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2018年03月25日

民事訴訟法論証集

間接事実の自白 
 判例は、間接事実の自白は裁判所拘束力も当事者拘束力もないとの立場であるが、重要な間接事実の自白には証明不要効が認められるべきである。

・重要な間接事実の自白に不要証効が認められることにほとんど異議はない。それに加えて裁判所拘束力や当事者拘束力を認めてよいかが問われる。

補助事実の自白
 判例は補助事実の自白に裁判所拘束力と当事者拘束力をともに否定する立場とみられる。しかし、文書の成立の真正はそもそも証拠の採否の問題である点でほかの補助事実と異なるし、成立の真正(形式的証拠力)が認められれば実質的証拠力を否定する余地は少ない。そのため、文書の成立の真正についての自白は主要事実の自白と同様に裁判所拘束力及び当事者拘束力のいずれも肯定すべきと解する。 

時機に後れた攻撃防御方法 157条1項
 要件は@「時機に後れた」提出であること、A「故意又は重大な過失」によること、B訴訟の完結が遅延することである。@はより早期の適切な時期に提出できたことを指す。Bはその攻撃防御方法を却下した時に想定される訴訟完結時と、却下しなかった場合の訴訟完結時を比較して判断する。

・@について、争点整理手続が行われたときは、その後の提出は特段の事情のない限り時機に後れたものと判断される。
・@について、控訴審での提出は、続審制が採られているため(296条2項、298条1項、301条1項)、第1審からの手続経過を通じて判断すべきである。
・Aについて、争点整理手続の後に提出されて説明義務(174条or/and167条)を果たさないときは重過失が推定されると解する。
・Aは既判力の時的限界で問題になる。

新併存説(条件説)→訴訟上の形成権行使は訴訟行為としての意味を失った場合には実体法上の効果も生じないとする解除条件付きの法律行為と解する、

訴訟要件
 訴訟要件の調査は裁判所が自ら開始するのが原則である(職権調査事項)。しかし、公益性の低いものについては例外的に当事者の主張があってから調査を開始する(抗弁事項)。そして、訴訟要件調査時の判断資料についても原則は裁判所自ら収集する(職権探知主義)。もっとも、公益性の低いものや公益性があっても本案審理と密接に関連するものについては例外的に当事者の提出した訴訟資料をを基に判断すれば足りる(弁論主義)。

抗弁事項→仲裁合意、不起訴の合意
職権調査事項だが弁論主義→任意管轄、当事者適格

確認の利益
 確認の訴えとは法律関係の存否等の確認判決を求める訴えであるが、確認対象は論理的には無限定であり、また、確認判決には執行力がなく紛争解決の実効性に乏しい場合があることから、(被告の応訴の煩を回避することや訴訟経済を考慮して)確認判決の必要性・実効性を特に吟味する必要がある。その際には、@確認対象の適否、A即時確定の利益の存否、B方法選択の適否を考慮する。
 
 A即時確定の利益の要件を満たすためには、㋐原告が保護を求める法的地位が十分に具体化・現実化しており、㋑被告の態度等から原告の法的地位に危険または不安が生じていることが必要である。
Ex)不法行為の加害者が損害額が流動的な状態で先制攻撃的に債務不存在確認を提起した場合
 給付訴訟の提起によって債権者の地位に対する危険が現実化する可能性は低いから、このような債務不存在確認の訴えは㋑原告の法的地位に対する危険がなく即時確定の利益を欠く。

既判力
 既判力とは確定判決の後袖の通用力ないし拘束力(114条1項)をいい、訴訟法上の効力である。紛争解決の実効性確保のため必要であり、手続保障が確保されたことにより正当化される。後訴裁判所は既判力の生じた前訴判決の訴訟物についての判断を前提として判断しなければならないという積極的作用と、当事者は後訴において既判力の生じた前訴判決の判断に反する主張・立証が許されず、裁判所もまたそうした主張・立証を排斥しなければならないという消極的作用がある。既判力は、@訴訟物が同一である場合、A前訴の訴訟物が後訴の訴訟物の先決問題となっている場合、B前訴の訴訟物と後訴の訴訟物とが矛盾関係に立つ場合に認められる。

独立当事者参加
 独立当事者参加とは、第三者が、当事者の一方又は双方に対して請求を定立し、その請求と既存の請求とを併合審理に付すための参加形態である(47条)。詐害防止参加と権利主張参加に分類される。いずれにも40条が準用されており(47条4項)、合一確定が保障されている。

 詐害防止参加とは、第三者が、訴訟の結果によって権利が害されることを主張して他人間の訴訟に参加する参加形態である。制度趣旨は参加人の利益保護である。要件は@他人間の訴訟係属、A他人の一方又は双方に対する請求定立、B「訴訟の結果によって権利が害される」ことである。Bは詐害意思があれば足り、判決効が拡張される必要はないと解する(詐害意思説)。

 権利主張参加とは、第三者が訴訟の目的の全部または一部が事故の権利であることを主張して参加する参加形態である。権利主張参加に40条を準用させた趣旨は、三当事者間の牽制を通じて事実上矛盾のない判決を保障する点にあると解する。
 参加を認める要件は、@他人間の訴訟係属、A他人の一方又は双方に対する請求定立、B参加人の請求が原告の請求と請求の趣旨レベルで非両立であることと解する。
※三者間の紛争を統一的に解決するという説は、原告被告の一方に対してのみ請求を定立する参加も認められたため成立しなくなった。

補助参加
 補助参加とは、当事者の一方の勝訴について法律上の利害関係を有する第三者が、その当事者を補助して訴訟追行するために訴訟に参加することをいう。
 参加の要件は、@他人間の訴訟係属、A「訴訟の結果について利害関係を有する」(42条)ことである。Aは当事者の意義があった場合にのみ問題となる(44条1項)。「訴訟の結果」とは、訴訟物限定説が伝統的通説だったが、そもそも既判力に服するわけではない第三者にとっては区別の実益が乏しいため、訴訟物に限定せず判決の理由中の判断も含むと解する(訴訟物非限定説)。「利害関係」とは法律上の利害関係である。影響は事実上のもので足りる。
 「効力」(46条柱書)とは参加的効力を意味する。これは既判力とは異なり、被参加人敗訴の場合に参加人と被参加人の間に生じる。参加的効力の客観的範囲は訴訟物に限らず理由中の判断にも及ぶが、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断についてのみ生じる。
Ex)被告がAである場合、「売買契約をしたのはAでない」という判断に参加的効力が生じるが、「売買契約をしたのはBである」という判断には参加的効力が生じない。

