今日は THE ROOSTERS のことを書こうと思う。
私はルースターズが好きだ。大江慎也さんが好きである(だから今回もあえて敬省略で書かせてもらう)。
私は特に大江慎也が体調を崩す前のルースターズが好きである。個人的な意見を言わせていただくと大江慎也が脱退(正式には脱退していなかったが)して以降の花田、下山主導の THE ROOSTERZ はそれほど好んで聴いていない。アルバムはBOXセットを持っているのですべて持っているがあまり聴いていない。私は大江主導時代がルースターズというバンドだと思っている(ミニアルバム ニュールンベルクでささやいて 以降で大江が躁鬱病に苦しんでいる時代に作られた曲で好きな曲もあるが)。(というわけで)今日は大江時代のルースターズの話をしようと思う。
ルースターズのアルバムでお勧め盤はどれですか、と問われたらまずお勧めするのはファーストアルバム THE ROOSTERS とライヴアルバム LIVE AT SHIBUYA EGGUMAN 1981 7 14 、と答える。ルースターズはライヴバンドなのでライヴアルバムを聴いてほしいと思う(LIVE 1982 というタイトルのアルバムが発売されているが、このアルバムは残念ながら音(録音状態)が悪いのであまりお勧めできない)。
ルースターズはアルバムごとにジャンルが変わっていった珍しいバンドであるが、大江慎也の世界観がすべてのアルバムに反映されているので、ルースターズを聴く時に大江慎也の世界が好きか、嫌いでこのバンドの好き、嫌いが分かれると思う。
1981年のライヴアルバムはファーストアルバムとセカンドアルバム A GO GO の曲が中心に演奏されている。また、このアルバムは2枚組のアルバムだが、リハーサルで演奏しているものとと2ステージ分を2枚に分けたアルバムである。私は好んで2ステージ目の方、CD2を聴く。
演奏は勢いがよく、若さあふれるものである。はっきりいってギターのチューニングが狂っているがそんなことなど関係ない。勢いで聴く、ということが重要だと思う。また、このバンドのすばらしいところはドラムの池畑潤二とベースの井上富雄のボトムラインがしっかりキープしているところである。まだ20代前半でこのプレイができるというところがすごいと思う。当時勢いのあった関東のパンクバンドの同世代のプレイヤーはみんな下手くそだった。ずば抜けて彼らは巧いと思う。大江が攻撃的にギターをかき鳴らして、スピーカーから飛び出さんばかりに叫ぶように歌ううたを成立させているのはこの二人の実力があったからだと思う。花田裕之は年齢より上の世代の人間のように大江を全面的にサポートするプレイに徹している(花田は大江より年齢的には下である)。大江が攻撃的に攻める演奏をしてメンバーを牽引しているという構図がルースターズのステージだった。
大江がヴォーカルなのでMCをするのだが、口下手で無骨にしゃべる。頭の回転が速すぎてうまく言葉にならないのかもしれない。とにかく、彼らの演奏を聴いてほしいと思う。
私はセカンドアルバムの曲 FADE AWAY という曲が好きだが、大江はギターをかき鳴らし、叫ぶように彼女に別れを告げる曲の歌詞を歌い上げる。彼女のやることなすことすべてが好きで望みの彼女と知り合えたと思っていたが、今やっとすべてが間違いだったと気がついた、というような歌詞だが、その歌詞を絶叫するように歌っている。とっとと消えちまいな、という歌詞があるが、本当にもう飽き飽きしているし、もう2度と会いたくない、という感じが聴いていてする。
勢いのままにファーストアルバムからのカヴァー曲 MONA (I NEED YOU BABY) を演奏している。この曲はブルースの曲だが、ローリング ストーンズがカヴァーしていることでも有名である。ストーンズもかっこいいアレンジだが、ルースターズのアレンジはそれをさらに攻撃的に演奏しているものである。途中、日本語訳で歌っているが、その訳もうまく訳しているのでぜひ聴いてみてほしい。
