寝たきりの介護老人だが、わりにしっかりしている。もちろん、9月に天国の入り口をちょっとのぞきにいった時には、命の火が消えかかり、わずか数日でげっそりと痩せて頬がこけた。しかし、鉄人の彼は、そこからまたしても見事に蘇った。
もちろん、今では柔らかい物しか食べられず、運動もしておらず食も細くなったので、ゴルフをやっていた数年前に比べれば、体はかなりやせてしまった。
しかし、そぎ落とし研ぎ澄まされたようなその風貌は、時に、仏像のように穏やかですっきりとした表情にも見える。
認知症によって、食事をしたことを忘れてしまう時もあるが、そうでない時は、もちろん普通に会話ができる。食事をして、TVを見て、眠り、また目覚める。
人が生きるということの基本的なリズムを繰り返しながら、生命を保っていくという本質的な営みが、すっきりとした穏やかな顔つきにさせるのかもしれない。
今日も、ちょっと日本人には珍しいポパイのようなしゃくれたあごの父の横顔を眺めながら、食事の世話をしている。
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