今から40数年前、私は丸の内で社会人としてのスタートを切った。
当時、私の入社した会社は、丸の内エリアのいくつかのビルに部門別に分散して入居していて、私が配属されたのは、富士ビルであった。今もそうだが、ランチタイムの丸の内には、美味しいものがたくさんあった。よく利用していたのは、向かいの新東京ビルの地下にあった明治屋だ。オフィスから近かったことと、当時、会社が支給していた食券が使えた。そんなこともあって、週に1〜2回は、そこでランチを食べていたように思う。
今は、イタリアンレストラン全盛で、パスタなどどこでも食べられるが、当時パスタで色々メニューのある店はまだ少なかった。明治屋は、食品商社である京橋明治屋直営のレストランで、夜はビールやワインを楽しむこともできた。私がお気に入りのメニューは、コロッケのパスタとレバカツのパスタで、他にもご飯やパンを添えたミックスフライのランチ等もあったように思うが、ケチャップ味の大量のパスタが添えられたものがメインだったのではないかと思う。黒いベストに蝶ネクタイをしたチーフ格の人が格好良くて、いくつもの皿を手に乗せて店の中を素早く動いているさまは、フランスのカフェの人のようにも見えた。
時々は、会社の人たちと夜酒を飲むこともあった。当時の上司や先輩たちは、夜も食券を出し合って「おう、これでごちそうしてやるぞ」などと言って、よくごちそうしてもらった。会社の雰囲気は、今よりずっと暖かくてのんびりしたところもあって、昼も夜も本当に楽しい時間だったように思う。
時が流れ、丸の内の名店、明治屋も、山水楼も、オムライスのエーワンも、今では無くなってしまった・・・
今日の私のランチは、玉ねぎとウィンナを入れたナポリタンとクリームコロッケだ。どこか、明治屋を思い出す味になった。
あれから40数年、仕事をした記憶は少しずつ薄くなっているが、ランチの記憶は今も、舌と心に残っている。ああ、明治屋のレバカツが、食べたい!
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