り、詰将棋に熱中していたことで、宝の部屋もいつの間にやら将棋一色。
棋士のイベントに参加して、足蹴なく通っているサロンやスクールで腕を磨き、めきめきと実力を上げていく将棋漬けの宝は、大会にも出場して活躍。
そんな将棋にどハマりした息子を持つちょっとミーハーな菊池ママ。最初はただ温かく見守っているだけだった彼女も、いつしか息子にあてられて将棋に興味を持つようになり、次第にその楽しさと喜びを知っていく
視線も感じ方もちょっとだけ異なる母と息子だけど、2人揃っで将棋の世界にどんどんのめり込んでしまう菊池親子だった。
――将棋によって深まる親子関係。
ネタバレも若干含むので注意
・菊池 宝(きくち たから)
主人公。小学4年生(開始時)。好物の漬物の中でも特にきゅうりの一本漬けが好き。
優しく素直な性格のゆったりした子で、見た目もかわいいことから、同世代の女子や年上女性から人気があります。飽きっぽいところもありますが、これと決めた事に対する集中力は非常に高い。あと、気が弱いところが難点。
将棋にハマってからは将棋漬けの毎日を送り、自分の部屋も関連する本やグッズでいっぱい。学校の宿題そっちのけで暇さえあれば棋譜並べや詰将棋に打ち込み、足蹴なく通っている道場やスクールで腕を磨き、めきめきと上達していく中で目標も高くなっています。
最も得意とする戦法は四間飛車で、相手によって居飛車と振り飛車を使い分けて指します。小学5年生でアマ3段に昇段し、周囲の人たちから研修会(奨励会の下部組織)を勧められるようになり、アマ4段への昇段を期に入会を決意。研修会でC1になったら奨励会試験を受けることも告げています。勝利を確信すると頬が紅潮し、耳も真っ赤になります。
・菊池ママ
もう1人の主人公。宝の母親。名前は不明。ショートカットの髪型、容姿端麗、スタイル抜群の女性。お酒類が好き。
当初は将棋に熱中する息子・宝を見守っているだけでしたが、影響を受けてためしに始めてみたところ、将棋にハマってしまいました。ミーハー気質なところもあるため、将棋番組や本に登場したり、イベントに呼ばれていた棋士に憧れを持つことが多い。中でも特に阿久津主税のファンですが、目移りすることもしばしば。クールに見えてかなりの親バカで尚且つ負けず嫌い。
自分が観戦すると宝が意識し過ぎるのではないかと思い、対局は極力見ないようにしているが、実際は自分が緊張し過ぎて見ていられないからという理由。通い始めたやさしい将棋教室の講師・水嶋比呂介(奨励会3段)から誘われ、女子アマ団体戦に参加して初勝利を飾ってから、一層将棋にのめり込むようになります。水嶋先生が三段リーグに専念してからは、壇レイコ女流棋士のもとで習い始めました。
・樋口 涼(ひぐち りょう)
宝と同じ水嶋先生の将棋教室に通う少年。小学5年生。アマ初段。
サッカーも好きだけどそれ以上に将棋が好き。宝と他水島教室の生徒何人かでチームを組んで将棋教室対抗戦に出場し、棋力違いの中学生にボロ負けしたことで奮起し、次の対局では見事勝利をもぎ取りました。昇段が掛かった対局で敗北するも、相手が勝ちをゆずってくれたことで一度は昇段しましたが、後ろめたさと悔しさで後に返上し、一から再出発しました。
・花田 みずき(はなだ みずき)
小学2年生。ツインテールの少女。
一手0.5秒で指す天才少女。兄のひろきは研修会で5段、小学生王将戦では優勝するほどの実力者ですが、自分の方がお兄ちゃんより強いと断言。アマ女流プロに勝利したことで新聞にも天才少女として紹介されるようになりました。
・水嶋 比呂介(みずしま ひろすけ)
奨励会三段。イケメン棋士。宝と菊池ママが通うやさしい将棋教室の講師。
