2016年09月14日
【軍靴のバルツァー】マンガ 感想&あらすじ 架空の世界で近代戦争を描いた本格戦記作品
月刊コミック@バンチ。2011年3月号から連載中。既刊8巻
著者:中島三千恒
第一次ノルデントラーデ戦役に従軍し卓越した手腕で作戦立案にも関与したベルント・バルツァーは、戦後の論功により通常より3年早い佐官へと昇進し順風満帆な出世コースに乗るかと思われたが、彼に言い渡された次の任務は学校のせんせい。同盟を結んでいるバーゼルラント邦国の士官学校に軍事顧問として派遣されることになった。しかし、バーゼルラントに到着したヴァルツァーは、今の時代にはそぐわない前時代的な戦闘訓練風景と、平和に慣れ古く甘い考えを持った教官と生徒たちを目にして戸惑う。バルツァーは近代的な軍事知識や戦闘理論を四苦八苦しながらも生徒たちに教え信頼を得ていくが、王室の人間との繋がりを得たことでバーゼルラント王室内のいざこざにも巻き込まれていくことに。
・ベルント・バルツァー
主人公。ヴァイセン王国の陸軍特務少佐。幅広い軍事知識を持ち、指揮官としても個人としても高い戦闘能力を持ちます。苦労人です。適格で素早い判断力を持ち、思考の切り替えも早い人。「非常時において人格を切り離し、理に従う」を体現する軍国教育の成功例と言われています。
・ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト
バーゼルラントの第二王子。自信が設立した王立士官学校の訓練長も務めています。性格は傲岸で短気なため、バルツァーに間違いを指摘されると怒りを隠さず表します。一方で自身のやり方の間違いや軍の遅れを直視するとそれを認め改善しようとする姿勢も見せます。
・ヘルムート・マルクス・フォン・バッベル
王立士官学校の生徒。騎兵科の3年兵で主席。人一倍の努力家。強い正義感と使命感があり、そのことから好戦的になってしまうこともあります。美しい容貌から「お嬢様(フロイライン)」と揶揄されることもあります。ヘルムートには家の事情で偽っていることがあります。
・ディーター・シュトルンツ
士官学校の生徒。砲兵科の二年兵。無邪気で天真爛漫、好奇心旺盛で子供っぽいです。毒のない子。実家が「シュトルンツ鉄鋼」を経営しているため、機械いじりは得意。
・ルドルフ・フォン・リープクネヒト
元ヴァイセン王国陸軍第二近衛連隊長。バルツァーの大学時代の友人。クーデターを試みたが失敗し逃亡。その際に片目を失っています。現在はエルツライヒ帝国陸軍大佐となり、同国の命令でバーゼルラント王室に入り込み第一王子の裏で暗躍しています。
19世紀後半ヨーロッパをモデルにした世界と、帝国主義全盛期の激動の時代にある仮想の国々が主な舞台。だいたい第一次世界大戦前ぐらいのドイツみたいな国です。軍事大国ヴァイセンから小国バーゼルラントへ送られてきた1人の将校と彼の教え子たちの奮闘と、大国に挟まれたバーゼルラントの動乱を描いた壮大な歴史漫画。綿密な調査のもと作られたことがよく分かりますね。なんか今までずっと存在を知りながら読まずにいたんですけど、友人に1巻だけ貸してもらって読んでみたらスルーしてたことを後悔するほど面白かったです。
土台となる世界観が細部まで作り込まれていました。鉄道や電信技術の発達により世界は広がり、軍事では単発のマスケット銃から連射可能なライフル銃へ移ろうなど、近代兵器が登場し戦場の様相も変わりだした時代です。建築物や文化・歴史もモデルになったであろう国と地域についてよく調べ描かれており、19世紀ヨーロッパのような仮想の世界を見事に作り上げています。描き込まれた武器や服装、建物などの背景からは作者の強いこだわりが見えますね。
バーゼルラントなんかはさすがに使ってる兵器古すぎないか?と思いましたけど、軍事後進国という設定を分かり易く見せるための措置だったんでしょうね。単純に伝統を重んじてるお国柄、平和すぎて更新する必要がなかったからなのかもしれませんけど。
戦争モノとして、迫力ある戦闘描写は見事でした。それに、互いの思惑と策略がぶつかりあう様は、読む人を釘付けにしてしまう面白さがあります。堅実な戦略、奇抜な戦略、苦し紛れの戦略、次になにが来るかとドキドキワクワクさせてくれると思いますよ。ただ、残酷な描写も当然あるので、そういったものが苦手な人は作品自体避けるか話を飛ばすかした方がいいです。
個性あるキャラがこの作品の魅力を引き出してます。
