4月1日から、おなじみの機内誌を、全日空アプリを通じてデジタル提供する形にするという。
(写真は、共同通信サイトより)
確かに膨大な印刷部数で、しかも用紙も高級紙を使っているし非常にレベルの高い印刷をしているのでコストの高い印刷物だろうな、とPR誌やカタログなどの印刷物も作っていた経験のある広告代理店OBは、新聞を眺めながらうなずいた。
デジタルに変えることで、年間1540トンの紙の使用を抑えることができ、年間5億3千万円ものコストを削減できるという。コロナ苦境にあえぐ航空会社にとっては、大きな節約だろう。
とはいえ、飛行機に乗り込んで座席に座り、シートベルトを締めてひと息ついたところで、イヤフォンを耳に装着してコードをジャックに差し込み、シートポケットの機内誌を取り出して開くという一連の動作を行うと、さあこれから離陸だという旅気分が広がっていくものだった。
これが、小さなスマフォ画面を開き、たぶんインストールしたアプリを起動して雑誌の画面を開くとなると、老眼のおじいさんには、なかなか大変だし、ゆったりとした空の旅も妙にせせこましい印象になることだろう。記事を読むためには、たぶんピンチアウト(指で画面に触れて拡大する動作)して読むのだろうか?
航空会社をクライアントに持った経験もあり、人一倍飛行機会社を愛しているものとしては、経営難の状況を鑑みてもやむを得ないことだとは思うのだが、なんだか旅心が少しスポイルされる気がしないでもない。
これに限らず、アナログのグラフィカルなものが与えてくれる感覚というのは、デジタルでは得られないところがあることを最近特に感じる。例えばLPである。昔からLPジャケットの30p角のサイズに印刷されたジャケットデザインは、一種のアートでありメッセージだった。ジャケットからレコードを取り出し、レコードプレイヤーに乗せ、多くの人は、ジャケットを目の前に立てかけながら音楽を楽しむ。音を聞きながら、ジャケットと音楽との一体の中で、アーチストの考えているイメージが、より強く感じられる。
機内誌もまた、内外の美しい景色などの写真を眺めながら、ページをめくって記事を読み、そして水平飛行に移った頃には眠りにおちて雑誌は膝の上に開いたまま置かれている・・・そんな時間が空の旅の楽しさでもあった。
デジタル時代の中で、アナログの持つ力とか魅力が再認識されている。デジタルの良さを活かしながら、アナログも捨てることなく共存していく。それが、コロナ禍がもたらした生活の中で、あらためて大切なもののように思える。
#ANA機内誌
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