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2016年02月05日

民事訴訟法 予備試験平成24年度

設問1@
1 第2訴訟において、YはXから本件機械を買ったのはYではなくZであると主張することが許されるか。第1訴訟の既判力に抵触しないかが問題となる。
 既判力とは確定判決に生じる後訴での通用力ないし拘束力であり、訴訟法上の効力である(訴訟法説)。既判力は紛争の蒸し返し防止のために必要であり、当事者が既判力の生じる訴訟物について争い手続保障が尽くされたことが正当化根拠となる。既判力には、それに反する当事者の主張を許さず、裁判所もそのような主張を排斥しなければならないという消極的作用と、裁判所は既判力の生じた全その判断内容を前提として審理判断しなければならないという積極的作用がある。本件@の主張は、より具体的には既判力の消極的作用に反しないかが問題となる。これを解決するためにはまず既判力の生じる客観的範囲を明らかにする必要がある。
2 既判力の客観的範囲
 既判力の客観的範囲は「主文に包含するもの」(114条1項)つまり訴訟物であると考えられている(給付判決の主文には訴訟物は現れないから厳密には主文=訴訟物ではない)。既判力が及ぶ場面をこのように狭く解する理由は、裁判所が判断しやすいものから判断できるというように審理に弾力性がもたらされること、当事者は訴訟物の存否に攻撃防御を集中させるため訴訟物には手続保障が尽くされていると言えること、紛争解決としては訴訟物に既判力を及ぼせば十分であることである。
 訴訟物とは、最狭義には原告が主張する権利自体を意味し、本件第1訴訟でいえば「XのYに対する150万円の給付請求権」となる。あるいは、訴訟物に請求原因を含めて考えると「XのYに対する売買契約に基づく150万円の代金支払請求権」となる。
 一方、第2訴訟の訴訟物は「XのYに対する売買契約に基づく250万円の給付請求権」あるいは「XのYに対する売買契約に基づく250万円の代金支払請求権」である。では、第2訴訟に第1訴訟の既判力は及ぶだろうか。既判力の作用場面が問題となる。
3 既判力の作用場面
 既判力は前訴の訴訟物と後訴の訴訟物が@同一の場合、A矛盾関係にある場合、B前訴の訴訟物が後その訴訟物の先決関係にある場合に作用すると言われている。
(1)訴訟物に請求原因を含めて考えた場合
 本件では、A矛盾関係にないことは明らかである。そして、訴訟物を「XのYに対する売買契約に基づく150万円の代金支払請求権」というように請求原因を含めてとらえた場合には請求原因の部分が@同一ないしB先決関係にある。したがって、第1訴訟の既判力は第2訴訟に及ぶ。
 その結果、売買契約の当事者がYでなくZであるというYの主張は、第1訴訟の主文そのものを否定する主張であるから、既判力の消極的作用により遮断される。
(2)訴訟物に請求原因を含めないで考えた場合
 この場合には、@同一でもB先決関係でもない。請求原因は判決理由中の判断ということになる。判決理由中の判断には既判力は及ばないと考えられている。
 しかし、既判力の作用場面でないからと言ってあらゆる主張を許すと、紛争の蒸し返しが起こり得る。したがって、既判力の作用場面以外にも後訴で前訴判断に反する主張が認められない場合があると解すべきである。そのような理論構成が問題となる。
4 判決理由中の判断の蒸し返しを防ぐ法律構成
 争点効(前訴において当事者が実際に争い、裁判所が実質的に判断した点に生じる後訴への通用力)を認める考え方がある。この理論を使うと本件のYの主張は遮断できる。しかし、争点効は判例の認めるところとなっていない。
 矛盾挙動禁止原則および権利失効原則という訴訟上の信義則を用いる見解もあるが、これも厳密には判例の採用するところではない。
 判例は信義則によって後訴を却下するという方法を使い、実質的に後訴での紛争蒸し返し的な主張を遮断している。信義則に反するか否かの考慮要素は前訴と後外の関連性、前訴で主張することの期待可能性等である。本件でも、第1訴訟と第2訴訟は請求原因が同一であるため関連性が大きく、Yは実際に第1訴訟で当事者を争って敗訴している。したがって、信義則により第2訴訟は却下される。
設問1A
1 訴訟物に請求原因を含めて考えた場合
 この場合には既判力の消極的作用により、既判力の生じた第1訴訟の判断に反する主張をすることが許されない。では、Aの主張が既判力の生じた第1訴訟の判断に反するだろうか。
 第1訴訟の訴訟物と第2訴訟の訴訟物が別である以上、第2訴訟でのみ提出された相殺の抗弁は第1訴訟の判断とは無関係であり、認められるとも思える。
 しかし、判例は相殺の抗弁についていわゆる外側説を採用している。つまり、判例は一部請求において相殺の抗弁が出された場合、訴訟物に関わらず請求権全額を判断し、全額から相殺した残額と一部請求額を照らし合わせた判断をしている。そうすると、第2訴訟において初めて相殺の抗弁が出された場合には、請求額全体からの相殺を考えるため、結局第1訴訟で認容された請求権を再び審理することになってしまう。これは既判力の生じた第1訴訟の判断に反するという見方があり得る。
 一方で、既判力の基準時は口頭弁論終結時(民事執行法35条2項参照)と解されているが、相殺の抗弁は被告にとっても債権の出捐を伴い、請求権に内在する瑕疵ではないから、前訴での提出が期待できず、基準時後に相殺の抗弁を提出することは前訴既判力によって遮断されないと解されている。こうした相殺の抗弁の特殊性を考えると、既判力の生じた第1訴訟の判断に反する者であっても例外的に遮断されないという見方もできそうである。
 しかし、本件の相殺の抗弁は、まさに売買目的物である本件機械の瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権を自働債権とするものであり、請求権に内在する瑕疵であるから、本件の特殊性として、第1訴訟での提出が期待できないとは言えない。瑕疵を発見したのが第1訴訟終了後であれば提出が期待できないともいえようが、本件は第1訴訟継続中に瑕疵を発見しているから、やはり提出が期待できないとは言えない。
 したがって、Aの主張は第1訴訟の既判力の消極的作用によって遮断される。
2 訴訟物に請求原因を含めないで考えた場合
 この場合には第1訴訟の既判力は第2訴訟において作用しないが、Aの主張が争点効ないし信義則で遮断されるかの問題となる。
 争点効理論によれば、前訴で瑕疵担保責任は争っていないため、主張は遮断されない。
 信義則によれば、1に述べたことと同様の理由により、第2訴訟で売買目的物自体の瑕疵を原因とする瑕疵担保責任に基づく損害賠償請求権による相殺の主張は遮断される。
設問2
 相殺の抗弁には既判力が生じる(114条2項)ため、弁済の抗弁を先に判断し、残額について相殺の抗弁をすべきと一般的にはいわれる。
 しかし、本件Aの主張は請求原因たる売買契約に内在する瑕疵を原因とする損害賠償請求権による相殺なので、Yにとっての本件自働債権は本件訴訟の訴訟物と離れた別個の権利として保護する必要がない。むしろ、自働債権が220万円以上認められた場合には、弁済した180万円は不当利得として返還請求できることになる。
 そうすると、本件では例外的に相殺から先に判断し、相殺の残額が弁済されたか否かを判断すべきである。 以上

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