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2016年12月23日

【最後のレストラン】マンガ 感想&あらすじ 現代へ現れた偉人たちへ振る舞われる『最後の晩餐』

月刊コミック@バンチ。2011年4月号より連載中。既刊9巻
作者:藤栄道彦
他作品:コンシェルジュ



あらすじ

オーナー兼シャフとして、他界した父から受け継いだレストラン「ヘブンドア」を営む園場凌。父がオーナーを務めていた頃は賑わっていた店も、凌が継いでからは次第に客足は遠のき、従業員も1人また1人と辞めていったことで、先の見えない現状に不安を抱いていた。
店員達とお客が来ないことに嘆いていると、突然甲冑を身に着け、刀を持つ武士のような一行が現れ、その内の1人はなんと自らのことを信長と名乗った。
一見何の変哲もないそのレストランには、なぜか死を間際にした歴史に名を刻む著名人が訪れてくる。園田と店員たちは彼らの難解な要求に応え、満足してもらえるための一皿を作り上げていく。

――あなたは最後に何を食べたい?

主要登場人物

・園場 凌
主人公。28歳。レストラン「ヘブンズドア」のオーナー兼シャフ。マイナス思考なネガティブ人間のくせにプライドは高いめんどくさい人。何かと理由をつけては逃亡を謀ろうとするダメ人間。しかし、料理の技術・知識・発想力など、料理人としての能力は高く、様々な難題にも工夫を凝らして見事に応えていきます。おかしなお客を相手にしている経験から普段の料理にも工夫を凝らすようになり、次第に客足が増えることになります。

・ジャンヌ・ダルク
「オルレアンの乙女」と称される中世フランスの軍人。異端審問裁判で火刑に処される間際にヘブンズドアへ来店しました。園田の料理を食べ満足したにもかかわらず、なぜか他の著名人とは違い元の時代には帰れず、なし崩し的に店の従業員として働くことになります。当初は園田のことを神として崇拝していたが、人と認識してからは尊敬しながらも異性として意識するようになります。ベジタリアン。

・有賀 千恵
ヘブンズドアでアルバイトをしているムードメーカー。17歳。女子高生。園田とは違い明るく前向きな少女。なにかと逃げ腰でマイナス思考の園田を励まし、背中を後押ししてくれる存在。あまりに卑屈な態度にはキレることもあり、扱い方も乱暴になります。

・前田 あたり
ヘブンズドアのアルバイト。19歳。女子大生。表情の変化に乏しく、常に冷静沈着な振る舞いをし、店で起こる騒動に対しても平然とした態度を全く崩しません。様々な国の言語を扱い、店に訪れる著名人の通訳も務めています。さらに、訪れてくる著名人の解説を毎回行い、古今東西の歴史に精通してることから、見事な博識ぶりを披露しています。

・御奴 心
父がオーナーを務めていた当時にヘブンズドアで働いていた料理人。料理人としては極めて優秀、性格には難あり。勤めていたホテルでオーナーに反発したことで職を失い、強引にヘブンズドアへ復職しました。常に笑顔は絶やさない人だが、怒るときも笑顔のままで正論をまくし立てる為、従業員からは恐れられています。仕事着は露出高め。

・安徳天皇
祖父に平清盛を持つ第81代天皇。壇ノ浦の戦いの最中、祖母である平時子と共に入水自殺を図った折にヘブンズドアへ来店。ジャンヌ同様元の時代に帰ることなく現代に留まっている少年。引き取った千恵は弟のように可愛がっており、帰ってほしくないと願っています。幼い身でありながら周囲を自然とかしずかせるオーラを放っており、訪れる著名人たちですら敬意を表すほど。



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感想

一見どこにでもありそうな普通なレストラン、そのお店には古今東西様々な有名人たちが時を越えて訪れ、求められる料理を作り誠心誠意振る舞い最期の一時を過ごしてもらう物語。
歴史に名を残す著名人たちが現代のレストランへタイムスリップしてくるグルメコメディ漫画です。著者はホテルを舞台にした作品『コンシェルジュ』の藤栄道彦さん。本作は2016年4月に田辺誠一さん主演でドラマ化もされています。