小1で将棋を始め、学校以外の時間はほとんど将棋にあて、小5で奨励会に入会。菊池ママを含んだ教室の生徒5人で「水嶋チルドレン」を結成し、女子アマ団体戦に参加。若干意地が悪い面もあり。愛煙家。
・壇 レイ子(だん レイこ)
女流棋士二段。LPSA所属。もっとやさしい将棋教室の講師。
水嶋先生が三段リーグに集中するため教室をやめた代わりに、菊池ママが習うことになった講師。教えているのは初心者のみ。実力のある女流棋士であるうえ、容姿端麗でもあるため、男女問わず熱烈なファンがかなり多い。普段はおっとりゆるふわな女性ですが、対局になるとSモードのレイ子になります。力戦好きの攻め将棋。
菊池ママのことを「ステキ」と言って気に入っているようで、将棋サロンやランチ、自身が出るマイナビ女子オープンの応援などに度々誘っています。自分は女流棋士を目指していたわけではなく、女流棋士という仕事が自分を選んだなんてことをさらりと豪語。
【eBookJapan】 ひらけ駒! 無料で試し読みできます
大好きな将棋に毎日熱中して打ち込んでいる小学生の少年と、そんな息子を見守るうちに自分ものめり込むようになった母親の母子家庭を中心に、親と子の絆を将棋で深める日常での心温まるやりとりを描いた物語。
「親子」と「将棋」をテーマにしたエッセイ風の日常系漫画。キャッチコピーは「読むと元気に、成る」、「親子で将棋が楽しい」。
作者は『グランメゾンむらさきばし』の女性漫画家・南Q太さん。作者の息子さんが将棋にハマり、その熱に影響を受けて自身も将棋に興味を持つようになって勉強したことで、将棋の漫画を描いてみたいと思うようになったそうです。
今回紹介させていただく『ひらけ駒!』は、最新8巻が発売されてから既に約4年半ほど続刊が発行されることはなく、打ち切りは発表されませんでしたがずっと連載休止になっていた作品。
理由についてのはっきりとした説明はなく、それなりに信憑性が高そうな噂がささやかれていました。本作中でも取り上げているLPSA(日本女子プロ将棋協会)と日本将棋連盟の関係が悪化したことで、運営すら危ぶまれる事態になってしまったこと。一応の和解をしたときは再開を期待しましたけどそうはなりませんでしたね。
あと作品制作の助力を得ていたと思われる、作中のキャラ・水嶋比呂介のモデルにもなっていた元・奨励会三段の故・天野貴元さんの影響も大きいかと。
そんなこんなで正直なところ再開はほとんど諦めていたところ、モーニングで2017年秋に連載再開の情報が発表されたとのこと。私は雑誌を読んでいないので最初はガセかと思ったわけですが、サイトを覗いてみると確かに「再開」の二文字が。予定だとしても嬉し過ぎる発表。ただ、掲載はモーニングではなく電子雑誌「BABY!」のようです。
これはあくまで個人的な勘ぐりでしかありませんが、もしかしたらこの再開は最近噂の中学生棋士・藤井聡太四段の活躍も影響してるのかもしれませんね。今やらない手はないでしょうから。
将棋というのは白黒はっきり分かれる勝負の世界。それゆえ、そこを主戦場とするプロ棋士たちの勝利に対する執念と熱意は凄まじいものです。だからか、将棋を題材に扱った漫画の多くは、スポ根以上に火花散る熱いバトルと奮闘を描いた熱血物語だったり、棋士たちの様々な感情渦巻く濃密で厳かな人間ドラマであることが多いと思います。もちろんそれはそれで面白い。
しかし、この作品はそういった側面をあまり見せず、母子愛を温かな空気で感じさせてくれる母と子の関係をメインに描きながら、2人の間を繋ぐ将棋の世界の楽しさや奥深さをファン目線から覗くことができる、将棋愛にもあふれた作品。
将棋に馴染みのない人でも楽しめる将棋漫画では『3月のライオン』が人気だと思います。でも、それともだいぶ異なる内容で、家庭の温かみを教えてくれるという点では似ているところもありますが、鬱屈感や緊迫感はほぼ皆無。
