私も、つい最近、近所の方に、「広告業界というのは、けっこうすごいことをする業界なんですね」と言われたこともありました。
しかし、くれぐれもご理解を頂きたいのですが、広告業界自体は、決して悪の温床ということではありません。ほとんどの人間は、広告と仕事を愛し、身を粉にして一生懸命働いています。また近年は、社会のために役立つコミュニケーションの仕組みを考えたりする公共的な仕事も多くなっています。
そもそも、広告業というのは、明治の頃の草創期には「広告取次業」とも呼ばれ、人と人をつなぎ、面倒な手続きなどを肩代わりして広告を取り次ぐことによって手数料を頂戴するということが基本という商売から発展してきました。江戸時代の「口利き屋」のようなところもあって、広告の取次とあわせて、大きな催事(つまりイベントですね)の人の手配や準備などをしたりもするようになりました。その意味では、「人脈」を作り、それを生かして「仕切り・差配」して稼ぐというのは、いわば広告業界の本業でもあったわけです。
高橋氏を弁護するつもりはありませんが、おそらく彼にとっては、これまで電通で長年やってきた仕事=人脈ルートをフル活用して取引をまとめる、ということをやったに過ぎない、という思いがあるのではないかと思います。ただ、広告会社にいるのと大きく異なる点は、オリンピックに関わる団体の理事は、公務員に準ずる立場であり、また、見返りのコンサル料は、あまりに巨額で、その授受などについても意図的に不透明な点の多かったことついては、やはり、逮捕されるべきものであったと思います。
私がサラリーマン時代にも、コンペで電通に負けたときには、思いがけない人脈からキーマンを落としたとか、ちょっとした仕掛けをして取ったとか〜そのパワフルなやり方に舌を巻いたことも数多くありました。
しかしながら、もう一度声を大にして言いたいのですが、広告業界自体は、決して悪人の集まりではありません。
どんな業界にも、必ず悪の因子を持った人というのは存在してしまうものです。
江戸の昔の越後屋のたとえではないですが、権力とくっついて、なにかお金がもうかりそうだという話に食いつくという例は、枚挙にいとまがないのです。
どうぞ、くれぐれも、広告業界自体を悪の温床のようには決して思わないで頂きたいと心から申し上げたいと思います。
そして、OBとして、前職の会社の名前が、この先ニュースには出てこないことを信じております。そう願っております。
#東京オリンピック贈収賄事件
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