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2017年03月06日

【クジラの子らは砂上に歌う】マンガ 感想&あらすじ 独特な世界観で描かれる“感情”が運命を動かすファンタジー作品

ミステリーボニータ。2013年7月号から連載中。既刊8巻
著者:梅田阿比
他作品:幻仔譚じゃのめ



あらすじ

砂刑歴93年。果てのない砂の海が延々と広がる世界。生命の息吹さえ感じられない砂の海には、「泥クジラ」と呼ばれる島のような漂泊船に乗り、あてもなくただ漂流し続ける民族がいた。

泥クジラの上で暮らす人間の9割は、感情を発動源とされる「情念動(サイミア)」を操る能力者であり、彼らは普通の人間よりも遥かに短命だった。

閉ざされた世界で短い一生を終える運命のなか、記録係を務める14歳の少年・チャクロ。
ある日、泥クジラのように砂上を漂流する漂泊船を見つけ、偵察隊に同行したチャクロはその船の中で、生まれて初めて外界の人間――少女・リコス――と出会う。

当初は冷淡だったリコスは船の住人と過ごすにつれ心を通わせていくのだが、突如泥クジラは謎の来訪者の襲撃を受け、泥クジラは戦禍に飲まれていくことになる。

止まっていた泥クジラの時間は動き出し、チャクロはその全てを日記に記していく。

登場人物

・チャクロ
主人公。印の少年、14歳。物語りの語り部。泥クジラでの役割は記録係。印であってもサイミアの操作が苦手なことで、周囲から「デストロイヤー」と呼ばれています。どんなことも記録せずにはいられない「過書の病(ハイパーグラフィア)」を患っています。リコスに出会ったことで外の世界に興味を持つようになり、泥クジラやこの世界の秘密を知っていくことになります。サイミアの操作は苦手とはいえ、チャクロの念紋の大きさから高い能力を秘めている可能性があります。

・リコス
ヒロイン(?)。印、14歳。泥クジラに漂着した廃墟船に1人でいた褐色の肌を持つ少女。帝国の感情を持たない「人形兵士(アパトイア)」で、服にリコスと刺繍してあったことからチャクロたちにそう呼ばれるようになりました。当初は帝国の施術により感情を失っていましたが、チャクロたちと過ごすうちに少しずつ感情を取り戻し、次第にチャクロに対しても特別な感情を抱くようになります。実は帝国のアパトイアを率いる軍団長官オルカの妹ですが、帝国と、そして兄と決別し、泥クジラの皆と生きることを決意しました。

・スオウ
無印、17歳。女性と見紛うほど美しい容姿を持つ青年。優しい穏やかな性格で、「印」達の短命にも嘆いています。次期首長候補と期待されていたことから、首長のタイシャが帝国の襲撃によって命を落としたことで、覚悟を決め正式な首長に就任。泥クジラの秘密を知ったことで、印たちを救うために船を捨てる決意をしました。

・オウニ
印、16歳。問題児集団「体内モグラ」のリーダーであり、泥クジラ随一のサイミア使いでもあります。帝国の兵士からは「悪霊(デモナス)」と呼ばれ恐れられています。外界へ出たいと望んでいたのは、本当は好きな泥クジラに何者か分からない自分のことを否定されたくないという思いから、必死に外へ逃げようとしていました。名前と年齢意外は不明ですが、「ヌースから生まれた化け物」と言われました。

・ネリとエマ
チャクロの前に現れる謎の少女。人ならぬ存在であり、ネリは心優しく平和を望み、エマは対照的に争いを望んでいます。ネリはファレナを守るために姿を消し、時を同じくして入れ替わるようにエマが現れました。エマはチャクロに泥クジラの舵を渡しました。

・オルカ
リコスの兄。連合帝国の「人形兵士(アパトイア)」を率いる軍団長官。泥クジラ住民の殲滅作戦を指揮するも失敗。その時、帝国に8つしかない「ヌース」と戦艦「スキロス」を失うが、詭弁により処罰は免れています。泥クジラのヌースとデモナスの力を入手し、その力で皇帝からもヌースを奪い至上の世界を造ることを目的としています。



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感想・見所

砂に覆われた世界を舞台に、砂上に浮かぶ島のような船の上で暮らす人々の過酷な運命を、あらゆることを記録し続ける少年の手記をもとに語られる物語。
少女漫画雑誌で連載されている、砂に覆われた独特の世界観で描かれる異世界ファンタジー漫画。「このマンガがすごい!2015」において、オンナ編の10位にランクインしています。
著者は『フルセット!』、『ブルーイッシュ』、『幻仔譚じゃのめ』を代表作に持つ女性漫画家の梅田阿比さん。2016年春にはこの作品を原作とした2.5次元の舞台も上演され、さらに2017年1月にアニメ化も発表されました。
最初は特に事前情報なく、この作品の美麗な表紙イラストに引かれてなんとなく読み始めた作品だったんですが、予想を遥かに超える重厚さに脱帽。