将棋に熱中する小学生の少年・菊池宝と、そんな息子の姿を見守りながら一緒にのめり込んでいく母親・菊池ママ。この母子の日常を主に親目線からエッセイ風に描いた心温まる物語です。
この着眼点は斬新で面白いですね。他の将棋漫画では目にすることがない見せ方で将棋の世界を描いています。「将棋=難しい」と思ってる人にこそ読んで欲しいと詠っているように、将棋全然知らない人でも楽しめるように作られています。
この作品における将棋描写と、ここで繰り広げられている母子のやりとりが実にリアル。読んでいて違和感をあまり感じることはなく、強いてあげるなら宝が可愛過ぎること、菊池ママがお美し過ぎるところ。
純粋に将棋を楽しみながらも勝負事には真剣な宝と、息子の影響を受けて将棋をミーハー感覚で楽しみならもどんどんハマっていく菊池ママ。愛しくて大切な息子が好きなものなら自分も理解したいと思う親心が生んだきっかけ。でも、一緒に楽しんではいるけどその楽しみ方はビミョーに異なる母と息子の様子を、何気ない日常のやりとりから覗くことができます。宝の対局で勝ったとき、負けたとき、それぞれの様子と心境もリアルでしたね。
やけにリアルに感じられるのは、作者・南Q太さんが似たような経験をされているところが大きいかと。実際に息子の将棋熱に当てられて興味を持つようになり、勉強してるうちにこの題材で漫画を描いてみたいと思って作られた作品が『ひらけ駒!』ですから。
また、作中で登場する風景、建物、書籍やグッズ、そしてプロ棋士は、実在するモノや人が多く描かれているところもリアリティを感じる大きな要因。
書籍には『プロへの道』『将棋の必殺ワザ』『聖の青春』、さらに『3月のライオン』『月下の棋士』『しおんの王』などなど。各巻の表紙イラストも実在する場所を背景に使ってることが多いですね。
描かれているのは何も菊池親子のことだけではありません。菊池親子の日常を主軸にしながら、この作品では将棋に関わる様々な登場人物や親子にもスポットを当てたエピソードを挟み、若干ですけどオムニバス作品にも似た作風を見せています。
それは天才少女の物語だったり、女流棋士の物語だったり、ある親子の物語だったり、中年になって本気でやりたいモノを見つけた男性の物語だったりします。
その全てがどこかで宝や菊池ママたちと繋がっていく様子を見るのも面白い。個人的には、女流棋士に勝利した天才少女・みずきと、「今から本気で何かをしてみるのもいいかもな」という言葉が心に響いた中年男性・田嶋さんの話が結構好きですね。
様々な人間模様、様々な家族関係を覗けるところもこの作品の面白いところ。
というわけで、親の目線から母と子の日常を描くと同時に、ファン目線から将棋の世界を描いた漫画『ひらけ駒!』の紹介でした。
将棋漫画は多く存在しますが、ある意味ではそのどれよりも将棋の「楽しい」と「嬉しい」を純粋に描いていた作品内容だったと思います。温かなストーリー、愛着が湧くキャラクター、心地よい雰囲気、とにかく素晴らしいの一言。
気になるのは今後の宝くんの先が読めない動向。プロを目指して棋士の道を歩み出すのか、はたまた厳しい現実と壁によって断念するのか。通常なら前者でしょうが、この作品の場合後者も十分ありえます。まあでも、どうなったとしても将棋が繋げる母と子の温かさに包まれた日常はブレることなく続いていくでしょうね。
将棋ファンも将棋を知らない人も心をほっこりさせながら楽しめる作品なので、よければ読んでみてください。自信を持って強くおすすめさせていただきます。
作者:南Q太
他作品:グランメゾンむらさきばし
あらすじ
将棋に夢中な小学4年生の少年・菊池宝(きくち たから)。他の事には目もくれず、暇さえあれば将棋の関連本を読み耽り、詰将棋に熱中していたことで、宝の部屋もいつの間にやら将棋一色。
