2011年02月08日
ブルースに感電したギター弾き
Gary Mooreが6日に亡くなったそうです。
死因の詳細は不明ですが、52年4月生まれということなので、58歳と10か月、年齢としては、まだまだ若いですが、イメージとしてはもっと若い人だと思っていました。
私は、ゲイリー・ムーアの前半の人生には、ほとんど関心がありませんでした。
彼のことを聴いていたのは、限られた期間です。
それでも、やはり感じるものがあります。
今回は、私が彼を聴くきっかけとなった、このアルバムを聴き返したいと思います。
1. Moving On
2. Oh Pretty Woman
3. Walking By Myself
4. Still Got The Blues
5. Texas Strut
6. Too Tired
7. King Of The Blues
8. As The Years Go Passing By
9. Midnight Blues
10. That Kind Of Woman
11. All Your Love
12. Stop Messin' Around
私は、ほんとのところ、ゲイリー・ムーアのことは良く知りません。
69年レコード・デビューということですが、このときのスキッド・ロウというバンドは一度も聴いたことがなく、ハード・ロックなのかどうかも知りません。
なぜ、こういう書き出しになったかといいますと、ゲイリーといえば、ハード・ロック・ギタリストのイメージがあるからです。
その後、シン・リジィへの参加などがあったようですが、この時期はきっとハード・ロックと言いきっていいんでしよう。
私とゲイリーの音楽との出合いは、90年のStill Got The Bluesからです。
キャリア的には、20年めあたりですね。
師匠ともいうべき、ピーター・グリーンとは、スキッド・ロウ時代に出会い、可愛がられたとのことですから、いつかはこの日が来ることになっていたんでしょう。
映画ブルース・ブラザースで、ジェイク・エルウッドが、教会でJB扮する牧師の説教を聞いて、「光を見た」と叫び、ブルースに開眼するシーンが思い起こされます。
ハンクの歌詞ではないですが、まさにI Saw The Lightですね。
ゲイリーにも、その日がやってきたのです。
突然、彼はブルースの天啓を受けたのでした。
ハード・ロック・ギタリストとして名声を得ていた彼にとって、最初は単発の企画盤だったのかもしれません。
しかし、従来のファンからは賛否があったと思われますが、それは成功を収め、以降数年間、彼はブルースをプレイし続けることになります。
そのスタイルは、ピーター・グリーン直系のブリティッシュ・ブルース・ロックと呼ぶべきもので、実は新鮮だったりします。
ボーカルは、パブ・ロック・ファンならデイヴ・エドマンズを思い起こすでしょう。
曲によっては、そっくりに聴こえたりします。
曲の展開は、やはりロックだと思います。
白人でも、ブルース・アルバムと呼びたいものがまれにありますが、この人のものは、ブルース・ロックです。
このブルースの悪魔と契約したアルバムでも、それは随所に感じます。
アルバム・タイトル曲、Still Got The Bluesをお聴き下さい。
これは、ブルースでしょうか、ロックでさえない、と最初は思いました。
とても抒情的で、悲しげなフレーズが流れるように紡ぎだされ、決めどころでは、泣きのロング・トーンが効果的に入ってきます。
間奏など、インスト・パートだけを聴いていると、ジェフ・ベックの「悲しみの恋人達」なんかを連想してしまいます。
しかし、歌が始まると、ブルースっぽいオブリガードが出てきて、これがブルースとして作られた曲だと再確認させられます。
これは、ゲイリーの自作ですが、彼の作品には、ブルース形式ではない、マイナー・ブルー・バラードとでも呼びたいスタイルのものが多いようです。
このアルバムには、ブルースのカバーがいくつか入っています。
アルバート・キングのOh Pretty Womanと、As The Years Go Passing By
ジミー・ロジャースのWalking By Myself
ジョニー・ワトソンのToo Tired
オーティス・ラッシュのAll Your Love
フリートウッド・マック(というか、ピーター・グリーン)のStop Messin' Around
そして、フレディ・キングのThe Stumbleです。
みんな、ブルース・ロック・バンドの人気曲ばかりです。
アルバート・キングを2曲やっていて、彼もアルバートが好きだと発言していますが、まあ嫌いだとは言えないですよね。
事実好きなのでしょうが、アレンジというか、曲の展開が、完全にムーディーな泣きのギターを聴かせることが見せ場(聴かせどころ)の、抒情派バラードになっています。
As The Years Go Passing Byは、もともとそうなりがちの曲ですが、このプレイは完全に自分に酔っていると思います。
間奏でのゲイリーの恍惚の表情、さらには、ハイ・トーンを決めるときに顔をしかめながら弾いているさまなどが目に浮かぶようです。
まあ、これだけ弾ければ自分に酔うのも分かる気がします。
曲によっては、ハード・ロック時代を連想させる、マシンガンのような早弾きも聴けないわけではありません。
