ヨーカドーとセブンイレブンで小売業を引っ張ってきたセブン&アイグループをもってしても、百貨店事業というのは、展開困難な時代になったという事の象徴だろうか。
1970年代、西武百貨店グループには勢いがあった。堤社長がトップとして、小売りと文化を両輪で回して時代を牽引していたような印象があった。池袋西武には美術館もあり、渋谷では、渋谷西武とPARCOなどが、渋谷の街をどんどん変革していった。
広告マンになりたての私たちは、「ひまがあったら、百貨店を回って、世の中の動きを捕まえてこい!」とハッパをかけられ、実際平日から休日までしょっちゅうそうしたお店を回り情報感度を磨いた。
しかし、ダイエーグループやヨーカドーなどの、より大衆的なスーパーが、生活の中でウェイトを高め、安くて良いものを手軽に買える時代が進行していくと、百貨店で物を買うという消費行動に変化が生まれた。洋服や家具雑貨などかつて百貨店で買っていたものを、別の業態で購入するライフスタイルが少しずつ進行していった。(そうした消費行動の変化を引っ張っていったのは、実は我々の世代が中心だったかもしれないが・・)
そして、さらにネットでのショッピングが定着し、さらにコロナウィルスによる在宅生活も流通構造の変革に拍車をかけた。
80年代当時の西武百貨店の広告で、時代を席巻した名コピーがあった。「おいしい生活」である。
ウディ・アレンのビジュアルに、糸井さんが書いたこのキャッチコピーが書かれたポスターが伝えたおいしい生活は、かつてはポジティブでカッコイイくらし方だったが、現在では当たり前のライフスタイルになりつつある。それに伴って、百貨店が提供する高級志向は、高コスト高パフォーマンスなだけに、今や時代にそぐわなくなり、経営コストばかりがかさむ効率の悪いものになってしまったのかもしれない。しかし、それはどこか寂しい動きでもある。
時代をリードした百貨店文化の、おいしい生活の提案力は、本当に魅力を失ってしまったのだろうか?・・・
#西部・そごう売却 #おいしい生活
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