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2022年03月12日

至福の夕べ

先日の地元バンドのライブに続き、今日は、山中千尋さんのライブに出かけた。
10年くらい前から、ぜひ一度彼女のライブを見たいと思っていたが、介護やコロナなどもあって、なかなか実現できなかった。今回、3回目のワクチン予約が取れたところで、矢も楯もたまらず、すぐにコンサートチケットを買ってしまった。以来、コロナにかからないように、これまでにも増して注意しながら今日のコンサートを楽しみにしてきた。
220312山中千尋チラシ.jpg

このところ、父の認知症の具合がひどい日が増えていて、夜中に起こされることもひんぱんになり、正直、心身共にかなり疲れていた。考えてみたら、父をデイサービスに宿泊させて、つかの間の休みを取ることも、コロナが怖くてしばらく控えていた。父は、私より先に3回目のワクチン接種を終えていたので、そのこともあって、父を預けてコンサートに出かけることに決めた。

会場である小矢部市のホールは、300席くらいの小さなホールだったが、ものすごく雰囲気が良かった。音響も良く、ステージとの距離もとても近くて、ちょっとライブハウスのような趣だった。
会場に着くと、FM富山の山中さんの番組を制作しているディレクターのOさんも、ちょうど入り口にスタンバイしていて、十数年ぶりに再会することができた。

開場時間になり、ホールの中に入り、席に座った。開演前のBGMで、「ミスティ」が流れていた。20代の半ば頃、六本木にあったミスティというJAZZクラブに毎週のように通っていたことがあった。おかげで、当時時々出演していたピアニストの山本剛さんに顔を覚えてもらって、時々声をかけてくれるようになった。そもそもJAZZを聞き始めたのは、大学2年くらいに渋谷の百軒店にあった「Duet」というJAZZ喫茶に入り浸っていた頃からだから、もう45年以上も聞いていることになる。

そんなことを思い出しているうちに、開演時間になった。

今日は、ベースとドラムを加えたトリオ演奏である。真っ赤なドレスで現れたちひろさんは、ピアノの前に座ると、オープニング曲の「インパルシヴ」で、いきなり我々を圧倒した。噂には聞いていたけれど、スレンダーな彼女の、どこにこれほどのパワーが潜んでいるのかと驚くほどに激しい打鍵である。山下洋輔を彷彿とさせる弾き方だ。
この数年、彼女のアルバムは、週に何度も聞いているけれど、やはりライブの音と雰囲気は全然違った。激しく全身を使いながら弾く彼女の姿に、あっという間に心を奪われた。
そして、ウッドベースを弾く長身の山本浩之が、歌うようなメロディアスな音をはじき出し、時に、エディゴメスのように、ピアノの音と巧みにからみ合っていく。
そして、抑えの効いた桃井裕範のドラムが気持ちよく二人の演奏をリズムでサポートしていく。ドラムソロも、派手さはないが、計算され、落ち着いた叩き方が素晴らしく、とても心地よい。

かくして、「テイクファイブ」などのスタンダードナンバーを、全く異なるアレンジで、ちひろミュージックに変えてしまう魔法の時間はあっという間に最後のナンバーを迎えるが、高揚した聴衆からは、アンコールが連続し、3度もステージに登場してくれることになり、なんと、ちひろさんと山本氏が入れ替わって、彼女がウッドベースの腕前まで披露してくれた。そして、約二時間に及ぶ至福の時間は終わった。

帰路、ステアリングを握る私の心の中には、素晴らしい音楽がもたらしてくれた豊かな暖かさが広がっていた。
#山中千尋 













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