昭和の古い車を30年以上乗り続けているオーナーを取材して車と人生の関わりを追いかけるという企画である。
(BS朝日HPより)
先日は、今はなくなってしまったイタリアのカロッツェリアB社が作った2シーターのスポーツカーに乗り続けているご主人とご家族が登場した。私より少し年下のオーナーだが、なんと息子さんが小学生くらいの頃に、その車のメーカーのイタリア本社を訪ねてショールームを見せてもらったことがきっかけで、息子さんは、今やカーデザイナーになっているという。息子さんも、できれば父が乗り続けている車を自分が引き継いで乗っていきたい、と発言。この番組の取材で初めて打ち明けたという。
そんな番組を見ながら、息子さんがその車を引き継ぐ頃に、果たしてこの車のガソリンエンジンを整備できる技術者は、どれくらい残っているだろうかと考えていた。
今から10年後くらいには、新車で出荷されるクルマは、おそらくほとんどが電気自動車になっていることだろう。その時にも乗り続けられている旧車は、もちろん走行できるとは思うけれど、整備出来る人はどんどん減っていくだろう。既にキャブレターの調整を熟知している整備士は、数少なくなっているに違いない。
あと20年もしたら、ガソリンエンジン車は、殆ど走っていないのではないか?仮に「昭和のクルマといつまでも」ということで乗り続けているオーナーがいても、修理をしてくれるところは、激減しているに違いない。ガソリンエンジンの技術は、おそらくあと半世紀くらいで、完全に消えてしまうに違いない。
日経ビジネスに興味深い見出しがあった。「10年後に原発経験者いなくなる」・・IHIや三菱重工の半端ない危機感・・・というものである。
IHIは、原発の沸騰水型軽水炉(BWR)の心臓部「圧力容器」の製造では世界トップクラスの企業であった。ところが、この10年弱ほど新しく製造されることはなく、工場の製造機械は、稼働しないままメンテナンスをして維持だけをしているのだという。今後新規の圧力容器が製造され設置される可能性は国内ではぐっと少なくなるだろう。
福島原発事故の時にも、既に、原発設備の構造に詳しい技術者は少なくなっていて、実際に機械を取り付けたりした経験のある技術者は、既に定年していてOBを探したりしたという記事を見たように思う。
時代が変わり新しい技術が主流となれば、古い技術のノウハウは、あっという間に消えていく。継承するにはお金も人出もかかるから、経済的価値のなくなった技術は消えざるを得ない。
未来に向かうということは、希望の光ばかりのように思ってしまうけれど、失われた技術やノウハウは、簡単には取り返せない。もし仮に、また原発事故がどこかで起きたら、福島の時以上に、その構造を熟知して対応策を考え、修復対応ができる人は、はたして残っているのだろうか?技術の未来は、本当に明るいことばかりなのだろうか?・・・
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