まず、ありそうでなかった設定が面白いですね。本作は主人公が現代から過去へタイムスリップする作品ではなく、歴史上の著名人たちが次から次へと主人公が経営するレストランへタイムリップしてくる作品です。それも日本だけでなく古今東西津々浦々、世界各地の有名な著名人たちが来店して来ます。
そんなおかしなお客様たちには1つの共通点があります。それは、誰も彼も皆死を直前に控えている状態だということです。戦で討たれそうになっている人、処刑を待つ人、決死の覚悟で死地へ赴こうとしている人など、命を落とす間際に突如ヘブンズドアへの扉が開かれ、そこで最期の晩餐を振舞われるという設定。

人によっては既に確たる料理があるのかもしれませんが、「人生の最後に何を食べたいか?」と私も改めて考えてみるとなかなか出てこないものですね。普段手が出せない豪華な料理を最後ぐらい食べたい気持ちもあり、最後だからこそ普段通りの食事をしたいという気持ちもなくはなく、それでもやっぱり思い出深い料理が食べたくなるのかもしれないという気持ちもあります。
本作で登場する様々な有名人たちも最後となる料理を注文するわけですが、はっきりとした料理名を出すことはなく、なんとも曖昧かつ難解なお題として出題してきます。“どこの誰も食べたことのない空前絶後の料理”、”欲望に基づかない食事”、挙句の果てには“悟りに至る料理”なんてものを一介の料理人に注文してくるものですから、園田が頭を抱えるのも逃げたくなるのも当然だと思います。一休さんの問答みたいですね。

その注文を受けることになる園田は逃げ腰の頼りないネガティブ人間なわけですが、意外と発想力は高くて頭の回転も速いため、頭を抱えながらも何とか工夫を凝らして無理難題に見事応えていきます。それを食べた方々は、何かに納得する者、救われた者、思い出に浸る者、ただただ美味しさに感動する者など思いはそれぞれで、皆死を前にしていながら晴れやかな表情を浮かべ帰っていきます。
話の流れ自体は毎回同じではあるものの、背景様々な偉人・著名人・有名人を登場させ、多彩な料理をもって展開していくので飽きずに読めますね。

訪れてくるお客様は「織田信長」、「リンカーン」、「ナポレオン」など認知度の高い誰でも知る人物が多く登場しますが、中には世界では有名でも日本だとマイナーな方達も少なからず出てきます。私も名前だけは知っていても具体的にどこで何を成し、何を残したのか分からない人は何人かいました。なので、この作品を通してそれを知ることができたのは良かったですね。解説はくどくなく、料理を絡めているので解り易いのもありがたい。
さらに、現代に至ってもその死因や実際の正体すら定かではない謎とされている有名人も登場させてるところが面白いです。この作品は作者さんの独特な独自解釈が人物像に強く反映されているため、「もしかしたら」を感じながら、考えながら読むのも楽しいと思います。
基本は料理を食べ、満足できたら対価を支払い元の時代へ帰るという流れですが、稀に対価を渡せず、あるいはあえて受け取らず元の世界に帰ることなく現代に留まっている方達もいます。上述の登場人物の欄にも書いた通り、ジャンヌ・ダルクや安徳天皇(言仁)は作品のメインになっており、従業員として家族として一緒に過ごしています。そんなジャンヌや安徳天皇と新たに訪れてくる偉人や著名人たちとのやり取りは面白かったですね。本来なら絶対に叶うことのない組み合わせですから。

メインストーリーは偉人と主人公たちとの愉快な問答で展開され、画力もそれなりに高いので出てくる料理も美味しそうに見えました。グルメ漫画好き、歴史漫画好きどちらにもおすめできるかと思われます。基本は1話完結の形をとっているので読みやすく、シリアスとコメディのバランスも良くとれており、内容も複雑なことはないので気楽に読める作品でしたね。あと、簡単な歴史の勉強にもなります。
個人的には斬新な設定と愉快なキャクター、テンポとノリの良い話を繰り広げてくれるため、とても気に入っている作品です。ジャンヌや安徳天皇はこの先留まり続けることになるのか、はたまた帰ってしまうことになるのか、かなり気になっています。できれば、このまま残って幸せになってほしいという願望は強いですね。
興味を持っていただけたなら、よければ読んでみてください。おすすめします。



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posted by ハネ吉 at 18:30 | Comment(0) | TrackBack(0) | グルメ
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とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
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