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2021年01月09日

雪国の老人

65歳を過ぎると、目に見えて体力が落ちてくる。まして、定期的な運動をしなくなるとなおさらだ。そういう初老の老人は、日本中に一体どれくらいいるのだろうか?そんな年寄りたちが、たぶん日本中の雪国で、この数日雪かきをしていると思う。
210108スノーダンプ.jpg

この冬は、記録的な積雪になっている。
10年くらい前だろうか、帰省した50代の私と80代の父とふたりで、屋根の雪下ろしをしたことがあった。当時、父は私よりはるかに元気だった。スコップの使い方も上手かった。30分で息の上がるわたしより、巧みに、スコップで屋根の雪をかきだしていた。二人合わせて130歳越えの雪下ろしだな、と屋根の上で笑いあった。

今は94歳で要介護4の老人になった父は、もちろん雪かきなどできない。しかし、彼は、たぶん80代後半まで、車庫の前の雪かきをしていたと思う。
若い家族が同居していないと、雪かきは老人が自分でやらなければならない。豪雪の時には、激しい積雪が2日も続くと、雪かきをしなければ、あっという間に玄関が雪に埋もれる。出入りができなくなる。車庫の雪をどけないと生活必需品の買い物に行けなくなる。灯油を買いに出かけられなければ凍えてしまう。そんな住環境に暮らしているお年寄りは、実は日本中にたくさんいるだろう。老人がそんなことをしなくても、という声が聞こえてきそうだが、やらないと生きていけないのだ。雪かきを引き受けてくれる先など、ほとんどない。雪下ろしもそうだ。雪は待ってくれない。やりたくないけれど、やってくれる人は自分以外にはいないのだ。

ローカルニュースで、家の前の雪かきに出かけた81歳の老人が、用水に落ちて流され命を落としたという報道があった。家族が発見したという。雪の中で用水に落ちて流されて亡くなった祖父を見た家族はどんな思いだっただろうか?胸が締め付けられるようなニュースだった。

私の家の前には、幸い融雪溝があり開口部がある。これが近くにある家とそうでない家とでは、雪かきの効率が全然違う。思い鉄の蓋を持ち上げるのも大変だが、それを開けると1mくらいの口が開く。用水には40cmくらいの深さの水が流れている。もし私がここに落ちたら、体の向きによっては、用水に閉じ込められ、冷たい水であっという間に心臓が止まって誰にも助けを呼べずに息絶えるのだろうな、とその蓋を開くたびに考えるようになった。

老人世帯の雪かきは、避けることのできない切実な生活課題だ。
明日もまた80cmの積雪だ、と天気予報が告げている。その声は、雪かきで疲れきった体に、重く響いてくる。

#雪かき  #雪下ろし













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