コロナ禍の影響もあって、キャンプとたき火が、数か月くらい前からブームになっているようだ。ソロキャンプを流行らせた立役者になっているタレントのヒロシ氏は、元々はあくまで個人的な楽しみとして、淡々とキャンプをしていたように思う。もちろん、タレントだから、それも何かの発信になると思って映像化していただろうが。
私は1年半前くらいから、彼の番組やYoutubeのキャンプ映像を見て、その独特の世界観にわりに共感を覚えていた。
気の合わない人たちと話を合わせるのがうまくやれない彼は、一人でゆっくりとたき火を見ながらキャンプをすることに喜びを覚えたようだ。
ソロキャンプというのは、そこそこの精神的なタフさがないとできないと思う。まず、一人の時間とうまく付き合えるキャラクターでないと、ただブームにのっかってやるには少々ハードルが高い。私もボーイスカウトの時代からキャンプは、何度か経験しているが、夜の山の中で一人で過ごすのは、まず怖い。キャンプ場で、他にテントを張っている人がまわりにいたとしても不安だと思う。ましてや、キャンプ場ではない周りに人のいない山でのソロキャンプは、クマなどに襲われる危険もある。夜の山は色んな音がする。普通の人はとても寝られないだろう。
まあ、そこまでリスクを冒さなくても、デイキャンプや、庭などでたき火をするだけでも、心の栄養になる。たき火用の金属製の台もヒット商品になっているらしい。
NHKBSでは、「魂のたき火」という不思議な対談番組を放送している。個性的な3人のゲストを抽出して、たき火をしながらトークをする番組だが、時々、炎を見つめてみんなが無言になっている。どのゲストの時にもそういう瞬間がたいていあるのが興味深い。
炎には不思議な力がある。NHKの番組の「魂のたき火」という言葉通り、人間は古代に火を使うようになってから、劇的な生活変化を手に入れた。それ以来、炎のゆらめきには、まさに魂に響くような何かがあるのかもしれない。
心を落ち着かせてくれる炎は、時に業火とも言われる炎にもなる。地獄の炎、罪を責める炎である。戦争においては、戦火という炎で、相手を焼きつくそうとする。
しかし、炎を見つめながら話をすると、相手の顔と炎を交互に見たり、炎に向かって言葉を発したりすることで、普段とは違う会話が生まれる。NHKの番組もその面白さを狙っているのだろう。炎を眺めていると無心になる瞬間がある。
私の友人が教えてくれたが、昔は食事のあとで暖炉の火を眺めながら家族が会話をした。今はその暖炉の代わりにテレビがある、Fトリュフォーがそんなことを言ったらしい。なるほど。
たき火が愛される時代の中で、アメリカでは分断によって争いの炎が燃えかねない状況が続いている。大統領選の開票時には、暴動が起きて火を放つことも警戒され、実際何か所かでそのような事態も発生した。
日本で愛されているたき火の炎は、それに比べれば優しい炎かもしれない。心と体を温めてくれる優しい炎を愛する時代であってほしいと思う。
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