まずはなんといっても主人公のバルツァーです。平時では陽気で明るく振る舞い、ちょっとお調子者っぽい親しみやすさがあります。一方で出世欲も高く、功績を立てて上にのし上がってやろうという気概も伺えました。凝り固まったバーゼルラントの中では彼のような時代を先行く考えは異端的なものであり、周囲から煙たがられたりもするんですが、その状況すら楽しんでいるかのように突飛に見えて理にかなったアイデアで切り開いていきます。実に爽快な気分にさせてくれる男です。主人公がしっかり光る作品ってのはいいですね。
バルツァーの教え子たちもそれぞれキャラ立ちしていて面白いです。美少年騎士として登場したヘルムートは、結構早い段階で明かされた事実なので言ってしまいますが、実は男装した女の子だったという衝撃。だったんですけど、その後その設定は特に何もなく、あくまで1人の生徒として話は進むんでこの作品ヒロインという存在が一向に出てこなかったんですよね。どこを見ても男ですから、私個人は男同士の甘酸っぱさなんて求めてませんし。でも、作者さんか編集者さんかは分かりませんけど、やっぱりヒロインっぽい存在は欲しかったんでしょうね。詳しくは書きませんけど、第6巻で’ついに″彼女″の可愛さが花開きました。ここまで爽やかさは強くあったものの、泥と汗と血にまみれた男ばかりだったんで、まさに戦場に咲く一輪の花として潤いを与えてくれました。彼女に心を撃ち抜かれた読者は多いでしょうね。
他の生徒たちも負けず劣らず特長的で、皆悩みを抱えて葛藤していたりもしますし、いかにも黒幕っぽい眼帯の男もいるので各キャラが物語りをより盛り上げていました。
世界観とキャラの魅力を引き出しているのは、丁寧に美しく描きこまれた作者さんの絵ですね。服装や兵器、1コマ1コマの建築物や自然の背景が緻密で美しいです。国同士の戦争や国内の政争など重い話ではあるんですけど、主に登場するキャラをかっこよく、かわいく、美しく、親しみやすく描くことでその重さを和らげてくれています。
多くの見方があり、魅力に溢れた作品でした。各登場人物の思惑、各国の思惑が交差してどんどん面白くなっていくので読み応えあります。これ熱く迫力ある作品なので男性が楽しめるのはもちろんなんですけど、間違いなく腐向けでもあるんでしょうね。そっち系好きな人も楽しめる作品だと思います。数々の伏線もありますので今後も一層盛り上がっていきそうです。
著者:中島三千恒
あらすじ・概要
第一次ノルデントラーデ戦役に従軍し卓越した手腕で作戦立案にも関与したベルント・バルツァーは、戦後の論功により通常より3年早い佐官へと昇進し順風満帆な出世コースに乗るかと思われたが、彼に言い渡された次の任務は学校のせんせい。同盟を結んでいるバーゼルラント邦国の士官学校に軍事顧問として派遣されることになった。しかし、バーゼルラントに到着したヴァルツァーは、今の時代にはそぐわない前時代的な戦闘訓練風景と、平和に慣れ古く甘い考えを持った教官と生徒たちを目にして戸惑う。バルツァーは近代的な軍事知識や戦闘理論を四苦八苦しながらも生徒たちに教え信頼を得ていくが、王室の人間との繋がりを得たことでバーゼルラント王室内のいざこざにも巻き込まれていくことに。
主要登場人物
・ベルント・バルツァー
主人公。ヴァイセン王国の陸軍特務少佐。幅広い軍事知識を持ち、指揮官としても個人としても高い戦闘能力を持ちます。苦労人です。適格で素早い判断力を持ち、思考の切り替えも早い人。「非常時において人格を切り離し、理に従う」を体現する軍国教育の成功例と言われています。
・ライナー・アウグスト・ビンケルフェルト
バーゼルラントの第二王子。自信が設立した王立士官学校の訓練長も務めています。性格は傲岸で短気なため、バルツァーに間違いを指摘されると怒りを隠さず表します。一方で自身のやり方の間違いや軍の遅れを直視するとそれを認め改善しようとする姿勢も見せます。
・ヘルムート・マルクス・フォン・バッベル
王立士官学校の生徒。騎兵科の3年兵で主席。人一倍の努力家。強い正義感と使命感があり、そのことから好戦的になってしまうこともあります。美しい容貌から「お嬢様(フロイライン)」と揶揄されることもあります。ヘルムートには家の事情で偽っていることがあります。
・ディーター・シュトルンツ
士官学校の生徒。砲兵科の二年兵。無邪気で天真爛漫、好奇心旺盛で子供っぽいです。毒のない子。実家が「シュトルンツ鉄鋼」を経営しているため、機械いじりは得意。
・ルドルフ・フォン・リープクネヒト