訴訟告知
 訴訟告知とは、法律上の形式に従って、当事者の一方が、訴訟係属を第三者に知らせ、参加を促す行為である。
 要件は@訴訟係属中であること(53条1項)、A参加することができる第三者であること(43条1項、独立当事者参加、補助参加、共同訴訟参加を含む)、B告知者は当事者に限らず、被告知者である補助参加人等でもよい(53条2項)。
 効果として参加的効力が生じる(53条4項、46条)ためには、補助参加の利益があれば足りるとする見解もあるが、被告知者が参加しないことがやむを得ない場合もあるから、被告知者による協力が正当に期待できることが必要であると解する。正当に期待できる場合とは、告知者が敗訴した場合、それを直接の原因として告知者が被告知者に求償ないし賠償を求めうるような実体関係がある場合をいう。

・被告知者が実際に補助参加した場合には、原則として現実の補助参加を基準に参加的効力の発生の有無を考えれば足りる。

訴訟承継
 訴訟承継とは、当事者の一方の相続人や係争物の譲受人などに従前の訴訟追行の結果を引継がせるための制度である。訴訟係属中に当事者が死亡したり係争物が譲渡された場合に新訴提起するのは非効率であること及び詐害的な係争物譲渡を防ぐことが制度趣旨である。

 参加承継とは、承継人の側から積極的に従前の訴訟の結果を引継ぐために利用される手続である(49条)。独立当事者参加の形式でなされる(49条1項、47条)ため、必要的共同訴訟に関する審理の規律が準用される(47条、40条)。
※訴訟状態承認義務により、被承継人の自白に拘束される。

 引受承継とは、相手方当事者の側で承継人に従前の訴訟の結果を引継がせるための手続である。同時審判申出訴訟の形式でなされる(50条3項、41条1項、41条3項)。

 訴訟承継の効果は、49条・51条が規定するもののほか、明文はないが承継人に訴訟状態承認義務が生じると解する。承継原因が生じるまでは被承継人が訴訟に最も密接な利害関係を有していたのであり、この者に対する手続保障によって承継人に対する手続保障もある程度代替されたと言いうるからである。

・引受承継は相手方の既得的地位を保護するための制度だから、被承継人からの申立ては認められない。

2018年01月27日

民事訴訟法 百選[第5版⁆判例暗証用

百選8
 権利能力なき社団が成立するためには、@団体としての組織を備え、A多数決の原理が行われ、B構成員の変更に関わらず団体そのものが存続し、Cその組織において代表の方法、総会の運営、財産の管理等団体としての主要な点が確定していることを要する。財産的独立性については、固定財産を有していなくても、総合的に観察して当事者能力が認められる場合がある。
 これらの要件を満たす団体には、民訴法上の訴訟能力が認められる。
※給付訴訟の被告となる場合に財産的独立性が必要とする見解があるが、当事者能力の判断が請求の内容ごとに異なることになり、妥当でない。

百選23
 いわゆる遺言無効確認の訴えは形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、@遺言が有効であるとすればそれから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、A原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは適法である。

百選24
 共有持分を有することの確認の訴えは許されるが、その原告勝訴の確定判決は原告が当該財産につき共有持分を有することを既判力をもって確定するにとどまり、その取得原因が被相続人からの相続であることまで確定するものではない。また、審判における遺産帰属性の判断には既判力が生じないから、後の裁判で遺産帰属性が否定される可能性があり、紛争の抜本的解決にならない。これに対し、遺産確認の訴えの既判力は当該財産が遺産分割の対象たる財産であることに生じ、紛争の抜本的解決に資する。
※遺産分割が行われることが前提。遺産分割が行われない場合には抜本的解決にならない。

百選38
 係争中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは許されない

 一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り許される。

百選54
(債権譲渡に対する本件建物の売買)間接事実についての自白は裁判所を拘束しないのはもちろん、自白した当事者を拘束するものでもない

百選55
(消費貸借額が13万円か11万円かは、)ともに本件消費貸借が成立するに至った事実上の経緯に基づいてXが法律上の意見を陳述したものと認めるのが相当であって、これを直ちに自白と目するのは当たらない。

百選69
自己利用文書(220条4号ニ) 専ら内部の者の利用に供する目的で作成され外部の者に開示することが予定されていない文書であって、A開示すると所持者の側に看過しがたい不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、B特段の事情がない限り、これに当たる。

百選76
 債務不存在確認請求訴訟において、原告である債務者が訴えにおいて自認する金額を超える債務の存在を確認する場合に、債務の残額を確定することなく単に請求を棄却することは許されない

百選80
おのずから全部 被告の合理的期待
 金銭債権の数量的一部請求訴訟で敗訴した原告が残部請求の訴えを提起することは、特段の事情がない限り、信義則に反して許されない

百選98
 不動産の共有者の1人は、その持分権に基づき、共有不動産に対して加えられた妨害を排除することができるところ、不実の持分移転登記がされている場合には、その登記によって共有不動産に対する妨害状態が生じているということができるから、共有不動産について全く実体上の権利を有しないのに持分移転登記を経由している者に対し、単独でその持分移転登記の抹消登記手続を請求することができる

百選99
 土地の所有者がその所有権に基づいて地上建物の所有者である共同相続人を相手方とし、建物収去土地明渡を請求する訴訟は、いわゆる固有必要的共同訴訟ではないと解すべきである。不可分債務 

百選104
 「利害関係」(42条)とは法律上の利害関係を言い、訴訟の結果について法律所の利害関係を有する者とは、当該訴訟の判決が参加人の私法上又は公法上の法的地位又は法的利益に影響を及ぼすおそれがある場合をいう。

 「効力」(46条)とは、判決主文に包含された訴訟物の存否についての判断だけではなく、その前提として判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断などにも及ぶが、この判決の理由中でされた事実の認定や先決的権利関係の存否についての判断とは、判決の主文を導き出すために必要な主要事実に係る認定及び法律判断などを言う。

百選113
外側説 まず債権総額を確定し、その額から自働債権の額を控除した残存額を算定した上、原告の一部請求が残存額の範囲内であるときはそのまま認容し、残存額を超えるときはその残存額の限度でこれを認容すべきである。