棋士のイベントに参加して、足蹴なく通っているサロンやスクールで腕を磨き、めきめきと実力を上げていく将棋漬けの宝は、大会にも出場して活躍。
そんな将棋にどハマりした息子を持つちょっとミーハーな菊池ママ。最初はただ温かく見守っているだけだった彼女も、いつしか息子にあてられて将棋に興味を持つようになり、次第にその楽しさと喜びを知っていく
視線も感じ方もちょっとだけ異なる母と息子だけど、2人揃っで将棋の世界にどんどんのめり込んでしまう菊池親子だった。
――将棋によって深まる親子関係。
登場人物
ネタバレも若干含むので注意
・菊池 宝(きくち たから)
主人公。小学4年生(開始時)。好物の漬物の中でも特にきゅうりの一本漬けが好き。
優しく素直な性格のゆったりした子で、見た目もかわいいことから、同世代の女子や年上女性から人気があります。飽きっぽいところもありますが、これと決めた事に対する集中力は非常に高い。あと、気が弱いところが難点。
将棋にハマってからは将棋漬けの毎日を送り、自分の部屋も関連する本やグッズでいっぱい。学校の宿題そっちのけで暇さえあれば棋譜並べや詰将棋に打ち込み、足蹴なく通っている道場やスクールで腕を磨き、めきめきと上達していく中で目標も高くなっています。
最も得意とする戦法は四間飛車で、相手によって居飛車と振り飛車を使い分けて指します。小学5年生でアマ3段に昇段し、周囲の人たちから研修会(奨励会の下部組織)を勧められるようになり、アマ4段への昇段を期に入会を決意。研修会でC1になったら奨励会試験を受けることも告げています。勝利を確信すると頬が紅潮し、耳も真っ赤になります。
・菊池ママ
もう1人の主人公。宝の母親。名前は不明。ショートカットの髪型、容姿端麗、スタイル抜群の女性。お酒類が好き。
当初は将棋に熱中する息子・宝を見守っているだけでしたが、影響を受けてためしに始めてみたところ、将棋にハマってしまいました。ミーハー気質なところもあるため、将棋番組や本に登場したり、イベントに呼ばれていた棋士に憧れを持つことが多い。中でも特に阿久津主税のファンですが、目移りすることもしばしば。クールに見えてかなりの親バカで尚且つ負けず嫌い。
自分が観戦すると宝が意識し過ぎるのではないかと思い、対局は極力見ないようにしているが、実際は自分が緊張し過ぎて見ていられないからという理由。通い始めたやさしい将棋教室の講師・水嶋比呂介(奨励会3段)から誘われ、女子アマ団体戦に参加して初勝利を飾ってから、一層将棋にのめり込むようになります。水嶋先生が三段リーグに専念してからは、壇レイコ女流棋士のもとで習い始めました。
・樋口 涼(ひぐち りょう)
宝と同じ水嶋先生の将棋教室に通う少年。小学5年生。アマ初段。
サッカーも好きだけどそれ以上に将棋が好き。宝と他水島教室の生徒何人かでチームを組んで将棋教室対抗戦に出場し、棋力違いの中学生にボロ負けしたことで奮起し、次の対局では見事勝利をもぎ取りました。昇段が掛かった対局で敗北するも、相手が勝ちをゆずってくれたことで一度は昇段しましたが、後ろめたさと悔しさで後に返上し、一から再出発しました。
・花田 みずき(はなだ みずき)
小学2年生。ツインテールの少女。
一手0.5秒で指す天才少女。兄のひろきは研修会で5段、小学生王将戦では優勝するほどの実力者ですが、自分の方がお兄ちゃんより強いと断言。アマ女流プロに勝利したことで新聞にも天才少女として紹介されるようになりました。
・水嶋 比呂介(みずしま ひろすけ)
奨励会三段。イケメン棋士。宝と菊池ママが通うやさしい将棋教室の講師。
小1で将棋を始め、学校以外の時間はほとんど将棋にあて、小5で奨励会に入会。菊池ママを含んだ教室の生徒5人で「水嶋チルドレン」を結成し、女子アマ団体戦に参加。若干意地が悪い面もあり。愛煙家。