ファーストアルバムの曲もライヴではとても勢いがあり、聴いていて時間が速く過ぎていく。落ち着いて聴くアルバムでははっきりいってないので体調が悪いときには聴こうと思わない。次々と大江が、バンドメンバーがリスナーを攻め立ててくる。怒涛の攻撃である。
彼らのすばらしいところはストーンズ等が独自の解釈でブルースをアレンジしていたように、彼らの先輩格にあたるバンド サンハウス のアレンジをベースに自分達独自の解釈で演奏しているところである。だから、同じブルースの曲でも攻撃的な演奏で聴いていて古臭くないし、新しい音を聴いているように感じる。
I'M A MAN という有名なブルースの曲があるが、この曲も攻撃的に新しい解釈で演奏している。ルーズに演奏がスタートするがどんどん勢いがついてきてバンド一隊(一体)になり攻撃してくる。途中スピードが速くなるがどこまで行くのか、というぐらいに勢いでどこかえいってしまうのではないかと思うが、またちゃんと戻ってくるところが凄い。
故ジェイムス ブラウンがよくバンドメンバーに言っていた言葉が、行きっ放しではだめだ。戻ってこないといけない、といっていたそうだ。
ルースターズをはじめ、巧いバンドはジャンルを問わずその塩梅が巧い。だから聴いていて気持ちが良い。このことを表現するのは難しいがわかる人には私が言わんとしていることがわかると思う。
彼らの代表曲に ROSIE という曲がある。この曲は裏でカッティングしているが、彼らが演奏するとレゲエ調にならずルースターズという音になっているから面白い。当時の若者の日常をあらわしているのだが、この歌詞は大江自身について歌っているように感じる。教えてロージー 何が欲しい 教えてロージー と繰り返し歌詞に出てくる。何かわからない不安感やすぐに壊れそうな現実について問いただしているような気がする。後年、ジッタリンジンが あなたが私にくれた物 という曲を発表するが、この曲に影響されているように感じる。私は、ロージーを聴くと、大江自身が誰とは問わず自分自身は何者なのか、今後どうなってしまうのか、不安である、と叫んでいるようで聴いていて悲しくなってくる。だから、彼らの代表曲だが私はこの曲を歌う大江が痛々しく感じるのであまり聴きたくない曲でもある。
彼らの代表曲 恋をしようよ は大江自身が言うには2つの意味があるそうだ。(お前と)ただやりたいだけ、という歌詞が出てくるが、Making Loveの意味と捕らえてもらってもかまわないが、演奏等をただやりたいだけ、という意味もある、そうだ。彼の自伝にこのことに触れている。ただやりたいだけ、というストレートな意味で若い世代のみんなが盛り上がってもらえば良いが歳をとれば違う意味の面も見えてくると思う、というようなことなのだろうか。私はこの曲を聴いて、ルースターズが好きになったのであまり深く考えず彼らを知った当時聴いていた。
話は脱線するが、元々私がルースターズを知ったのは、以前のブログで書いたJFN系列のFM局でNORIKO(浅野典子)さんと(元アナーキーの)仲野茂さん達がパーソナリティーとなり深夜に放送していた番組 くねくね倶楽部 で知った。その番組内でよくロージーが流れていた。ゲストには(生放送が多かったが)、元サンハウスの柴山俊之さんや花田裕之さん、石橋凌さんなどなどが出演していた。当時は、大江さんのこともルースターズも知らなかったので流して聞いていたが、今思えば花田さんがゲストの回はルースターズのことや大江さんのことをまじめに話していたように思う。毎週録音して聞いていたのだがソフトが残っていないので今はとても残念に思う。番組でARBの再結成の話しがどこよりも早く聞けたり、アナーキーの再結成の話や80年代当時の同期のバンドや新宿ロフトに出演していたバンドの裏話など聞けて楽しい番組だった。ここでも書けないようなバンドの悪口等をNORIKOさんと茂さんが話を時折脱線しながら話していたのが懐かしく思う。その番組でサンハウスの曲 レモンティ や I LOVE YOU (後年どちらもシーナ&ザ ロケッツが(セルフ)カヴァーしている)を聞いて知ったり、ルースターズの曲 恋をしようよ を知った。