2017年04月16日

民事訴訟法 予備試験平成28年度

設問1(1)
 弁論主義とは裁判における事実の主張と証拠の提出を当事者の権能かつ責任とする建前であり、私的自治の手続的反映がその根拠である。弁論主義の内容の一つに、裁判所は当事者の主張しない事実を裁判の基礎とすることができないという原則がある。弁論主義の対象は「事実」であるが、その範囲は主要事実(要件事実に該当する事実)と解されている。      
 本件で証拠調べの結果明らかになった事実によると、甲土地の所有権はX→Y1→X→Y2と推移しており、最後のX→Y2の部分はY1らに主張責任のある抗弁事実に当たる(所有権喪失の抗弁)。具体的には、@XY2間で甲土地譲渡担保契約が締結された事実、およびAXが受戻権を喪失した事実が主要事実である。これはXからもY1らからも主張がない。したがって、裁判所は、当事者が主張しない事実を判決の基礎とした弁論主義違反がある。
設問1(2)
 本件を弁論主義違反ではないという立場からは、以下のように立論できる。Y1らの主張は甲土地の所有権がX→Y1→Y2と推移するものだが、Y1→Y2の売買の際に、XY2間において、甲土地の将来売買の予約(民法556条1項)がなされたとする。このように構成するか、裁判所が心証を抱いた事実のように譲渡担保契約の受戻権喪失と構成するかは、事実ではなく法律構成の違いに過ぎない。なぜなら、どちらもXがY2に対して1000万円支払うことを条件としており、その支払いがなされなかったために最終的にY2に甲土地所有権が帰着した事実は共通しているからである。
 しかし、このような構成には、Xに対して不意打ちとなるという問題点がある。具体的には、Xの主張による所有権の推移はX→Y1→Xであり、Y1らの主張はX→Y1→Y2であるから、本件訴訟における争点はY1から所有権を譲り受けたのはXなのかY2なのかという点だと考えられ、Xもその点に主張を尽くせば勝訴するのに必要十分と判断していると考えられる。にもかかわらず、X→Y1→XというXの主張通りの所有権の推移を認めながら、その後にX→Y2という推移を追加して認定することは、Xに対して、X→Y2という推移を否認する手続きを与えていないことになり、Xの弁論権を侵害していると言える。
 したがって、裁判所には、譲渡担保という法律構成を当事者に指摘する、法的観点指摘義務があるというべきである。
設問2
 既判力(114条)とは、確定判決の後訴での通用力ないし拘束力を言い、訴訟法上の効力である。紛争の蒸返し防止の必要性ゆえに認められ、当事者に手続保障がなされていることにより正当化される。既判力の主観的範囲は、当事者の口頭弁論終結後の承継人に及ぶ(115条1項3号)。そうしないと紛争が蒸し返されるからである。このような紛争蒸し返し防止の観点から、「承継人」とは、紛争の主体たる地位を承継した者を言うと解する。
 本件では、訴訟物はX→Y1、Y1→Y2の各甲土地所有権移転登記の抹消登記請求権であるが、甲土地について所有権を主張する者が紛争主体である。よって、Y2から甲土地所有権を承継したZは、本件紛争の主体たる地位を承継したと言え、「承継人」に当たる。したがって、Zに対して既判力が及ぶ。               以上
 

2016年02月05日

民事訴訟法 予備試験平成27年度

設問1
 訴訟物とは、狭義には原告の権利主張である。判例は、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えにおける訴訟物は不法行為に基づく損害賠償請求権であり、その内容である@財産的損害の賠償請求権とA精神的損害の賠償請求権に分けることはしない。つまり判例は、財産的損害も精神的損害も同じ不法行為に基づく損害賠償請求権の中の費用項目に過ぎないと考えている。
 この考え方の理論的な理由は、訴訟物は実体法上の債権発生原因毎に存在すると考えれば必要十分であることだと考えられる。@もAも、実体法上は不法行為という共通の債権発生原因である。
こう考えることによる利点は、第一に、@もAもともに処分権主義(246条。訴訟の開始、審判範囲の確定とその範囲の限定、判決によらずに訴訟を終了させる権限を当事者に認める建前)や弁論主義(事実と証拠の提出は当事者の権能かつ責任であるという建前)の適用対象外となり、実体法上の認容額と訴訟法上の認容額のずれが少なくなることである。たとえば、原告が設問の【事例】のように主張し、裁判所が財産的損害は600万円だが精神的損害は400万円と評価した場合に、訴訟物が別だと考えれば、財産的損害について一部認容、精神的損害について全部認容になるが、原告は合計900万円しか認容されず、実体法上の認容額とずれが生じてしまう。しかし判例のように考えると、原告は実体法上の請求額通り1000万円を認容されることができる。特に慰謝料は算定が難しいことからすれば、このように実体法上の認容額と訴訟上の認容額のずれが少なくなることは大きな利点と言える。
 第二に、裁判所にとって弾力的な審理が可能になることである。@Aが別の訴訟物だと、裁判所は訴訟物が要求する論理的順番どおりに審理をしなければならず審理が長期化しがちであるが、@Aを同一の訴訟物の中の費用項目に過ぎないと考えると、判断しやすいものから判断すればよく、効率が良い。
 第三に、当事者にとって十分な手続保障を確保しつつ訴訟追行が簡単になることである。@Aが別の訴訟物だと、@を証明するための事実と証拠の主張及び反論、Aを証明するための事実と証拠の主張及び反論を準備しなければならず、それらが重複することも多いことを考えると、かなり迂遠である。しかし、判例通りに考えると、当事者は重複する主張や反論を避けることができる。もっとも、手続が簡素化して手続保障が不十分になっては当事者の裁判を受ける権利の観点から問題があるが、重複する手続きを避けるだけであるから、手続保障としては十分であるといえる。
 第四に、第二第三の利点の結果、裁判所にとっても当事者にとっても、裁判の長期化が防がれるという利点がある。これは迅速な裁判を受ける権利を保障した憲法の趣旨からしても望ましいことと言える。
設問2
 弁護士Aの見立てた認容額は損害額から3割減額された700万円であるにもかかわらず、弁護士Aはその700万円を一部請求として請求している。
 まず、一部請求の許容性の議論である。一部請求は後の訴えでの残部請求の可能性を残している点で被告に度重なる応訴を強い、訴訟経済的にも問題があるとも思えるが、私的自治の訴訟法的反映としての前述の処分権主義の帰結と考えられるし、試験訴訟により訴額を抑えるのを認めることも裁判を受ける権利の実質的保障に資するから、許されると考える。弁護士Aの一部請求も、かかる観点から適法である。
 次に、弁護士Aのした選択の実質的利点として、弁護士Aの見立てた認容額と、実際に裁判所が認定する認容額がずれた場合に、裁判所の認容額を現実に受け取ることができることが挙げられる。設問1で検討したように、原告の見立てと裁判所の認容は異なることがむしろ普通である。原告の請求額よりも認容額が小さくなることが多いだろうが、中には原告の期待した認容額以上の額を裁判所が認定することもある。その場合に、最初から原告の見立てた額のみを請求額とすると、処分権主義から、裁判所はその額を超えて認定することができない。そうすると原告としては、より多く損害賠償を獲得できたにもかかわらず主張していなかったばかりに獲得し損ねてしまうという事態になる。弁護士Aがあえて一部請求を選択したのは、そのような事態を防ぐ利点がある。そして、一部請求にしたからと言って何か原告に不利になることは考えられないから、この選択は合理的である。
 さらに、特に本件のような交通事故の場合は予期せぬ後遺症が発生することがあるから、それに備えるという利点もある。本件を例にとると、1000万円の認容判決が確定した後に後遺症により更なる治療費が発生した場合、さらなる治療費の損害賠償請求は、前訴判決の既判力の消極的作用によって遮断されてしまう可能性がある。弁護士Aの選択には、そのような既判力の作用によるリスクを避ける利点もある。  以上

