そんなわけで、あれこれ頭を悩ませながら、おかゆと一緒に組み合わせて栄養の取れるものを毎日考えている。
定番メニューは、富山の郷土料理「エベス」。べっ甲とも言われるこの料理は、玉子をだしの入った寒天で固めたもので、地元のスーパーでは、どこでも売っている。喉の通りも良く玉子も入っているから栄養がある。これと、そぼろ状の肉や魚をおかゆと組み合わせて食べさせている。野菜も、煮たものなどをみじん切りにしたりつぶしたりしている。生野菜は、トマトとキャベツを細かいみじん切りにしてマヨネーズで和えたり、キュウリやニンジンをすりおろしたりもしている。
人は、赤ちゃんとして生まれて、年老いてまた赤ちゃんに戻ると言われるが、父の今の食事は、考えてみると赤ちゃんの離乳食のようだ。(そういえばオムツのお世話にもなっているし。)
この間具合が悪かった時、かかりつけ医から、高齢者は、口からものを取れなくなるとあっという間に体力が落ちてしまう、と言われた。実際あの時も、わずか数日点滴のみですごしただけで、見る見るうちに体力と気力が落ちていった。食は、本当に命を支えるものだと痛感した。
点滴をはずし、毎食口から食べられるようになってから、落ちくぼんでいた目に光が入り、ほほがふっくらとして顔に生気が戻った。今では、しっかり話をすることもできる。
以前は、食事を父のベッド脇に置いて、父をベッドに座らせれば、なんとか自ら食べることができた。しかし今は、毎食私が父に食べさせている。私が口元に運ぶひとさじひとさじが、まさに、父の元気をつないでいる。人はパンのみにて生きるにあらず、と言うけれど、やはり食は命をつなぐ源である。
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