その様な構造がこの社会に蔓延しているのではないか。
奈良県立大教授の堀田新五郎さんは新著「撤退学宣言」(晶文社)で、敗北などのネガティブなイメージで語られる事が多い「撤退」と言う概念を、自分たちの頭で物事を考える為の「知性」と捉え直す。
経済成長を追い求め環境破壊を引き起こす。
会社や学校での過酷な競争に没頭し、鬱や自殺などに追い込まれてしまう----------。
「誰もが可笑しいと思っていても、止める事ができない。そこから撤退する方法がないのが現代の最大の問題です」。
撤退学を構想したのは、間違った方向であっても既存の方法に固着してしまいがちな私たちの在り方をもみ解す為だと語る。
本書は、近代のシステムを形作っているのが民主主義と資本主義、テクノロジーによる「三位一体」だと解説。
その根底にあるのが「自由競争パラダイム」だと説く。
「競争の中で生き残ったものが良いと言うのが今の社会。封建時代の様に正しい事や偉い人が決まっているのと比べると、それ自体は悪くない。然しそのシステムが全面化してしまうと、そう言ったゲームから外れる事が困難になってしまう」。
問題は、より良い社会を作り出す為の手段であったはずの競争自体が目的になる「主客の転倒」にあると言う。
研究してきた実存主義と言う哲学の考え方では、私たちの存在は元来、「正しさ」や「勝ち負け」などの意味の絡み合いによる「世界」には収まり切れないものだと言う。
「皆世界に入り込み過ぎて、生きるか死ぬかで必死になっているけれど、落ち着きましょうと言いたい。
どんな事も、私たちが存在していると言う、意味を超えた出来事を考えると、如何でもいい事でしょう」
世界を生きると同時に、そこから少し距離を取った視点を持つ事。それが撤退学の根本テーゼだと語る。
「その構えによって、現実の中で本当に駄目だと思った時、そこに埋没する事なく撤退する事が可能になる筈です」
愛媛新聞 文化から
近代の教育は生きる為の「構え」を全く教えてこなかったらしい。
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