NAUTICAというわりと名の通ったブランドのもので、買った当時は、Tシャツにしては、そこそこ高かったと思う。
虫食い穴が広がってみっともないのだが、昔のTシャツの襟ぐりは、最近のものと違って、まだまだしっかりしてるし、生地がくたびれて柔らかくなり、すこぶる着心地も良い。
最近のTシャツは、何度か洗濯するとすぐに襟が伸びてくたびれてくるが、30年くらい前のTシャツは、ハワイのクレイジーシャツや、ドイツで買った楽団の記念Tシャツなどいずれも襟はあまり伸びていないし、型崩れも少ないと思う。
日本で最初にTシャツを作った墨田区の老舗、久米繊維さんで以前お話しをお聞きしたことがある。「Tシャツは素材と縫製で仕上がりが違ってくる、しっかり作ってあるTシャツは、襟ぐりも、シルエットもくずれません」とおっしゃっていた。実際、東京の家に置いてある久米さんのところで買った数枚のTシャツは、生地も肉厚で襟ぐりもしっかりしている。10年くらい経った今でもしっかりしたシルエットのままである。
昔は、Tシャツも千円とか2千円とかしていた。昔に比べて最近はずいぶん安くなったが、その分長持ちもしない。私は、ファッション好きだったし、サラリーマン時代に買った服には、わりあいしっかり作った良いものも何点かあったりするのだが、それらは、40年くらい経った今でも、シルエットの崩れなどもなく生地の風合いも素晴らしいままだ。15年ほど前に、毎年着ているツイードの赤いCPOジャケットのようなものを来て銀座の洋服屋をのぞいた時に、ベテランの店員さんが、「これツイードですね、あ、ハリスツイードだけど、こんなにしっかりと紡いであるものは、今はあんまりお目にかかれませんよ」、と絶賛されたことがあった。昔は、丹念に良いものを作る文化があり、それをちゃんと見抜く目利きの店員と目利きの客がいたのかもしれない。
さて、このTシャツ、今日は、アイロンパッチを当てて穴をふさいだ。
よし、まだまだ着るぞ。
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