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2016年02月05日

民事訴訟法 予備試験平成27年度

設問1
 訴訟物とは、狭義には原告の権利主張である。判例は、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えにおける訴訟物は不法行為に基づく損害賠償請求権であり、その内容である@財産的損害の賠償請求権とA精神的損害の賠償請求権に分けることはしない。つまり判例は、財産的損害も精神的損害も同じ不法行為に基づく損害賠償請求権の中の費用項目に過ぎないと考えている。
 この考え方の理論的な理由は、訴訟物は実体法上の債権発生原因毎に存在すると考えれば必要十分であることだと考えられる。@もAも、実体法上は不法行為という共通の債権発生原因である。
こう考えることによる利点は、第一に、@もAもともに処分権主義(246条。訴訟の開始、審判範囲の確定とその範囲の限定、判決によらずに訴訟を終了させる権限を当事者に認める建前)や弁論主義(事実と証拠の提出は当事者の権能かつ責任であるという建前)の適用対象外となり、実体法上の認容額と訴訟法上の認容額のずれが少なくなることである。たとえば、原告が設問の【事例】のように主張し、裁判所が財産的損害は600万円だが精神的損害は400万円と評価した場合に、訴訟物が別だと考えれば、財産的損害について一部認容、精神的損害について全部認容になるが、原告は合計900万円しか認容されず、実体法上の認容額とずれが生じてしまう。しかし判例のように考えると、原告は実体法上の請求額通り1000万円を認容されることができる。特に慰謝料は算定が難しいことからすれば、このように実体法上の認容額と訴訟上の認容額のずれが少なくなることは大きな利点と言える。
 第二に、裁判所にとって弾力的な審理が可能になることである。@Aが別の訴訟物だと、裁判所は訴訟物が要求する論理的順番どおりに審理をしなければならず審理が長期化しがちであるが、@Aを同一の訴訟物の中の費用項目に過ぎないと考えると、判断しやすいものから判断すればよく、効率が良い。
 第三に、当事者にとって十分な手続保障を確保しつつ訴訟追行が簡単になることである。@Aが別の訴訟物だと、@を証明するための事実と証拠の主張及び反論、Aを証明するための事実と証拠の主張及び反論を準備しなければならず、それらが重複することも多いことを考えると、かなり迂遠である。しかし、判例通りに考えると、当事者は重複する主張や反論を避けることができる。もっとも、手続が簡素化して手続保障が不十分になっては当事者の裁判を受ける権利の観点から問題があるが、重複する手続きを避けるだけであるから、手続保障としては十分であるといえる。
 第四に、第二第三の利点の結果、裁判所にとっても当事者にとっても、裁判の長期化が防がれるという利点がある。これは迅速な裁判を受ける権利を保障した憲法の趣旨からしても望ましいことと言える。
設問2
 弁護士Aの見立てた認容額は損害額から3割減額された700万円であるにもかかわらず、弁護士Aはその700万円を一部請求として請求している。
 まず、一部請求の許容性の議論である。一部請求は後の訴えでの残部請求の可能性を残している点で被告に度重なる応訴を強い、訴訟経済的にも問題があるとも思えるが、私的自治の訴訟法的反映としての前述の処分権主義の帰結と考えられるし、試験訴訟により訴額を抑えるのを認めることも裁判を受ける権利の実質的保障に資するから、許されると考える。弁護士Aの一部請求も、かかる観点から適法である。
 次に、弁護士Aのした選択の実質的利点として、弁護士Aの見立てた認容額と、実際に裁判所が認定する認容額がずれた場合に、裁判所の認容額を現実に受け取ることができることが挙げられる。設問1で検討したように、原告の見立てと裁判所の認容は異なることがむしろ普通である。原告の請求額よりも認容額が小さくなることが多いだろうが、中には原告の期待した認容額以上の額を裁判所が認定することもある。その場合に、最初から原告の見立てた額のみを請求額とすると、処分権主義から、裁判所はその額を超えて認定することができない。そうすると原告としては、より多く損害賠償を獲得できたにもかかわらず主張していなかったばかりに獲得し損ねてしまうという事態になる。弁護士Aがあえて一部請求を選択したのは、そのような事態を防ぐ利点がある。そして、一部請求にしたからと言って何か原告に不利になることは考えられないから、この選択は合理的である。
 さらに、特に本件のような交通事故の場合は予期せぬ後遺症が発生することがあるから、それに備えるという利点もある。本件を例にとると、1000万円の認容判決が確定した後に後遺症により更なる治療費が発生した場合、さらなる治療費の損害賠償請求は、前訴判決の既判力の消極的作用によって遮断されてしまう可能性がある。弁護士Aの選択には、そのような既判力の作用によるリスクを避ける利点もある。  以上

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