・壇 レイ子(だん レイこ)
女流棋士二段。LPSA所属。もっとやさしい将棋教室の講師。
水嶋先生が三段リーグに集中するため教室をやめた代わりに、菊池ママが習うことになった講師。教えているのは初心者のみ。実力のある女流棋士であるうえ、容姿端麗でもあるため、男女問わず熱烈なファンがかなり多い。普段はおっとりゆるふわな女性ですが、対局になるとSモードのレイ子になります。力戦好きの攻め将棋。
菊池ママのことを「ステキ」と言って気に入っているようで、将棋サロンやランチ、自身が出るマイナビ女子オープンの応援などに度々誘っています。自分は女流棋士を目指していたわけではなく、女流棋士という仕事が自分を選んだなんてことをさらりと豪語。
【eBookJapan】 ひらけ駒! 無料で試し読みできます
感想・見所
大好きな将棋に毎日熱中して打ち込んでいる小学生の少年と、そんな息子を見守るうちに自分ものめり込むようになった母親の母子家庭を中心に、親と子の絆を将棋で深める日常での心温まるやりとりを描いた物語。
「親子」と「将棋」をテーマにしたエッセイ風の日常系漫画。キャッチコピーは「読むと元気に、成る」、「親子で将棋が楽しい」。
作者は『グランメゾンむらさきばし』の女性漫画家・南Q太さん。作者の息子さんが将棋にハマり、その熱に影響を受けて自身も将棋に興味を持つようになって勉強したことで、将棋の漫画を描いてみたいと思うようになったそうです。
今回紹介させていただく『ひらけ駒!』は、最新8巻が発売されてから既に約4年半ほど続刊が発行されることはなく、打ち切りは発表されませんでしたがずっと連載休止になっていた作品。
理由についてのはっきりとした説明はなく、それなりに信憑性が高そうな噂がささやかれていました。本作中でも取り上げているLPSA(日本女子プロ将棋協会)と日本将棋連盟の関係が悪化したことで、運営すら危ぶまれる事態になってしまったこと。一応の和解をしたときは再開を期待しましたけどそうはなりませんでしたね。
あと作品制作の助力を得ていたと思われる、作中のキャラ・水嶋比呂介のモデルにもなっていた元・奨励会三段の故・天野貴元さんの影響も大きいかと。
そんなこんなで正直なところ再開はほとんど諦めていたところ、モーニングで2017年秋に連載再開の情報が発表されたとのこと。私は雑誌を読んでいないので最初はガセかと思ったわけですが、サイトを覗いてみると確かに「再開」の二文字が。予定だとしても嬉し過ぎる発表。ただ、掲載はモーニングではなく電子雑誌「BABY!」のようです。
これはあくまで個人的な勘ぐりでしかありませんが、もしかしたらこの再開は最近噂の中学生棋士・藤井聡太四段の活躍も影響してるのかもしれませんね。今やらない手はないでしょうから。
「将棋愛」と「母子愛」溢れるハートフルストーリー
将棋というのは白黒はっきり分かれる勝負の世界。それゆえ、そこを主戦場とするプロ棋士たちの勝利に対する執念と熱意は凄まじいものです。だからか、将棋を題材に扱った漫画の多くは、スポ根以上に火花散る熱いバトルと奮闘を描いた熱血物語だったり、棋士たちの様々な感情渦巻く濃密で厳かな人間ドラマであることが多いと思います。もちろんそれはそれで面白い。
しかし、この作品はそういった側面をあまり見せず、母子愛を温かな空気で感じさせてくれる母と子の関係をメインに描きながら、2人の間を繋ぐ将棋の世界の楽しさや奥深さをファン目線から覗くことができる、将棋愛にもあふれた作品。
将棋に馴染みのない人でも楽しめる将棋漫画では『3月のライオン』が人気だと思います。でも、それともだいぶ異なる内容で、家庭の温かみを教えてくれるという点では似ているところもありますが、鬱屈感や緊迫感はほぼ皆無。