恋をしようよ で大江は、ただやりたいだけ、と何度も繰り返すがそこでも若さではじけている。
間髪いれずに C'MON EVERYBADYが演奏される。そこでも勢いがとどまらずなだれ込むように突き進んでいく。はっきりいってこの勢いに乗り遅れる人はルースターズについていけないと思う。この曲もルースターズ独特のアレンジがされている。
アンコールで テキーラ を演奏しているがこの曲も演奏が続けられていたように感じる攻撃的なものである。
続けてサンハウスのカヴァー曲 DO THE BOOGIE が演奏される。この曲がこの日のハイライトのように感じる。ブギー、とは名ばかりで高速シャッフルブギーである。ギターのチューニングが完全に狂っているが攻撃の手が休まらない。演奏の中間部で大江と花田のギターソロの掛け合いが見せ所の曲だが、ソロが終わると大江がなぜか狂ったように笑い声を上げている。この曲も聴いていて気持ちが良いが後年の大江を知るものとしては笑えないものでもある。
このライヴでも先にセカンドアルバムに収録されている曲 SITTING ON THE FENCE の歌詞に フェンスに腰掛け遠くを眺めて待っているいるところ イカす悪魔の訪れ フェンスに腰掛けミルク飲みながら感じているところ おいらの素敵な狂気を という歌詞を表しているようで恐ろしく感じる。
2度目のアンコールのラストは彼らの当時のお決まりの曲 BYE-BYE MY GIRL が演奏される。この曲は結局レコーディングされることはなかったが、大江、池畑、花田、井上時代のルースターズのライヴの締めくくりでいつも演奏されていた。
当時のライヴは凄かったと思う。このライヴアルバムを聴き終えるだけで疲れがどっと出る思いである。実際にライヴを見た人達はかなり疲れたのではないだろうか。このアルバムの解説を小松崎健郎さんが書かれているが、当時に実際にルースターズのライヴを観に行かれているがライヴ会場での出来事を一切覚えていないそうだ。それはそうだろう。これだけ展開が速く進むとついていくのがやっとだと思う。
戸井十月さんの小説、石井相互さんが監督された映画 爆裂都市 に大江が出演した頃を境に躁鬱病になってしまいバンドが崩壊していく。
マスコミでは発表されていないが、ナインティナインの岡村さんも映画に出演後の過密スケジュールで躁鬱病かパニック障害になっているのではないかと私は思っている。
大江の場合は撮影スケジュールが正確にきまっていないことにより役柄のテンションと普段の自分のテンションの切り替え、また自分自身を見失ってしまい躁鬱病になっている。それを始まりに今現在もうつ病を病んでいる。
もし、ということはないが、もし、大江が躁鬱病にならなかったらどういう活動をしていたか、どういう曲を演奏していたか聴いてみたかったと思う。池畑が脱退して、井上が脱退してオリジナルメンバーが大江と花田だけになったルースターズはSをZにかえて THE ROOSTERZ て活動したが、いつも体調が万全ではなく、安定していない大江はもう前の大江ではなくなっていた。バンドを牽引していた大江はバンドに牽引される立場になっていた。この話はまたの機会にしようと思う。
今も病と闘っている大江だが、九州で行われるイベントにたまに出演している。全国公演を行ってほしいが、それは難しいのかもしれない。ブログを更新したり、止めたりを繰り返している。会社を変えて先月まで更新していたがまた閉鎖されていた。ファンは大江と大江を見守る花田、池畑、井上の活動を見守るしかないと思う。とにかく、聴く音楽が最近ない、という人はルースターズを聴いてみることをお勧めする。THEE MICHELLE GUN ELEPHANT ファンの方は絶対に聴くべきである。彼らのルーツのひとつのバンドである。THE ROOSTERS は日本が世界に誇れるすばらしく、最高なバンドである。