元ヴァイセン王国陸軍第二近衛連隊長。バルツァーの大学時代の友人。クーデターを試みたが失敗し逃亡。その際に片目を失っています。現在はエルツライヒ帝国陸軍大佐となり、同国の命令でバーゼルラント王室に入り込み第一王子の裏で暗躍しています。
感想
19世紀後半ヨーロッパをモデルにした世界と、帝国主義全盛期の激動の時代にある仮想の国々が主な舞台。だいたい第一次世界大戦前ぐらいのドイツみたいな国です。軍事大国ヴァイセンから小国バーゼルラントへ送られてきた1人の将校と彼の教え子たちの奮闘と、大国に挟まれたバーゼルラントの動乱を描いた壮大な歴史漫画。綿密な調査のもと作られたことがよく分かりますね。なんか今までずっと存在を知りながら読まずにいたんですけど、友人に1巻だけ貸してもらって読んでみたらスルーしてたことを後悔するほど面白かったです。
土台となる世界観が細部まで作り込まれていました。鉄道や電信技術の発達により世界は広がり、軍事では単発のマスケット銃から連射可能なライフル銃へ移ろうなど、近代兵器が登場し戦場の様相も変わりだした時代です。建築物や文化・歴史もモデルになったであろう国と地域についてよく調べ描かれており、19世紀ヨーロッパのような仮想の世界を見事に作り上げています。描き込まれた武器や服装、建物などの背景からは作者の強いこだわりが見えますね。
バーゼルラントなんかはさすがに使ってる兵器古すぎないか?と思いましたけど、軍事後進国という設定を分かり易く見せるための措置だったんでしょうね。単純に伝統を重んじてるお国柄、平和すぎて更新する必要がなかったからなのかもしれませんけど。
戦争モノとして、迫力ある戦闘描写は見事でした。それに、互いの思惑と策略がぶつかりあう様は、読む人を釘付けにしてしまう面白さがあります。堅実な戦略、奇抜な戦略、苦し紛れの戦略、次になにが来るかとドキドキワクワクさせてくれると思いますよ。ただ、残酷な描写も当然あるので、そういったものが苦手な人は作品自体避けるか話を飛ばすかした方がいいです。
個性あるキャラがこの作品の魅力を引き出してます。
まずはなんといっても主人公のバルツァーです。平時では陽気で明るく振る舞い、ちょっとお調子者っぽい親しみやすさがあります。一方で出世欲も高く、功績を立てて上にのし上がってやろうという気概も伺えました。凝り固まったバーゼルラントの中では彼のような時代を先行く考えは異端的なものであり、周囲から煙たがられたりもするんですが、その状況すら楽しんでいるかのように突飛に見えて理にかなったアイデアで切り開いていきます。実に爽快な気分にさせてくれる男です。主人公がしっかり光る作品ってのはいいですね。
バルツァーの教え子たちもそれぞれキャラ立ちしていて面白いです。美少年騎士として登場したヘルムートは、結構早い段階で明かされた事実なので言ってしまいますが、実は男装した女の子だったという衝撃。だったんですけど、その後その設定は特に何もなく、あくまで1人の生徒として話は進むんでこの作品ヒロインという存在が一向に出てこなかったんですよね。どこを見ても男ですから、私個人は男同士の甘酸っぱさなんて求めてませんし。でも、作者さんか編集者さんかは分かりませんけど、やっぱりヒロインっぽい存在は欲しかったんでしょうね。詳しくは書きませんけど、第6巻で’ついに″彼女″の可愛さが花開きました。ここまで爽やかさは強くあったものの、泥と汗と血にまみれた男ばかりだったんで、まさに戦場に咲く一輪の花として潤いを与えてくれました。彼女に心を撃ち抜かれた読者は多いでしょうね。
他の生徒たちも負けず劣らず特長的で、皆悩みを抱えて葛藤していたりもしますし、いかにも黒幕っぽい眼帯の男もいるので各キャラが物語りをより盛り上げていました。
世界観とキャラの魅力を引き出しているのは、丁寧に美しく描きこまれた作者さんの絵ですね。服装や兵器、1コマ1コマの建築物や自然の背景が緻密で美しいです。国同士の戦争や国内の政争など重い話ではあるんですけど、主に登場するキャラをかっこよく、かわいく、美しく、親しみやすく描くことでその重さを和らげてくれています。
多くの見方があり、魅力に溢れた作品でした。各登場人物の思惑、各国の思惑が交差してどんどん面白くなっていくので読み応えあります。これ熱く迫力ある作品なので男性が楽しめるのはもちろんなんですけど、間違いなく腐向けでもあるんでしょうね。そっち系好きな人も楽しめる作品だと思います。数々の伏線もありますので今後も一層盛り上がっていきそうです。
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