将棋に熱中する小学生の少年・菊池宝と、そんな息子の姿を見守りながら一緒にのめり込んでいく母親・菊池ママ。この母子の日常を主に親目線からエッセイ風に描いた心温まる物語です。
この着眼点は斬新で面白いですね。他の将棋漫画では目にすることがない見せ方で将棋の世界を描いています。「将棋=難しい」と思ってる人にこそ読んで欲しいと詠っているように、将棋全然知らない人でも楽しめるように作られています。
等身大のリアリティで描かれる将棋と親子
この作品における将棋描写と、ここで繰り広げられている母子のやりとりが実にリアル。読んでいて違和感をあまり感じることはなく、強いてあげるなら宝が可愛過ぎること、菊池ママがお美し過ぎるところ。
純粋に将棋を楽しみながらも勝負事には真剣な宝と、息子の影響を受けて将棋をミーハー感覚で楽しみならもどんどんハマっていく菊池ママ。愛しくて大切な息子が好きなものなら自分も理解したいと思う親心が生んだきっかけ。でも、一緒に楽しんではいるけどその楽しみ方はビミョーに異なる母と息子の様子を、何気ない日常のやりとりから覗くことができます。宝の対局で勝ったとき、負けたとき、それぞれの様子と心境もリアルでしたね。
やけにリアルに感じられるのは、作者・南Q太さんが似たような経験をされているところが大きいかと。実際に息子の将棋熱に当てられて興味を持つようになり、勉強してるうちにこの題材で漫画を描いてみたいと思って作られた作品が『ひらけ駒!』ですから。
また、作中で登場する風景、建物、書籍やグッズ、そしてプロ棋士は、実在するモノや人が多く描かれているところもリアリティを感じる大きな要因。
書籍には『プロへの道』『将棋の必殺ワザ』『聖の青春』、さらに『3月のライオン』『月下の棋士』『しおんの王』などなど。各巻の表紙イラストも実在する場所を背景に使ってることが多いですね。
将棋を取り巻く様々な登場人物たち
描かれているのは何も菊池親子のことだけではありません。菊池親子の日常を主軸にしながら、この作品では将棋に関わる様々な登場人物や親子にもスポットを当てたエピソードを挟み、若干ですけどオムニバス作品にも似た作風を見せています。
それは天才少女の物語だったり、女流棋士の物語だったり、ある親子の物語だったり、中年になって本気でやりたいモノを見つけた男性の物語だったりします。
その全てがどこかで宝や菊池ママたちと繋がっていく様子を見るのも面白い。個人的には、女流棋士に勝利した天才少女・みずきと、「今から本気で何かをしてみるのもいいかもな」という言葉が心に響いた中年男性・田嶋さんの話が結構好きですね。
様々な人間模様、様々な家族関係を覗けるところもこの作品の面白いところ。
最後に
というわけで、親の目線から母と子の日常を描くと同時に、ファン目線から将棋の世界を描いた漫画『ひらけ駒!』の紹介でした。
将棋漫画は多く存在しますが、ある意味ではそのどれよりも将棋の「楽しい」と「嬉しい」を純粋に描いていた作品内容だったと思います。温かなストーリー、愛着が湧くキャラクター、心地よい雰囲気、とにかく素晴らしいの一言。
気になるのは今後の宝くんの先が読めない動向。プロを目指して棋士の道を歩み出すのか、はたまた厳しい現実と壁によって断念するのか。通常なら前者でしょうが、この作品の場合後者も十分ありえます。まあでも、どうなったとしても将棋が繋げる母と子の温かさに包まれた日常はブレることなく続いていくでしょうね。
将棋ファンも将棋を知らない人も心をほっこりさせながら楽しめる作品なので、よければ読んでみてください。自信を持って強くおすすめさせていただきます。
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