これらが、ゲイリーの隠しようがない本質だと思います。
ただ、ブリティッシュ・ブルース・ロックの伝統にのっとった、やるべきこともやっています。
All Your Love、Stop Messin' Around、The Stumbleは、ピーター・グリーン・スクールの優等生として、ふさわしいプレイを決めまくっています。
All Your Loveは、プリティッシュ・ブルース・ロックの課題曲とでもいいたい曲です。
そして、Stop Messin' AroundとThe Stunbleは、まさにグリーン・マナーに忠実な選曲です。
先の曲は、グリーンの作品ですが、フレディ・キングにインスパイアされたと思われる曲です。
そして、The Stumbleは、もちろんフレディの有名インストなのでした。
このアルバム以降、彼はこの路線でアルバムを出し始めます。
90年 Still Got The Blues
92年 After Hours
93年には、After Hours・ツアーのライヴ盤、Blues Aliveをリリースします。
94年には、少し脇道へそれて、BBMというバンド名で、Around Next Dreamを出します。
これは、クリームや、ベック・ボカート&アピスのようなヘヴィなブルース・ロックです。
しかし、プロジェクトはすぐに終わりをつげ、
95年には、師匠ピーター・グリーンのカバー集、Blues For Greenyをリリースします。
このあと2作ほどブルース路線から離れますが、
01年には、その名も、Back To The Bluesで、再びブルースへと回帰してくるのでした。
私は、今リストにあげた6枚のみを所持しています。
(…多分、少なくとも今手元にあるのはそれだけです。)
その後、現在に至るまで、そのままの路線だったのか、変更があったのかよく知りませんでした。
ニュースで訃報を知って、もう少し追いかけておくべきだったかも、とちょっぴりセンチになっています。
私が持っている6枚でのブルース・カバーは、他には、ブランドのFurther On Up The Road(ライヴ)、エルモアのSky Is Crying(ライヴ)、リトル・ミルトンのThe Blues Is Alright、T-ボーンのStomy Mondayなどがあります。
カバー曲好きの私としては、その後どのような曲を取り上げたのか、気になるところです。
私は今、追悼の意味でも、未聴のアルバムを手に入れて聴こうかな、などと考え始めています。
死因の詳細は不明ですが、52年4月生まれということなので、58歳と10か月、年齢としては、まだまだ若いですが、イメージとしてはもっと若い人だと思っていました。
私は、ゲイリー・ムーアの前半の人生には、ほとんど関心がありませんでした。
彼のことを聴いていたのは、限られた期間です。
それでも、やはり感じるものがあります。
今回は、私が彼を聴くきっかけとなった、このアルバムを聴き返したいと思います。
Still Got The Blues
Gary Moore
Gary Moore
1. Moving On
2. Oh Pretty Woman
3. Walking By Myself
4. Still Got The Blues
5. Texas Strut
6. Too Tired
7. King Of The Blues
8. As The Years Go Passing By
9. Midnight Blues
10. That Kind Of Woman
11. All Your Love
12. Stop Messin' Around
私は、ほんとのところ、ゲイリー・ムーアのことは良く知りません。
69年レコード・デビューということですが、このときのスキッド・ロウというバンドは一度も聴いたことがなく、ハード・ロックなのかどうかも知りません。
なぜ、こういう書き出しになったかといいますと、ゲイリーといえば、ハード・ロック・ギタリストのイメージがあるからです。
その後、シン・リジィへの参加などがあったようですが、この時期はきっとハード・ロックと言いきっていいんでしよう。
私とゲイリーの音楽との出合いは、90年のStill Got The Bluesからです。
キャリア的には、20年めあたりですね。
師匠ともいうべき、ピーター・グリーンとは、スキッド・ロウ時代に出会い、可愛がられたとのことですから、いつかはこの日が来ることになっていたんでしょう。
映画ブルース・ブラザースで、ジェイク・エルウッドが、教会でJB扮する牧師の説教を聞いて、「光を見た」と叫び、ブルースに開眼するシーンが思い起こされます。
ハンクの歌詞ではないですが、まさにI Saw The Lightですね。
ゲイリーにも、その日がやってきたのです。
突然、彼はブルースの天啓を受けたのでした。
ハード・ロック・ギタリストとして名声を得ていた彼にとって、最初は単発の企画盤だったのかもしれません。
しかし、従来のファンからは賛否があったと思われますが、それは成功を収め、以降数年間、彼はブルースをプレイし続けることになります。
そのスタイルは、ピーター・グリーン直系のブリティッシュ・ブルース・ロックと呼ぶべきもので、実は新鮮だったりします。
