僕は、3〜4年くらい西武線沿線に住んでいたことがある。毎日黄色い西武線に乗っていると、中吊り広告や、駅貼りポスターなどで、西武ライオンズや沿線施設のことなどの情報が朝晩刷り込まれる。としまえんの情報も、しょっちゅう電車の中で目にしていた。
そして、広告業界の伝説的名作となった「プール冷えてます」の広告は、前職の会社の同僚が制作したものだ。
86年の制作で、コピー岡田直也、デザイン大貫卓也というコンビだ。大貫氏は、当時、まだ入社数年だと思う。岡田氏も僕より少し下だから、20代後半だろうか。ちょうど僕は、支社に転勤していたので、直接ポスターなどを目にする機会はなく、社内報や広告業界誌などで、この広告のことを目にしたのだと思う。大貫氏とは仕事をする機会がなかったが、岡田君とは(仕事を一緒にやった後輩なので君ということで(笑))後年、彼が独立する少し前に一緒に仕事をさせてもらった。優秀なコピーライターはおおむねそうだが、非常に緻密で頭の良い人だった。まあ、そんなこともあって、としまえんには、とてもシンパシーを感じていた。
プール冷えてます、の広告以降、としまえんには「何か」がある、という印象が広がり、来園者も増えて行った。次は何が起きるのだろうか?と来園者の心を動かした。それも広告の大きな力だろう。
コロナVが、閉園の大きなトリガーであることは言うまでもない。しかし、としまえんのニュースを聞きながら、考え抜かれたコピーとデザインの広告が社会に与える力を持っていた時代が、ひとつの区切りをむかえたようにも感じた。プールが終わり、ひとつの時代が幕を閉じた。
【このカテゴリーの最新記事】