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民事訴訟法 予備試験平成25年度

設問1(1)ア
1 Bは独立当事者参加(47条)をすることができる。理由は以下のとおりである。
2 債権者代位訴訟が提起された場合、訴訟物は既に債権者によって訴訟上主張されていて債務者には訴訟物の管理処分権がないから(非訟事件手続法88条3項)、債務者には当事者適格(当事者として訴訟追行し、判決の名宛人となる資格)がなく、また、債務者が重ねて同じ訴訟物を主張する訴訟は二重起訴に当たり不適法(142条)なのが原則である。
 しかし、債権者の当事者適格は被保全債権の存在によって基礎づけられているところ(民法423条)、仮に被保全債権が存在しないのであれば、債務者の管理処分権は失われず、債権者は当事者適格がなくなるのであるから、被担保債権の存在を争うことと同時であれば、債務者にも当事者適格が認められ、債務者が訴訟物を争うことも二重起訴に当たらないと解すべきである。
 そして参加の方法としては、債権者に対して債務不存在確認請求をし、第三債務者に給付請求をするという三面訴訟になるから、独立当事者参加(権利主張参加)が適切である。要件は@他人間の訴訟係属、A定立する請求が請求の趣旨レベルで非両立、B当事者適格である。本件で@とBは問題なく認められる。Aについて本件を見ると、Aの訴訟の請求の趣旨は「Cは、Aに対して、500万円を支払え」であり、Bの訴訟の請求の趣旨は「Bは、Aに対して、500万円を支払え」であるから、非両立である。
設問1(1)イ
1 Aの訴えについて
 甲債権はAの当事者適格を基礎づけているから、それが存在しない以上、Aには当事者適格がないことになる。したがって、裁判所は訴え却下判決をすべきである。
2 Bの訴えについて
 甲債権が存在しない場合、まず、BのAに対する債務不存在確認請求に対して、裁判所は請求認容判決をすべきである。
 また、甲債権の不存在はBの当事者適格の根拠となるから、BのCに対する訴えは適法である。そして、乙債権が存在することは、BのCに対する請求の本案勝訴要件となる。したがって、裁判所は請求認容判決をすべきである。
設問1(2)
1 訴訟1の口頭弁論終結時に甲債権が存在したと判断したとき
 前訴の既判力(確定判決の後訴での通用力ないし拘束力)の消極的作用によって、裁判所は前訴と矛盾する判断をすることが許されない結果、訴訟2の受訴裁判所は、乙債権は存在しないものとして請求棄却判決をすべきである。
2 訴訟1の口頭弁論終結時に甲債権が存在していなかったと判断したとき
 既判力は訴訟物について生じるから、訴訟1では甲債権の存在には既判力が生じていない。したがって訴訟2の裁判所は甲債権が存在しないと認定することができる。そうすると、前訴判決は当事者適格のないAによって追行されて出された判決であるから、無効な判決であり、乙債権の不存在にも既判力は生じないと考えることができる。したがって、訴訟2の受訴裁判所は請求認容判決をすべきである。
設問2
 Dは共同訴訟参加(52条)によって、Cに対して乙債権の弁済を求めることができる。共同訴訟参加とは、訴訟の目的が当事者の一方及び第三者について合一にのみ確定すべき場合に、その第三者が原告または被告の共同訴訟人として参加することをいう。要件は、@他人間の訴訟係属、A合一確定の必要性、B当事者適格である。
 本件は、@AC間に訴訟係属があり、A責任財産の公平分担という見地からAC間の訴訟とCD間の訴訟は類似必要的共同訴訟となると解され、したがって合一確定の必要性が認められる。
 問題はB当事者適格の有無である。今まで述べてきたように、債権者が代位債権を行使する結果債務者は自らの債権の管理処分権を失い、その結果当該権利を訴訟物とする訴訟における当事者適格も失うという考え方(古い判例がある)からは、当事者適格はDに独占的に帰属していると考えるのが自然のように思える。しかし、債務者ではなく第三者が訴訟物について債権者代位訴訟をしてくる場合には、責任財産の公平分担という要請があるから、債務者が参加する場合とは異なり、当該第三者にも当事者適格を認めるべきと考える。
 したがって、Dは共同訴訟参加ができる。 以上

