父には中の具材が噛めないし、キッシュをみじん切りにするのは私自身あまり気乗りがしない。何より、父はこういう西洋風の料理はそれほど好きでもない。
というわけで、私一人しか食べないので、いつもは、卵を2個だけ使って小さいのを作るのだが、今日は、パイ皿にちょうど入る量の卵3個で作った。そのため、昼に作って、ランチにも少し食べて、量を減らすようにした。
ほうれん草とベーコンのキッシュが食べたい、という気分は、料理の持つ最初の力だ。
「食べたい」という思いと、それを具体化すること、それが料理を作る力になる。
そして、材料を調理し、自分ができる範囲のやり方で、少しでも美味しくなるように配慮しながら作っていく。卵の白身を切るように混ぜたり、炒め加減を気にしたりして作ることは、料理というアクションの持つクリエイティブな面だろう。作るということが、人の発想や感性も刺激する、それもまた料理の力である。
そして、きれいに出来上がった時の喜び、それはひと仕事を終えた達成感となり、それを食べて味に満足できれば、美味しさと料理がもたらす栄養が、生きる力と喜びを与えてくれる。
材料を加工し、味を含めてひとつのかたちにまとめあげていくプロセスは、デザインであると言えるかもしれない。
私にとっては、こうした料理が与えてくれる一連の力が、ともすれば自宅介護で折れそうになる心を支えてくれる、まさに大切な力となっている。
明日もまた、父と私のために、さて何を食べようかと、料理という総合的なデザインワークに取り組むだろう。
#料理の力
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