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2018年11月24日

先日の石田衣良さんの講演『図書館から始まる冒険』について

11 月 18 日の石田衣良さんの講演で, いくつか思うことがあったので講演の概要と一緒にまとめておく.
日数が経ってしまっているので, 所々に記憶違いがあると思うが, 自分用のメモにする.



石田衣良さんは少年の頃から本を読むことが好きだったそうだ. 図書館の虫のような子どもだったと言う.
それから必然のように文章を書くことが好きになる.
そのことを話す石田さんの表情からは, 文章を読むことと書くことへの関心や愛情などが伝わってくる.
広告代理店での生活を経て, 小説を書き始め, 作家として独立した.

この石田さん自身の作家としての出発点から, ベストセラー作家としての現在に至るまでの間に, 作家の世界, 読者の世界, 図書館の状況は随分変わったそうだ.

今の時代, 作家として仕事をしていくことは, 少しづつ難しくなりつつある.
賞を取った作家でも本を出してもらえるチャンスは少ない.
石田さんが賞を取ったときには 4, 5 回くらいは出版の機会を与えてもらった.
現在では, 具体的には賞を取った一回目と, 運が良ければその次の二回のみ.
何より売れなければ次は無い.
逆に売れても出版社からは, 同じ路線で続編のようなものをという要求がある. リスクを避けるのだ.
作家自身が次は違うテーマで書きたいと思っていてもできないことの方が多い.

読者の層は薄くなった. 本を読まない人が増えた.
石田さんの言葉. 「スマホしか見ない. 本を読まないんです. 一冊も本を読んだことのない人が結構いるんです」
もちろん, こういう人たちばかりではないが, 作家はこういう本を読まない人たちのことも考えて書いていかなければならない.

本を愛する人は訴えて欲しい. 出版社に声を届けてください. それから是非選挙には行って欲しい. 図書館を大切にするように政治家に呼び掛けて欲しい (†).
†: こんな単純な言い方ではなかったが, 大意はこれで間違っていないと思う.

調査の結果によると, 図書館は司書の数や設備への予算が徐々に減らされている.
日本は世界の中で, 次第に本を読まない国になってきている.

これらを通じて見えてくるのは, 誰もがアクセスできる知識の宝庫に価値が認められなくなってきているということだ.

悲観的な状況ではあるが, 希望はある, まだ何とかなる, と石田さんは言う.
ただ今のままでは難しい, とも.

作家が自分の文章をどのように読者に届けていくのか, その新しい可能性を考え続けること.

出版社がこれまでの出版業の慣習だけに固執するのではなく, 市場を広げていく戦略を取ること.

図書館に行くこと. 本を読むこと.
図書館でもネットでも, どんな媒体でもいい. 本当に自分がいいと思った本はお金を出して購入してほしい. それが本の文化, 図書館の文化を守ることに繋がる.



質疑応答の時間, 自分も一つ, 気になっていた以下の質問をすることができた.

予算削減によって図書館の司書が減らされている. 「TSUTAYA 図書館」のような, 図書館の運営を民間に任せる流れができつつあるが, その現状は残念なことになっている. 出版社からは, 図書館で本を借りられてしまうと書籍が売れないという意見が数年前に出た.
図書館という知識を育む場所が, 経済とか効率といった文脈で扱われるようになっているように感じる.
そうだとすると図書館の未来には悲観的な状況しか見えない. 図書館の将来について意見を聞かせて欲しい.

自分が正確に理解できたか自信が無いのだが, 石田さんの答えは大体次のような内容だったと思う.

本に関わる人びとが意識を変えていく必要がある.
作家, 出版社, メディア, 読者.
それぞれ, そして個人個人が愛する本のために動かなければ, 本は流れのままに生産性と経済原理の一要素になってしまうだろう.
厳しい状況の中にあるが, 本の持つ力, 人が知識・物語を求める力は強い. 私自身は大丈夫だという希望を持っている.

あくまで自分が受け取った限りでのことだが, 若干不満足な回答になった. 時間の制限もあったので仕方が無いか.
人間が持つ知りたいという思い, 楽しみたいという思い, 学びたいという思いに本は応えてくれる. このことが, 少なくとも現在の日本では軽んじられていると自分は感じる ── 自分が質問の中で挙げたようなことがその具体的ないくつか ──.

人は知ることを止めれば, 確実に退化する. こういう言い方が許されるのならばひたすら堕落する.
その意味では, 自分も堕落していくばかりだ.

知識や想像力がどれほど多くのものを与えてくれるのか, 最初から考え直す時が来ているのではないか.

そう思っている自分の背中を押してくれるような答えが欲しかった.

しかし, よく考えれば石田さんの言う通り, それこそ個人に委ねられた, 一人一人が自分なりに求めていかなければならない事柄なのかも知れない.
posted by 底彦 at 23:30 | Comment(2) | TrackBack(0) | 日常生活
この記事へのコメント
こんばんは, Takeo さん.

Takeo さんも体調が厳しいのでしょうか. そんな中でコメントをありがとうございます.
毎日ブログを拝見していますが, Takeo さんの文章はそういう体調でも, 一歩引いたどこか硬質な感触の文章が綴られていますね.
興味深く読んでいます. 内容もですが, 特に文章の乱れや誤字が無いことにはいつも驚いています.

Takeo さんの仰るように, お互い元気になったら直接会ってお話をしてみるというのはいいですね.
私も楽しみです.

私は現在は日々ゆっくりと休息を取る毎日です ── このように表現すると「ずっと寝込んでいます」とあからさまに事実を書いてしまうよりは印象がいいですね.

Takeo さんも無理をせずに体調を整えつつ, 穏やかな日々を過ごされますよう祈っています.
Posted by 底彦 at 2018年12月10日 21:29
こんばんは、底彦さん。

ブログ村に更新の情報が載っていなかったので、ここ数日訪れていませんでしたが、更新されていたんですね。

本に関すること、ネット恐怖について、人との繋がりについて、いろいろとお話ししたいのですが、今の状態では底彦さんの負担になると思いますので。

わたしも今はかなり厳しい状況です。

お互いに元気になったら、一度直にお会いして上記のようなこと、いろいろとお話ししたいです。

どうかお大事になさってください。お辛い中、お返事をありがとうございました。

Posted by Takeo at 2018年12月09日 05:22
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