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民事訴訟法 予備試験平成24年度

設問1@
1 第2訴訟において、YはXから本件機械を買ったのはYではなくZであると主張することが許されるか。第1訴訟の既判力に抵触しないかが問題となる。
 既判力とは確定判決に生じる後訴での通用力ないし拘束力であり、訴訟法上の効力である(訴訟法説)。既判力は紛争の蒸し返し防止のために必要であり、当事者が既判力の生じる訴訟物について争い手続保障が尽くされたことが正当化根拠となる。既判力には、それに反する当事者の主張を許さず、裁判所もそのような主張を排斥しなければならないという消極的作用と、裁判所は既判力の生じた全その判断内容を前提として審理判断しなければならないという積極的作用がある。本件@の主張は、より具体的には既判力の消極的作用に反しないかが問題となる。これを解決するためにはまず既判力の生じる客観的範囲を明らかにする必要がある。
2 既判力の客観的範囲
 既判力の客観的範囲は「主文に包含するもの」(114条1項)つまり訴訟物であると考えられている(給付判決の主文には訴訟物は現れないから厳密には主文=訴訟物ではない)。既判力が及ぶ場面をこのように狭く解する理由は、裁判所が判断しやすいものから判断できるというように審理に弾力性がもたらされること、当事者は訴訟物の存否に攻撃防御を集中させるため訴訟物には手続保障が尽くされていると言えること、紛争解決としては訴訟物に既判力を及ぼせば十分であることである。
 訴訟物とは、最狭義には原告が主張する権利自体を意味し、本件第1訴訟でいえば「XのYに対する150万円の給付請求権」となる。あるいは、訴訟物に請求原因を含めて考えると「XのYに対する売買契約に基づく150万円の代金支払請求権」となる。
 一方、第2訴訟の訴訟物は「XのYに対する売買契約に基づく250万円の給付請求権」あるいは「XのYに対する売買契約に基づく250万円の代金支払請求権」である。では、第2訴訟に第1訴訟の既判力は及ぶだろうか。既判力の作用場面が問題となる。
3 既判力の作用場面
 既判力は前訴の訴訟物と後訴の訴訟物が@同一の場合、A矛盾関係にある場合、B前訴の訴訟物が後その訴訟物の先決関係にある場合に作用すると言われている。
(1)訴訟物に請求原因を含めて考えた場合
 本件では、A矛盾関係にないことは明らかである。そして、訴訟物を「XのYに対する売買契約に基づく150万円の代金支払請求権」というように請求原因を含めてとらえた場合には請求原因の部分が@同一ないしB先決関係にある。したがって、第1訴訟の既判力は第2訴訟に及ぶ。
 その結果、売買契約の当事者がYでなくZであるというYの主張は、第1訴訟の主文そのものを否定する主張であるから、既判力の消極的作用により遮断される。
(2)訴訟物に請求原因を含めないで考えた場合
 この場合には、@同一でもB先決関係でもない。請求原因は判決理由中の判断ということになる。判決理由中の判断には既判力は及ばないと考えられている。
 しかし、既判力の作用場面でないからと言ってあらゆる主張を許すと、紛争の蒸し返しが起こり得る。したがって、既判力の作用場面以外にも後訴で前訴判断に反する主張が認められない場合があると解すべきである。そのような理論構成が問題となる。
4 判決理由中の判断の蒸し返しを防ぐ法律構成
 争点効(前訴において当事者が実際に争い、裁判所が実質的に判断した点に生じる後訴への通用力)を認める考え方がある。この理論を使うと本件のYの主張は遮断できる。しかし、争点効は判例の認めるところとなっていない。
 矛盾挙動禁止原則および権利失効原則という訴訟上の信義則を用いる見解もあるが、これも厳密には判例の採用するところではない。
 判例は信義則によって後訴を却下するという方法を使い、実質的に後訴での紛争蒸し返し的な主張を遮断している。信義則に反するか否かの考慮要素は前訴と後外の関連性、前訴で主張することの期待可能性等である。本件でも、第1訴訟と第2訴訟は請求原因が同一であるため関連性が大きく、Yは実際に第1訴訟で当事者を争って敗訴している。したがって、信義則により第2訴訟は却下される。
設問1A
1 訴訟物に請求原因を含めて考えた場合
 この場合には既判力の消極的作用により、既判力の生じた第1訴訟の判断に反する主張をすることが許されない。では、Aの主張が既判力の生じた第1訴訟の判断に反するだろうか。
 第1訴訟の訴訟物と第2訴訟の訴訟物が別である以上、第2訴訟でのみ提出された相殺の抗弁は第1訴訟の判断とは無関係であり、認められるとも思える。
 しかし、判例は相殺の抗弁についていわゆる外側説を採用している。つまり、判例は一部請求において相殺の抗弁が出された場合、訴訟物に関わらず請求権全額を判断し、全額から相殺した残額と一部請求額を照らし合わせた判断をしている。そうすると、第2訴訟において初めて相殺の抗弁が出された場合には、請求額全体からの相殺を考えるため、結局第1訴訟で認容された請求権を再び審理することになってしまう。これは既判力の生じた第1訴訟の判断に反するという見方があり得る。
 一方で、既判力の基準時は口頭弁論終結時(民事執行法35条2項参照)と解されているが、相殺の抗弁は被告にとっても債権の出捐を伴い、請求権に内在する瑕疵ではないから、前訴での提出が期待できず、基準時後に相殺の抗弁を提出することは前訴既判力によって遮断されないと解されている。こうした相殺の抗弁の特殊性を考えると、既判力の生じた第1訴訟の判断に反する者であっても例外的に遮断されないという見方もできそうである。
 しかし、本件の相殺の抗弁は、まさに売買目的物である本件機械の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権を自働債権とするものであり、請求権に内在する瑕疵であるから、本件の特殊性として、第1訴訟での提出が期待できないとは言えない。瑕疵を発見したのが第1訴訟終了後であれば提出が期待できないともいえようが、本件は第1訴訟継続中に瑕疵を発見しているから、やはり提出が期待できないとは言えない。
 したがって、Aの主張は第1訴訟の既判力の消極的作用によって遮断される。
2 訴訟物に請求原因を含めないで考えた場合
 この場合には第1訴訟の既判力は第2訴訟において作用しないが、Aの主張が争点効ないし信義則で遮断されるかの問題となる。
 争点効理論によれば、前訴で瑕疵担保責任は争っていないため、主張は遮断されない。
 信義則によれば、1に述べたことと同様の理由により、第2訴訟で売買目的物自体の瑕疵を原因とする瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権による相殺の主張は遮断される。
設問2
 相殺の抗弁には既判力が生じる(114条2項)ため、弁済の抗弁を先に判断し、残額について相殺の抗弁をすべきと一般的にはいわれる。
 しかし、本件Aの主張は請求原因たる売買契約に内在する瑕疵を原因とする損害賠償請求権による相殺なので、Yにとっての本件自働債権は本件訴訟の訴訟物と離れた別個の権利として保護する必要がない。むしろ、自働債権が220万円以上認められた場合には、弁済した180万円は不当利得として返還請求できることになる。
 そうすると、本件では例外的に相殺から先に判断し、相殺の残額が弁済されたか否かを判断すべきである。 以上

民事訴訟法 予備試験平成23年度

1 Yが平成22年4月3日に死亡していたと認められる場合、第一審の訴訟係属があったとするとその時期はZが訴状の送達を受けた同年4月7日だから、訴訟係属前にYが死亡していたことになる。そして被告がYであるとするならば、二当事者対立構造を欠き、訴訟は係属していなかったことになる。そこで、控訴審はまず本件の被告は誰かを問題にすべきである。
 被告が誰かを確定する基準は、原告の意思、現実に被告として行動した者、訴状の記載などが考えられるが、訴訟開始段階と訴訟がある程度進行した段階では異なる基準を用いるのが妥当である。すなわち、訴訟開始段階での被告の確定は、訴訟要件判断の基準となるから明確な訴状の記載によるべきであるが、訴訟がある程度進行した段階では、訴訟手続の安定や訴訟経済の要請が働くから誰を当事者とするのが紛争解決のために適切か、そしてその者を被告としても手続保障が十分かという視点から実質的に被告を確定すべきである。
 本件を見るに、訴状の被告欄の記載はYであるが、原告Xの意思としてはYが死亡しているならばその唯一の相続人としてその財産を包括承継したZを被告とすると推測され、また、実際に第一審手続で被告として行動したのはZ自身である。そうすると、本件第一審手続の被告はZとするのが紛争解決のために適切であり、Zの手続保障も十分であると言える。
 したがって、本件第一審の被告はZである。
2 そうすると、控訴審は、XとZを当事者として、控訴棄却判決をすべきである(302条1項)。
3 なお、仮に当事者確定基準で形式的表示説を採用したとしても、本件で被告をYとすることはできないと思われる。なぜならYは訴訟係属時より前に死亡しているため、Yを被告とすると訴訟係属自体がされないことになるからである。  以上