少女マンガらしからぬ内容に見えたので、当初は少年マンガ雑誌に掲載されていてもおかしくない作品だなと思ってました。ですが読み進めてみると、世界観こそ少女マンガでは珍しい壮大さで描かれていますが、展開の仕方や心理描写などを見てると「あぁ、少女マンガだな」といった感じになりました。
あくまで私的な意見ですが、比較的少年マンガはシリアスを強調した作品であっても、立ちふさがる敵や困難、そういったものと衝突し、挫折を味わおうとも再び立ち上がって努力により打ち破る、そうして読者は達成感やら満足感、充足感を得ていくものだと思います。困難や敵も読者が認識できる確かな形があり、勧善懲悪といったように話もわかり易い。
ただこの作品、確かに困難な状況を打破し、ひと時の安らぎを得て、登場人物たちは明日への希望も抱いてはいますが、壁を乗り越えて勝利を得ても、残るのは悲しみや言いようのない漠然とした不安の色が濃いと思います。進展するほど影は大きくなり、全体的にも少し暗い雰囲気。彼等の境遇や丁寧な心理描写を見てると、応援したい気持ちよりも同情の部分が大きくなってきますね。

この作品は、砂の海に浮かぶ「泥クジラ」と呼ばれる大型船の上で暮らし、その中だけでほぼ一生を終えていく人々の姿を描いた物語です。彼等の日常風景と共に襲い繰る帝国との激しい戦闘描写もあり、様々な出来事を経て、世界や泥クジラの謎が少しずつ解き明かされていきます。
そして、起こった出来事の全てを日記に記し続ける少年・チャクロの物語でもありますね。ちなみに、「泥クジラ」で生まれた子らの名前は、チャクロ(茶黒)スオウ(蘇芳)オウニ(黄丹)といったように、色がモチーフになっているようです。
骨太なストーリーで暗いシリアス面が強調されていますが、泥クジラに住むキャラクターの明るさが少し緩衝材になり、読む側にとってもそれが救い。ほのぼのした日常を壊すように残酷な戦闘が巻き起こり、物語が進展するにつれ運命の過酷さは深まりますが、そんな中でも新たな仲間、そして明日への希望も生まれます。絶望の中にも希望を感じられ、しかし不穏な影は常に付き纏っているという絶妙な空気感は見事ですね。

私が思う最たる魅力は独特な世界観と設定ですね。まず最初に知っておくべきは、この作品は「ハイパーグラフィア(過書の病)」と呼ばれる、なんでも記録せずにはいられない主人公の少年・チャクロの記した記録と手記を、第三者の「うめだ(作者)」という人物が見つけ、それを元に漫画を描いているという体裁がなさた懐古本的な作風
果て無き砂の海が広がる世界、そこに浮かぶ島のような巨大船「泥クジラ」。この泥クジラの住人のうち約9割は“印”と呼ばれ、「情念動(サイミア)」という念じることで器物を操る力を持つ能力者たちです。ただ、印たちは動力源として泥クジラの心臓部「魂形(ヌース)」に命を吸われているため、寿命は約30年と短命。それ故、住人の1割であるサイミアを使えないかわりに長命な“無印”たちが指導者としての役割を担っています。
外界はディストピア的な世界で船の中も絶望的に思われるかもしれませんが、当の印たちに暗さはなく、明るくのびのび生きてるので閉ざされたユートピアにも見えます。彼らにとってそれは生まれたときからの必然であり、その死を幾度も見ていることから受け入れています。むしろ、無印たちの方がそのことを憂いていますね。
泥クジラに彼らが乗っている理由を知るとやはり辛い気持ちになってしまいますが、儚いからこそ彼等の姿は眩しく強い輝きを放っているようにも思えます。住人がこの循環から抜け出せるのかというのも、本作の大きな見所ですね。

キーとなるのは「感情」だと思います。上述で泥クジラのヌースは命を吸っていると書きましたが、他のヌースが吸っているのは命ではなく「感情」。当初リコスが感情を失っていたように、この世界には感情の“ある”人間と、感情の“ない”人間”がいます。詳しくは避けますが、その感情が争いを生む要因にもなってきます。
この作品を読んでると、感情がいかに人間にとって必要なものなのかが身に染みますね。一応人間とは言いますが、作中の感情を喰われている人たちは、操られている人形のように機械的に動く存在。何も感じない彼らには悲しみも辛い感情もない変わり、そこに人間らしさはなく、人間の形をしていても生きていると言っていいのかは疑問。
時に私も何も逃げ出したくなりますが、リコスの変化を見てると、人間にはなくてはならないものだなと思わされますね。彼女からチャクロに対して特別な感情を伺えたときは嬉しくも感じました。

読み始めると一気に引き込まれる世界観、気になり過ぎて困る骨太なストーリー、そして愛しい気持ちを抱かせてくれるキャラクター、どの要素も素晴らしく、戦闘も残酷ではあるけど迫力があって見応えはありました。暗さが目立ってはいますが、新天地を目指す冒険心をくすぐるワクワク感も少しあり、秘された多くの謎や伏線が少しずつ解き明かされていく展開の仕方も見事ですね。
この世界を儚くもより美しく見せている要因のひとつは、作者・梅田阿比さんの絵の力ですね。女性作家さんらしい繊細なタッチで描かれる背景や人物は美しく、素晴らしいファンタジー世界を生み出しています。単行本の表紙からして素敵なイラストなので、目も心も奪われてしまった気分。
暗い結末を予感させる雰囲気もありますが、できるなら泥クジラの人々が幸福な地へ辿り付いてほしいと願わずにはいられません。
まとめる力がないのでいつもより少し長くなってしまいましたが、よければ『クジラの子ら』を読んでみてください。強くおすすめさせていただきます。



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ハネ吉
とにかく漫画が大好きです。愛してるといっても過言ではありません。どんなジャンルにも手を出しますね。正直、文章力にはあまり自信はありませんが、なるべくうまく伝えられるようにがんばります。ちょっとだけでも読んでもらえたらうれしいです。 ちなみに、甘い物とネコも大好きです。
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