自宅での介護というのは、ある意味、理想的な状態という考え方もあるだろう。
家族と一緒に、介護以前と同じ状態で暮らしていける。介護される側にとっては、親である自分を子供などが世話しているのは、それまでの暮らしと同じではないか?そういう認識がある。だから、介護をされるようになっても、なぜ子供が思い悩んでいるのか、なぜ苦労しているのかということがあまり理解できない。それは当たり前のことではないか?と。
今日のNHKETV「ハートネットTV」は、老々介護のケースとして、松島トモ子さんとお母様の事例を紹介していた。75歳の松島さんが、99歳のお母様の世話をされている。当初、老々介護と言われても、自分が老人だという意識があまりなかったトモ子さんは、違和感を感じておられたようだが、やがてそれを理解するようにもなる。淡々と話しておられたが、それは壮絶な介護状況だった。
認知症が進むにつれて、お母様は、怒ったり、勝手に外出したりと、トモ子さんを困らせる。ついには、包丁を持ち出して、一緒に死のうと迫ったという。
話を聞いていた司会役の渡辺えりさんもまた、ご両親を介護されているので、番組進行を忘れて思わず涙を流されていた。私も思わずほろりとした。
私の父も、体が動く間は、私の目を盗んで自転車でひとりで外出して転倒してけがをしたり、なじみの飲み屋で友達と飲みたいと怒ったりしていたことを思い出した。
父がベッドから動けなくなった時、実をいうと、どこかほっとしたところがあった。
<ああ、これで、ひとりで勝手に出かけたりしなくなってくれた・・>本当にそう思って、どこか安心した。
トモ子さんの場合には、その壮絶な状況をケアマネさんのアドバイスによって主治医を変えたりすることで、お母様の認知症の症状を理解することができて、そこから対応方法もわかって、お母様の症状も治まったという。
介護では、ケアマネージャーさんの存在は大きい。その方の意見や采配によって、対応施設や介護プランなどが決まってくる。我々は介護の専門家ではないので、そのアドバイスが最大のよりどころとなる。トモ子さんのケアマネさんは、仕事を続けられないとトモ子さんが悩んだ時に、「介護はいつまで続くかわからないから、あなたは仕事を続けなさい」といったという。そんなところまで踏み込むケアマネさんはあんまりいないだろう。特に東京などの大都市圏では。良いケアマネさんにあたるかあたらないかは、大きな分かれ道になる。だから、もし皆さんが、ケアマネさんに疑問を感じた時には、社会福祉協議会に相談して、ケアマネさんを変更するということも、場合によっては必要かもしれない。
「今は穏やかに家で暮らしてもらい、亡き父のもとに送り届けることが自分の役目と思っている・・・」75歳のトモ子さんは、そう穏やかに語っていた。その気持ちは、私にもとてもよくわかる。
自宅介護とは、介護をする人とされる人の心の葛藤の場であり、時に闘争の場にもなり、そして宗教的な自己研鑽の機会にもなる。
私もトモ子さんのような心境に近づきたいと思った。
#老々介護
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