民事訴訟法 平成22年度第2問

問題文
 Xは、Yに対し、ある名画を代金100万円で売却して引き渡したが、Yは、約束の期限が過ぎても代金を支払わない。この事例について、以下の問いに答えよ。なお、各問いは、独立した問いである。
1 Xは、Yを被告として、売買代金100万円の支払いを求める訴えを提起し、第一審で請求の全部を認容する判決を得たが、代金支払期限後の遅延損害金の請求を追加するため、この判決に対して控訴を提起した。この控訴は適法か。
2 Yが、Xから買い受けた絵画は贋作であり、売買契約は錯誤によって無効であると主張して、代金の支払を拒否したため、Xは、Yを被告として、売買代金100万円の支払請求を主位的請求、絵画の返還請求を予備的請求とする訴えを提起した。
(1)第一審でXの主位的請求の全部を認容する判決がされ、この判決に対してYが控訴を提起したところ、控訴裁判所は、XY間の売買契約は無効で、XのYに対する売買代金債権は認められないとの結論に達した。この場合、控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。
(2)第一審で主位的請求を全部棄却し、予備的請求を全部認容する判決がされ、この判決に対してYのみが控訴を提起したところ、控訴裁判所は、XY間の売買契約は有効で、XのYに対する100万円の売買代金債権が認められるとの結論に達した。この場合、控訴裁判所は、どのような判決をすべきか。

回答
設問1
1 控訴は相手方や裁判所に負担を課すから、控訴を適法に提起するためには控訴の利益が必要である。どのような場合に控訴の利益が認められるかが問題となる。
 通説は、申立てにおいて求めた判決を得られたかどうかで判断する(形式的不服説)。しかし、黙示の一部請求の後に残部請求ができなくなってしまい、その場合には例外的に控訴の利益を認めるという理論構成にならざるを得ず妥当でない。そこで、控訴人が判決効によって別訴での救済を受けられなくなる場合に控訴の利益が認められると解する(新実体的不服説)。この説でも訴え却下判決に対して請求棄却を求める控訴が説明できないが、形式的不服説よりは妥当な結論を導きやすい。
 本件は、形式的不服説によれば全部認容判決であるから原則として控訴は提起できない。そこで、形式的不服説を採るなら、Xに遅延損害金の支払を受けさせる必要性と、それをYに支払わせたとしてもYの不意打ちにならず、かつYは第一審で実質的に遅延損害金に対しても攻撃防御をしていることを理由に例外的に控訴の利益が認められるという説明になる。新実体不服説を採るなら、Xが全部認容判決後に別訴で遅延損害金を請求するのは争点効または信義則(2条)に反し許されないから(遅延損害金の法的性質は履行遅滞に基づく損害賠償請求権だから、売買代金支払請求権とは訴訟物が別であり、既判力には抵触しない。)、控訴の利益が認められるということになる。
2 また、Xに設問の控訴を提起させることがYの遅延損害金についての審級の利益(300条1項、307条参照)を害さないかも問題となるが、Yは第一審で実質的に遅延損害金請求に対して攻撃防御していると認められるという前述の理由で、Yの審級の利益を害することはないと言える。
3 したがって、Xの控訴は適法である。
設問2(1)
1 主位的請求を全部認容した判決に対して被告が控訴し、控訴裁判所が主位的請求を棄却して予備的請求を認容することは、被告の不利益変更禁止原則(304条)に反しないか。
 不利益変更禁止原則とは、控訴裁判所が、相手方の控訴又は附帯控訴がないかぎり、控訴オ人の不利に第一審判決の取消又は変更をすることができないという原則である。その根拠は処分権主義(246条)に求めるのが通説である。処分権主義とは、当事者に訴訟の開始、審判対象の確定とその範囲の限定、判決によらずに訴訟を終了させる権限を認める建前であり、実体法上の私的自治を訴訟法的に反映したものである。しかし、控訴は既に提起されている訴訟についてされるものだから、処分権主義との関連は薄い。そこで私見では不利益変更禁止原則は控訴を委縮させないための政策的な規定と解する。
 本件では不利益変更禁止原則の根拠を処分権主義に求めると、Yによって控訴審の審判対象が主位的請求に限られているにも関わらず、予備的請求を認容してしまうのは不利益変更禁止原則に反し許されないのが原則と言える。しかし、実体法上、主位的請求たる売買代金請求訴訟が棄却されれば、予備的請求たる絵画の返還請求が認められる関係にある。そして、主位的請求を認容されたXに附帯控訴を期待することはできないし、控訴を提起したYは控訴が認容された場合に予備的請求が認容されることを予期していると言えるし、予備的請求についてもYは実質的に第一審で審理を尽くしていたと言える。そのため、例外的に不利益変更禁止原則に反しないと説明することになる。
 不利益変更禁止原則は政策だとする自説からは、そもそも控訴審の審判対象を主位的請求に限定する必要はなく、当然に予備的請求を認容しうるということになる。
2 控訴裁判所が予備的請求を認容することが、予備的請求についてのYの審級の利益を害さないか問題となるも、前述のように本件の主位的請求と予備的請求はいずれか一方が成立する関係にあるため、第一審で実質的に予備的請求についての審理もされていたとみることができ、Yの審級の利益を害してはいない。
3 したがって、控訴裁判所は、主位的請求を認容した原判決を破棄し、予備的請求認容の自判をすべきである。
設問2(2)
1 主位的請求を棄却し予備的請求を認容した判決に対して被告が控訴し、控訴裁判所が予備的請求を棄却する場合に主位的請求を認容することは、不利益変更禁止原則に反し違法ではないか。
 一般的に主位的請求のほうが予備的請求よりも原告の本来の要求に近く、そのため被告にとって負担が大きいと考えるならば、主位的請求の認容は被告にとっては不利益変更となろう。判例もそのように解している。
 しかし、本件は絵画の代金を支払っても絵画を引渡しても被告の負担はそれほど異ならないと考えられるし、(1)では主位的請求を棄却して予備的請求を認めることが不利益変更にならないという結論に至ったので、本件で判例通りに判断するのは(1)と矛盾するように思える。
 実質的に考えても、本件で予備的請求を棄却された場合に主位的請求が認容されることはYは予期しているべきだし、第一審で棄却された主位的請求についてYは当然に防御の手続を尽くしているはずである。ただ、(1)と少し異なり、主位的請求を棄却されたXに控訴ないし附帯控訴の提起を期待するのはそれほど不合理ではないが、そうかといって本件のように主位的請求と予備的請求の利益状況が異ならない場合にもそのように言い切れるわけではなく、本件Xが絵画の返還に満足して控訴ないし附帯控訴しなかったことを特段責めるわけにはいかない。
2 主位的請求は第一審で棄却されているので、審級の利益は本件では問題にならない。
3 したがって、控訴裁判所は、予備的請求を棄却し、主位的請求を認容すべきである。
以上

