ニッポンの底力は、「建築王国物語2」と題して、水害に強い「浮く住宅」の開発から、渋谷の歩道橋の架け替えを、わずか5分くらいでやってしまう凄い技術の物語など、日本の誇る恐るべき技術力を丹念に取材した見ごたえのある番組だった。
一方、山田洋次監督のドキュメンタリーは、89歳の老監督の映画作りと、映画の歴史も感じさせる番組で、こちらも心にしみる作品であった。
たまたま、どちらも、「作る」ということをとらえた番組だ。
建築/建設というハードな技術を駆使したモノづくりと、映像作品を作り上げるというソフトなモノづくりの番組が、連続して放送されたのは、番組編成の偶然にすぎないのかもしれいけれど、そのふたつのコントラストは、なかなかに印象的であった。
建築理論を駆使しアイデアをひねり出して、建築という大掛かりなものを、作ったり改修したりする作業、しかもそれを大都会の社会インフラに与える影響を最小限に押さえるように工夫しながら行うという神技は、日本人の傑出した能力ではないか?
4車線の道路の上にかかる古い歩道橋を、わずか4分ほどで撤去して、車両の通行をほとんど妨げない、などということをやってのける国民は、日本人以外には世界にいないのではないだろうか?
そして、山田洋次監督の映画作りへのひたむきな情熱と丹念な映像づくりのプロセス。これもまた、繊細な日本人の感性が生み出すモノづくりではないだろうか?
ハードとソフトというモノづくりの間には、もちろん大きな違いがある。しかし、そこに通底するモノを作り出す姿勢のようなものというか取り組み方というのは、共通する点が多いような気がする。
山田監督は、暴力的なシーンを捕ったことがないという。だから、そのシーンをどうやって演出したらよいか悩んでいた。山田監督のその姿に、主演の菅田将暉が驚き、それはまるで経験のない若い監督が悩んでいるかのようだったが、それこそが監督の若さの理由のひとつかもしれないというようなことを語っていた。演出に悩む監督も、その監督の様子から、真摯な気持ちを汲み取る俳優のどちらも素晴らしいと思う。
CMの撮影をしている時に、何時間も待たされることのひとつは、ライティングのセッティングであった。照明が決まって、カメラマンと監督がOKするまでのプロセスが、ものすごく丹念な作業時間であったのを覚えている。一流のカメラマンと一流のライトマンの妥協を許さない仕事ぶりは、本当に印象的だった。それが、心に残るワンカットを生み出す。
ハードでもソフトでも、情熱をもってモノを作り上げようとする人間の取り組み姿勢というのは、本当にすごいものである。
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