既にドイツなど各国に対して行ってきたスピーチにおいても、そのうまさがたびたび話題になっていた。
日本の国会議員へのスピーチもまた、心を捉える見事なものであった。
冒頭の挨拶のあとで、こんな言葉で彼は話し始めた。「ウクライナと日本、両国の間には8,193kmもの距離があります。ルートによっては飛行機で15時間もかかります。けれど、自由を思う気持ちに差はありません。また、生きる事に対する意欲の差もありません。これは2022年2月24日に実感しました。
日本は侵攻が始まってすぐに援助の手を差し伸べてくれました。心から感謝しております。・・・」と遠く離れた国でありながら、実は思いの通じ合う国だという「まくら」から語り始めたのである。そして、桃太郎のオーディオブックの話で、親近感を感じさせながら、スピーチが終わった時には、日本の国会議員たちが、スタンディングオベイションとなった。
お笑いでも、「つかみ」ということがよく言われる。演説でも同じようなところがある。人の心を、話しの始まりでぐっとつかまえるということである。
日本とウクライナの距離をまず話して、おやっと思わせておいて、実は離れていても心は近いというふうに共感を得ていく。日本のことをきちんと調べて、スピーチを構成している。
ゼレンスキー氏は俳優であった。だから演ずるのがうまい、ということはあるのだろうが、誠意をもって人の心をつかまえるのがうまいということだろう、とスピーチを聞きながら感じていた。
命の危険を顧みず、国を背負って日々戦い続けているからこそ、真に心に残るスピーチとなって胸を打つのだろう。
今回のロシア侵攻では、実践と並行して、ネットでの情報戦も行われている。そして、ゼレンスキー大統領の偽物が降伏をすすめるという恐るべきフェイクニュースまで登場し、「映像戦」も過熱している。
そうした中で、彼は、ネットを活用し、西側諸国に対して次々とアプローチをして、各国の人々の心をいち早くつかんでいった。いわば「ウクライナ応援団」をどんどん増やしていったのである。もちろん、今回の戦いは、ロシアが一方的に横暴な侵攻を行ったことを世界中が理解していて、ウクライナはどこから見ても被害者であるという構図が明白であったことは大きい。しかし、カメラの前で、危険を恐れず堂々と話し続けるゼレンスキー氏は、プーチンのスピーチをはるかに凌駕する力と光を放っている。
それは、インターネット時代の中で、国民のために戦う大統領の新しいスタイルであり、ニューヒーローともいえる。彼の持つ力が、国際的な大きなパワーと広がりを生み出し、「プーチンの戦争」を終わらせることを、心から応援したい。頑張れゼレンスキー!!
#ゼレンスキー大統領のスピーチ
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