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民事訴訟法 平成22年度第1問

問題文
 Aは、Bに対し、平成21年11月2日、返済期日を平成22年3月31日とする約定で200万円を貸し渡した。このような消費貸借契約(以下「本件契約」という。)が成立したことについてはAとBとの間で争いがなかったが、Bがその返済期日にAに本件契約上の債務を弁済したかどうかが争いとなった。
 そこで、Bは、同年4月30日、Aを被告として、本件契約に基づくBのAに対する債務が存在しないことを確認するとの判決を求める訴えを提起した。
 この事例について、以下の問いに答えよ。なお、各問いは、独立した問いである。
1 Bの訴えに係る訴状の送達を受けたAは、同年5月20日、Bの訴えとは別の裁判所に、別訴として、Bを被告として、本件契約に基づいて200万円の支払いを請求する訴えを提起した。この場合のBの訴えとAの訴えのそれぞれの適法性について論ぜよ。
2 Bの訴えに係る訴状の送達を受けたAは、同年5月20日、Bの訴えに対する反訴として、Bを反訴被告として、本件契約に基づいて200万円の支払いを請求する訴えを提起した。
(1)この場合のBの訴えとAの反訴のそれぞれの適法性について論ぜよ。
(2)同年6月1日の第1回口頭弁論期日において、Bは、Aの請求に対して、BはAに本件契約上の債務を全額弁済したのでAの請求を棄却するとの判決を求めると述べるとともに、Bの訴えを取り下げる旨述べ、これに対し、Aは、Bの訴えの取り下げに同意すると述べた。その後の同年7月15日の第2回口頭弁論期日において、Aは、反訴を取り下げる旨述べたが、Bは、Aの反訴の取り下げに異議を述べた。この場合のAの反訴の取り下げの効力について論ぜよ。

回答
設問1
1 Bの提起した債務不存在確認訴訟は、Bが訴え提起をした平成22年4月30日の時点では適法である。
2 Aの提起した訴訟は、二重起訴であって不適法ではないか(142条)。
 142条の趣旨は@被告の応訴の煩、A訴訟不経済、B矛盾判決の危険の防止と言われる。しかし、Bについては前訴判決の存在を看過した場合にしか問題にならず、その場合でも後の判決を再審で取消すことができるから(338条1項10号)、理由にならない。二重起訴に当たるかどうかは訴訟物の同一性で判断する。Bの提起した訴訟とAの提起した訴訟の訴訟物はいずれもAのBに対する本件契約に基づく債権であるから、同一である。したがって、Aの訴訟は142条違反であるから不適法であり、却下されるのが形式的帰結である。
3 もっとも、確認訴訟よりも給付訴訟のほうが給付義務の存否まで確定できる点で紛争解決能力が高い。そのことを重視するならAの訴訟を適法とし、Bの訴訟を訴えの利益を欠くとして却下することも考えられる。訴えの利益とは、紛争解決のために訴訟によることの必要性・実効性を吟味する訴訟要件であり、訴訟が相手方や裁判所に手間をかけるものであることから必要とされる。現に、債務不存在確認訴訟に対して反訴で給付訴訟が提起された事案で、債務不存在確認訴訟を訴えの利益がないとして却下した判例がある。
 本件はその判例と㋐反訴でなく別訴である点、㋑別の裁判所に提起している点が異なる。この二点をどうかんがえるか。まず㋐については、反訴であれば同一の裁判所で処理され、弁論が併合される可能性が高い。そのため二重起訴禁止の理由である被告の応訴の煩や訴訟不経済が生じず、紛争解決の実効性だけを考えればよいため、給付訴訟を残すという判断をしやすい。しかし、反訴であっても弁論の分離が禁止されているわけではないから(146条参照)、反訴と別訴でことさら違う判断をする理由はない。要するに、別訴であっても同一裁判所で弁論の併合を裁判所に義務付ける限り、判例の射程は及ぶと解する。
 しかし本件では、甲は㋑別の裁判訴に提起しているのである。このままでは弁論が併合される可能性はなく、判例の射程外である。
 そこで、以下のようにすればよい。まず、裁判所はそれぞれの訴訟が提起された裁判所のどちらで裁判を行うのがA及びBにとって衡平かを判断し、どちらかの訴訟をもう一方の訴訟が提起されている裁判所に移送すべきである(17条)。そして、移送された裁判所は二つの訴訟の弁論を併合する(152条1項)。そのうえで、Aの訴訟を残し、Bの訴訟を訴えの利益がないとして却下する。
 したがって、以上の手続を経る限り、Aの訴えは適法であり、Bの訴えは不適法である。
設問2(1)
 本問も形式的にはBの訴えは適法で、Aの反訴が二重起訴に当たり不適法である。しかし、弁論の分離を禁止する限り、Aの反訴が適法で、Bの訴えが訴えの利益を欠き不適法と解することができる。もっとも、前述の判例によれば、本件では弁論の分離を禁止するという条件なしに後者の結論となる。
設問2(2)
 訴えの取下げ(261条)とは原告が訴えを撤回する訴訟行為である。私的自治の訴訟法的反映を根拠とする処分権主義(246条)の一環として認められる。反訴(146条)とは、訴訟の係属中に、被告が原告に対して、同じ訴訟手続での審判を求めて提起する訴えであるから、反訴の取下げとは、被告が反訴として提起した訴えを撤回する訴訟行為である。
 訴え又は反訴の取下げは、取り下げる者の一方的意思表示で行われれば、訴訟による紛争解決を求めていた相手方の利益を害する。そこで、訴えの取下げは、相手方が本案について準備書面を提出するなどして争う意思を表明した場合には、相手方の同意を得なければ効力を生じないのが原則とされている(261条2項本文)。ただし、反訴の取下げには相手方の同意は不要である(同但書)。この261条2項但書を形式的に当てはめると、本件でAの反訴の取下げは有効である。
 しかし、この結論は妥当でない。Bが本訴を取り下げたのは本訴の債務不存在確認訴訟よりも反訴の給付訴訟のほうが紛争解決力が高いためであって、本訴について争う意思をなくしたからではないからである。
 そもそも261条2項但書が例外的に反訴の取下げに原告の同意を不要とした趣旨は、本訴を取り下げた原告には通常は本訴に係る紛争を民事訴訟という手段で解決する意思がなく、それにもかかわらず被告の反訴の取下げに同意しないのは信義に反するからだと考えられる。そうすると、本訴を取り下げた原告の意思が、本訴に係る紛争を民事訴訟で争う意思を残している場合には、261条2項但書は適用されないと解すべきである。
 本件では、Bは本訴に係る紛争を民事訴訟で争う意思を残しているため、Bに261条2項但書は適用されない。
 したがって、同条本文の原則通り、Aの反訴の取下げにはBの同意が必要であり、その同意が得られていない本件では、Aの反訴の取下げは無効である。  以上

