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2021年07月18日

すり鉢であたる

私は、子供の頃からすり鉢と付き合ってきた。父が、すりごまを使った料理などが好きだったためか、小学生くらいになると、父や母がすり鉢を使っている時に鉢を押さえる役目を命じられたりしていた。やがてひとりでも擂れるようになってくると、足の間にすり鉢をはさんで、ごま味噌擂りをやらされたりした。胡坐をかいて座り、足で大きなすり鉢をはさみながらすりこぎを回していると、胡麻が少しずつすりつぶされ、香りが立ってきて、味噌と一体となって色が少しずつ変わっていく。その変化を見ながらすりこ木を動かすのは、私にとっては、実は楽しい作業だった。

今も大きなすり鉢は残っているけれど、使ったあとに洗って置いておくにも場所を取るし、擂る量も、せいぜい一人分程度しか作らないので、最近は小さなすり鉢ばかり使っている。
210718すり鉢.jpg

今日は、久しぶりにバジルの葉とナッツとをすり鉢ですりつぶしてジェノベーゼペーストを作った。ミキサーを使うよりもなんだか体になじみが良い。そういえば、エッセイストのベニシアさんもすり鉢を使っておられるのを見たことがある。
写真の通り、小さなすり鉢は、そのまま器にも使えるのでなかなか便利である。

すり鉢を使っていると、食材が変化していく様子を見るのが楽しいし、擂るという行為は、非常にストイックで何か思索的なところがあるように思う。
精神を集中してすりこ木を動かしていると、頭が空っぽになって、心が落ち着いてくる。そういえば、禅寺の修行僧も、すり鉢を使うことが多いかもしれない。

擂る、と言う言葉は、バクチでお金をなくしてしまうような意味に通じるので、すり鉢のことを、あたり鉢と言ったり、擂ることを、「当たる」と言い換えることもあるようだ。子供の頃に親戚の叔父さんから、「ごまを当たっておけ」と言われたことがあったような記憶もある。

今は、既にすりつぶされたすりごまを使うことが多いけれど、時々ふと思いたってごまを擂る時がある。やはり摺りたてのゴマは、香りが良い。
さて、明日は、久しぶりに胡麻を「当たって」、ナスの胡麻味噌和えでも作ろうかな。
#すり鉢 
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