アトムの名前は、実は、原子力のアトミックから取られている。だからアトムを動かす100万馬力の原動力は、原子力という想定だった。
私が小学生から中学生にかけて、東海村の原子力発電は、時代の寵児だった。原子力は未来を作るエネルギーだと、我々はずっと教えられてきたように思う。社会科の授業でも習ったような記憶がある。中学生の頃、私は未来を作る東海村の原子力発電に関わるエンジニアになりたいという憧れを持っていた。
10年前、未来を作るエネルギーだったはずの原子力が、大地震によって凶器に変わった。未来を作るはずの放射能が、人の住めない町を作ってしまった。
大災害の報道映像、信じられないような津波の映像、そして津波がもたらした福島第一原発の事故という未曽有の危機。原子力発電所がメルトダウンを起こし、放射能を日本中に広げるかもしれないという恐怖。その危機と恐怖は、残念ながら現在も様々な形で継続している。
今日、NTVで、映画「FUkushima 50」を放映していた。壮絶な映画だった。原子力発電所が、まるで悪の権化のように見られてしまうような事態になったが、そこで働いていた人たちは、本当に命をかけて戦い続けていた。
原子力の是非をあらためて考えることは必要なことだ。しかし、現在の発電施設で働く人たちは、誇りを持ってその仕事に取り組んできた人たちだ。未来を作るエネルギーに心血を注いできたことだろう。
映画に登場した吉田所長は、事故の放射能によるガンによってお亡くなりになったと聞く。まさに命をかけてこの事故に対処された方だ。彼以外のスタッフの皆さんも、この映画の通り、死を覚悟しながら懸命に働いておられたに違いない。
いきなりの現場視察に代表される当時の総理の愚かさと虚しさは、映画としての演出を差し引いても、実際のところこれに近かったのではないか。
映画のラスト近くで、佐藤浩市の運転する車が、人気のない町に入っていく。
その車が走っていく上には、「原子力あかるい未来のエネルギー」という看板。
原子力を平和エネルギーとして活用しようとした科学者は、おそらく明るい未来への純粋な情熱で取り組んだはずだ。しかし、原子力の持つ危うさを人は忘れてはならないことをこの事故は教えてくれた。
この事故以来、私は原子力による発電にはリスクがあるから、未来への選択肢としては選ぶべきものではないと思っている。鉄腕アトムは、手塚治虫先生は、どう思っているだろうか・・・
#福島第一原発 #Fukushima 50 #原子力
【このカテゴリーの最新記事】