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民事訴訟法 平成20年度第2問

問題文
 債権者Xの保証人Yに対する保証債務履行請求訴訟に、主債務者Zは、Yを補助するため参加した。
1 第一審でY敗訴の判決が言い渡され、その判決所の正本が平成20年7月3日にYに、同月5日にZに、それぞれ送達された。Yはこの判決に対して何もしなかったが、Zは同月18日に控訴状を第一審裁判所に提出した。この控訴は適法か。
2 Y敗訴の判決が確定した後、Yは、Zに対し、求償金請求の訴えを提起した。
 仮に、Yが、主債務の存在を疑わしめる重要な証拠であってZの知らないものを所持していたにもかかわらず、XY間の訴訟において、その証拠の提出を怠っていた事実が判明した場合、Zは、YZ間の訴訟において、主債務の存在を争うことができるか。

回答
 補助参加とは、訴訟の結果について法律上の利害関係を有する第三者が、その当事者を補助して訴訟追行するために訴訟に参加することをいう(42条)。補助参加人は上訴等の法律行為ができるが(45条1項本文)、補助参加の時における訴訟の程度に従ってすることができないものはすることができない(同但書)。この規定の趣旨は、補助参加人は他人の訴訟の結果によって自己に不利益が及ぶのを避けるために訴訟行為ができ、その限りで独立性を有するが、補助参加人は他人間の訴訟における当事者ではないから、当事者ができない訴訟行為をすることができないということ、すなわちその限りで従属性を有することを定めたものである。
 では、補助参加人は当事者の控訴期間(285条)が経過した後も自己の控訴期間内であれば控訴できるだろうか。敗訴当事者の控訴期間経過後の補助参加人の提起した控訴を、45条1項本文の「上訴の提起」とみるか、同但書の「補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないもの」とみるかが問題となる。
 そもそも控訴とは、第一審の裁判を不服として、控訴裁判所に、裁判の取消または変更を求める不服申し立てである(281条以下)。控訴審で審判対象となるのは請求の当否ではなく不服申しての当否であり、判断資料は第一審のものに新たに加えることができる(続審制、296条2項、298条1項、301条1項)。控訴が提起されると、第一審の裁判は確定を遮断され、控訴審に移審する。控訴を棄却すると第一審判決が確定し(301条1項)、控訴を認める場合は第一審判決を取り消すか(305条)、第一審に差し戻す(307条)。
 以上のように、控訴の提起は訴えの提起とは異なるが、訴えの提起と同程度に訴訟物たる権利関係の存否を決める影響力を持つ行為である。そうすると、訴え提起に妥当する訴訟法上の原則である処分権主義(246条)の趣旨(私的自治の訴訟法的反映)に照らし、控訴の提起が当事者以外の者によってなされる場面は限定的に解すべきである。
 また、控訴期間が設けられている趣旨は、前述の処分権主義の趣旨からその期間内での不服申し立てを許容する一方、裁判通りの権利関係を望む当事者や、争われている権利義務関係に利害関係を持つ当事者の法律関係を早期に安定させることでもある。そうすると、当事者以外の者に独自の控訴期間を認めるのには慎重になるべきである。
 以上を考慮すると、当事者の控訴期間経過後に補助参加人がする控訴提起は、「補助参加の時における訴訟の程度に従いすることができないもの」に当たると解するのが相当である。
 したがって、Zの控訴は45条1項但書に反し、違法である。
設問2
 XY間の訴訟を前訴とすると、前訴の訴訟物はXのYに対する保証債務の履行請求権であり、この点に既判力(確定判決の後訴での通用力ないし拘束力)が生じる(114条1項)。つまり、XのZに対する主債務の履行請求権の存否の判断には前訴の既判力は生じていない。既判力の客観的範囲がこのように「主文に包含するもの」すなわち訴訟物に限られているのは、その方が審理を弾力的にできるし、紛争解決としてはそれで十分だし、当事者の手続保障が訴訟物の範囲では尽くされていると言えるからである。
 しかし、前訴の既判力とは別に、前訴の「効力」(46条本文)が補助参加人Zに対して生じる。そもそもこの「効力」(参加的効力)とは、補助参加人に対して生じるものであるから、敗訴責任の公平分担を根拠として、訴訟物以外にも及ぶと解される。詳述すると、参加的効力は、既判力と同様に、紛争解決の必要性ゆえに認められ、当事者の手続保障が尽くされていることで正当化される訴訟法上の効力であるが、既判力とは異なり、その究極的根拠が実体法上の私的自治ではなく、それに加えて敗訴責任の公平分担であるため、敗訴責任を公平に分担する限りで、その効力の及ぶ客観的範囲は訴訟物をはみ出るのである。なお、このように訴訟物をはみ出る効力がいかなる範囲で生じているかは客観的に明らかでないため、裁判所は当事者の援用を待ってその効力の存否を判断すればよいと解する。
 これを保証債務履行請求訴訟で主債務者が補助参加した事例についてみると、主債務の存在は、訴訟物ではないものの、訴訟物たる保証債務の存在を認定するためには主債務の存在の立証が成功しなければならないから、前訴で実質的な審理が行われた部分であり、その部分については原則として主債務者の手続保障が尽くされていると言える。そして、この部分について参加的効力を生じさせなければ、保証人と債務者との間で求償権の存否をめぐる争いが生じ、紛争解決の必要性ひいては敗訴責任の公平分担の趣旨に反する。したがって、保証債務の履行請求権の訴訟に主債務者が補助参加した場合に保証人が敗訴した場合であって、後の求償請求訴訟で保証人が参加的効力を援用したときは、原則として主債務の存在に参加的効力が及ぶと解する。
 もっとも、保証人が主債務の存在を疑わしめる重要な証拠であって主債務者の知らないものを所持していたにもかかわらず、前訴においてその提出を怠っていた場合には、保証人が代替する、主債務者に参加的効力を及ぼすことを正当化する手続保障が尽くされていなかったと言える。したがって、その場合には、例外的に、主債務者に参加的効力が及ばないと解すべきである。
 本件でも、Yは主債務の存在を疑わしめる重要な証拠であってZの知らないものを所持していたにもかかわらず、XY間の訴訟において、その証拠の提出を怠っていたという事情があるから、例外の場合に当たり、Zに参加的効力は及ばない。
 したがって、Zは、YZ間の訴訟において、主債務の存在を争うことができる。  以上

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