ボーカルは、パブ・ロック・ファンならデイヴ・エドマンズを思い起こすでしょう。
曲によっては、そっくりに聴こえたりします。
曲の展開は、やはりロックだと思います。
白人でも、ブルース・アルバムと呼びたいものがまれにありますが、この人のものは、ブルース・ロックです。
このブルースの悪魔と契約したアルバムでも、それは随所に感じます。
アルバム・タイトル曲、Still Got The Bluesをお聴き下さい。
これは、ブルースでしょうか、ロックでさえない、と最初は思いました。
とても抒情的で、悲しげなフレーズが流れるように紡ぎだされ、決めどころでは、泣きのロング・トーンが効果的に入ってきます。
間奏など、インスト・パートだけを聴いていると、ジェフ・ベックの「悲しみの恋人達」なんかを連想してしまいます。
しかし、歌が始まると、ブルースっぽいオブリガードが出てきて、これがブルースとして作られた曲だと再確認させられます。
これは、ゲイリーの自作ですが、彼の作品には、ブルース形式ではない、マイナー・ブルー・バラードとでも呼びたいスタイルのものが多いようです。
このアルバムには、ブルースのカバーがいくつか入っています。
アルバート・キングのOh Pretty Womanと、As The Years Go Passing By
ジミー・ロジャースのWalking By Myself
ジョニー・ワトソンのToo Tired
オーティス・ラッシュのAll Your Love
フリートウッド・マック(というか、ピーター・グリーン)のStop Messin' Around
そして、フレディ・キングのThe Stumbleです。
みんな、ブルース・ロック・バンドの人気曲ばかりです。
アルバート・キングを2曲やっていて、彼もアルバートが好きだと発言していますが、まあ嫌いだとは言えないですよね。
事実好きなのでしょうが、アレンジというか、曲の展開が、完全にムーディーな泣きのギターを聴かせることが見せ場(聴かせどころ)の、抒情派バラードになっています。
As The Years Go Passing Byは、もともとそうなりがちの曲ですが、このプレイは完全に自分に酔っていると思います。
間奏でのゲイリーの恍惚の表情、さらには、ハイ・トーンを決めるときに顔をしかめながら弾いているさまなどが目に浮かぶようです。
まあ、これだけ弾ければ自分に酔うのも分かる気がします。
曲によっては、ハード・ロック時代を連想させる、マシンガンのような早弾きも聴けないわけではありません。
これらが、ゲイリーの隠しようがない本質だと思います。
ただ、ブリティッシュ・ブルース・ロックの伝統にのっとった、やるべきこともやっています。
All Your Love、Stop Messin' Around、The Stumbleは、ピーター・グリーン・スクールの優等生として、ふさわしいプレイを決めまくっています。
All Your Loveは、プリティッシュ・ブルース・ロックの課題曲とでもいいたい曲です。
そして、Stop Messin' AroundとThe Stunbleは、まさにグリーン・マナーに忠実な選曲です。
先の曲は、グリーンの作品ですが、フレディ・キングにインスパイアされたと思われる曲です。
そして、The Stumbleは、もちろんフレディの有名インストなのでした。
このアルバム以降、彼はこの路線でアルバムを出し始めます。
90年 Still Got The Blues
92年 After Hours
93年には、After Hours・ツアーのライヴ盤、Blues Aliveをリリースします。
94年には、少し脇道へそれて、BBMというバンド名で、Around Next Dreamを出します。
これは、クリームや、ベック・ボカート&アピスのようなヘヴィなブルース・ロックです。
しかし、プロジェクトはすぐに終わりをつげ、
95年には、師匠ピーター・グリーンのカバー集、Blues For Greenyをリリースします。
このあと2作ほどブルース路線から離れますが、
01年には、その名も、Back To The Bluesで、再びブルースへと回帰してくるのでした。
私は、今リストにあげた6枚のみを所持しています。
(…多分、少なくとも今手元にあるのはそれだけです。)
その後、現在に至るまで、そのままの路線だったのか、変更があったのかよく知りませんでした。
ニュースで訃報を知って、もう少し追いかけておくべきだったかも、とちょっぴりセンチになっています。
私が持っている6枚でのブルース・カバーは、他には、ブランドのFurther On Up The Road(ライヴ)、エルモアのSky Is Crying(ライヴ)、リトル・ミルトンのThe Blues Is Alright、T-ボーンのStomy Mondayなどがあります。
カバー曲好きの私としては、その後どのような曲を取り上げたのか、気になるところです。
私は今、追悼の意味でも、未聴のアルバムを手に入れて聴こうかな、などと考え始めています。
Stll Got The Buesです。
【ブリティッシュ・ロックの最新記事】
投稿者:エル・テッチ|02:20|ブリティッシュ・ロック
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